みなさん、おはようございます。今日はいよいよオリンピックの開会式ですね。既に、女子ソフトボールとサッカーの試合が行われ、いずれも日本が勝利。嬉しいです。陽性者が出て出場が直前まで確定しなかった南アフリカが参加できたのは良かったです。いろいろ大変だったでしょうが南アも立派な戦いだったと思います(全部は見られなかったけど)。自衛隊からも選手として17名がオリンピックに参加していますし、また、警備等含め支援要員を出しています。そして、今日の開会式においては、自衛隊の誇るブルーインパルスが素晴らしい飛行をする予定です。

 

直前まで、大会関係者が不適切な発言などで辞任・解任が相次いだことは残念ですが、もうオリンピックは始まっています。主催国としてオリパラを多いに盛り上げていくべきだと思います。

 

そして、本当に残念なのが感染拡大によって無観客になってしまったことです。デルタ株の感染力の速さや日本のワクチン接種状況や医療体制など様々な点を考慮すれば無観客を決定したことは致し方ないと思っているのですが、子供達だけは何とか観戦させてあげたかったなあ、今からでもなんとかならないものかと思います。自分ができることをしてみようと思います。カシマスタジアムだけでは子供達が観戦できました。本当に良かった。でも他地域でも子供達が観戦できたらと思います。

 

無観客にしたのは、人流のコントロールができないからとのこと。スタジアムで感染することはなくても、その前後で集まって騒いでそこで感染すると。

 

しかし、子供達は先生に引率されて、バスで直にスタジアムにきて、距離をとって観戦して、同じく先生に引率されてまっすぐ帰宅するのです。帰りに、レストランに寄っておしゃべりしたり、お酒を飲んで盛り上がったりは致しません。全行程が管理されている状況で、子供達の観戦が感染拡大の契機になることは考えられないと思います。子供達が感染するとすれば、家庭と学校であって、スタジアムに行くことが別途追加的にリスクを上がるわけではありません(自分が罹るリスク及び人に感染させるリスクとも)。生でオリパラの試合を観戦したら、子供達はどれほど多くのポジティブな刺激を受けることか。オリパラは人生に一度あるかないかのイベントです。子供達の人生における大きな財産になることでしょう。子供達の人生の先は長いのです。だから、子供達だけは、特別扱いしたらいいと思う。

 

 

1.バイデン政権の対中抑止外交

 バイデン政権発足以降の国際政治の流れは速い。3月に日米「2+2」,日韓2+2、アラスカでの米中外相会談、4月の日米首脳会談、5月に米韓首脳会談、6月にG7、米ロ首脳会談。全て、バイデン政権が対中戦略を明確に意識して行ったものである(無論、中国もそれに対応した外交を展開している)。

 

 3月の日米「2+2」にて実質的に初めて日米間において「台湾海峡の平和と安定の重要性を強調」した。さらに、日米首脳会談、米韓首脳会談(注)、さらにG7においても「台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに、両岸問題の平和的解決を促す。」ことが明記された。G7という欧州中心の枠組みにおいても台湾海峡が関心事項として取り上げられたことは、中国に対する大きな「政治的な」抑止力となると評価できる。要するに台湾海峡で何か事を起こせば、欧州主要国との関係も悪くなるという政治的コストを考慮せざるを得ないということを意味するからだ。また、これらすべての会合において、半導体をはじめとする機微技術について安全なサプライチェーンの構築といった経済安保の取り組みも力点となっている。同盟国との連携で中国に対処するという方針を公にしていたバイデン政権の面目躍如だといえる。トランプ政権ではこうはいかなかっただろう。この過程で日本の果たした役割は大きい。多くの欧州主要国が艦船をインド太平洋に派遣し、日米豪他と共同訓練を実施していることの発する対中抑止メッセージは明確なものだ。

