モンクレティアン著「政治経済学概論」事項索引 | matsui michiakiのブログ

matsui michiakiのブログ

横浜市立大学名誉教授
専門は19世紀フランス社会経済史です

モンクレティアン著『政治経済学概論Antoine de Monchrétien, Le Traicte de l'Oeconomie politique, dédié au Roi et la Reine mère, 1615.

  

上掲書の事項索引

 著者モンクレティアン(1575~1621)はシュリーとともにアンリ四世治下で活躍した理論家である。フランスを代表する重商主義者として知られ、リシュリューやコルベール、そして、彼らにつづく重農主義者もこの理論から多大な影響を受けている。

 上掲書のページ順に松井が索引として整理したのだが、できあがった表を本ブログには上手く収録できないため、ページ表記をやめ、事項のみを収録することにした。なお、上掲書は著名であり、いくつもの版が出ている(Amazonでも購入できる)ため、ページが区々になっていてページを正確に表記しても、さほど意味のないことなのかもしれない。

 松井が特に重要な指摘と判断した項目については赤字標記にした。さらに、〔〕紫色で示した中身は松井の注解である。ナショナリズムの先駆形態としの国家主義(Etatisme)が早くも17世紀初の段階で出ていることや、古典派経済学の諸命題が頭出ししていることが認められる。但し、重商主義の常として各所に理論的不徹底と混乱が散見されるのも事実である。

 権力闘争に明け暮れし国民の安寧・福祉を歯牙にもかけない現今の為政者もあらためて執政の手引き書として熟読すべき書物なのかもしれない。

 

Oeconomie:術=君主の傑作(chef-d’œuvre)

水蒸気が天空に昇るのに太陽の力と熱を必要とするように、ま

  た、君主の権力と愛情がこのような助力がないために委縮し

  圧殺される活力を人民のあいだに甦らすよう人民のために拡

  がりゆくことを要する

農業>工業>商業  〔産業の重要度:重農主義の魁〕

君主の責務

農・工・商の3部門もいずれも重要である

社会的分業の便益

私経済は公経済の基礎である

私的職業は公共的職業をつくる

政治算術は直接的に経済に依存する

政治運営とは国家の全身体を健康に保つことなり〔社会有機体

  説〕

瞑想生活より活動的生活のほうが肝要〔国家干渉主義〕

国家とは自然的有機体なり

君主の主要任務

フランスの自然的富の豊かさ

人口増大を図れ、過剰人口は懼るに足らず

君主の責務

経済学 oeconomie politique  

アンリ四世暗殺後の産業不振が貧困を呼び起こす

国立工場を設立し、貧民・失業者・無頼漢・犯罪者等に職業を与

  えよ

社会的分業とは適材適所をはかることなり

経済学=富を獲得するための科学

経済学と政治は不可分

農業=国家の胃

工業=国家の心臓

商業=国家の神経

農業は人間を養う

自由競争の是認=競争の効果

術策の仕事場 ateliers des artficies(授産場?)

利己的活動が社会にいかなる利益をもたらすか

農業=必需品を供給

工業=有用品と快適品を供給

生活と労働は不可分である

農耕・牧畜=いっさいの活力と富の源泉

農業の術(art d’agriculture)は最良である

農業は人間を養う

農民=国家の両脚=国家を支え、身体の重荷を担う

自給自足論

一国で絶対に生産できないもの → 自由貿易

一国で自給自足できるもの → 保護主義

工業製品の地産地消主義

工業のうち最重要なのは製鉄業である

国家による経済活動への干渉は是認される

需要・供給の法則

術策の仕事場(授産場?)を各州に設置すべし

君主は商工業者の怠慢を一掃し、鉄を金に変換することを助成す

  べし

農>工>商

製鉄業の育成

軍事礼賛

金・銀=交換の用具

鉄=使用価値の面で金に勝る

需要・供給の法則

富の起源=労働 〔労働価値論〕

商品の稀少性 → 価格上昇

貨幣流出の防止策=奢侈禁止

善政

外国書籍と印刷物の輸入抑制

君主の目標

偉大な君主=人民の便宜を図る君主〔啓蒙君主の魁〕

富の起源=労働

人間の幸福は主に富より成り、富は労働より成る

卓越した内匠は一国にとって極めて有用である

強制労働

公設徒弟学校にて貧民の子弟を学ばせよ

貧民は殺すのではなく、養うべし

ギルドを普及させるべし

貨幣論

わが国は外国が利得するだけを交換しているが、国内取引はそう

  ではない

外国が利得するだけフランスは損失している

過剰生産の危険性〔商業恐慌到来の予測〕

イギリスの関税政策について

フランスの利益と外国の利益とは必然的に相反する

自国民のあいだに自由競争を与えるべし

機械生産の効用

臨機応変主義者

英仏両国の関税政策の比較 → いかにフランスにとって不利か

農業>工業>商業

外国の貨幣を流入させるには一切の技術を発展させねばならない

欠乏は貿易の起源であり、必要はその法則である

原料輸入は是認すべし

外国製品の輸入は禁止すべし

経済学(Oeconomie)

