経済も軍事も決める半導体の地政学と台湾~日本経済再興のカギは国家意識…田村秀男氏との対談番組 | 松田学オフィシャルブログ Powered by Ameba

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日本を夢の持てる国へという思いで財務省を飛び出しました。国政にも挑戦、様々な政策論や地域再生の活動をしています。21世紀は日本の世紀。大震災を経ていよいよ世界の課題に答を出す新日本秩序の形成を。新しい国はじめに向けて発信をしたいと思います。

 この1月の台湾総統選で当選した頼清徳氏が進めてきた、また今後も発展させようとしている政策は「シリコンの盾」。いまや超微細技術の最先端半導体こそが、一国の軍事的な優劣を決定づける時代にあって、2ナノを目指す台湾TSMCでないと製造できない機微技術がある。中国の台湾侵攻の際には、米国は必死で台湾を守るだろうという考え方です。

 しかし、これは米国にとっても日本にとっても大変危ういこと。だから、TSMCの工場のアリゾナ州や熊本への誘致となりますが、前者は労働争議でボシャっているようです。

いつもは私とは財政政策などをテーマに議論している産経新聞の田村秀男氏は、実は経済安全保障や半導体の分野でも論客、今回、こちらをテーマに対談を配信しました。

 印象的だったのは、日本ではかつて70年代に主要メーカートップの財界人たちが結束して、「アメリカやIBM何するものぞ」の気概で日本の半導体王国を築いたこと。当時は経済界も、戦前の教育を受け、大東亜戦争の真実を知る世代がリードしていました。しかし、その後、これを許すまじと米国が半導体摩擦で日本をダンピングだとして叩いたことを契機に、次の世代の日本の業界が高価格による収益に安住している間に、いつの間にか韓国や台湾に追い抜かれ、いまや半導体王国は消えてしまいました。

この分野のコアである設計も製造も海外頼み…あのときの日本はどこに行ってしまったのか。需要がとてつもなく大きい中国は、いくら米国が規制をかけても、どこかから最先端技術が入ってしまうし、あのTSMCも中国内に工場があります。TSMC誘致で日本政府は巨額の財政負担を予定していますが、単に外資を儲けさせるのではなく、ナショナルフラッグ半導体の育成にこそ全力を投入すべきですし、「民間の自覚も必要」。

 やはり、経済も、その繁栄の基盤となるのは国家意識であることを再認識させてくれる対談となりました。

 

◆『安全保障視点からの台湾情勢と世界の半導体供給体制』ゲスト:産経新聞特別記者 田村秀男氏

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●台湾総統選と「シリコンの盾」

当然の結果だが、勝った頼清徳の得票率は40%。台湾の状況は、もともと本省人と外省人の対立、大陸から蒋介石から逃げた人たちの外省人が高齢化して世代替わり。台湾は台湾だという意識が若い人中心に、独立の考え方が多数派に。

ただ、民進党でずっといくと、中国が締め付けられるから怖いというビジネス界の思惑。有権者がうまくバランスとった。立法院が民進党が少数与党に。それが程よい加減ではないか。大陸とうまくやらねばと。現実主義的。ただ肝心な政策が決まらないのが気になる。

米国からの支援が議会でなかなか決まらなくなるというのは確かにある。習近平が強硬策で来るようなら、台湾は与野党一致結束するしかない。

米国は曖昧戦略。一つの中国の維持、これはニクソン訪中の際の上海コミュニケが元。台湾は中国の一部であるという中国側の主張に留意するというもの。国民党の軍が蒋介石と共に渡ってきて今の台湾軍。人民解放軍とは本来一体、同じ中国人ということで外省人は「一つの中国」。共感できないのが本省人。複雑。

米軍は台湾軍を警戒している。通じているのではないかと。インテリジェンスが大陸側に筒抜けではと。

 

●半導体…

台湾が世界の圧倒的なシェア。昨年の前半、共和党の米下院議長が台湾訪問し、台湾に先端半導体の集積があって、中国にとられたら元も子もないと懸念を表明。バイデン政権も然り。大陸が併合策で先端基地を奪取すると、米中ハイテク戦争で形勢が中国に有利に傾く。やばい。先端半導体は軍事を決める。

 ナノが小さくなると処理速度急増、小型化、軍事力はスピードが命。軍事用のハイテク兵器、最高頭脳が台湾でつくられているという構図。TSMCの2ナノテクノロジー、他に創れるメーカーはない。超微細加工。5~3を創っていて、2を創ろうとしている。

台湾南部。頼清徳が台南市長のときに目をつけたのがTSMC。進んだ製造は台湾南部。大がかりな先端半導体の工場を増設。

 「シリコンの盾」。この戦略を頼清徳は意識。中国が攻めてきたら米軍は出動せざるを得ないだろうと。ただ、危ういので米国に持って来いと。トランプ氏に言われてアリゾナに大規模工場。5ナノ、将来は3ナノまでやると約束。