(注)米韓首脳会談においては「台湾海峡の平和と安定の維持の重要性を強調した」との記述。
 

さて、そのように国際社会が中国に対して、台湾海峡にて事を起こさせないことをはじめ、南シナ海、東シナ海における一方的行動を止めるよう呼びかけ、香港、新疆ウィグル自治区における人権状況への深刻な懸念を表明するなどの抑止政策を展開することとなったのは、ひとえに、中国のこれまでの行動があまりにも強権的に過ぎ、力を背景に現状を一方的に変更する行動が許容できないレベルとなってきたことによる。無論、その背景には、米中のパワーバランスが拮抗に向かう現状を放置すれば、経済的にも軍事的にも強大化する中国の行動を変えさせることが現在以上に将来はより難しくなってしまうとのリアリスティックな評価もあろう。しかし、いずれにせよ、日米、QUAD、G7という「自由民主主義陣営」の行動は、中国の行動に対する「反応」、「対処」であることは間違いない。

 

中国がこれをどう受け止め対処していくつもりかが問題である。

 

中国はこれまでのところ、一切方針変更はなく、台湾統一は共産党の歴史的任務であると宣言し、香港・ウィグルについては内政問題として大陸同化政策を進め、先端技術においてはデカップリングに備えて国産化を進め経済技術における自律性を高めるといういわば「米国からの挑戦を受けて立つ」姿勢である。もっとも、日米首脳会談や米韓首脳会談やG7などに対する中国の反応は、割合抑制されたものだったと捉えている。

 

2.中国の自己認識像と世界の評価のギャップ

私が目下一番懸念しているのは、中国の中国自身に対する自己認識が、世界の中国に対する評価とにギャップがあり過ぎることである。その認識ギャップが偶発的なものも含め衝突を招かないか心配になっている。そのような事態を防ぐために、抑止戦略に加え、どこかのタイミングで対中外交を展開する必要があるだろう。

 

7月1日の中国共産党創立100周年の習近平氏の1時間強に及ぶ演説を私はビデオで見た。主要紙の要約は日本の関心事項の視点からの記述であり、中国自身がどう考えているかを正確に理解するためには全部見る必要があると思ったのだ(それでも、7月2日の日経新聞15面の要約はかなり全体像に近い)。

 

演説は1840年のアヘン戦争の屈辱から日中戦争を乗り越え、中国共産党が中国を発展に導いてきたことが縷々述べられている。何度も何度も繰り返されるのは、「中華民族の偉大な復興」というキーワードであり、「中国を救えるのは中国の特色ある社会主義だけ」、「未来を切り開くには中国共産党の強固な指導の堅持が必要」、「中国共産党の指導は、中国の特色ある社会主義の最も本質的な特徴」など、様々な表現で、「中国の特色のある社会主義」の優位性中国共産党の絶対性が強調されている。また、中国共産党政権と中国国民とを区別し、中国国民に訴える手法についても批判している。例えば、以下のように。

 

中国共産党と国民を分割して対立させようとするいかある企ても絶対に思いのままにならない。9500万人以上の中国共産党員も14億を超える中国人民も許さない」

 「中国共産党は、平和、開発、公正、正義、民主、自由という全人類共通の価値観を守る。協力を堅持し、対立をやめ、解放を守る。封鎖をやめ、互恵を守り、ゼロサムゲームを止め、覇権主義と強権主義に反対する。」

 「今日、私達は歴史上のどの時代よりも中華民族の偉大な復興という目標に近づいている」

 「台湾問題を解決し、祖国の完全な統一を実現することは、中国共産党の変わらぬ歴史的任務であり、中華の人々の共通の願いだ。・・・いかなる「台湾独立」のたくらみも断固として粉砕し、・・・いかなる人も中国人民が国家主権と領土を完全にまもるという強い決心、意思、強大な能力を見くびってはならない。」

 「100年前、中華民族が世界の前に示したのは一種の落ちぶれた姿だった。今日、中華民族は世界に向けて活気に満ちた姿を見せ、偉大な復興に向けて阻むことのできない歩みを進めている。」

