4月27日から30日までの間、豪州政府の招聘プログラム(今回のテーマは「経済安全保障」)に参加して、シドニー及びキャンベラを訪問し、閣僚含むハイレベルな豪政府関係者及び有識者と意見交換や視察を行いました。我が国として参考となると思ったことも多々ありましたのでしばらくシリーズでご紹介したいと思います。

今回は、第3弾として、「外国投資規制(含む外国人土地所有規制)についての豪州のやり方をご紹介します。

 

 

豪では、Treasury(財務省)が外国投資の審査をする。外国投資案件の審査は、 低リスクの投資はゆるくハイリスクの投資はきつく審査するのが基本方針。50年ほどこのやり方。

財務省で審査は完結するが、全政府的アプローチをとっている。「Foreign Investment Review Board」という元役人や民間人や技術者などが入っている諮問機関はあるが、あくまで参考意見を聞くというものであって投資の可否如何を決定するのは財務省。

データセンターの保護は重要。外国人による土地取得審査も外国投資の審査と同じ手続きで財務省が行なっている。

後から不適切なことが判明すれば一旦許可した投資案件も取り消せる。当該投資案件についての情報については他の省庁とも緊密に連携している。マーケットインテリジェンスも重要。ビジネス界にも積極的にアウトリーチしている。

Critical infrastructure サプライチェーン、先端技術についての投資にはセキュリティクリアランスが必要。

4月27日から30日までの間、豪州政府の招聘プログラム(今回のテーマは「経済安全保障」)に参加して、シドニー及びキャンベラを訪問し、閣僚含むハイレベルな豪政府関係者及び有識者と意見交換や視察を行いました。我が国として参考となると思ったことも多々ありましたのでしばらくシリーズでご紹介したいと思います。

今回は、第2弾として、「豪州の先端技術研究のビジネス化のための民間の独立したベンチャーキャピタル」をご紹介します。ここに記載するのは、公にして差し支えない範囲のみになりますが、念のため企業名は伏せさせて頂きます。

 

1.豪発の先端技術研究をビジネスに繋げるスタートアップに対して資金提供し育てることを目的とした民間ベンチャー・キャピタル(VC)A社(仮名)の関係者と意見交換を行いました。彼が教えてくれたことは以下のとおりです。

豪も日本同様、研究開発までは良いものが沢山あるが、ビジネスに繋げるところが上手くいっていない。それを克服するための取り組みとのこと。日本にも官民ファンドは少なからずあるが、運営の仕方や有り様について大いに参考とすべきところがさあると感じた。特に、注目すべき点は、

①    豪政府からの資金はもらっているが、経営は豪政府は一切関わらない独立性のある民間VCという点(「政府とはarms length腕の長さぐらいの距離感」とのこと)。政府の仕事の受注は多い。また、研究開発のための投資は1ドル中4セント税金が還付されるというインセンティブもある。

②    投資する対象のスタートアップは豪州企業だが、当該スタートアップが対象とすべきマーケットは世界市場であって、豪国内市場のみを相手にするわけではない。なお、企業国籍は豪企業であっても社員が全員豪州人というわけではない。

③    対象技術は、量子コンピュータ、グリーン、ロボティックスに絞っている。1スタートアップは12年位内のライフサイクルで、それまでに上場するか売るかする

④    本VCでスタートアップで成功した人が、続く人たちのロールモデルとなり、豪州に戻って本VCに再投資し、豪州の後輩アントレプレナー(スタートアップ)を応援するという良いエコシステムができている

 

2.感想

 日本も研究までは世界に先駆けたものがあるのに、それをビジネス化することは不得意で結局、経済的利益に転換できずマーケットは他国に持っていかれるという傾向にあります。オーストラリアも日本と似たような悩みがあることは知りませんでした。

日本にも先端分野を育てる目的の官民ファンドはあるわけですが、本件豪A社に比べて、政府が運営に口をはさむ度合いが大きすぎるし、一定期限内に上場するか売る、それができないものは失敗なので手を引くといった明確な方針がない、さらに今後のシリーズでも感じたところですが、「エコシステム」ができていることの重要性についても深く感じるところがありました。今後、日本の政策を考えていくときにも参考にしていきたいと思います

