3月13日(金)~15日(日)、深谷の和食店「旬ごはん やまだ家」様で特別企画

「深谷もやしごはん」

を開催します。お一人2500円のコース形式です。

2月には「とうふごはん」という企画があり、山田板長の感性と技術が最大限発揮された、素晴らしい深谷の「とうふ工房」様による手造り豆腐(とうふ工房様)を使ったとうふ会席料理の数々でありました。ほんとうにひとり2500円でいいのか?そう思ってしまうほどのレベルでした)


そして今回、やまだ家様から「次は深谷もやしでやりたい」とお話をいただき、私は大いに喜んでもちろん承諾、また同時に僭越ながらひとつお願いをしました。

『深谷のもやしの過去・現在・未来を料理で表現してほしい』

と。

 1959年から深谷で初めてもやしを栽培・販売業を興して今年で56年目。世の中のもやしも、もやし屋さんも大きく、本当に大きく変わりました。深谷のもやし屋飯塚商店は世の流れに逆らっても

「古くても変えてはいけないものは変えない」

姿勢をとってきましたし、さらには

「今やるべきこと」

は実行に移し、そして

「これからのもやしの形」

にも挑戦をしています。

それが深谷のもやしの「過去・現在・未来」です。

 過去は昔からまったく変えてない栽培、商品作りである
「ブラックマッペもやし・緑豆もやし」。

 現在は地元在来大豆というこれ以上ない原料による、
「埼玉県産在来大豆のもやし」。



そして未来は思い同じくする他のひとの協力によって遂にもやしの身の丈を越えた
「たたみもやし」

です。

 この「深谷のもやしの過去・現在・未来」を「やまだ家」の山田板長がどのような料理で表現をするのか、実は私も知らされておらず(笑)、当日をとても楽しみにしている一人です。

 「旬ごはん やまだ家」が織り成す、深谷のもやしの世界を是非味わって、体感してみてください。

・・・・・・・・・・・

【やまだ家 特別企画 「深谷もやしごはん」】

日時:平成27年3月13、14、15日 17:30~20:30 (要予約)

予約、お問い合わせ:
「旬ごはん やまだ家」 深谷市田谷280 048-572-1420

 一昨日、昨日と仲卸の方、生協関係の方が「もやしを見たい」ということで来社されました。

 私どもの「深谷もやし」「発芽大豆」に大変関心を示してくれたのは良かったのですが、どうやって売るか?でいろいろ検討されていました。そして偶然にもお二方とも

「“もやし”じゃあ売れないな」

とコメントを残しました。

つまり、

「このもやしは他とはっきりと差別化できるし、それだけの裏付け(物語)もある。それなりに高い売値をつけることはできるだろう。ただし、『もやし』という売り方だと難しい」

ということでした。

 確かに私が初めて4年前に「深谷もやし」を100円台の価格を付けてお店に並べた時も、

「ええ~もやしで100円?」

「だってもやしでしょ?高すぎよ」

などというお客様の言葉を直接いただいています。周りが18円で売っているから当然の反応でしょう。そういう状況を受けての先の仲卸さんたちの言葉「もやしじゃ売れない」なのだと思います。

 どこからどうみてももやしなのに「もやしと謳っては売れない」というのは、本当に不思議な現象です。もやしはすでに「安い野菜」の記号となっていてその一般的な認識が、これからのもやしの地位向上への大きな障害となっているのが現状です。

 自らが蒔いた種、という言い回しがあります。種を発芽させるのがもやし屋の仕事でありますが、まちがって育ててしまったもやしは結果的に自分をも苦しめることになること、痛感しています。