 「中国共産党は、中華民族の不滅の偉業を志、100年はまさに文才も風采も盛りだ。中国共産党の強い指導があれば、社会主義現代化強国を全面的に建設する目標は必ず実現でき、中華民族の偉大な復興という中国の夢は必ず実現できる。」

 「中国人民はこれまで他国の人民をいじめ、抑圧し、奴隷のようにしたことはない。同時に、中国の人民は、いかなる外部勢力が私達をいじめ、抑圧し、奴隷のようにすることも決して許さない。故意に圧力をかけようとすれば、14億人を超える中国人民の血肉で築かれた『鋼鉄の万里の長城』の前に打ちのめされることになるだろう。」

「中国人民と友好に付き合い、中国の革命建設、改革事業に関心と支持を寄せる各国の人民と友人に心からの謝意を表する。」

 

 そして、演説で一番拍手が大きく、ウォーという歓声が長かったのは、「私達は決して『教師』のような偉そうな説教を受けいれることはできない」、「強国には強軍が必要であり、軍は国を安定させなければならない。党が銃を指揮し、自ら人民の軍隊を建設することは血と火の闘争の中で党が作り出し、破られない心理である」というくだりである。

 

強調されているのは、①党の絶対性、②中国は平和国家であり、「失地回復」をしているだけなのに、落ちぶれつつある米国勢力が中国の発展に嫉妬して、発展を押さえつけるべく中国を虐めている、だから対抗せざるを得ないという防御的な自己認識である。中国が強権的なやり方で周辺国等に対して一方的現状変更を試みているために(南シナ海、東シナ海、借金返済できない場合の被援助国拠点の永久的租借)、これを連携して防御抑止せざるを得ないという「自由主義陣営」の認識とはまるで真逆なのだ。自分が他国に脅威を与えているという認識が決定的に欠けている。だから、習近平国家主席が「憧憬される中国になるために、もっと宣伝活動を充実させよ」的な発言をすることになる。足りないのは「宣伝」ではなく「(一方的強権的行為をやめるという)行動の変化」なのに。

 

 そして、中国は自国が孤立しているとは考えていない。米欧日など一部の国が中国に対抗しようとしているが、多くの国が中国寄りだと考えている。例えば、東南アジア諸国は中国経済圏におり、中国不満を持つ国もあるが、米国陣営といえる国は少ないと考えているだろうし、アフリカ諸国は中国支持でありその他多くの途上国も中国寄りだと考えているだろう。(実際、人権理事会で香港問題が取り上げられた際に問題視した国は26か国だったのに、中国を支持した国は50か国以上いた。)

 

そして、さらに問題なのは、この防御的中国の自己像認識をおそらく14億の中国国民の多くが共有しているということである。この際、もしかして、それは共産党政権中枢が意図的に喧伝したものではないのか否かという点はこの際関係ない。事実として、中国の現在の強硬な姿勢は中国国民のナショナリズムに呼応しているのだ。したがって、中国のやり方が変わることは当面期待できないし、それだけでなく、(偶発的なものも含め)認識ギャップに起因する衝突の可能性があるのではないかということである。

 

3.対中外交

 中国は、日本にとって地理的に近接する巨大な隣国であり、安定的な関係の維持は極めて重要である。深く広範な経済関係と長い交流の歴史があることはもちろんだが、およそ近隣国との関係が不安定なことはどんな国にとっても不利益である。外交安全保障上の負担になるからだ。ましてや日中関係においては日中戦争の過去もあり、こじれた場合の負担はとても大きく長引くものとなるだろう。我が国領土である尖閣諸島は言うまでもなく台湾海峡の平和と安定も我が国の安全保障上重要であり、我が国周辺海域において「有事」が起きないように(起こさせないように)する必要がある。

 