貿易は外国との同盟を破るという意見への反論

貿易は外国との親善関係を課さない

フランスが採用する保護政策はフランスの独創ではなく、従前か

  ら踏襲してきた政策に従っただけのことだ

あらゆる社会は…政府と商業から成るが、前者が必須なのに対

  し、後者は第二義的である

金・銀はわれわれの忠実なる友である

オランダに見られるように、外国貿易は国家を発展させる

貨幣は戦争の原動力なり

国内商業と外国貿易の比較

フランスは自給自足の可能性をもつ、フランスは世界なり

保護干渉的な規制を探るべし

国内商業に関しては自由放任政策を執るべし

物資=必要物、金銀=冗物

国は国内商業で何らの損失も蒙らないが、外国貿易においては一

  国の一国の利得は他国の損となる

一者利すれば他者は損するが、国内商業を疑ってはいけない

外国商人を国内商人と同等に処遇してはならない

悪貨、良貨を駆逐す〔グレシャムの法則を予見」

貨幣の起源

貨幣は交換の媒介物であり、価値の尺度である

国は造幣主権を掌握すべきだが、価値を変更してはいけない

貨幣の材料は品位純良なるべし〔貨幣改鋳の弊害を指摘〕

外国貨幣の使用禁止

貨幣=覇権の至上の表徴

スペインの金銀を吸収する方法=相場を高く見積もれ

非重金主義思想、生活必需品が潤沢であえばよい

イギリス関税政策の実情(原料輸出禁止と製品輸出奨励)

報復関税政策

エリザベス治世下の投資法(雇用法規)

フランスとスペインの関税政策の比較

フランス産原料の輸出禁止と外国製品の輸入禁止

貿易は国際法上の権利なり

平等・相互主義にもとづく関税政策

貿易自由主義は相互主義に由来し、ゆえに、公平貿易であるべし

国民の富=君主の富

わが王国は5つの無尽蔵の自然的富をもつ

フランスにおける自給自足の可能性

鉱山は枯渇可能性あるが、穀物と原料の「鉱山」は枯渇する懼れ

  なし

金銀鉱山が皆無でも、最も多大な財宝は生活必需品にある

臣民の便益=君主の便益

「貨幣を必要とするわが国には鉱山が皆無であり、外国から取得

  せざるを得ず.熱心にこれを追求されよ」

貨幣=富という理論における混乱

小麦輸出の禁止〔フランスは小麦産出国!〕

貿易差額によって金銀を取得できる

外国貿易は王権により統制・保護さるべし

フランスの自然的富の豊かさ

オランダの繁栄は海運業に依存する

価格統制すべし

使用価値(本質的価値)と交換価値の区分(偶生的価値)

貨幣数量説

小麦買占めの排撃 → 食糧不足と外国転売をもたらす

国王による保護干渉政策の許容範囲

君主の目標は人民の安寧にあり、己の便益のために統治するに非

  ず

大船に譬えられる国家は、ゆめゆめ軍備を怠ることなかれ

植民事業・植民地市場・海運業は一国経済に大きな重要性をもつ

海運業推進策の提言

キリスト教の布教

盗賊と無頼漢は海外に植民すべし

造船の勧め

海外植民について

アメリカへの植民活動の奨励

善良な貧民を植民地に送るべし

職人の外国移住を抑止すべし

外国人職人の国内永住を歓迎すべし

植民地獲得の動機=支配欲、富の渇望、復讐心、名誉、必要性

布教について

植民地獲得の意義=キリスト教の伝道

富の源泉としての植民地

布教の点ではフランス国民が最適の民族である〔カトリック国〕

植民地と本国間に成り立つ取引の商品

東洋への進出の提言

君主の責務

専制君主の起源

善王と悪王の比較

独占に反対

悪王は保護政策を抛棄し、善王は国益のためになしうる一切を興

  し、その臣民を富ますべく努力する