深谷のもやし屋、飯塚商店のもやしから新しい商品が生まれました。

深谷もやし


を独自の技術で乾燥させた

『たたみもやし』



です。人気商品「ベジドレ」を含む、これまでいつくもの加工食品を手掛けてきた大瀧政喜氏が開発、深谷のもやし屋、飯塚商店とのコラボ商品第一弾となります。

まずは開発者である大瀧氏のこの商品きかける思いを記します。

・・・・・・・・

本来あるべき生産者のモノ作りへの姿勢は、生産物に反映する。深谷もやしの生産者である飯塚さんを、低価格設定だけのもやし市場から,真のもやしの姿を世に知って貰う為に、僕は1年前から開発に取り組んだ。

もやしとは何か?もやしの持つパワーをどのように伝えるか?
このキーワードの元に、食卓を楽しくする商品を目指した。
単に機能や栄養や効能を謳うだけの商品にはしたくなかった。僕は、自分が楽しく無ければ,楽しい商品なんて決して生まれないと確信している。
とは言え(笑)少しだけ。
もやしにはカリウムをはじめ、カルシウムやマグネシウム等があり、40種のアミノ酸も含む(郡山女子大学での分析データあり)特に、アスパラギン、アルギニン、グルタミン酸も豊富。更にギャバは玄米の3倍以上。
一般に販売されているもやしと深谷もやしの比較データもありますが、何と深谷もやしは他のもやしの8倍以上のギャバを含有している。グルタミン酸も2.5倍。
つまり、水分含有量の多い太い普通のもやしではたたみもやしは作れない。深谷もやしは、昔なら当たり前のもやしだったけど、今は周囲と比較したらウルトラスーパーもやしなのです。

ー中略ー

本来あるべき姿に戻って欲しい、それこそが食生活を充実させ、楽しく健康的な食卓が出来ると思っている。

・・・・・・・・・

 もやしを乾燥させるノウハウの形成に1年、一切の添加物を使わず、もやしの旨味、栄養素をそのままに、常温保存可能なもやしの枠をこえたもやし商品「たたみもやし」。もちろん「たたみいわし」に似た姿からこの名前はきています。

「たたみもやし」はスナック感覚でそのまま子供のおやつ、酒のつまみ、そして独特の歯ごたえと染み出る旨味は料理のトッピング、材料としても使えます。

 大瀧氏も話しているようにまだまだ少量生産でありますが、現在深谷もやしを愛していただいている販売店、飲食店、子供の健康を願う保育施設といったところから順次の販売を進めています。

 低価格の象徴、常に“たかがもやし”と揶揄されるもやしから新に生まれた「たみもやし」という思いを、これからもどうぞよろしくお願いします。

“よく一年持った”という実感があります。

 そしてとことん削ぎ落とされた一年でありました。何十年も共に働いた人が去り、最後の大口取引先を失い、もやし屋を続けるだけで砂漠に水を遣るようにお金を失ってきました…。20年前の豊かであった頃からは考えられない、想像しても身の毛のよだつような状況下に陥りました。

 それでも不思議なものです。元気に伸び続けるもやしの如く、私を含め家族は皆元気、一つの目的に向かって精神的な結束が高まりそれぞれが必死となり、そして新たな芽が萌えだしています。

昔のもやし屋ではありえない取引も始まりました。

二つの高級路線スーパー、
スーパーサカガミ
エコピア

二つの生協、
ナチュラルコープヨコハマ
よつ葉生協


二つの大手野菜宅配…
オイシックス
大地を守る会


 それらはすべて低価格競争に巻き込まれない、生産者に何の負担もかからない、納得できる「適正な」取引です。

 そして昨日は半年前に撒いた種が芽吹いたかのように、来年に向けた新たな販路開拓の可能性もでてきました。低価格の呪縛で苦しむもやし市場で私の作るもやしが「一袋298円」という価格で実際に売られている、そのような今のもやし業界では考えられない事も実際に起きた。私の体験・言葉がエッセイとなって食の情報誌で連載という珍事も起きました(笑)。

 徹底的に削ぎ落とされ、どん底に落とされても、その逆境がさらに心身共に逞しく、上に向かって伸びようとする力となり、そしてその力は「口で言う可能性ではなく実際の結果」となっている…そういう一年だったと思います。そして来年は新たな斬新で正しいもやしの商品が生まれます。