 国家の自己認識というのは一時代遅れてくるものだ。たとえば、客観的に考えれば、日本の国力のピークは1990年代だったのだろうが、その時に書店に並んでいたベストセラーは「小さくてもキラリと光る国日本」だった。日本は自国を小国だと思っていた。そして、今は国力のピークを越えて下り坂にあるのに、「日本凄い」系の本や番組のオンパレードだ。もっとも、最近は、デジタル化の遅れや技術競争力の低下など、コロナの中で益々日本の脆弱な部分が見えてきたこともあり、危機感をもって再興しなければならないという意識も強くなっているが。中国の自己像は複雑だ。自己について過大な自信を持っているのに、被害者意識も持っている。

 

 日本にとり、中国とどのように向き合っていくかが今世紀最大の外交安全保障上の課題である。難しい局面で良い外交を展開するには力の背景は重要である(「力」だけでもダメだが)。特に中国に対しては。まず、有事が起きないように、そして経済安保的観点からの問題が生じないように、政治的な意味においても「抑止力」を高め、防御の体制(プランB)を作った上で、適当なタイミングで、認識ギャップを埋めるべく中国と対話をしていく必要があると思う。というか、認識ギャップを埋めることは多分無理なのだが、認識ギャップが存在することを認識し、そこから生じうるリスクを回避することだけでも意味がある。

 

 

 

 

 

 

 

 

本年1月に発表された「The Longer Telegram; Toward a new American China strategy(より長い電報:米国の新対中政策へ)」という米国の元外交官・政府関係者が書いた匿名論文が話題だ。(https://www.atlanticcouncil.org/content-series/atlantic-council-strategy-paper-series/the-longer-telegram/参照。また、より原文に近いexecutive summary概要について読みたい方は一つ前のブログを参照してもらいたい(「米国の長期的対中戦略「新X論文」の概要」)。)

 

冷戦時の対ソ戦略の「封じ込め」政策の基礎となったと言われるジョージケナンの長電報(the long telegram)、いわゆる「X論文」にちなんで名づけられた対中戦略を論じた非常に長い論文である。筆者は、長らく米国の外交・安全保障に携わってきた者なのだろう。日本ではまだ余り紹介され論じられていないが、米国内、中国、インド、シンガポール他世界各国にて様々な同意や反論が寄せられている。そのことだけでも素晴らしい論文だと思う。良い論文には何か言いたくなるものだ。深く納得する何かがあったり、反論したくなる独自の主張が含まれているということなのだ。

 

自分自身読んでみて、賛同するところが多かったが、疑問に思うところもあった。いずれにせよ、この論文の最大の貢献は、中長期的な対中戦略を策定する必要性を各国に認識させたことにあると考える。今、中国はさらに大きく変貌しようとしている。バイデン政権になった米国は、より冷静に米中のパワーバランスの現状を認識した上で、中国に対するポリシーレビューを行っている。おそらくこの新X論文とそれに関する論争は多いにバイデン政権の対中戦略の影響を及ぼすのではないか(既に及ぼしているようにも感じる?)。

 

 一応ざっくり読み通したが(80頁もある!)、論点について多層的な記述(つまり、あちこちに何度も出てくる)をしているためまどろっこしい(筆者の中では概念的に整理されている)ところもあるので、階層別の記述を無視して、独断と偏見で新X論文のポイントを挙げておく。忘れている部分もあると思うので、また読み直したらいろいろ出てくるかもしれないがご容赦願いたい。

 また、同論文に寄せられた主たる反論ととりあえずの自分の感想も書いておく。いずれにせよ、強烈に、日本として中長期的な対中戦略が必要だと痛感する。この点については何とかしていきたいと思っている。

 

