いよいよ先週金曜日から衆議院で予算委員会が始まりました。今週は参議院で予算委員会が始まります。ところで、今般、副幹事長に就任し、前より国会や党の仕事の流れを意識する立場になりました。10月20日から始まったこの秋の臨時国会の目玉は、経済対策を国民の皆様にお届けする補正予算です。会期は12月13日までです。臨時というけれど、臨時国会がなかった年を私自身は経験したことがありません。知ってるよ~という方も多いとは思いますが、自分の頭の整理も兼ねて、この臨時国会の流れをざっくり書いてみようかと。

1)臨時国会も、まず、天皇陛下御臨席の下で、開会式が行われます。それに先立ち、本会議における議席や所属委員会の確定などが行われます。

2)開会式を終えると、本会議での総理の所信表明演説です。で、その次の本会議にて所信表明に対する各党からの代表質問があります。

3)代表質問が終わると、予算委員会となります。現在ココにいます(今日は、衆議院予算委員会2日目です)。

 衆、参の順番で予算委員会がNHKのテレビ入りで(今回は2日ずつ)行われます。予算委員会ではありとあらゆることが取り上げられます。予算に係ることもあれば、閣僚のスキャンダルもあればという感じです。「『予算』は全てに関係する」という理屈であろうと思います。そして、TV中継される予算委員会は、総理以下全閣僚出席が原則です。全閣僚がいるので、なんでも質問しても答えられるはず、ということですね。

 TV入りなので、ここで質問すれば、選挙区の皆様に頑張っている姿を見ていただける良い機会になりますし、政府の政策に与える影響も大きいということで、質問者の力が入ります。

4)予算委員会が終わると、各常任委員会(たとえば、外交防衛委員会、経済産業委員会、厚生労働委員会、など)や特別委員会(消費者に関する特別委員会、ODA、沖縄・北海道についての特別委員会など)が始まります。各委員会において、まず、所管大臣の所信を聴き、質疑をした上で、関連法案などが審議され、法案であれば採決されます。今国会の進み具合から想定すると、多分、11月6日の週からですね。
 

 予算委員会をやってから常任委員会を始めるのは慣例だと思いますが、予算委員会で全体的なことをやってから、省庁ごとに所管が分かれている各委員会でより深く審議をするということかと。
 

 委員会で採決が終わった法案は順次本会議に送られ本会議で採決されます。本会議で可決されれば(全会一致又は過半数で可決)、法案が成立します。

6)今国会では補正予算のほかにも、人事院勧告を踏まえた給与法など、審議すべき閣法があります。会期は限られていますから、11月末までに補正予算を成立させることを目指すことになるのではないでしょうか。、なかなかタイトな日程です。補正予算案は、自民党・公明党がまとめ、総理に申入れをした経済対策の案を受けて政府が11月初旬頃に経済対策案を確定させ、それを基に関係省庁が具体的数値の入った補正予算案を作ります。11月中旬頃には補正予算案ができあがることが見込まれます。補正予算案ができあがれば、国会審議です。衆参の本会議での財政演説と質疑の後、衆議院の予算委員会で審議の上可決され、衆議院の本会議で可決されたら、参議院に審議の舞台が移ります。参議院の予算委員会で審議・可決されたら参議院の本会議で可決され、補正予算案が成立します。

 

 経済対策の裏付けとなる補正予算を一刻も早く成立させ、経済対策を実施していくことが国民の皆様の暮らしのために大事だと思うところです。

 それから、①諸外国と比べて長すぎる総理と閣僚(特に、外務大臣)の国会時間の問題、②答弁通告が遅かったり多すぎたりするために官僚に無駄な残業やブラックな働き方をさせている問題など、国会の改革も是非進めるべきと思いますが、また別途書きます。

 

 

みなさま、こんばんは。

 

 今日10月20日から臨時国会が始まりました。12月13日までの予定です。

朝の議員団総会で久々に参議院自民党議員が集まりました。私は引き続き外交防衛委員会に所属します。また、党では、副幹事長、国防部会長代理などに就任しました。課題山積ですが、誠心誠意取り組んでまいります。

 

 また、自衛隊殉職隊員追悼式の事前献花に行ってまいりました。国家国民を守るため日々我が身の危険を顧みず任務を全うし、その中で殉職された自衛隊員の方々に心からの感謝と哀悼の誠を捧げます。

