八幡祭にはユネスコに登録したかった争いのない文化があった | はちまんMatsuiコラム

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一級建築士・一級瓦葺き技能士・宅建士・歴史研究 松井秀夫

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八幡祭には

ユネスコに登録したかった

争いのない文化があった

ユネスコ憲章の前文には

「戦争は人の心の中で生れるものであるから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならない。 」とあります。

今世界では、神の名のもとに戦争が行なわれているが、八幡祭の十三郷では太鼓や松明の勇壮な祭り仲間だけではなく、もう一つ米作りをする水仲間としての存在があり神のもとに水争いが起こっていない水仲間のシステムが1700年間機能していたのです。


この米作りをする水仲間の存在については琵琶湖総合開発の時に近江八幡の地域文化を研究された筑波大学・大橋力先生(当時)が研究され著書に書かれています。

◎参考文献「情報環境学」大橋力 朝倉書店 (ケーススタディ〝近江八幡十三郷祭仲間”のシステムモデルより)他

 

今は無い八幡祭の水仲間は現在も有る祭り仲間とどの様な関係になっていたのか?

を以下の様に大石力先生(当時)の著書を参考に祭り仲間と水仲間の関係図を作ってみました。

十三郷の稲作に必要な湧水や河川を集められた水が鷹飼町にあった貯水システム(井之島)から堰を管理し分流して水仲間に供給されていたのです。

何で?と思うのが錦川筋の大嶋郷(3郷)と船木郷(4郷)は土地が高いために堰を作って水位を上げてやらないと流れない事なのです。

 

水仲間の十三郷は自然に任せていては水が行き渡らない条件の郷が集まって祭りをしている事が分かります。

 

大石力先生が驚かれたのは土地が高いために堰をしないと水が流れて来ない郷が十三郷にはできるわけで、稲作に必要な水を自然に得られない仲間なのにも関わらず水争いのないシステムが構築されている事を発見されたからなのです。

 

この「水仲間」を支えた水利システムの起点が鷹飼郡井之島(鷹飼町東2丁目)にあった集水(貯水)地でして

JR近江八幡駅に近江鉄道が弧の字にカーブして入る付近にあったのです。

井之島の場所↓(現在は井之島の記が書かれた記念があります)

 

井之島の全体像が描かれた江戸時代の絵があります。

注:南北が逆になっています(資料:鷹飼町中江修一郎氏より)

古い写真を探しますと戦後GHQによる航空写真がありました。

上記・江戸時代の絵に合わせた配置にしています。

次に近江八幡駅南土地区画整理事業で井之島が無くなる前に書かれていた図面とその頃撮られた風景写真。

(資料:鷹飼町中江修一郎氏より)

大橋力先生は(論文)近江八幡十三郷の伝統的環境制御メカニズムの中に井之島からの河川の関係図を作られています。

 

戦後の土地改良などでほとんど当時の姿は残っていませんが近江八幡には愛知川水系などからの豊かな神水ともいわれていた様な湧水が井之島に集められ大嶋郷や船木郷に流れる様になっており後の八幡水道の水源になってくるわけで、八幡祭の水仲間のシステムのお陰で八幡町の住民は良い水の恩恵を受ける事になっていたのです。

 

大橋力先生がもっとも力説されていたのが、近江八幡十三郷の周辺地域では水争いが多発している事を調査されて報告されている内容なのです。

「社会人類学年報Vol.8 1982」  監修 岡正雄他 馬渕東一 鈴木二郎  弘文堂

 (近江八幡十三郷の伝統的環境制御メカニズム  大橋力 河合徳枝)

赤いにある地名(75か所)にはすべて水争いの記録があるのです。

水争いの地域の中に水争いのなかった近江八幡十三郷が存在している事が分かります

 

ユネスコ憲章の精神が存在していた事に驚かされると共に、世界で研究の対象として頂きたいとも願うわけで太鼓や松明の近江八幡十三郷はものすごい存在なのです。

 

大橋先生は良くここまで調べられたと感服いたしますが、

たとえ話の

「魚の目に水見えず、人の目に空見えず」の様に

身近にあって、自分にかかわりの深いモノはかえって気づかない事実が近江八幡にもあったわけです。

 

現在我々の周りに起こる問題も、これまでの歴史やその背景を知らないと先人たちの解決の英知を得る事ができないわけで、

この事は地域の素晴らしさを知らないから地域が素晴らしくならない現状に繋がってくるわけです。

 

そして、歴史を見直し、再発見し、この様な八幡祭にあった井之島や水仲間の存在を知る様になりますと更に深い八幡祭が見えてくるのです。

 

前回のブログ>八幡祭の不思議 御幣が付いている太鼓と付いていない太鼓がある
https://ameblo.jp/matsui0816/entry-12850187865.html

 

(注:写真はクリックすると大きく見えやすくなります)