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 ( 略 )・・・ 最近の研究では、さらに違う説も出ている。

歴史学者 矢部健太郎さんの著書「関白秀次の切腹」によれば、秀次は切腹に追い込まれたのではなく、自ら死を選んだのではないか

というのだ。秀吉は甥(おい)の秀次を死なせるつもりはなかったし、秀次に死ななければならない理由もなかったという新しい見方だ


 新しい説がすべて正しいとは限らないが、ドラマを書くに当たり、自分の「豊臣秀次」がどんな人間なんだろうと考えた時、僕にはこの説が一番しっくりきた


 当事者たちのほんのちょっとした思いの「ずれ」が、取り返しのつかない悲劇を生んでしまうというのは、とてもリアルだ。


 僕は歴史研究家ではないので、史実との細かいすり合わせは、スタッフや時代考証 の先生方にお任せしている。


 しかしそれ以前にドラマの設定のどこかに無理があると、台詞(せりふ)が浮かんでこない頭の中で人物が動いてくれない。精神を集中して当時に思いを馳(は)せ、必死に秀次に自分を重ね合わせ、心の中の彼に、


なぜあなたは死ななければならなかったのか、と問い続けた結果、

なによりも腑(ふ)に落ちたのがこの解釈だった


腑に落ちた瞬間、秀次が、秀吉が、そして真田信繁ら周囲の人々が僕の頭の中で生き生きと動きだした。

 

ドラマでは新納慎也さんが、繊細な演技で新しい秀次像を演じてくれている。

自分の知っている「史実」と違う!と憤る方もいらっしゃるかと思いますが、こういう説もあるということを(そして脚本家 はこれが「史実」に一番近いと思っていることを知って頂けたら、嬉(うれ)しいです