 

 さて、ロシアによるウクライナ侵略、米中対立の中で深まる台湾をめぐる緊張だけでも大変なのに(北朝鮮の核ミサイルも)、中東も危険な状態になってきました。中ロ連携、北朝鮮のロシア接近など、日本周辺の安全保障環境は大変厳しくなっています。日本自身が強くなること、そして多くの仲間を作ること、そして、中国とも首脳レベルはじめ直接意思疎通することなど、本当にやるべきことが山積しています。

 

 ハマスによるイスラエルに対するテロ攻撃は、イスラエルにとっての「9.11」であり、イスラエルが自国を守るための措置を取るのことは当然です。ただ、ハマスを排除せんとする過程でガザの無辜のパレスチナの民間人が犠牲になることは避けなければなりません。その意味で、ガザの病院「爆破」で500名もの人々が犠牲となったことは、この「紛争」を局地的に封じ込めることができるかどうかに大きな悪影響を及ぼしています(ハマスは国家主体ではないので「紛争」と鍵括弧をつけておきます)。病院「爆破」がどの主体の仕業かについては確たることはわかっていませんが(個人的には、イスラエルが攻撃することは全くイスラエルの利益に反するのでイスラエルが意図的にやることはあり得ないと思いますが)、結果として、多くのアラブ諸国がイスラエルに対する反感を強めることとなってしまいました。隣接するレバノンのヒズボラがイスラエルを攻撃する可能性も出てきましたし、イランも「看過できない」旨述べています。

 

 とはいえ、本当は、サウジもイランも米国も、関係する大国達は誰もこの「紛争」が拡大することを望んでいないでしょう。(米国の力が中東に割かれて自国に向けられるエネルギーが低下することを望むロシアや中国は別かもしれませんがが。)それでも、望んでいないのに戦争に引きずり込まれることはあり得るというのが歴史の教訓です。だからこそ、今こそ、この「紛争」が拡大しないように封じ込めるためのあらゆる国際的外交努力がなされなければなりません。実際、米国をはじめ活発に関係国に自制を求める外交を展開しています。

 

 ハマスがこのタイミングでイスラエルを大規模攻撃したのは、イスラエルとサウジの和解が進み、「パレスチナ問題」が置き去りにされることを恐れたためだと思いますが、ハマスもイスラエル相手にここまで「戦果」が大きくなることはもしかしたら予想外だったのではないか、とも思います。

 

 ともあれ、結果的に、①サウジとイスラエルの関係改善の流れは大きく水をさされましたし、②「パレスチナ問題」は置き去りにできない、ということをはっきりさせたという意味では、ハマスは目的を達成したのかもしれません。

 

 と、同時に、米国が中東関与を弱める中で起きていた中東における地殻変動、すなわち、イスラエルとサウジの関係改善の流れも中長期的視点でみれば実は変わらないのではないかとも思います。石油依存を脱したいサウジにとっても技術先進国のイスラエルとの関係改善は望ましいことでしょう。ただ、その流れを変える変数は、イスラエルが当然の権利としてではあるもののハマス排除の過程で図らずも余りにも多くの犠牲をパレスチナ人に生じさせた時には、この流れをふっとばしてしまうのではないかと懸念します。そして、ガザは余りにも人口密集地帯過ぎて、大規模な地上戦をすれば、民間人に多くの犠牲が出がちな状況。早く国外に避難してもらった方が良いが、周辺国(エジプト)もそう簡単に門を開けられない。イスラエルにとっても、アラブ諸国もイランやレバノンも敵に回すことになり、結果的にイスラエルにとって環境悪化を招くことになります。

 

 イスラエルにとっても、無辜のパレスチナ人にとっても、世界にとってもこの紛争の拡大は何としても避けなければならないと思います。また、できるだけ短期間で収束させる必要があります。長期化すれば、「泥沼」となり予想しなかったことが起き、望まなくとも関係国が巻き込まれて紛争が拡大する危険が増してしまいます(たとえばヒズボラが発射したミサイルが予想外に大きなダメージをイスラエルに与え、イスラエルに米国がより深く加担せざるを得なくなれば、イランも黙っていないかもしれない。)

 そして、既に兆候が見え始めていますが、中国とロシアは、ハマス側(パレスチナ側)に置き、今回の件を「米国の中東政策の失敗」、「欧米の横暴」として喧伝し、グローバルサウスや途上国に訴求し、国際的な立ち位置を有利にしようとしています。

