■ ドラゴンボールGTの危機
今から20年以上前に『ドラゴンボールGT』という作品がありました。原作終了後の続きを描いたアニメオリジナルストーリーです。
GTが何の略かと言うと、「ごめんなさい鳥山先生」と一部で揶揄されたりもしますが、本来は「Ground Touring」(壮大な旅)という意味で、無限に拡がる大宇宙を舞台に、悟空達の壮大なドラゴンボール探しの冒険が描かれると期待されていました。
この『ドラゴンボールGT』、かつては原作の続編という地位を認められていた頃もあったような気がしますが、今では正史から抹消の危機にあります。なぜなら、原作者原案による正統な続編『ドラゴンボール超』が作られたからです。
■ ドラゴンボール超とGTの関係
当初、『ドラゴンボール超』は原作のブウ編終了後から最終話付近までの10年間の空白の期間を描くということで、GTとは矛盾しないように話が作られ、2つは共存するものと考えられていました。
ところが、そんなことはお構いなしに『ドラゴンボール超』では新しい設定がどんどん盛り込まれていきました。合体していた界王神&キビトは分離するし、ピラフ一味は若返るし、もはや超からGTへ繋げるのは至難の業で、2つは繋がりそうもない感じになっていきました。
超とGTが共存するのは難しいため、どちらを生かすか選ばなくてはなりません。当然、それは原作者がよく関わっている超を選択するということになり、GTはパラレルワールドに区分されるというのが自然の成り行きです。
また、一口にパラレルワールド(並行世界)と言っても、この場合「未来トランクス世界」のようにタイムマシンで本編と行ったり来たり出来るような原作と地続きの並行世界とは性質が違います。GTの場合は、「ifもしも・・・だったら」というニュアンスを持ったタラレバの世界で、どちらかと言えば同人作品の類に近いです。
しかし、このまま原作と関わりのないアニオリ作品と片付けられてしまうのでは、GTファンは寂しい限りでしょう。せめて原作と繋がりのある並行世界であれば良いのにと思うのではないでしょうか。
そんなGTファンの気持ちに応えるため、並行世界について今一度考えてみたいと思います。
■ 7つの並行世界
以前、このブログでは、タイムマシンによる歴史改変で増えた並行世界を7つにまとめました。
作中に出て来た6つの並行世界を細かく表したのが下の図です。
かなり複雑に入り組んでいますが、これらの並行世界にGTを組み込むことはできないでしょうか。GT用にもう1つ別の並行世界を追加するのは時の指輪の個数(7個)を超えてしまうのでダメです。既にある並行世界のどれかをGTに繋げるしかありません。
悟空が死んでたり、DBも無くなっていたりという並行世界では難しそうですが、「②謎の世界」なら何となくGTを組み込むことができそうな可能性を感じます。前回はあまり手をつけてなかった「②謎の世界」ですが、GT世界にうまく繋げられるかどうか、今回はじっくり考察したいと思います。
■ ② 謎の世界の特徴
まずは「②謎の世界」について、おさらいです。
「②謎の世界」は原作の其之330~336で描かれた世界です。
この世界の特徴となるポイントは次の2点。
Ⅰ タイムマシンでセルが来ていない。
Ⅱ 19号20号が暴れた未来からトランクスが来る。
この2点以外は「⑤超本編の世界」と同じ条件です。この2つの前提条件さえ守れば、その後の展開は比較的自由に考えてO.K.です。もちろん他の並行世界と矛盾しない一貫性のある理屈で話を展開させていく必要はありますが。
とりあえずGTは元々原作の延長線で作られた作品なので、「②謎の世界」を原作の展開に近づけていく方向で考えていけば、GTとうまく繋げられるかもしれません。
■ 原作やGTの展開に近づけるための諸問題
「②謎の世界」を原作やGTと同じような展開にするにあたって、立ちはだかる問題がざっと3つほどあります。
(第1)謎の世界には未来からセルが来てない
(第2)GTだとピラフ一味が若返ってない
(第3)GTだとビルスが出て来ない