それと同じ流れで熊本。ソニーとデンソーが出資。頼清徳はシリコン専門のような人。1/13に当選が決まったあと、先端半導体をもっと台湾に集中と公言。米国は複雑。

アリゾナでのTSMCも、半導体は市況の変動も激しいしプロセスも大変であり、従業員がストを起こすとまずい。米民主党は労働寄りでいろんな条件出す。そこで操業開始の見通しが立たない。労働争議が発生。

熊本は順調。そしてTSMCは、つくばに先端的技術開発のセンターを置く。日本に半導体関連メーカーか集積している。電子機器メーカーなどとの協働。新技術開発をしようとの魂胆。TSMCはどこにもない技術で世界一を死守。あの日本はどこに行ったんだ。

 

●消えた半導体王国、日本

TSMCもサムソンも日本は誘致。半導体王国はどこに行ったのか。黎明期は70年代の前半。米国に追いつき追い越せ、70年代の後半には、IBMの大型コンピューターチップより優れたものを開発するということで、「超大規模集積回路研究組合」が大成功。日本の大手、富士通、日立、東芝、NECのトップの技術者が集まり、ライバルが集まり技術開発。

これが初めてで最後の例だろう。IBMのコンピューターを脅かした。技術の中心がメモリーに移り、米国の半導体業界を圧倒し始めた。これはやばいと米国が日本たたきに。ダンピング嫌疑をかけて日本の半導体の販売価格を下げさせないようにした。日本の半導体手業界はこれで慢心して、80年代後半をピークに凋落。

70年代の業界トップは戦前の戦争体験ある経営者。日本国家のために、と。普通は、いちばんいい技術は出さないのに、一番いい人材を出した。本当にIBMへの対抗で創ってしまった。あのときのリーダーたちは、米国などに敗けてなるものか、だった。

日本の大手には銀行のバックがあり、カネはふんだん。米国のメーカーを買収できる。米国のシリコンバレーのパイオニアはフェアチャイルド、1985~6年ごろ、富士通が買収しようとした。フランスが買収しようとしたときには何も言わなかったのに、米政府は国家安全保障で待ったをかけた。フランスはいいのに。米国発祥で発展した先端テクを担う企業が、日本の子会社になることに耐えられない。

日本は価格を下げられなくなっていたことをいいことに、それで利益を確保できて、うかれていたら、いつの間にか韓国や台湾にシェアを取られた。気づいたら投資が遅れた。韓国にしてやられた。装置産業なので設備投資は莫大な資金。水と技術カネで微細技術が成り立つが、資本にはリターンが必要。遅れてしまうと見通しがつかず、新規投資に踏み切れない。製造はおカネとリスクがかかる。

半導体の構造ではデザインはデザイン、作る方はTSNMCのような受託製造。発注者が回路を設計してその通りに作ればよい。製造に特化、この分業は以前からあったが、80年代の後半に日本の半導体がピークアウトして、この分業がきくようになった。台湾も韓国も自分で設計に資源を割かなくても、製造一筋でいけばよい。それを徹底したのが台湾。

設計は日本は弱い。パワー半導体など一部はあるが。日本は家電や自動車は強く、それ向けは力を持っている。ただ、いま一番必要なのはAIとロボット。大量の画像処理など高度な設計が必要。それは今はエヌピーディアが独占状態で、日本は追い付けない。

●日本の道は?

日本政府はTSMCに巨額補助をしているが、自動車用、成熟半導体でよい。さほどレベルは高くなくてよい。製造能力自身がメーカーも限られる。NECや日立が手掛けていたが、皆経営がおかしくなった。東芝も。それで切り離されていく。ラビダスがIBMと組むという動きはあるが、製造はTSMCが強く、2ナノはできない。

TSMCは中国にも工場を持っている。最先端は中国に出さないとしているが、半導体の需要規模が中国は馬鹿デカい。需要ある所に技術ありで、いろんなルートから入っている。ファーウェイもいつの間にか米国の制裁を潜り抜けて、進んだスマホなどをこなせるようになった。ただ、アップルにはまだ及ばないが。

日本は設計はダメで、製造は2ナノに行けない。さりとて、追いつけ追い越せという70年代のようなわけにはいかないだろう。製造能力で自給できるとか、サムソンTSMC並みにできるようにしていねばならない。設計は追いつけない。英国の設計会社のアーム。孫さんは目の付け所がよい。アームの設計が無かったら今の半導体はなかった。設計と超微細加工技術が重ならねばならない。

国は何をやるべきか。日本でいちばん強い産業は自動車、この辺りが自覚して、日本製の半導体を発展させていくべき。民間の自覚が大事。

国は、経産省は、日本が王国だったことを忘れて、日本は成長しなくていい、ぴかっとヒカル技術があればいい、TSMCのつくばに期待するとか。そういう所で半導体は伸びない。中国は需要が大きいから世界から技術が集まってくる。10年で米国に追い付いてくると。今は国家意識が日本はなくなっている。