世界の学級崩壊と嵐の前の静けさ、日米原油同盟&対ロ独自外交、環境→資源への潮流転換:藤和彦氏対談 | 松田学オフィシャルブログ Powered by Ameba

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日本を夢の持てる国へという思いで財務省を飛び出しました。国政にも挑戦、様々な政策論や地域再生の活動をしています。21世紀は日本の世紀。大震災を経ていよいよ世界の課題に答を出す新日本秩序の形成を。新しい国はじめに向けて発信をしたいと思います。

 世界はいまや「学級崩壊」状態。ロシアや中国だけではありません。米国という学級委員長の言うことを聞かずに発言し始めた新興国・途上国たち…。そんな中で進行するガザ紛争が日本の原油供給に与えるダメージは…?

 「いまは嵐の前の静けさだ」と喝破する経済産業研究所のエネルギー問題の専門家、藤和彦氏との対談は、日本の外交政策を考える上で示唆に富んだ内容となりました。

 イランとしては、既にサウジとイスラエルとの関係を遮断したことで戦争目的を達したのがガザ紛争。フーシなど親イラン勢力は、米国とは事を構えたくないのが本音のイランの抑止をきかずに、戦争を激化させるリスクがある。

 そうなると、バイデンへの盲従による対ロ経済制裁で、今やなんと、原油の中東依存度が95%にまで達してしまった日本への原油供給が、それこそ「油断」となりかねない。

日本は油種の質の落ちる中東の原油への依存で安価な石油を享受してきましたが、ここでも経済優先の中で忘れられたのが経済安全保障だといえそうです。

 いまや米国は、世界一の産油国であり、石油の輸出国ですが、日本の元売りは中東原油への依存の中で、中東産よりも高質の米国産シェールオイルを精製する設備を十分に持っていないそうです。

 なのに…エネルギー政策のイロハは、電源構成も供給国もポートフォリオの分散化を図ることであるにも関わらず、グローバリズムの再エネ利権に支配されていることに疑問も持たない日本政府(経産省)は、再エネ一辺倒の中で、この事態を打開することを考えようともしない。

 米国はじめ、世界的にも、いまやSDGsの「環境重視」から、「資源重視」への潮流転換が起きています。ここでも、海外を周回遅れで追いかけ、結果として世界の真の潮流を見誤る日本の姿が見え隠れします。

 いま必要なのは、日本にとってはウクライナよりもはるかに国益上重要であるロシアと独自の立場で関わり、米国とは「日米原油同盟」の関係を構築すること。リアリズムに基づいた日本独自の外交と、世界の情勢を知り戦略を構築する構想力が日本には問われていると思います。

 

◆「中東原油情勢は”嵐の前の静けさ”か!?再エネ一辺倒をやめ米ロと資源重視のリアリズム外交を」ゲスト:経済産業研究所主席研究員 藤 和彦氏

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以下、対談内容です。

 

原油の供給を見ると、嵐の前の静けさ。ハマスの攻撃から120日以上たっても中東からの原油供給には支障が出ていないが、これから本当の嵐が来る。

米国にとって中東は大事な地域ではなくなった。エネルギーから見ていると、中東からほとんど原油を輸入していない。重い油をサウジから輸入していたが、今はカナダとメキシコから。

 

「ドル石油本位制」はキッシンジャーが言ったが、その時代はドルは安定していない。ドルが本当の基軸通貨になったのは冷戦崩壊後だ。「ペトロダラー」は都市伝説に過ぎない。ドルは軍事力で基軸通貨になった。

 

ウクライナ戦争で西側職のメンツは丸潰れ。史上最大の経済制裁をしても、ロシアの景気はむしろ過熱気味。G7は発展途上国に御用聞きしてしまい、グローバルサウス、第三世界が発言権を持ってしまった。

これは、幕末の江戸幕府が各藩に意見具申を求めて威信が低下したのと似ている。グローバルサウスは経済力で台頭しているだけでなく、発言権も。

 

「学級崩壊」だ。米国という学級委員長と日本などの取り巻きが6人いて牛耳っていた。サイレントマジョリティーが米国の言うことを聴いていたが、ロシアと中国が大きくなり、俺たちも勝手なことを言おうということになった。まさにGゼロの時代に。

