侮れぬ中国~巨大IoT経済、デジタル人民元、CBDC…いまこそ「松田プラン」を~ | 松田学オフィシャルブログ Powered by Ameba

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日本を夢の持てる国へという思いで財務省を飛び出しました。国政にも挑戦、様々な政策論や地域再生の活動をしています。21世紀は日本の世紀。大震災を経ていよいよ世界の課題に答を出す新日本秩序の形成を。新しい国はじめに向けて発信をしたいと思います。

菅総理は10月18日~21日にベトナムとインドネシアを訪れましたが、これらを最初の外遊先としたことには、日本としての重要な戦略的な意味があります。

日本が米国とともに進めてきたインド太平洋構想の結節点は東南アジア。米中デカップリングのなかで日本が経済、安全保障の両面で追求すべきは海洋国家軸(シーパワー)連合。クアッド(日米豪印)プラスという意味でも、中国との距離感が増しているこれら両国は中核的な位置にある国です。

これは事実上の「中国包囲網」。国内面では個別の改革で実力を発揮しつつある菅総理は、外交や国家観は未知数とされていましたが、今回の外遊は、日本の戦略的な国家路線を明確にしたという点でクリーンヒットだったと思います。しかし、日本が米国とともに今後対峙していかなければならない中国は、決して侮るべからず。全体主義との親和性の高い最先端の情報技術のフル活用で、恐るべき経済システムの構築へと進んでいます。

いまや最大の付加価値の源泉は電子データ。これを国家主導で縦横無尽に活用できる14億人の大国は、大統領選で混乱する米国を尻目に、新たな国際秩序形成で世界の主導権を握ろうとしている…。最近ようやくデジタル人民元やCBDC(Central Bank Digital Currency)が日本の報道でも取り上げられるようになりましたが、たとえばデジタル通貨が経済社会に与えるインパクトへの各界の認識は未だにお粗末なレベル。新政権肝煎りのデジタル庁がどこまで未来社会を先取りできるかで日本の命運が決まるかもしれません。

 

●全体主義体制そのものが有する情報技術面での圧倒的な強さには勝てない?

かつて中国崩壊論が流行りましたが、特に保守系の人々には希望的観測に酔い痴れる傾向が強いようです。この私とて親中派とは逆の立場に立つものですが、中国を敵だと考えるのであればこそ、敵を知ることが戦略の基本。

親中反中の情緒的論議を超えて「知中」の視点から冷静に中国をみるならば、少なくとも、言われてきたような「崩壊」は未だ起きておらず、むしろ崩壊とは程遠い現実が中国にはあることがみえてきます。

確かに、米中摩擦が中国経済を苦しめていますし、米国などが半導体を遮断することで当面は中国の情報産業ビジネスは不調になるかもしれません。しかし、それは逆に、中国をして他国に依存しない独自の技術基盤を確立させる危険が十分にあるのではないでしょうか。自由競争も個人情報保護も関係のない集権体制が手中にするデータエコノミーには、個人情報と市場競争を旨とする自由主義圏のパラダイムでは勝負にならない怖さがあります。だからこそ、ポンペオ国務長官の演説は、敵は中国という国や国民ではなく、中国共産党そのものにあると名指ししたのでしょう。

国防権限法のもと、米国が次々と繰り出す技術分断への強硬措置は、この中国の体制のもとでは軍事、経済の両面で米国は勝てないとの危機感の裏返しのようにみえます。「中国製造2025」で目指されているのはハイテク軍事大国。中国は2015年に、それまでの武力中心の軍事増強路線をハイテク中心路線のそれへと切り替えました。そのもとで、戦争は目に見えないSilent Invasionのかたちをとり、先進各国から先端技術を盗取する動きを強めているわけですから、菅政権が日本学術会議に神経をとがらせるのも当然です。

経済面でも、米GAFAが自由市場競争の独禁法の理念のもとに分割となれば、中国共産党は高笑いではないでしょうか。中国は逆に、国家独占資本主義の強化に動いています。

 

●IoTと情報共有で国家主導の巨大経済システムを建設

 元アクセンチュア代表取締役でITの専門家でもある中国通の海野恵一氏が述べるところによると、「中国のデジタル監視社会は完璧。IDカードがないと生きていけない。自分の住まいにも、それがないと入れない。どこに行ったかもわかる。コロナの検査に行ってこい…と。監視社会が問題…?国民は顔認証でも大喜び。俺の顔が出た…と。データベースに自分のデータを喜んで入れている。もともとプライバシーがない。個人情報を使ってくれよとなる。」確かに、少なくとも一般庶民の場合、監視社会のおかげで犯罪も暴動も減ったとして習近平を評価する国民が多いと、中国の知人から聞いたことがあります。

