23年末世界軍事情勢と24年の日本のリスクシナリオ~矢野義昭氏との対談~ | 松田学オフィシャルブログ Powered by Ameba

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日本を夢の持てる国へという思いで財務省を飛び出しました。国政にも挑戦、様々な政策論や地域再生の活動をしています。21世紀は日本の世紀。大震災を経ていよいよ世界の課題に答を出す新日本秩序の形成を。新しい国はじめに向けて発信をしたいと思います。

 今年一年の軍事情勢を考えるために、昨年末に矢野義昭氏と行った対談は、重い内容になりました。軍事技術の進歩もあって、世界の軍事バランスが構造的に変化し、大陸型国家が優位に立ち、これまでの米国を中心とする海洋国家パワーが劣勢化していく。

 

 

ウクライナ戦争については23年はウ側の敗戦が明確化した年となり、24年の焦点はロシア側からの停戦の提案に移る。ロシアは元々、領土的野心はなく、ロシア系住民の東部4州を完全制圧すれば戦争目的を達しますが、NATO側は戦争を長引かせようとしても国内政治がそれを許さないでしょう。西側の大義である「力による現状変更は許さない」との論理は破綻します。

そしてハマス・イスラエル戦争ですが、ハマスのバックにはイランだけでなく、中国やロシアといった大陸型国家群のネットワークがある。日本軍がかつて硫黄島でやった坑道作戦は軍事的には極めて有効。親パレスチナ的な国際世論もあって、米国が軍事的になすすべがなくなる中で、23年はグローバリズムの撤退とナショナリズムの台頭という世界的潮流が明確化し始めた年だったと総括できるかもしれません。

問題は、この中で日本の24年の最大のリスクシナリオは何か?なのですが、当面、中国が台湾への軍事侵攻が困難な中で、最も起こり得るのが中国の尖閣上陸。中国にとっては、習近平が「一つの中国」に向けた実績として最も小さなリスクであげられる成果。そのとき、日中全面戦争に…米国は手出ししない、ましてやトランプ再選なら…。日本はいよいよ、自らの防衛基盤を自力で構築することを迫られるであろう。

矢野義昭氏は尖閣諸島への自衛隊の常駐による実効支配こそが、日本の平和を維持する上での喫緊の課題だとしています。

1時間の長時間番組ですが、日本の国防をリアリズムで考える上で貴重な内容だと思います。お時間のない方のために、内容を文章でまとめましたので、ご参照ください。

 

◆2023年世界の紛争を徹底解説!ウクライナ・パレスチナで起こったこと。世界は?日本は何をすべきか!?』ゲスト:岐阜女子大学特別客員教授 元陸将補 矢野義昭氏

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●多極化する世界、ランドパワーが優勢となる時代と日本の国防

世界的にこれから多極化、大陸国の有利があきらかに。その中で海洋国の日本はどう対応するか、その論文がAPAで受賞。

情報監視機能がグローバルに常に機能。数十センチのオーダーで。ミサイルの性能が向上、数分から数十分で高い精度で攻撃可能。

開かれた自由な海洋を利用して利益を得て、海軍力でグローバルパワーという手法が通じなくなった。

中国大陸からの短射程に日本は入る。米国の空母来援も制約を受ける。東、南シナ海には入れない。日本は否応なく自立化を迫られている。

自由で開かれたインド太平洋も題目としてだけではだめ。INF条約で米ロが中距離ミサイルを配備できない状態が続いた。中国がそのすきを縫うように中距離ミサイル、1,500発が日本を向いている。インド~東南アジア~日本が、中国のミサイル網で覆われている。

 

●停戦に向かうウクライナ情勢

ゼレンスキーも11月末から守備体勢に。ロシア軍が全正面で攻勢に。西側支援は前年の3分の1、NATOの援助がそこまで減った。支援の再開がないと、これ以上防御できないとゼレンスキーは危機感。

プーチンは開戦のときから特殊な限定的な作戦であり、本格的な戦争とは一度も言っていない。ロシア系住民に対する迫害、虐殺から保護するのが一つ、ウ軍をNATO化をさせない、アゾフの殲滅、ウの核保有や東欧も含めた中距離ミサイルの制限を要求していた。

NATOの東方拡大をしない旨を書面でとの要求が拒否されたのが開戦理由。

 

来年の大統領選では東部4州も含めて選挙。しかし、完全に制圧したわけではない。今は西方に攻撃、最低限4州を占領するまで。オデッサの港の制圧、オデッサを取る可能性、ハリコフをもう一度制圧の可能性も。ドニプロ川東岸はいずれロシアのものに。

冬季は凍結。ドローンでさらにロシアが進撃を続ける。ドネツク、ルガンスク対+オデッサで作戦終了させる。

そして万全の態勢で目的達したとして大統領選に臨む。停戦交渉にロシアは応じる。

 