(第1の問題)
1番厄介な問題は未来からセルが来ていないことです。セルがいないと、16号が踏み潰されたことで悟飯が超サイヤ人2に覚醒する流れもないし、セルの自爆で悟空が死んであの世に行くという流れもなくなってしまいます。悟空があの世でフュージョンを教わることもありません。その前のピッコロと神様の合体も微妙になり、デンデをナメック星から連れてくる話も無くなります。
ミスターサタンがセルを倒したというホラで地球のヒーローとなる流れも当然ありません。
これでは、ブウ編にうまく繋がりません。GTにはブウやウーブが登場するので、GTに繋げるにはブウ編のような出来事は必要不可欠です。
(第2の問題)
ピラフ一味が若返っていないのが、GT世界の特徴です。
超本編では、ピラフ一味が若返っているので、どういうきっかけでピラフ一味が若返ったのか、GTに繋げようとしてる「②謎の世界」ではどうして若返らないのか、分岐の理由をきちんと考えなければなりません。
(第3の問題)
破壊神ビルスがGTには出て来ません。ビルスはGT終了後に作られたキャラなので当然ですが、時系列的にはGTの方が後になるので、なぜビルスが悟空達の前に現れなくなったのか、もっともらしい後付けの理屈を考えなければなりません。
ビルスが出ないことにより、超サイヤ人ゴッドやブルーが出なくなるのは納得いきますが、ビルスが存在してるのはそれぞれの並行世界で共通のことなので、ビルスが目覚めた時のことについてはよく考えなければなりません。
以上、3つの難問が立ちはだかっていますが、悲観することはありません。
この3つさえクリアーすれば、GTと「②謎の世界」を繋げ、GTを原作の中の並行世界の1つとすることができるのですから。
ひとまずは 「セルが来てるか来てないか」、この違いがその後どういった展開の違いを生むのかというアプローチで問題解決を考えてみましょう。
■ ピラフ一味の若返りの影響
セルが来たことによりピラフ一味が若返り、セルが来ないとピラフ一味は若返らないと仮定してみます。
実はピラフ一味の動向は非常に重要で、悟空はビルスと相対したときにDBを使って超サイヤ人ゴッドへの変身方法を知りますが、もしピラフ一味が若返っていなければ、ブルマのDB集めに影響が出てたかもしれません。仮にそのときDBが揃ってなければ、超サイヤ人ゴッドのなり方を神龍から聞けず、悟空はゴッドでビルスと闘うことができませんでした。あのときビルスは地球を破壊すると再三言っていましたが、今となってはブラフだったのは明白なので、悟空がゴッドになれなかったとしても地球が破壊されることはなく、ビルスは悟空達に失望して帰り、再び長い眠りにつくという流れになっていたことでしょう。
ビルスが再び眠ってしまえば、第6宇宙との対決もなく、ザマスが神チューブを見ることもなく悪に走ることもありません。全王が二人になり力の大会を開くこともありません。フリーザも復活していないので、ブロリーと闘うこともありません。
また、フリーザの部下ソルベが地球に来てDBを集めようとしてましたが、これもピラフ一味が関係しています。もしピラフ一味が若返っていなければ、ソルベはDBを揃えることが出来ず、フリーザも復活しなかったというのもごく自然にあり得る流れです。
となると、ピラフ一味が老いたままの説明さえつけば、GTで、超サイヤ人ゴッドやブルーになれなかった訳やビルス達が出て来ない合理的な説明がつくことになります。
ピラフが若返った経緯が解明できれば色んな問題が解決されるのです。
■ピラフ一味若返りのきっかけ
それではセルの来る来ないがどうやってピラフの若返りに繋がるのか
・セルが来た世界 → ピラフ若返る
・セルが来ない世界 → ピラフ若返らない
という分岐について、突っ込んで考えてみたいと思います。
例えば、セルが未来からやって来て地中深く埋まる際に、地面が掘り起こされ、たまたま地中に埋まっていたドラゴンボールが掘り出されたお陰で、ピラフ一味がDBを7つ集めることができて若返ることができた。と考えるのはどうでしょう?