 「政治的に関わらなければ、あんなに気楽な国はない。党の組織をどの会社も大喜びで社内に作る。政府がいいことをしてくれるから。習近平は、民間企業の利益が国家の利益につながるなら何をしてもよい、税金を払ってくれれば…と。その代わり、国家がこういう技術を知りたいとき、何かあったら情報をください、あなたが知りたいなら、他の企業の情報あげます…と。国家が媒体になって、全中国の企業を束ねて、情報共有をしている。」

 「だから、中国はIoT(モノのインターネット)が得意。つなぎまくっている。中国には数百万の工場があり、数十億の機器がある。それらを全部つなげて国営企業も何もかも全部シェアする。しかも、AIを使って、こういうことができる工場はどこにある?で、全てがわかってしまう。そうなったら、どうなる?信じられないことになる。」

 「こうなると、もう、革命だ。社会を変える。工場だけでない、社会全体でノウハウをシェアして国力を上げていく。情報技術を活用して新しい経済を建設している。共産党政権は全企業のノウハウを国家が共有して、一つのプールにしようとしている。我々はそういうコンセプトと付き合っていかねばならない。」

給付金を配るのに何か月もかかるような経済体制ではとても対抗できない、お化けのような巨大システムが現れるかもしれません。

 

●香港問題は中国経済の首を本当に絞めることになるのか?

ただ、香港に対する国家安全維持法は、自由主義諸国からの激しい非難だけでなく、習近平の愚かさを見下す論調まで生んでいます。これで世界的に中国離れが起こり、中国共産党の政治経済体制はいよいよ崩壊に向かう…。

確かに、こと金融に関していえば、中国が国際金融とつながる(人民元とドルとの交換が可能な)ほとんど唯一の窓口である香港を潰せば、米ドルに依存して成長してきた中国経済が立ち行かなくなるのは明らかです。なのに、なぜ香港に対してこんな愚行をしたのか?習近平は愚かな選択をした面がなきにしもあらずですが、これもそう単純な事象ではありません。

これまで中国は、米ドル基軸通貨体制にどっぷりと組み込まれていました。米国などから稼ぐ貿易黒字や海外からの直接投資で流入した米ドルを人民銀行に集中し、国内外から信用のない人民元を、米ドル資産をバックに発行することで中国経済は成長してきました。

トランプが対中貿易赤字の削減に狙いを定めたのも、まさにこの点にあります。不公正取引を是正し、低賃金でのダンピング輸出を可能にしているウイグル人などへの人権弾圧を批判し、中国の貿易黒字を減らすことで、経済成長だけでなく軍事増強にも流れる米ドルを減らす。現に中国は、ドル建て債務の返済に窮するようになっています。米国が制裁措置で香港の米ドルリンクを断てば、中国は通貨面から行き詰まる…。いよいよ崩壊…。

しかし、この見方が希望的観測に過ぎないことを示すのがデジタル人民元の動きです。2022年の冬季五輪までの実用化を中国は宣言していますが、上述のような通貨戦争を前に、導入の動きを加速化させています。そもそも信用のない人民元をデジタル化したところで同じこと、との声もありますが、これは情報技術に無知な人の楽観論かもしれません。

 

●もはやカウントダウン状態に入ったデジタル人民元の導入

以前から中国は、国際的なドル決済システム「SWIFT」(国際銀行間通信協会)から追い出される可能性を考え、ドルの貿易決済から人民元の貿易決済へのシフトを進めてきました。2015年には人民元の国際決済システムであるCIPS(Cross-Border Interbank Payment System:国際銀行間決済システム)を作り、現在、世界で1,000を超えるとも言われる数の銀行が加入しており、日本のメガバンクも参加しています。

中国政府は中国の銀行に対し「ドル決済システムを使わないでCIPSを使え」と指令し、まだ規模は大きくはありませんが、主に「一帯一路」に関係する国との間で使われているようです。

2018年3月には上海に人民元取引の原油先物市場を作り、原油の購入を開始していますが、これは原油ドル決済の国際秩序に真っ向から対抗するもの。2020年にはドル利用をしないよう銀行に指令が出されているようです。中国の貿易額は世界トップですから、米ドル基軸通貨体制に揺らぎをもたらす動きかもしれません。

こうしたCIPS体制を構築しているからこそ、中国は国家安全法の施行に踏み切れたとみることもできなくはない…。

そしてデジタル人民元については、人民銀行はすでに6年前の2014年から綿密に準備を進め、ブロックチェーンの特許も大量に取得してきました。2020年1月には、基本設計を完了、4月にはアプリやウォレットの整備開発も終えています。5月には深圳など4大都市で試験運用が開始、デジタル人民元での給与支給や用途限定CBDCの運用などが行われています。