インドはすれっからし。ロシアからは安い原油、米国とは軍事面で協力、うまくやってしまっている。「世界学級崩壊状態」。

 

日本人は名誉白人の地位に未だにこだわっているが、本音ベースで国益ゴリゴリ追求のダブルスタンダードが必要だ。

ロシアに行った鈴木宗男をバッシングしたが、なんであんなに?外交には様々なポートフォリオが必要なはず。

ウクライナは日本の安全保障に関係あるのか?力による現状変更が中国による侵略を正当化するという論理については、そろそろ本当かどうか考えるべき。

イランは今回、既に彼らの戦略目標を達成した。それはサウジとイスラエルの国交正常化を破綻させること。イランからしてみると、フーシの動きは持て余し気味。イランは外務省と革命防衛隊の二元外交。イランがその気になればフーシを抑えられるわけではない。

 

イランとしてはこれ以上、戦闘を激化させる必要はない。米国は対イラン制裁緩めている。原油生産量が増えていて、半分ぐらい輸出。全部ホルムズ海峡軽油。なので、封鎖しても何の利益もない。封鎖はすつての堺屋太一の「油断」のシナリオ。

 

イランは米国と戦争したくないが、イランが育てて怪物化したフーシが心配。爆発引き起こす可能性。ウ戦争でドローンが威力、一番最初にドローンの効果を示したのが2019年のフーシによるサウジ攻撃だった。当時はサウジの油田の半分がダウンした。

ドローンと弾道ミサイル、戦闘能力が4年間でさらに強化。フーシの暴走が嵐を呼ぶ恐れ。

 

第一次オイルショック時の日本の原油の中東依存度は77%。それが今は95%。国際標準では信じられない数字。これを下げる最大の切り札はロシアだった。2010年にロシア原油の輸入に占める比率は8%だったが、今はゼロに。

 

エネルギー安全保障は分散化がカギ。ただ、地球温暖化の中で化石燃料は悪者扱いで、そのために策を講じようとはしない。1930年代は日本は米国からいちばん石油を買っていた。そんな国と戦争した。日本の安全保障はエネルギーに尽きる。

 

中東からの原油を一部、米国からの輸入に切り替えるべき。米国もシェール革命で世界最大の原油産出国に。日本の需要の6倍以上。しかも、原油の大輸出国に。サウジやロシアに匹敵。

4割が欧州向けで、中国やアジアも3割。日本はほとんど買っていない。足元で少し増えている。3年後には中東依存度を5割以下にすることも可能。

 

日本は1960年代から中東石油にフィットした施設。硫黄分が多い、世界でいちばん質の悪いサワー原油。脱硫設備で処理できる体制に。世界で一番割安の原油を調達できるのが日本の強み。だから95%までになった。

 

生産設備を米国仕様に変えなければならない。これをあと押しして米国依存度高める政策が必要。米国産原油の購入に消極的だった日本の元売りの設備投資をバックアップする政策が必要。

米国の西海岸からなら第七艦隊と自衛隊が守る。「日米原油同盟」だ。台湾海峡封鎖でも大丈夫になる。米国はエネルギー産業がメインになっており、日米関係そのものにとってもプラスだ。

 

しかし、原油はオワコンになっているので、そういう発想が出てこない。再エネシフトを進めすぎたドイツは自業自得で、今、大変。再エネ一辺倒は大変な事態をもたらす。再エネが主流になったら電源多様化に逆行する。

 

実は、米国ではESG投資が下火になっている。環境アクティビストをエクソンモービルは追い出して、環境重視から資源重視へ転換した。バイデン政権のもとでもだ。トランプが大統領になれば一挙にそうなる。日本はなんでも周回遅れ。石油の世界でも。

 

経済界はしたたかに舵を切っている。化石燃料依存が強い日本だからこそ、ダブルスタンダードで本音ベースでのBプランを。日本の国益重視のエネルギー政策を考える時期に来ている。うまく渡り合う、それが政治のリーダーシップだ。

リアリズムに基づいて…今回の中東情勢はそういう課題を日本につきつけている。