 もやしは弱い植物ではありません、土も光もない世界で、水と自分の養分だけで強く早く伸びていきます。その勢いは何があっても止めることはできないほどです。…おっと、強く伸び続けるもやしを支える大事な要因を忘れていました。それはもやし屋というもやしを支える「人」です。
 
 もやしのように削ぎ落とされた飯塚家が常に力を発揮できるべく、この一年間支えてくれた人が今年も沢山いてくれました…皆さまに心から感謝をしています。

(有)飯塚商店 代表取締役社長 飯塚雅俊
昨日のことです。

近場のスーパーへ買い物に行き(いつもそうするのですが)、もやし売り場を確認して驚きました。

「もやし29円」

…群馬県に本社を置くこのスーパーはどこよりも先駆けて「もやし毎日18円(税込)売り」を実現したところです。もう10年近く前になります。この会社は当時飛ぶ鳥を落とす勢いで各地に進出していきました。あの時私が抱いた危機感は残念ながら現実のものとなり、そのお店をライバルとする他のスーパーもこぞって18円、19円、ともやしの値札を書き換えてきました。極端な例では毎日が1円、9円なんてスーパーも出てきました。あまりの価格に呆れた私は9円のもやしを1つだけ購入、そのレシートをもやし協会事務局に送って現状を訴えたこともありました。同時期、もやし主要原料である中国産緑豆がじわりじわりと値上げしてきているのにかかわらず、です。

(お店側が損をして売っている価格、という意見もありますが、私の経験上、お店が仕入れ値より安く売るケースというのはよほどのセール日以外に考えられません。通常小売価格18円でしたら、もやし会社からの仕入れ値15円以下というのが一般的なところでしょう)

 もやしの行き過ぎた低価格競争の引き金を引いたそのスーパーが、もやしの価格を「29円」にしていたので驚いたわけです。先日のもやし生産者協会の訴えが功を奏したのかもしれません。もっともお店が

「仕入れ価格は変えず、お店の小売価格だけを上げて利幅を増やした」

という可能性も無きにしも非ずですが。実際私の取引先でもそのように売っていたお店もありました。

 国内のもやしの主原料である中国産緑豆、その新物の価格は昨年度の40%近く上がるともいわれてます。例えば昨年1t(50kg入り麻袋20袋)、30万ならば42万円です。ちなみに私が社長に就任した13年前でしたら1t10万円少々でした。それほどの値上がりなのです。そしてもやしの小売価格は13年前の39円から今は18円と半値です。私は「企業努力の賜物」などと評する気になりません。この13年間でどれほどの小さなもやし屋さんが廃業・破産・倒産の憂き目にあったか。私の会社ですらいつ倒れてもおかしくない状況ですのでその辛さ、苦しさ、悔しさは身をもって理解できます。

 国内オリーブオイル販売大手である日清オイリオが来年から30~50%値上げする、というニュースを読みました。一般の消費者、飲食店にとっては大きな衝撃でしょうが、私はこのニュースを「ああ。羨ましいな。でもそうだよな」と感じました。原料が上がれば製品も上げる、というのは当たり前のことですから。

 私のことを言わせてもらえば、店頭価格18円平均の商圏の中、「一袋100円以上の深谷もやし」を必死で売っています。都内だと「300円近くで販売しているお店」もあります。ただ値札を変えるだけでなく、それだけの価値、その価値を消費者に伝えるべく様々な試行錯誤、実践を繰り返しています。時間はかかりますが、生産者が本気でやれば同じ人間同士です、それなりの理解そして成果は上がります。そうでなければ、今の状況下で200g300円のもやしがお店に並ぶ、なんてありえません。

 最も低価格にこだわっていたスーパーがもやしの価格を上げた、これはとても大きな動きだと考えます。今だからこそ、国内のすべてのもやし屋さんが勇気を持って適正価格販売への行動を起こすことを期待しています。