 

 日本にとっても、人道的な意味で、イスラエルの人々もパレスチナの人々にも犠牲が出て欲しくないということのみならず、米国のエネルギーがロシアのみならず中東にも割かれる事態は、インド太平洋、特に東アジアに注力してもらいたい日本にとって、国益にマイナスな事態です。東アジアに力の空白ができれば、台湾有事も誘発しかねません。

 また、湾岸諸国にはまだ影響がないとはいえ、中東情勢がさらに不安定となれば石油価格も高騰するかもしれません。日本政府には、イスラエルにいる邦人救出、さらに、中東について日本ができることは限られているかもしれませんが、G7議長国としても、なんとかこの「紛争」が拡大しないよう最大限の外交努力をお願いしたいと思いますし、人道的な支援もやるべきだと思います。まずは、邦人保護に万全を期さねばなりません。なお、国外退避のため、韓国軍機が日本人51人を輸送し、日本の自衛隊機が韓国人18人輸送しました。日韓関係改善の表れだと思います。

 

 日本についていえば、日本の戦後の矛盾が一気に吹き出てくる時が来ている気がしています。この10年でその矛盾、安倍総理が「戦後レジームからの脱却」と呼んだもの、から、脱皮して、もう一度挑戦する時が来ていると感じています。

 10月2日に、今回の自民党女性局海外研修についてブログさせて頂きました。軽率な写真投稿については率直に改めてお詫びするとともに、国民の皆様に対し、「私から」説明すべきと考える点についてはご説明させて頂きました。

 

 他方、これまでネットやメディアからは「報告書はどうなった」という声が大きかったので、併せて「党の研修としての公式報告書の顛末」及び「私自身の研修所感(3歳からの幼児教育の義務教育化)」についても記載したのですが、後者についてはこれまでのところ全く報道頂いていませんし、おそらく、長過ぎる上、全てを一緒くたにして投稿したのでわかりにくかったのではないかと思います。

 ですので、私自身の所感部分については、ここに分けて改めて投稿しておくことにしました(10月2日のブログと同じです)。従来から関心を持っていた「3歳からの幼児教育の義務教育化」(去年アップしたyoutube3歳からの幼児教育を「義務教育」に - YouTube 参照)は、日本にとっても有益な政策と確信できましたので、今後とも追求していきたいと考えています。皆様にも関心をもっていただけたら嬉しいです。

 なお、公式の研修報告書については、通例どおり、女性局長として事務局と共に報告書案を作成し、9月上旬に既に党本部に提出済みです。

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 7月25日、自民党・女性局の海外研修団員は、フランス国民教育・青少年省 学校教育総局幼稚園・小学校課次長からフランスが3歳からの幼児教育を義務教育化したことについての説明を受け意見交換を行いました。2019年にフランスが3歳からの義務教育化を導入した時からの担当者とのことであり、どのような経緯と考え方に基づいて導入を決めたか、その際の困難、現在の評価や今後の方向性について詳しく教えてもらうことができました。1時間弱の説明の後、質疑応答が30分ほどあり、時間切れとなった点については後日先方から回答を頂きました。

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 フランスの「3歳からの幼児教育の義務教育化」の経緯と成果と我が国への示唆

                                         

                          令和5年9月13日

                            松川るい                                  

 

1.フランス側説明の要点(詳細は(参考)参照)

(1)経緯と目的

フランスでは、2019年に教育基本法を改正し、義務教育の開始年齢を3歳とし、その幼児教育では、➀国語(語彙力を含む)と②算数(数的概念)を重視している。これにより、学力格差が是正され、小学校以降のドロップアウトが減少し、教育水準自体が向上する傾向が表れ始めている。

学力格差の是正はフランスの国是たる「平等性(égalité)」に基づく政策である。背景には、地域による教育格差がある。社会的・経済的な背景から、子どもの学力格差が深刻な地域を「優先教育地域」に指定し、教員数を他地域より増やすなど重点的支援を行っている。

 

(2)成果と課題

3歳からの義務教育化導入から4年の段階であるが、学習能力の向上、地域教育格差の是正の効果が見られつつある。義務教育化導入当初は、家庭の理解、地方自治体の予算措置、教員育成などに課題があったが、現在はほぼ克服されている。