何だかあまりにも都合が良すぎでしょうか。
それでは、セルが乗って来たタイムマシンの中に未来の高性能ドラゴンレーダーがあったと考えてみてはどうでしょうか。DBが出す特殊な電波を遮断する箱に入っていても探し出せるほど高性能で、もちろん未来のブルマが作ったやつです。
■ ピラフとタイムマシン
ピラフも結構な天才で高性能なドラゴンレーダーを作っていたと推測されますが、DB集めで毎回痛い目にあっていてこの頃はDB探しをすっかり諦めていたと仮定してみます。
ところがたまたま見つけたタイムマシンの中にドラゴンレーダーがあった。しかも高性能。久しぶりにDBへの想いが沸き起こり、若返りを目的に集めるきっかけとなった。でもピラフ達がタイムマシンを偶然見つけたというのだと、まだ話の都合が良すぎるので、当時ピラフは時間移動の研究をしていて、タイムマシンの時間移動による大きな時空の歪みを観測して現場にやって来たと考えてみましょう。ピラフは漫画版の超でもタイムマシンについて詳しかったので、この流れはごくごく自然です。
研究として格好な材料であるタイムマシンを持ち帰らなかったのは、同時に発見した得体の知らない何か(殻状態のセル)が、急に襲って来たので慌てて逃げ出したと考えれば良いでしょう。殻状態のセルが人畜無害だったという保証はなく、卵から出たときタイムマシンを壊してるし、むしろ危険な存在だったと考える方が自然です。それにタイムマシンは壊れてたし、持ち帰るという危険を冒さなかったと。
一方、セルの来なかった「②謎の世界」ではピラフ一味はタイムマシンの中にあったドラゴンレーダーを発見することもなく、DB探しの気持ちが再燃することなく若返りもしなかったと。DB探しを始めるのはまた何年も経ってからだと考えられます。
というわけで、セルが来る/来ないによってピラフが若返りの願いを叶えるか/叶えないかという分岐になる流れは解決です。
■ 未来からセルが来ない人造人間編
さて、それでは1番の問題、セルが来ていない人造人間編を、どうやってブウ編に繋げていくかを考えてみましょう。
達成すべき目標は次のとおりです。
・悟空は死に、あの世でフュージョンや超サイヤ人3を身につける。
・悟天を仕込む。
・悟飯は超サイヤ人2に覚醒
・ピッコロは神様と合体し、地球の神としてデンデを連れてくる。
・人造人間17号18号は生き延びて18号はクリリンと結婚する。
・ミスターサタンが救世主になる。
セルが来てない世界でこれらを達成するなんて到底無理と思われがちですが、諦めたらそこで試合終了です。何とか考えてみましょう。
・・・・・・
もう1番手っ取り早いのは、セルが別の時代から来てないなら、この時代のセルをとっとと完成させてしまおうという発想です。
悟空が心臓病から助かるこの世界では、セルがおらず、原作と展開が違ってきますが、論理的にその後の展開を考えると、悟空は人造人間を倒すために精神と時の部屋に入ったと考えられます。
そして16号17号18号の強さを超え、人造人間に勝利するも、悪い連中ではなかったのでとどめは刺さなかったと。
その後、悟空はトランクスの未来(世界①)の人造人間19号20号を倒しに行きます。
19号20号を倒した後、研究所に行き16号17号18号も破壊します。帰りのタイムマシンのチャージに時間がかかるため、それを待つ間悟空は死んだ神様の代わりにナメック星からデンデを地球に連れて来るなどしていたかもしれません。
タイムマシンのチャージに必要な原料も瞬間移動を使って、集めていたということも考えられます。
悟空が未来世界①にいる間、不在の世界②では、なんとセルが誕生します。本来なら20年経過してから完成するセルですが、悟空と16号のハイレベルな闘いのデータをスパイロボットが入手したことにより急速に完成が早まりました。
■ 早々とセルが完成してしまった世界②
研究所の地下で誕生したセルはスパイロボットの情報で現状を掌握します。セルは今のままでは完全体になれないと判断し、人々の生体エキスを吸収します。
頼みの悟空はまだ未来から帰って来ません。
神様はセルに気づき、ピッコロとの合体を了承し、セルと闘いますが逃げられてしまいます。
しかし神コロの機転(神様の知恵)でセルの狙いが17号18号を吸収して完全体になることだと分かります。
セルの脅威のため、べジータは精神と時の部屋に入ります。
神コロ様はセルを探しますが、なかなか見つけきれません。その間、セルはパワーアップを遂げて、とうとう人造人間達の前に姿を現します。
まず好戦的な17号が闘いを挑みますが、吸収されたところでセルが第2形態へ、16号18号は逃げます。
そんな状況でベジータが精神と時の部屋から出てきます。べジータは18号の吸収を手助けして、セルは完全体に。
超べジータは歯が立たず負けてしまいます。
べジータが殺されそうになったところで悟空が未来から戻ってきます。(トランクスは未来に帰っていきました。)
戻ってきた悟空はセルに挑みますが、やはり完全体セルには勝てそうにありません。
そこでセルは提案します。セルゲームです。
本編では未来トランクスに提案してましたが、相手が悟空になっても変わりません。
■未来トランクス不在のセルゲーム