元々、領土的野心がない。弾圧した極右勢力の抑止という目的は達した。4州制圧の段階で停戦の提案をする。ウには人も装備も弾薬もない。ロシアの要求を飲む。

しかし、ゼレンスキーが折れずに抵抗し、バイデン政権も600億ドル支援の姿勢は崩おらず、3月になってもその姿勢が続き、米国の軍需産業も立て直しとなれば、春には武器も送り込める、F16の戦闘加入も。

そこで新たな反撃の可能性もあるが、共和党の反対で難しいし、大統領選との関係で米国内支援疲れ、イスラエル支援も限界、民主党自体が大統領選に勝てないとなる。

プーチンがその段階で停戦条件を持ち出せば大きなインパクト。

仲介するのはトルコか。

 

「力による現状変更許さない」は崩れるが、何をもって「現状」と言うかは立場によって違う。今の国境線を引いたのはそもそも誰か。バランスオブパワーが維持されないなら、この論理は崩れて、黙認せざるを得なくなる。

ウはレーニンが一方的に、ロシア帝国の一角だった東部地域をウに併合してしまった。ロシア側論理では領土奪還だ。

「現状変更」という一面的な見方だけではどちらが正しいとはいえない。大陸国では国境線の変更はいつもあること。現状が正しいと言うなら、それを守るパワーがないとダメ。

それが国際社会の現実。

 

●ハマス・イスラエル戦争の勃発について

ウクライナとの関係はある。ロシアからみると、イスラエルという米国庇護の国、戦端が開かれると米国は無視できない、米国の戦闘遂行能力はこれで分断される。

イランやシリアを介してロシアが影響力を行使した可能性。ハマス側は数か月から一年かけて準備しないとあのような攻撃はできない。

500キロのトンネル、ハマス単独ではできない。イランの資金と、技術的には中国の人民解放軍や北朝鮮軍が支援。坑道掘削の技術をもった大国が、かなり無時間をかけて。

ウの正面で1,000キロ以上にわたってロシアは陣地戦、築城構築能力、その影響力を得ている北朝鮮や中国、イランを通して…

大陸国側の勢力の一致した暗黙のネットワークによるハマスへの支援があっただろう。

 

イスラエルがガザ地区を一挙に占領する口実として奇襲攻撃との見方もある。枠組みとしてはそう考えていいだろう。しかし警備の自動化でパワーを別のところに、ならば、責任を問われない形でハマスに叩かせるやり方があったのに、手抜かり、予想外の時。

中国による支援が考えられる。

 

●イランは…

元々、ヒズボラの形成はイランが支援。ヒズボラは世界で最も精強な民兵組織。

ハマスはパレスチナのPLOに反発、民族主義で原理主義。

ネタニヤフからすると、「二国論」、つまりヨルダン川西岸に国家としてというのに対抗して、ハマスを敵として、神に約束された土地、ユダヤ原理主義からガザ地区は全部制圧。

二国論を潰すためにはハマス殲滅して、暫定統治政府のファタハのパワーがガザに及ばないようにする。イスラエルとハマスが仲よかった時期もある。敵と味方が入り乱れている。

 

それが、イスラエルがレバノン南部に進行してヒズボラとの関係が悪化してガザを閉じ込めた。ハマスもイスラエルを敵としてヒズボラと手を結んだ。ハマスに送り込んで、ハマスの能力も上がっている。

 

●ハマス-イスラエル戦争の行方は?

かつての硫黄島。日本は15キロの坑道を掘って抵抗、米軍のほうが死傷者が多い。

成功したのは坑道戦、米軍と互角以上だった。ベトナム戦争でも北ベトナムで。

現在のハマスの闘い方もそこから学んでいる。

イラク戦争で米軍は手こずった。ウでもマリウポリでロシア軍は手こずった。

地価の坑道戦は効果あり。ハマスは、500キロもの地下坑道なら、そう簡単にはいかない。防水、換気、電源、食料など生存のための最低限を確保。耐火、耐水などあらゆることをやっている。

800か所の坑道入り口、地下でネットワーク、深さも90m、制圧には数か月はかかる。それどころか一年以上かかる。犠牲者も1万人出ているが、数万人に。

 

人質の救出は交渉しかあり得ない。人間の盾は常套手段、彼らからすると聖なるいけにえ。聖戦、ジハード、いけにえは当然。通常の人道主義は通用しない。

同じイスラム人にそういう扱い。殉教。犠牲をいとわない。

そして世論戦。プロパガンダ戦。国際世論。バイデン政権自体は最初からイスラエルの自衛権を認めるが、民間人巻き込むな、早期休戦とのスタンス。

だが、イスラエル支援は米国民の半数が反対。大統領選を考えるとイスラエル寄りの姿勢は続けられない。

最近はバイデンの不祥事も暴かれている。裁判官や検事が共和党側、グローバリストの思うようにいっていない。

 