 

(3)特徴

(イ)幼児教育において重視しているのは、①国語(語彙力含む)と②算数(数的概念)。

(ロ)子ども1人当たりの教員数が多い(教員1人当たり22.7人の子どもを見る。)。特に、2017年に小1、2年生、2020年に優先教育地域の年長クラスの教員数を倍増した(最大でも1人の教員あたりの子どもの数は14人)。

(ハ)幼児学校の教員は、全員小学校教員の資格を持っている。

(ニ)教員に対する教育・研修が手厚い。教員向けガイドラインやカリキュラムが充実している。

(ホ)教員は教育に専念できるようになっている。お昼寝など「教育以外のこと」は自治体職員等が担当。

(へ)週4~4.5日。8時半から16時半である(3歳児については家庭の要請で時間調整可)。

(ト)3歳の入学時までにトイレトレーニングは終えている。

(チ)データに基づき効果測定とカリキュラムのアップデートをきめ細かく行っている。幼児学校の1年生から(年少)、国語と算数について毎年学習到達度調査を行っている。

 

(4)組織・予算

国民教育・青少年省が義務教育を担当し、2歳以下の幼児は保健・予防省が担当。人件費は国の予算、施設維持・物的資源調達は地方自治体の予算である。

 

2.我が国にとっての示唆・感想

(1)私自身、以前から「3歳からの幼児教育の義務教育化」には関心があり、これまでも有志勉強会を開いたり、昨年の参議院選挙においても自分自身が追求していきたい政策として掲げた。

 私が、幼児教育に関心を持ったのは、政治家になる遥か前、まだ、外務省員の時に、初めての我が子を保育園に預けた時に感じたことにある。とても新しい設備で責任感溢れる先生方に恵まれた素晴らしい保育園に1歳半から娘を預けることができとてもラッキーだった。朝の8時から夜の8時まで、一日の殆どを我が子はその保育園で過ごす。なので、さすがに5歳になって、「壁にひらがな表ぐらい貼ってもらえませんか。」と先生にお願いした時に、「保育園ではそういうことは致しません。」と言われた時に、これでいいのかと思ったことが最初のきっかけだ(注:幼稚園、保育園、こども園などの形態に関わらず、様々な取り組みをされている園がありますので、これは私の個人的経験であるということはご理解下さい。)。

 今や日本の女性の7割は外で働いており、「共働き世帯」が大半なのだから、子ども達が一番長い時間を過ごす保育園なり幼稚園なりで質の高い幼児教育が提供されることは、何より子どもたち自身にとっての利益であり、日本の親達にとっての切実な願いだと思う。

 今般、直接、導入時からの担当者からフランスの3歳からの義務教育化について詳しく話をお伺いすることができ、改めて、幼児教育の重要性と義務教育化の意義について感じるところがあった。

 

(2)フランスでは、3歳からの幼児教育を義務教育化した結果、教育格差是正の効果(小学校以降におけるドロップアウトが減る、学力格差の縮小)、教育水準の向上の成果が見えつつあるとのことであり、日本でも導入を検討する価値があると考える。

 もちろん、フランスと日本の状況は同じではない。(たとえば、フランスは人口の約10%が移民。)しかし、家庭の経済格差や教育意識の格差、時間の格差(例えば、シングルマザーやシングルファーザーは子どもに相対する時間が相対的に少なくならざるを得ない)が拡大傾向にあること、また、保育園にも幼稚園にも通わせてもらっていない3%の子どもたちのことを考えれば、どのような家庭に生まれても自分の人生を切り開く力を子どもに与えるためには、質の高い幼児教育を「全ての」子どもに提供するためには、「義務教育化」は一つの有効な解決策だと考える。

 ヘックマン米シカゴ大学教授(2000年にノーベル経済学賞受賞)の研究を筆頭に、OECDにおける調査などでも、6歳までの幼児教育が、子どもの将来の成功に極めて重要であり、かつ費用対効果が最も高い(小中、高等教育と比べて)ことは既に広く明らかにされているところである。

 日本でも97%の子どもは3歳時点で保育園か幼稚園に通っているが、保育・教育の内容や質は園によってバラバラであり、また、高等教育までつながる教育課程の一貫として必ずしも位置づけられていない。