4月27日から30日までの間、豪州政府の招聘プログラム(今回のテーマは「経済安全保障」)に参加して、シドニー及びキャンベラを訪問し、閣僚含むハイレベルな豪政府関係者及び有識者と意見交換や視察を行いました。我が国として参考となると思ったことも多々ありましたのでしばらくシリーズでご紹介したいと思います。

まず、第1弾は、「サイバーセキュリティ」についてです。もっといろいろお伺いしましたが、ここでは公にして差し支えない範囲での報告とさせて頂きます。

 

1. サイバー・セキュリティ

(1)サイバー担当大臣が専門にいて、サイバー関連業務を全て1人で統括することが重要。サイバー人材の育成から対策まで。サイバー犯罪の危険は国民レベルで浸透している。他方、大企業は対策できても中小企業にとっては難しいので、短時間でインストールできるソフトを提供したりしている。

 

(2)2030年までに豪州は、サイバーセキュリティの最先端国になるという目標を掲げて「サイバーセキュリティ戦略」を策定

 

(3)ACSC(オーストラリア・サイバー・セキュリティ・センター)

ACSCは豪州政府機関のネットワークのみならず死活的に重要なインフラをサイバー攻撃から守ること、全てではないが民間企業のサイバーセキュリティのサポートも行っている。外国勢力からの攻撃の場合に相手国領域内のサーバーに入って防衛するために相手国サーバーを機能停止したり破壊したりするいわゆるACD(アクティブ・サイバー・ディフェンス)も行う副総理に報告する関係にある。

オペレーションを行う上で最も必要なものは情報であり、情報がシームレスに共有できるように最良の情報(intelligence)を有する同じ組織の中に位置付けられる必要がある。

若者にとってサイバーは刺激的な仕事であり、人材確保には全く困っていない。学生、企業の人、見習い、あらゆる人がサイバー人材の募集対象。サイバーについての能力さえあればどういう職業出身でも良い。

 

(4)豪サイバー関連企業との懇談での本音

日本はサイバーについてはもはや10年遅れとの厳しい指摘があった。一因は、政府はITの大企業にばかり頼るが、日本のIT関連大企業は硬直的でイノベーションがないこと。スタートアップにもっと注目すべき。もう一つは圧倒的にサイバー人材が不足していること。

2.感想

 前からそうだと思っていたが、改めて、日本に欠落・不足している能力は、サイバーと対外インテリジェンス機関だと痛感。

豪州が、「2030年までに豪州をサイバー分野のリーディング・ネーションにする」という5か年の「サイバー戦略」を立て、そこに向けて様々な取り組みを行っていることに敬意を覚えた。サイバーに限らず、日本は、往々にして、問題がおきたら対処するという場当たり的なやり方、短期的視点に慣れてしまっているように思う。5年後、10年後の日本や世界の状況を見据え、そこに対処するためにどういう能力を備えるべきかを逆算して現在の行動を考えていかねばならない。

サイバー人材が圧倒的に不足していることにも危機感を覚えた。国民に対するサイバーセキュリティの重要性の啓発、人材育成、サイバーセキュリティセンター設置、アクティブ・サイバー・ディフェンス導入などやるべきことが様々ある。サイバー人材育成については、既存の政府機関でサイバー人材育成ができるのは陸自高等工科学校(高校)のサイバーコースと防衛大学校のサイバーコースのみである。5月14日の外交防衛委員会でこの点は提案したところだが、この2つのサイバーコースについては、人員拡充した上で、他の一般高校や一般大学の学生にも開放して単位取得を可能としてもよいのではないかと思う。彼らは自衛官になる必要はないが、サイバー人材としてサイバーセキュリティを民間で担う人材となれるだろうし、もしかしたら、工科学校や防衛大学で友人と触れる中で、自衛隊サイバー部隊に入りたいという人が増えるかもしれない。いずれにせよ、日本にとって必要なサイバー人材を生みだしていく上で有効ではないだろうか