1.新X論文のエッセンス

  気になる点に絞っても以下2.おり相当な分量になるので、非常に端的に新X論文の主旨について書いておくと、

「中国共産党ではなく習近平が強権的拡張主義な中国の問題の本質。したがって、共産党政権打倒ではなく、習近平降板又は習近平に政策をより協調的に変更させることを米国の戦略目標とすべし。そのための手段として、中国内政に習近平に批判的なエリート達(実は一杯いて共産党内では習近平反対派と賛成派で分断されている)に影響を与えるべし。「2013年までの中国」に戻れば米国は中国と協調して共存できる

  実現のための手段として、米国自身の力を回復し、かつ、米国の同盟国・パートナー国と連携して経済的、政治的な中国依存を減らし、軍事的にはレッドラインを明確にして中国の行動を抑止する。これを何十年か続ければ達成される。(なお、その過程の中で、中国人民自身が中国共産党一党独裁体制に疑問を持つ可能性もある。)」

ということだと思う。

 

2.新X論文のポイント

(1)   米国にとっての最大の挑戦は習近平の下で益々権威主義的になる中国の台頭である。今のところ米国にまともな対中戦略はない。今こそ、「習近平の中国」に対する戦略目標(strategic goal)を明確にしたオペレーショナルなレベルまでカバーする超党派で政権交代があっても追及可能な長期的な対中戦略が必要である。(中国の方は対米長期戦略がありしかも一定程度成功してきた。)

(2)    ケナンはソ連の内的矛盾からソ連は自重で崩壊することを前提に戦略を立てたが、中国はそこまで脆弱ではなく、中国の共産党体制が内部崩壊することを前提とすべきではない。ただし、中国の内政のダイナミズムに着目することは必要。

 

(3)中国の内政のダイナミズムに着目し対中戦略は習近平をターゲットとすべし

米国の対中戦略は、中国共産党全体ではなく習近平国家主席に集中する(lazer focused)べきだ。同じく共産党一党独裁であっても、習近平氏の前の5人の指導者たちの下での中国は基本的に現状維持勢力であり、米国とも協調できた。中国が現状変更勢力となったのは習近平氏個人の強権的な政策と毛沢東的思想によるものである。これまでも米国は中国政府と中国人とは区別してきたが、それだけではなく共産党のエリートと習近平とも区別すべきだ。

すなわち、現在、中国共産党のエリートの中でも習近平の広大な野心とリーダーシップについて大いなる異論があり、共産党内には分断がある(divided)。ただ、今や習近平が権力を掌握してしまったため、今は自分や家族の立場や命を怖れている状況にある。このような内在する亀裂線(internal fault line)を利用し、共産党のエリート達に、米国と対抗する秩序を作り上げるよりも米国主導の協調的国際体制の中で行動することが中国にとって国益に最も叶うのであり、領土拡張をしようとしたり中国式の政治モデルを他国に輸出しようとしないことこそ共産党の最善の利益だと結論づけさせることこそを目的とすべきだ。

 

(4)習近平の戦略目標は以下のとおり。

 ・米国を技術力で凌駕する、

 ・ドル覇権を崩す

 ・台湾、南シナ海、東シナ海において米国と同盟国の介入を抑止できるレベルの軍事的能力を備える。習近平は、米国との(軍事)衝突は不可避と考えている。

 ・中国に傾いている国々を中国側に引き寄せる

 ・ロシアとの関係を改善し、米国が中国からロシアを引き離せないようにする。

 ・一帯一路を中国の地政学的影響圏に変えていく。

 ・国際機関における中国の影響力を拡大し、人権や国際海洋法などについて中国にとって都合の悪いアジェンダを中国にとって都合の良いものに変える。

 

(5)米国はアメリカのパワーの4つの根本的な源泉を死守するべきだ。それは、①軍事力、②ドル基軸通貨、③技術力、④自由や公正や法の支配といった価値の力である。

 

(6)同盟国・パートナー国が死活的に重要。米国の強みは多くのまともな同盟国やパートナー国がいることである。中国の同盟国は、北朝鮮、パキスタンなど中国にとって助けになるよりも負担になる国ばかりだ。ただし、ロシアは別。なので、中ロ連携が進まないように米国は米ロ関係を改善すべきだ。