2019年の義務教育化導入時、フランスも日本同様3歳時点で97%の子どもは何等かの施設には通っていたが、教育の質の向上、教育格差の是正、補足できない3%の子どもを取りこぼさないために義務教育化に踏み切ったとのこと(現在、99.8%の子どもは幼児学校に通っている)。

 義務教育化すれば、まず家庭の金銭的負担はゼロとなり(既に日本でも基本無償化されているが)、待機児童問題も生じる余地がなく(国が「幼児教育学校」を全児童に確保する義務が生じるので)、何より、数的概念と国語力(語彙含め)の教育を含む「教育の質」が全国的に義務的に確保される。

 

(3)日本では、語彙習得については日本の幼稚園や保育園などでも一定程度行っているところはあるものの、算数(数的概念)を幼児期から教えることは余り行われていない。国語と数的概念を幼児期から教えることの重要性については、日本としても多いに参考とすべきと考える。フランスは、国語と算数(数的概念)を幼児期に教えることの重要性を調査研究によって明らかにした結果、そのような政策をとることとした由。自分自身、感覚的に国語と数的概念は幼児期の出来るだけ早い段階から教えた方が良いのではないかと感じてきたが、フランスが調査研究の上でその結論に至って実際に取り組んでいることは多いに参考となった。

 日本においても、令和4年度から始めた「幼保小の架け橋プログラム」など、質の高い学びを全ての子どもに提供しようという取り組みが行われつつあることは評価しているし、19の自治体のモデル事業だが、自治体がそれぞれ独自に作るカリキュラムの中には数的概念や理科的要素を取り入れているところもある由。今後に期待しているが、この取り組みの先には、もしかしたら、3歳からの幼児教育の義務教育化、5歳からの小学校開始といったこともあって良いように思う。

 

(4)効果測定には学力テストはじめ客観的なデータやエビデンスを集め、それを参考に適時に軌道修正する仕組みが設けられているという手法論についても学ぶべきところが多い。エピソードではなく、データに基づく教育政策は今後の日本の課題だろう。

この点については、日本も、文科省が、来年度に向けての新たな試みとして、幼児教育に関して、大規模な縦断調査事業(5歳児を対象にした1万5千人の追跡調査。できれば18歳までフォローを想定。)を開始しようと考えているとのことであり、これは応援していかねばと考えている。

 

(5)幼児学校の先生は、子どもに対する教育に専念し、たとえば、お昼寝の時間の管理・見守りは自治体職員が行うなど、先生が教育に専念できる仕組みができている点は我が国も是非見習って(自治体レベルではなく)国レベルで実現すべきだと思う。日本の幼稚園、保育園の先生たちは雑用含め何もかもを引き受けており、本来、子どもに対して集中すべき時間が奪われている。先生が教育や子どもとの向き合いに全精力を集中できるようにし、幼児学校の先生の「社会的地位の向上」を図れば(給与水準の引き揚げも必要だろうが)、よりよい人材が幼児教育の先生となるようになる。

 

(6)フランスでは、3歳の幼児学校の入学時点でおむつが取れていることが前提となるため、2歳までに保育施設他でおむつを取り、トイレトレーニングを終えておくこととなっているとのこと。(0~2歳までが保育施設、3歳からは幼児学校)これは、子どもにとっても親にとっても保育施設にとっても目標があって良いことだと思う。

 

(7)親に負担をかけない保育園(0歳から2歳)の在り方についても多いに参考にして国が主導して全国的に導入するべき(おむつ持参不要など)。毎日おむつの一つ一つに名前を書くといった負担を親にかけるのではなく、フランスのように、おむつは保育園にどっさりおいておき園児は誰でも使えるようにする方が良いのではないか。その他、フランスの少子化対策や親の負担が少ない保育・幼児教育の有り様の背景には、「子どもは社会に必要 → 子どもの第一養育者は親 → 子育ては大変、親だけではできない → 親を助けるために社会が頑張る」という思想が根付いていることだそうだ。

少子化に苦しむ日本としても、政府は、今般の少子化対策において、孤独な育児ではなく、社会全体で子どもを育てようという姿勢を打ち出したところであるが、個別の政策もさることながら、こうした考えを根付かせていくことが必要だと考える。

