2年の時を経て待ちに待ったシーズン2が公開された。

その間、柳楽優弥は名作「ライオンの隠れ家」で、発達障害の弟(演:坂東龍汰)と暮らす心優しい兄を演じていたが、ガンニバルではまったく真逆のキャラ。

ともに柳楽優弥という役者の底知れぬ実力を知らしめる作品となった。

 

シーズン2は1を超えるバイオレンスとアクションで、エンタメ性はシーズン1を凌駕する出来だ。個人的にはシーズン1の地方の閉鎖的な村に残る古い因習が引き起こす惨劇、という設定で静かに事が進んでいくストーリーの方が好みではある。

 

とにかく冒頭から話の展開が早く、序盤でいきなり後藤家と警察の大規模な戦闘が勃発。

後藤家の血気盛んな武闘派に「あの人」も加わり派手な銃撃戦が起こり、SIT含む警察官が多数死んでしまうという、あまりに過激な内容。

 

新キャラクターも適切なキャスティングで物語の奥行きを深めている。

後藤銀の若いころを演じるのは恒松祐里。彼女の持つ無邪気さを感じさせる美しさは、危険な妖艶さもはらんでおり、今回の役はまさに適任だ。

女優として順調なキャリアを積んでいて嬉しい。

 

恒松祐里。若いのにエロスを感じる名演技。

「全裸監督」の頃から片山慎三のお気に入りなのかも。

 

後藤家の新キャラでは前当主の後藤金次に豊原功補。もう一人、後藤理一を演じる中島歩には驚いた。これまでおっとりした知的な、もしくはコミカルな役が多かった彼だが、今回はバリバリの武闘派で血も涙もないかのような猟奇的な男を演じている。

ティアドロップタイプの眼鏡で長髪、なかなかの存在感で他を圧倒していた。

中島歩。今回一のサプライズキャスト。またこういった役を見てみたい。

 

宮司役の橋爪功、その息子に田中俊介。橋爪功演じる神山正宗の若い頃を倉悠貴が演じている。倉も最近よくドラマに出ているが若手ではいい役者さんだと思う。

赤堀雅秋も最近ドラマで活躍中。今作でも過去に秘密のある警察官を外連味たっぷりに演じて印象に残った。

 

大鷹明良、テイ龍進、谷中敦らが脇を固め、河合青葉、杉田雷麟、吉原光夫、和田光沙、松浦祐也らシーズン1からの面々も安定した演技で手堅い。

 

後藤家と供花村住民の激しい戦闘の中、ひときわ異彩を放っていたのが岩瀬亮演じるちょっと頭が狂ってしまった男だ。

それは、あの「八墓村」のモデルにもなった津山33人殺しの犯人のような異様な風体。

現代風にオマージュされていて、印象に残るキャラであった。

 

岩瀬亮。やっぱりこう来たか、、、、と。

 

監督の片山慎三はこれだけのスケールの原作を、多くのクセのある役者を起用してしっかりと見応えのあるエンタメ作品として仕上げた。その手腕は素晴らしいと思う。

 

「あの人」は後藤恵介(笠松将)の手によって殺され、後藤家と供花村に警察も巻き込んだ激しい戦闘も終結する。

恵介はすべての騒動の責任を取り自ら警察に投降し、後藤家はこれをもって実質的に統制力を失った。

 

最期、それまで対立してきた阿川(柳楽優弥)と恵介は拘置所で対面する。

2人の間には静かな時が流れ、これまでの激しい闘争が嘘のような優しい空気が二人の間に存在した。

別れを告げた二人だったが、急に恵介が振り返り阿川の名前を呼ぶ。

しかし、そのあと何も言わず去っていく恵介。何を言おうとして飲み込んだのか。

共に守るべきものを命を懸けて守ったことで、二人の間には何か強い絆が生まれていたのかもしれない。

 

物語の終わりに新しい駐在が供花村にやってくる。

加奈子(山下リオ)と出会い村を案内される駐在。

その目線の先に、新しい生活を始めた一家があった。

カメラはロングショットで誰なのかは判別つかないが、視聴者はそれが阿川一家だと気づく。

事件が終結した時、警視正に「ああいう人間は警察にいてはならん」と言い放たれた阿川は、その後警察を去ったのだろう。

そして供花村に定住することにしたのか。

シーズン1では阿川が村に来た時には、すでに前任の駐在は亡き者になっていた。

村が後藤家とは決別し、自らの力で新しい時代を築こうとしている。

そんな希望をほのめかすラストシーンだった。

 

「あの人」もCGではなく、澤井一希という長身の役者さんが演じていて驚いたが、舞台となった供花村のあの独特の地形も実はモデルが存在する。

和歌山県にある木津呂集落というところだ。

関西人にとって、和歌山というのはなかなかの秘境で(失礼・・・)、きっとまだまだサプライズな何かが色々あるのではないかという期待がある。いつか訪れてみたい。

 

自然の神秘を感じる。