イスラエルが核を使う可能性もある。15~20万発のロケット弾をヒズボラが有する。イランはそれ以上。戦闘が激化して強硬策をヒズボラが採るようになると…。今でもヒズボラはイスラエル内部を攻撃。

フーシもある。無人機で英米国籍の船を攻撃、スエズ運河からオイルが途絶える。

今のところイランも抑制的で、強硬派を押さえているが、今後戦争が長期化してガザ地区の犠牲が増えると、イスラムの大義として同胞を守るイスラム教徒の義務がある。

これまでの対立もユダヤ憎しでは共通。今、まとまっている。

 

トルコも軍事介入あり得る。中東では200万の最大の軍事大国、イスラエルに厳しい。ジェノサイドだと批判。トルコも軍事介入となると、そこまで来ると中東全体を敵に回す。

となると、イスラエルは核を持っていても簡単に戦争拡大ができない。

民間人を動員すると民間経済がもたない。イスラエルとしても休戦に持ち込んだほうがいいが、ネタニヤフは大イスラエル主義、ヒズボラともイランとも戦うと。

国際的な圧力は何の意味もない、目的達達成まで戦い続けると。

 

二国並立論で休戦に持ち込んでも、またいずれイスラムとユダヤの大義の衝突に。

だからこの際、芽まで摘んでしまえというのがネタニヤフ。ガザの占領は国民のほとんどが賛成。

 

ネオコンの武器マーケット?実は米国軍事産業は出すもの出してしまっていて、製造業が中国へと空洞化して海外に依存、武器弾薬の在庫が残っていない。

台湾に向けるものをウクライナに、それをさらに回している。ウ支援も1/3に。

一概にネオコンの利益とはいえない。

 

グローバリズムの撤退、ナショナリズムとの闘い、様々な面で。これが今年が一つの転換点に。各国でナショナリズムが台頭。

象徴的なのはウ戦争でプーチンが勝ちつつあること。

 

●中国はどう出る?

軍事的バランスでは、2023年頃には台湾本土進攻が可能なほど中国有利になると言われていた。台湾封鎖は可能。一昨年は台湾周辺へのミサイル打ち込み、封鎖できるぞ、その時はミサイル打ち込むぞ。能力的にはそう。

 

ただ、主力となるロケット軍の配備の詳細なデータが米国に流れた。ミサイル配備が分かると、米国が精密誘導で攻撃すれば壊滅に。うかつに台湾に手を出せない。

ICBM基地も攻撃に。再編に数年を要する。軍の装備系統が堕落。国防相が粛清。賄賂で摘発。見掛け倒しの軍に。

習近平は、戦って勝てる軍になれと、その意向に反したので切られた。これが軍のトップクラスに広く波及。2024年は危ないが、軍の立て直しを考えれば、27年まで延びる可能性。

 

ただ、習近平の任期の間に。政治工作でなければ軍で侵攻。2~3年立てばやれる力を持ってくる。

反面で経済ガタガタ。国家統制経済で民間経済が疲弊して軍事力を支えきれなくなる。その辺りをどう見極めるかの判断。その時期はここ2~3年がピーク。

 

●日本のリスクシナリオ

いちばん危ないのは尖閣。韓国も台湾も防衛力の強化。国を挙げて台湾も。

台湾は4,000m級の山岳。上陸しても補給できるか。海軍で日米に敗けると戦争が続けられなくなる。補給品が届かなくなると、侵攻しても占領できない。

主要都市に進行して傀儡政権を建てて、既成事実化して内戦として、外国勢力の介入を阻止、その時の日本への波及、中国を敵に回す。

 

しかし尖閣が無人島状態のままに置かれている。接続水域含めて中国海警局系の船。

日本漁船に退去を命じるなど。いつでも軍事行動とれる。

ミサイルで封鎖したり、接近する船の攻撃が可能。日本はそういう体制も能力もない。

ある日突然、武装した漁民が上陸、防衛出動の発動までに時間かかる。現代戦は一日もあれば、対空対艦ミサイルとなると、そう簡単に近づけない。

奪還は数か月の準備とかなりの犠牲が必要。本格的な日中戦争に。このリスクが高い。

 

平時からの自衛権で、海上だけでなく陸自も島にあげる。実効支配としてこれ以上、固いものはない。無人島にしておくべきでない。丸腰の公務員だと、逆に侵略を招く。中途半端でなく、自衛隊を上げたほうが平和を守れる。力のバランスでやるしかない。

 

中国側からみて領土統一の実績になる。リスクが少ないとなると尖閣の局地侵攻はある。

戦略的に外交的に有効に使える。今年の春が危ない。

台湾総統の引継ぎは5月頃、米国も大統領選挙、日本のも解散総選挙?

政治が流動的で国家的意思決定ができないときに強硬策、裏金問題をやっている場合ではない。

トランプ再選となれば、共和党も内向きで、移民問題で国境守れが関心事。

日米安保ではもたない、多極外交を戦略外交で、自立して。

国際社会の変動に対処できる基盤が日本に問われている。