最後に、この「3歳からの幼児教育の義務教育化」のセッションのみならず、政治や経済分野における女性参画についての女性議員との意見交換などにおいても感じたところだが、フランスという国が「平等性・正当性」に非常に強い拘りを持っている国であることがこうしたあらゆる施策の背景哲学としてあることも強い印象を受けた。

 

                                                  (了)

 

 

 

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(参考)

          フランス教育省からの「3歳からの幼児教育の義務教育化」についての説明概要

                                             

1.背景

 3歳からの幼児教育を導入した背景には、教育格差が広がる中でいかにして社会的な平等性や正当性を確保していくかが大きな課題となっていたことがある。

 フランスでは、教員1 人につき 22.7 人の子どもを担当している。また、児童の20%が「優先教育地域」にある学校に通っている。「優先教育地域」というのは、国として教育水準向上のため特に強化した手段を講じている地域のこと(※社会的・経済的な背景から、在住する子どもの学力格差が深刻な地域と思われる)。

 1 人当たりの教員が面倒を見る子どもの数は、国際水準よりも少ない。2017年に、特に、小学校 1 年生と2 年生の教員の数を 2 倍に増やし、2020 年には、優先教育地域における幼稚園の年長クラスの教員の数を2倍に増やした。優先教育地域では、1 学級あたりの児童数は最大 14 人でそれより少ないところもある。

 

2.フランスの幼児教育の歴史

 フランスにおける幼児教育は、1833 年に先駆的な存在として 「salles d’asile 避難学級」が誕生した。幼稚園として確立したのが 1881 年。約100年後の1986 年に学習到達度の目標や科目リスト、習得すべき能力を定めたカリキュラムと学習分野や指導方法などが明記された学習指導要綱ができた。義務教育化に至るまでそこから40年かかったのは、カリキュラムができて まだ40 年と歴史が浅く、教員がカリキュラムのロジックを身につける時間と幼児の発達に合わせた教育方法を身に着けることが必要だったためである。

 

3.経緯・目的

 フランスでは、2019 年に教育基本法を改正し、義務教育の開始年齢を6 歳から 3 歳に引き下げた。その目的は2つあり、第一に、全ての人が学校教育で成功を収められるようにすること、どの児童も教育でドロップアウトしないようにすること、第二に、子ども個人の発達を尊重することである。

 3 歳の子ども達はまだ小さいので家族の要請があった場合は、就学時間週 24 時間を減らすなどの調整を許すなどの特例が認められている。また、2023年の教育省通達で、教員達の育成のアップデートも行われた。言語や算数といった基本的な科目についての教育論的なアドバイスや訓練を行うことや幼児の発育度に応じた知識のアップデートである。また、従来は、「科目の学習」と「発育に関する知識」を区別して教員に習得させていたが、2つの面をリンクさせて総合的に習得する形での教員育成を行うこととなった。

 

 先ほど、松川氏より、3歳時点で日本では保育園又は幼稚園に通う子どもの割合が 97%というお話があったが(当方より、冒頭、日本の状況を説明)、フランスでも、2019 年当時は、やはり97%くらいであった。ただ地域格差があり、県によって100%のところもあれば、それよりずっと低い通園率の所もあった。通園率が低いとやはり学習到達度が低い。小学校に上がってからドロップアウトしてしまう児童の経歴を見ると幼稚園の年少時から勉強についていけなかったということが判明している。特に、優先教育地域においては通園率が低く、学習到達度も低かったため、義務教育化の措置が必要となった。特に、児童の学習例を見ると、最も学習困難の原因となる科目として国語、算数が顕著であった。

 

 こうした実情を踏まえ、教育省として、義務教育化をきっかけに2つの措置を行うこととした。一つは、全国的な学習到達度評価を毎年行うようになった。これは 2018 年以前にはなかったもので、幼稚園年少の第一学年が終わった段階から学習到達度調査を行っている。幼稚園のカリキュラム全体について行われているものではなく、国語・算数についてのみ行っている。これにより各段階での学習到達度の定量化が可能になった

 

 2つ目は、幼稚園などの教員向けのガイドライン策定である。教育省の中には学術評議会という組織があり、その評議会に様々な教育科目、分野の専門家・研究者を集め、教員向けのガイドラインを策定している。その中でまず最初に作ったのが、「『語彙の習得』に関するガイドライン」、次に「『読み書き』に関するガイドライン」、そして、「『数の概念、算数の初歩的な概念』に関するガイドライン」である。