ここまでくればゴールが近そうです。
原作の展開と違ってるのは未来トランクスがいないことくらいです。
セルに勝つため、悟空と悟飯は精神と時の部屋へ。そしてその後ナメック星へ行きデンデを連れてきます。ベジータも再び精神と時の部屋へ入り、ピッコロも入ります。天津飯はパスします。
そして、セルゲーム。ミスターサタンが前座を勤めた後、悟空がセルと闘い降参します。
悟飯がセルと闘い、セルジュニアが大量生産され、16号が話し合いの通用しない相手もいることを諭し、悟飯が超サイヤ人の壁を超えます。
悟飯はセルを追い詰め、18号を吐き出し完全体を維持できなくなりますが、自爆態勢に入り、悟空が地球を守るため界王星まで連れていき、犠牲になります。
しかし自爆したセルは生き残り、瞬間移動で地球へ。その時に仲間が1人殺されます。
未来トランクスはいなかったので別の人が殺されました。天津飯です。
トランクスの立つ位置の最も近くでした。
天津飯は死ぬのが2度目なので残念ながら地球のDBでは生き返れません。
しかし、その場で逆上してセルに突撃する者はいませんでした。
ベジータも冷静で、悟飯も左腕にひどいダメージを負うことはありませんでした。みんなひどく冷静でした。
超サイヤ人2の悟飯と同等のセルとの戦闘が行われ、最終的に悟飯がかめはめ波で勝ちます。
救世主として報道されたのはもちろんあのミスターサタンでした。
■天津飯の復活
セルを倒した後、DBで願いを叶えていきますが、残念ながら天津飯は2度死んでるので、普通に考えると生き返りません。
ですが、界王様の命を貰って復活できたと考えればどうでしょうか。
ブウ編では老界王神が悟空に自分の命を授けて悟空を生き返らせるという場面がありましたが、界王様に同じことができてもそれほど不思議ではありません。
原作本編世界だと、悟空に付き合うためあえてDBで生き返らなかった界王様ですが、天津飯に命を与えるためにひとまず生き返ったと考えても良いでしょう。
たかだか天津飯ごときにという考えもありますが、天津飯が界王様と一緒ににいた期間は260日と当時の悟空よりも100日以上長く、何より天津飯は悟空よりも礼節で師に対して気遣いの出来る人間なので、界王様が天津飯のことを良く思ってて、それくらいのことをしたとしても何ら不思議はありません。
というわけで、関係者は皆生き返り、結果はほぼ本編と同様になりました。
これでブウ編に繋がります。
(ちなみに、GTで邪悪龍が生まれた理由の中にセル編で叶えた願いは入っていません。)
■世界①のその後
悟空を世界②に送り届け、未来に戻ったトランクスですが、世界①でもセルが誕生して、殺されてしまいます。そのセルはタイムマシンで世界③に行きます。
ですが、悟空が瞬間移動でナメック星からデンデを連れてきて、地球のDBを復活させていた可能性もあります。タイムマシンの中にドラゴンレーダーがあったということは、当然DBが復活していてもおかしくありません。トランクスがDB集めのために持っていたと考えるべきでしょう。
つまり、この後ブルマがDBを集めてトランクスを生き返らせた可能性もあります。
もしかしたら、19号20号に殺されたという悟飯(番外編で17号達に殺された隻腕悟飯とは違う)も生き返らせることができたのかもしれません。
であれば、世界①はこれまで不幸で救いようのないと考えられていましたが、復活したDBにより平和への道が開けた可能性もあるのかもしれません。
■ブウ編から原作最終話まで
謎の世界②では、セルを倒し、 悟空以外の仲間は皆生き返り、ブウ編へ繋がる条件は達成しました。原作本編世界と状況がほとんど変わらないので、ブウ編は原作の内容とほとんど変わらず推移していくものと考えられます。
そして、原作最終話への繋がりは、超よりもこの「②謎の世界」の方がスムーズな気もします。ブルマが「悟空と5年も会ってなかった」という発言やブルマの老け具合、超だとデンデがウーブの存在を知っていたりなど、超が原作最終話に繋がるかどうかの方がむしろ微妙です。
いっそのこと、原作最終話付近は「②謎の世界」を描いていると考えてしまった方が、超を原作最終話に無理にでも着地させなきゃならないという制約から解放されて、自由な発想でストーリーを展開できて良いのかもしれません。その場合、下の図のようになります。
■まとめ
ようやくこれで全てが原作と繋がりのある並行世界に収まりそうです。
「②謎の世界」は「②原作最終話の世界」に書き換えられ、七つの並行世界は次のとおりになります。
各並行世界の年表です。(黒字は原作等で描写や言及された事項。赤字は推定)
これが『ドラゴンボールGT』を組み込んだ【ドラゴンボール七つの並行世界】の完成形になります。
ついでに「原作最終話付近と超が繋がらなさそうだけど大丈夫か」という問題もクリアーできました。
仮定や空想ばかりでこじつけが過ぎるという批判はあるでしょうが、逆にこれを否定するだけの根拠もないはずです。であれば、これを1つの可能性と捉えてもいいわけで、『超』、『原作最終話』、『GT』の3つをうまく繋げるにはこれが最善の手だと自負しています。
ということで全部うまくまとまったから、これでドラゴンボールの並行世界のおはなしはおしまい。