米国は、同盟国と統一的に対中行動を取るべく同盟国との戦略調整を十分行うこと。QUADの強化が重要であるが、特にインドにもう一押し働きかける必要あり。中国は韓国を自陣に取り込もうとしている。ゆえに日韓関係の改善が必要だ。

 

(7)米国は、殆どの国にとって中国が最大の貿易相手国である事実を認識し、同盟国やパ

   ートナー国に対してはパワーバランスの面の貢献だけではなく、彼らの政治経済に渡る広いニーズに対応するべきである。具体的には、米国市場を開放し、ODA含め経済支援も積極的に行うべし。カナダとメキシコを北部米国経済圏として再構築すること。TPPにも復帰すべき。米国一国では中国の経済規模に劣るとしても、こうした自由貿易圏を作れば、米国にとっても同盟国にとっても中国依存を減らし、対中牽制となる。習近平にとっても「結局は経済」(”It’s the economy, stupid.”(※クリントン大統領の名言))。習近平が地位を降りることになりうる最大の要因は安保その他何でもなく、経済での失敗である。

 

(8)ロシアとの関係を改善(rebalance)すること。ロシアが米国に友好的になるとかましてや同盟国となることはあり得ないが、これ以上、露中連携に追いやるべきではない。ロシアは米国の脅威ではない。もっとも、中国もこの点は十分認識しており、米ロ関係が改善する前に中ロ関係を進展させる努力をしている。

 

(9)レッドラインを明示するべし(台湾の武力解放、南シナ海、尖閣諸島の奪取を許さないことを明確に)。「強さを尊敬し弱さを軽蔑する」という中国のリアリスト的戦略文化に留意。習近平は米国との衝突は避けがたいと思っているが、中国は当面の間は、米国との軍事衝突を避けたいと考えている。(米国に負けたりするようなことがあれば共産党体制が揺らぎかねないため。)

 

(10)米国自身の国力の回復強化が必要

・5Gなど経済インフラへの投資、

・テクノロジー、エンジニアリング、STEM教育、大学、科学技術研究への投資

・AIなど先端技術イノベーションにおける米国の優位の維持

・正しい移民政策により、米国の人口が、若年層人口が多く増大し、他の先進国や中国が苦しめられている少子高齢化の問題を回避すること。また、世界の優秀な人材(best and brightest)が米国に留学に来続けること。

・財政悪化の方向を正すこと。

・社会の分断の改善

・孤立主義ではなく国際協調体制の維持拡大していくことについて米国自身が政治的決意を固くもつこと(political resolve)。

 

(11)戦略的協力を継続する分野(中国の入った核軍縮枠組み策定、宇宙・サイバーについての二国間条約策定、気候変動、グローバル感染症、北朝鮮の非核化)を明確にすること。

 

(12)思想(Idea)の競争における勝利、すなわち自由で民主的な価値や国際協調体制についての世界的信任を取り戻すこと。

 

(13)長期的には、中国人民が共産党の唱える世紀の題目(中国文明は永遠に強権的な将来にある)に疑問を持つようになる可能性は十分ある。が、それは中国人民が選択することである。他方、米国の今後数十年の戦略は、中国共産党指導層に今後の戦略的方向性を変更させることにある。そのためには、米国自身が自信を取り戻すことが必要である。米国民がこれからの世紀においても米国がグローバルなリーダーシップを発揮する能力があることについての信念を取り戻すことが必要であり、その過程で、同盟国や友人が米国に対する信頼を取り戻すことが重要である。

 

2.主たる反論

  新X論文に賛同する声がある一方で、多くの反論もある。典型的な論点は以下のとおり。最も多いのは、習近平氏個人に集中することという新X論文の核心についての異論のようだ。筆者も最初から反論がこの点に集中することは予想した上で執筆したようだ。

 