 これらガイドラインにより、教育者側にとって教えるべき項目は明らかになっている。そして、それをどのように教えるべきかという「方法論」を習得するためのリソースを教育省はインターネット上で提供している。特にキャリアをスタートさせて間もない教員、あるいは教員の契約を学校に得ていなかったために初期研修を受けていない教員に対して幼稚園児童という特殊な対象に対する教え方を特別に補助するようにしている。

フランスの幼稚園の教員は小学校の教員と同じ資格を持っていてまったく同じ科目を教 える能力を習得している。その上で、幼児と言う特別な年齢層に対する教育方法を身に着けている。毎年、政策評価に基づいて教員に対する教育プログラムは微調整しており、特にばらつきのある教育受益者たちに対する対応についてきめ細かな調整が行われている。

 

4.成果

 せっかく2019年に義務教育化に踏み切ったものの、その後コロナが起きてしまい、フランスは学級閉鎖期間が他の国に比べて短かったとはいえ、やはり通学させるのを躊躇する両親がおり、すぐには定着しなかった。それでも 2020 年の幼稚園就学率を見ると 99.8%と改善している。それから優先教育地域とそうでない地域の児童の学習到達度を見ると、差はまだあるとはいえ、その格差が横ばいに落ち着いているということが分かっている。もちろんコロナ禍では学習能力が落ちるペースは優先教育地域の方が早かったとはいえ、収束して以降、優先教育地域の遅れが挽回され、今では優先教育地域とそうではない地域の差を抑えることができた

 そして小学校の入学時の学習能力調査を今行っているが、2022 年に小学校に入学した子どもたちというのは、3 歳からの幼児教育が義務化されてから初めての世代の子どもたちとなり、我々にとっては調査対象として興味深い対象である。小学校入学時の調査は 12 項目にわたって行われるが、12 項目中 10 項目について改善が見られており、手ごたえを感じている。

 

5.義務教育化導入時の課題と解決

(3 歳からの義務教育化に関しての障害あるいは難しかった点という質問に対し)

 第一は、家族と学校との間の軋轢である。これは特に両親が就学経験のない場合、学校に対するイメージが通常のイメージと異なるために通学することを躊躇するような場合があった。

母親が幼児についての教育を担っている中で一日に6 時間も低年齢の子どもを学校に通わせることへの抵抗感、あるいはそれが全くできないような拒否感があったというのが一番の障害だった。

第2に、これは特定の地域に関する問題で全国的なものではないが、雇用に関する問題が挙げられる。3 歳から義務教育化することにより、それまで学校が無かった午後に自宅に預かって幼児の面倒を見ていた「認定保育ママ」の仕事がなくなってしまうということが挙げられる。幼稚園の多い都市部ではそうした問題はなかったが、特に、アルザスあるいはニース周辺の南仏の地域において認定保育ママの雇用が減るという問題があった。

  第 3 として、特定の地域パリやアルザス地方においては幼稚園にならぶ託児所というものがあり、そこでの教員たちを育成する必要が出てきた。これについては、託児所を学校の一部に併設する、教育省に申請してそれまで託児所で子どもたちを世話していた人が教員の資格を取ることまでフォローアップするというやり方と、学校に補完的な施設として託児所を設け、3~6 歳までの子どもの世話をするという2つのやり方で解決した。

 第4点は、自治体の不安である。幼稚園小学校を管轄している自治体の市町村長から、それまで就学していなかった児童を受け入れるだけの物理的手段・キャパシティはどうなるのか不安の声があったが、それは国が補助・支援したことで今は解消されている。

 第5点目は、仏領ギアナやマヨットといった地理的に離れた海外領土である。本土と全く違う多様な文化や言語があるので、特に言語学習の面において、特別の配慮が必要になる。特にマヨットなどでは小学校に入学する児童の大半がフランス語を話さないという問題があり、これが 全国的な学習到達度にインパクトを与えている。来年からは仏領ギアナとマヨットに特化した特別の対策を実施することになっている。

 こういった海外県・海外領土においては、市町村が学校として使用するための建物を持っていない、そして就学時間が長くなった分受け入れるだけの建物がないという問題もあるので、そこも併せて来年から対策を練って実施していく。

