超人気アイドルが助けてくれた朝 | 18歳の新聞配達奮闘記

18歳の新聞配達奮闘記

15年以上前、18歳の私が書いていた1年間の日記✏️上京、新聞配達、学校、ルームシェア。初めてのことばかりの毎日。あとから書き足した記事も一部あり。

20XX年4月9日 14:37


■優しい人



今朝の配達中の話。


あるマンションの前で

新聞を積み直していた。



すると前方にリズムを取りながら

歌っているヘンな人が目に入った。



ピンクの上着に白のズボン。

頭をすっぽり覆うふかふかの白い帽子。


ウォークマンで曲を聴いているようだ。



田舎ではこんなに派手で

陽気な人に会ったことがないので

目を合わせたくないけれど少し見てしまう。




そして彼を気にしている瞬間に

ガシャーンと自転車が倒れた。



―――あー!またやった!



毎日のように自転車を倒しているので

冷静に自転車を戻そうとした。




しかしさっき残りの新聞を

全て積んだばかりで重い!



必死に持ち上げるも、

坂道だしなかなか起き上がらない。



するとヘンな人が走って近づいてきた。


「ダイジョウブ~?」

「すみません、ありがとうご…」


顔を見た瞬間にハッとした。


某超人気アイドルグループの〇〇君だった。



帽子が髪型を隠しているけれど、似てる。


絶対にそう。

だって私も好きだもの。



彼は軽々と自転車を戻してくれた。


「ありがとうございます!」

「いいえ!」


声も一緒。でも亀戸?


芸能人がいるのって渋谷じゃない?

(田舎的発想)




彼は自転車を戻すと

落ちた新聞を拾い集め、

乱れた新聞も直してくれた。



私はまじまじと見てしまった。

目の形も眉毛もほくろも

そのまま〇〇君だ。



「もう大丈夫?」


「はい!大丈夫です!

    本当にありがとうございました!」


「じゃあね!頑張ってね!」



私はお礼以外の何も

言うことが出来なかった。



彼はまた歌いながら姿を消した。