2023/6/10発売 もうメディアのウソに騙されない!武田邦彦の科学教室より一部抜粋 第5回
***武田邦彦の科学教室5 太陽光発電は本当にエコなの? *** 2022年8月 18 日
この科学教室をやる時、私はいつも「どうして日本はこんなに平気で嘘がまかり通っているのかな?」と思うんですね。
しかし、それがみんなに認められているわけですから変だと思うのですが、その一番極端な例が「太陽光発電」なんですね。
太陽の光が自然に電気になるのなら、太陽の光は「無限」で「無料」なんですよ。
ところが太陽の光を電気に変えなければいけないんですよ。
それが簡単にできるのであれば、電力会社は太陽光で発電すればいいんですね。
しかし最近そういう技術ができたのかといったら、そうでもないんですよ。
というのは、太陽の光を電気にするには、どうしても今のところ「シリコン」が要るんですね。
シリコンというと何か非常に高級なもののように思いますが、もともとは元素としてはシリカなんです。 Si ですね。
Si というのは何なのかといったら、土や砂のことなんですね。砂を元にして太陽の光で電気が起こるのだったら、砂を敷き詰めてそこから電気を取ればいいので簡単な話だと思うのですが、そうはいかないんですよ。
このシリカというのはSiO₂、つまり「酸化物」なんですね。
昔は、その酸化物をSiCl₄という塩化物にして、それからクロル(塩素)を外してシリコンを取るということをしていたのですが、それでは能率が悪く毒性も強いんですね。このごろは、アルコキシドなどいろんな形に進歩しました。
現在は、SiO₂を化学反応で Si、つまりシリコンにして、そのまま使ったり単結晶やアモルファス結晶といったものにして、それを敷き詰めて両側に電極を付けて、上から太陽の光を当てて電気を発生させているんですね。
ただ、夜中は太陽の光がありませんから、それを平均化したりするのにかなりゴツい装置が要るんですね。
それが皆さんがよく見る、田園にある太陽光のパネルなんですね。
「太陽の光はタダで無限だ」と言いますが、タダで無限なのは誰だって分かっているんですよ。
だけどそれが今まで使えなかったのはなぜなのかというと、シリカをシリコンにするのが大変で、それを装置にするのも大変だからなんですよね。
そして、ものすごく石油を使うんですよ。
「石油を使う」と言っても「お金を使う」と言ってもいいのですが、砂からシリコンの結晶を取ったり、それを組み立てたりするのにはすごくお金と石油が要るんですね。
そして、それだけお金がかかっているので補助金が要るんですよね。
それでドイツの家庭用電力料金は、2002年から2022年までの 20 年間で約3倍になったわけですね。
しかしそれは「石油を焚かなくてもよくなったから、3倍になってもいいじゃないか」ということにはならないんですよ。
2002年は、石油やロシアから来る天然ガスを焚いていたのですが、2022年には太陽光発電や風力発電に変わっていったわけですね。
太陽光は無限で無料ですが、風も無限で無料じゃないですか?
無料のものを使って1 kWh 当たり 14 円が 36 円になるというのはどういう理由なんですかね?
これは、普通の人だったら考えれば分かることだと思いますが、「石油を使っているから」なんですよ。
それから、補助金も出さなければいけないので、結局ドイツ人は電気代が3倍かかって大変なんですよ。
これを税金で賄ったとしても、税金はドイツ国民が払うのですから同じことなんですよ。
よく「太陽光は補助金があるから安い」と言いますが、補助金は私たちが払っているわけで、金持ちが払っているわけではないんですよね。グレタさんが払っているわけでもないんですよ。
太陽光の値段は石油にほぼ比例していますからね。
簡単に言うと、昔は火力発電に 14 円の石油を使っていたものが、現在では太陽光発電にその3倍の石油を使っているということなんですよ。
ものすごく細かく計算したら「武田先生、実はこの3倍というのは2・5倍ぐらいです」と言う人もいるでしょうね。
しかし、せいぜいそんなものなんですね。
ということで、まずは「太陽の光は無料だが、それを電気にするには現在の石油火力発電所や天然ガス火力発電所に対して約3倍のエネルギーを使っている」という馬鹿らしいことをやっているのが太陽光発電だということを分かってください。
だから「太陽光発電をやって環境を――」と言っている人は、ちょっと言葉が悪いのですが、私に言わせればやっぱり「二重人格」。
というのは、そういうことを言う人は専門家ですから、全部分かっていてやっていますからね。
そういうことをまず頭に入れてほしいと思います。
え?