こうした課題の解決策として、特に両親と学校との間の誤解については、幼児受け入れ施設を管理している社会結束省と共同でこの対策を行っている。

  特に自治体の職員に対して様々な形態の幼児受け入れ施設があり、どういったパートナーシップを施設間で結べばいいのか、特に現場の現実に即した形で対応するためにはどういったパートナーシップが可能なのかというアドバイスを行うということがある。もう一つは、法律を策定する前にすでにあったことだが、色々な障害に優先度をつけながら対応していく中で、保育所といった施設において幼稚園や小学校に関する間違った印象を払拭する働き掛けも行っている。

 

6.幼児教育義務化関連予算

 そして予算については、幼稚園からの義務教育の無料の原則というのを確保するための予算構造として、基礎自治体 である市町村については幼稚園の学舎のメンテナンスが義務付けられている。必要とされる物的資源の調達についても自治体の権限・義務ということになっている。国の役割は、公立の学校における教員の人件費、これは広義の教員ということになるので、 校長先生や特別の資格を持つ教員や障害を持った子どもたちの補助要員を含め、公立学校における人件費はすべて国の負担ということになっている。家庭側が支払うべき支出は全くない。

 

7.質疑応答から関心ある部分を抜粋

 (1)通学時間

 学校の時間は、市町村によって異なるが、大体週 4 日間あるいは週 4.5 日間で朝は 8 時半から 11 時半まで、午後は 13 時半から 16 時半までというのが一般的な通学時間である。お昼寝については、お昼 1 時間の時間を取って昼食を済ませた後にお昼寝の時間があるが、これが学習時間に重なってしまったり延長されてしまったりすることがあるので、それを避けるためにもお昼寝の時間については自治体の職員が子どもたちを見てそのあと再び学習時間になると教員が戻ってくることになっている。

 オムツ等、幼児ならではの課題について、全員トイレに行くという訓練を受けているので、トイレに行けない子どもについては特別にフォローアップが必要だが、基本的には3歳で幼児学校に入学する際には既にみんなトイレに行けることになっている。

 

(2)学習と遊びとのバランスについて

 学習方法については 4 つの学習方法というのがプログラムの中で定められている。すなわち➀遊びを通じて学ぶということ。これは特定のエレメントについて遊びを通じて学 習すべきことが定められている。そして②問題解決をしながら学ぶこともやはり遊戯などを通じて楽しい形で問題解決をしていく。③学習方法は演習をしながら学ぶということ。④記憶をしながら学ぶということ。もちろん 4 つの学習方法は対象とする子どもたちによって割合は違ってくるが、この 4つの学習プログラムが定められている。

 

(3)小学校入学時に重要な点

 小学校入学時の成功と失敗を分ける要素として第一に語彙の学習能力が挙げられる。まだまだ語彙学習については努力が必要だということが分かっている。

  第二に、算数を中心とした問題解決型の学習である。算数・数的概念は幼稚園で習う時期が遅すぎる。算数、数的概念はもっと早い時期から教える必要があることがわかっている。

 

 

(4)地方自治体が校舎を維持するための国の援助

 2019 年法の施行通知では、地方自治体は追加財源を要求することができると規定されている。これが承認されると、運営に係る義務的な経費として国の年間の配分に追加される。

 

(5)各省庁で幼少期から青少年までをどのように一貫して育成しているのかについて

 保健・予防省が幼児期を担当し、国民教育・青少年省は、義務教育、中等教育、 職業教育を担当する。高等教育・研究省は、すべての高等教育に責任を負う。

 

(6)フランスの教育制度の中ではどのような到達度調査が行われているのか。それは悉皆調査か抽出調査か。

 国民教育科学評議会(Conseil scientifique de l'éducation nationale: CSEN)および国民教 育省学校教育総局(Direction générale de l'enseignement scolaire: DGESCO)との間で定められた方針に基づき、パフォーマンス及び将来評価総局(Direction de l'évaluation de la performance et de la prospective)により、包括的な全国的評価が構築されている。

これらの基準は、小学1年生、小学2年生、小学4年生、小学6年生(フランスでは中学1 年生)、中学2年生(フランスで中学 3 年生)、高校1年生 の開始時に提供される。これらの学年の子どもはすべて、フランス語と数学といった基盤的知識に関する能力を評価される。また、これ以外にも、より少ないサンプルに基づく追加的な評価も行っており、そこでは、上記とは異なる目標やより具体的な目標が設定されている。                                 

                                                                      (了)