(1)   習近平個人をターゲットにすることは無意味である。なぜなら、習近平前の中国の指導者たちも習近平と同じ考えを持っていたわけで、米中の緊張関係は前任者たちのときからあった。習近平が降板したとしても中国の問題はなくならない。(Paul Heer他)

 

(2)   習近平への集中は中国の反発を呼びエスカレーションを招く。

 

(3)   習近平以外の中国のエリートの考えをどのようにして変更させるのか。米国は中国の内政に影響を及ぼすことに成功したことがないではないか。(Daniel Larison)

 

(4)   新X論文は余りにも中国脅威論に偏っている。中国はさほど野心家ではない。世界覇権を狙ってはいないし、領土拡張主義者でもない。既存の秩序を壊す気もない。中華の強権的世界秩序を築くことなど到底無理でそのような目標を追求することは中国にとって有害無益とわかっている。(Daniel Larison)

 

(5)   米国が世界のリーダーに再びなろうというのは無理。そんな力はないのであって、現実を受け入れて普通の国になるべきだ。トランプ政権下で随分信用を無くしたこともある。(Daniel Larison, Martin Wolf)

 

(6)ロシアと接近なんてとんでもない。

 

3.とりあえずの感想

(1)   新X論文の提案する「米国がなすべきこと」にはほぼ全て同意する。米国が米国自身の国力を上げることも、同盟国との連携進化拡大も、台湾の軍事侵攻や南シナ海、尖閣に対する軍事行動などレッドラインを定めることも重要だと思う。TPPに復帰したり北米経済連携を再構築したりと安心の経済枠組みを作ることも賛同する。ロシアについては異論もあるようだが、ロシアをこれ以上中国寄りにおいやらないため、ロシアとの関係改善を行うべきことも同感だ。おそらく反論している論者たちもさほど異論はないのではないか。

 

(2)   「新X論文」の肝である、習近平への「全集中」については、習近平国家主席が中国の強硬路線に大きく影響していることは疑いなく、したがって、習近平主席が降板すれば、中国がより穏当になる可能性は高いと思うので、その意味で同意できるものの、鄧小平や胡錦涛は現状維持勢力であったので、そこに戻すことを目標とするというのは、少々ナイーブではないか。日本はその当時でも尖閣諸島に対する圧迫を受けていたし、南シナ海が埋め立てられたのは習近平時代よりずっと前にさかのぼる。

 

(3)   もっといえば、「一見良い子になった中国」は、欧州の警戒を解き、ゆれる東南アジアを取り込み、米国とも上手くやって、対中警戒勢力に「邪魔」されることなく経済的にも技術的にも軍事的にも拡大し、現在の体制を維持したまま、より強大な存在となることだろう。その時は、本当の中国の世紀がくるのかもしれない。それが幸せなことなのかどうか、その時に共産党一党独裁のままの中国が同時に真の意味で自由で開かれた世界を愛し、近隣国の領土に対する野心を放棄した存在となっているのかどうか。中国が真の変化ではなく「トウコウヨカイ」に戻っただけの状態なら、却って、力を結集できる素地のある現状よりもより巧妙に悪化する可能性だってある。

 

(4)   いずれにせよ、中国は、100年マラソンともいうべき長らくの戦略に基づき行動しているとしたら、我々の側が即時的反応をするだけでは対処できないことは明らかだ。中国のような何十年にわたる戦略を持つことは民主主義国には難しい面があるが、「自由主義陣営側」が長期的な対中戦略を持とうという試みは必要なことだと思う。日本は中国と一衣帯水にある。安定し平和な中での中国との共存を願っている。残念ながら、現在、その状況は様々な中国の領土拡張的行動、人権を無視した行動により損なわれている。日本自身、日本としての対中長期戦略が今以上に必要な時はないと思う。新X論文とその世界的論争は、日本が長期の対中戦略を練る上で良い視座を提供してくれている。取り急ぎ。