さらに8月には、中国共産党商務部がデジタル人民元パイロット事業エリアを拡大し、より広範囲でのデジタル人民元の本格的普及を積極的に推進することを発表しました。事業エリアは、北京~長江デルタ~広東・香港・マカオベイエリアなどに及び、その人口は5憶人以上、中国銀行など四大メガバンクも試験運用に参加するようです。

 深圳では10月12~18日にデジタル人民元の大規模実験が行われ、市民の買い物決済として4.8万人が1人200元(約3100円)で計876万4000元(約1.4億円)の決済を行ったそうです。

 

●中国は従来の通貨の概念を根本から変えて世界最大のプラットフォーマーに…

重要なのは、デジタル人民元の仕様です。これまでの通貨の概念を根本的に変えるものになっています。その特性は、カスタムメイド。スマートコントラクトで人間や使途を限定することが可能です。たとえば、特定の人物に対して特定のモノやサービスを購入できないようにすることも可能。言われているのは、すべての硬貨・紙幣を廃止し、デジタル人民元に集中させて個人データを収集、国民監視のツールに使うということ。

現在、想定されているのは、スマホどうしを近づけるだけで受け渡しする仕組みで、紙幣や硬貨を手渡しする感覚でのやり取りになるようです。この機能の開発はすでに完了し、    インターネット決済の実験へと進むようです。

人民銀行はこの10月に、法定通貨の人民元にデジタル通貨も加える法制度を固め、ここには、民間による仮想通貨の発行を禁じる規定も盛り込まれているようです。

デジタル人民元は、発行元に集まる精度の高いビッグデータを解析して活用する仕組みの構築につながりますので、それ自体が新たな付加価値を生みます。GAFAのビジネスモデルをみれば分かる通りで、これが資産となって、これをバックにデジタル人民元が発行されることで、人民元の信用力の問題を克服するという設計のようです。

デジタル人民元として発行されるCBDCは二種類。一つは国内仕様(監視ツール)。もう一つは国際仕様。後者は国内では使用者が限定され、新たな世界基軸Digital通貨になるとも予想されています。前述のCIPSにデジタル人民元を導入すれば、いずれ一帯一路を中心に各国で使用される…。デジタル人民元の世界戦略とは、中国が従来の国という概念を超えた世界最大の巨大なプラットフォーマー企業になることを意味するのか…。中国が「デジタル円」や「デジタルユーロ」を発行するかもしれないとも囁かれています。

前述の原油取引にもデジタル人民元が導入されるなど、米ドルの圏域が崩されていく…。貿易赤字を出し続けなければ基軸通貨の地位を維持できない米国としても、一国主義への誘惑に勝てないか…。

日本はデジタル人民元で決済した中東産原油を中国が実効支配する南シナ海を経由して輸入する時代を迎えるのか…。決して非現実的な予想ではありません。

 

●各国の中央銀行も日銀もCBDCの研究と実験を本格化

もともと、中国から新興国途上国向け融資等は人民元建てが多い状況です。これがいずれ、デジタル通貨に置き換わる可能性があります。もし、多くの国でデジタル人民元が使われれば、中国に国際標準を握られる恐れがあります。中国はCBDC関連の特許を数多く申請中ですから、中国が技術や制度設計で世界をリードする可能性が否定できません。

下手をすると、世界は中国共産党が主宰する国際秩序形成へと向かうのか…。

昨年からのリブラの動きもあり、自由主義圏の中央銀行も、お尻に火がついています。

考えてみれば、既存の国際通貨システムは、送金ひとつとっても、時間はかかるし手数料は高い。デジタル通貨であれば、たとえばアフリカから欧州に出稼ぎに来ている労働者からの国境を越えた郷里の家族への1ドルの送金でも瞬時に可能。その高い利便性は、各国の当局にとってはアンコントローラブルな通貨圏を拡大することになる、手をこまぬいているわけにはいかないということで、中央銀行自らCBDCの研究を本格化させました。

2020年1月には欧州中央銀行(ECB)や日銀など6つの中央銀行とBIS(国際決済銀行)が研究グループをつくり、基軸通貨国として当初は保守的だった米国のFRBも途中から参画、この10月にCBDC報告書をまとめ、次の3つの基本原則を提示しました。

それは、①各中央銀行が政策目標とする物価の安定や金融システムの安定を損なわない、②現金や他のタイプの通貨と共存させる、③決済分野の技術革新や効率性の向上(中央銀行と民間による競争と協調)です。これら原則を共有することで、将来的に国際送金などで連携することを視野に、各中央銀行は合意した共通理解をもとに実証実験に入ります。

この中で日銀は、CBDCの発行計画そのものはなく、実証実験のみであるとしつつ、今後、次の3段階での実験を想定しています。すなわち、①発行や流通など通貨に必要な基本機能の検証。これは技術的な検証で、電子上のお金のやり取りで不具合が起きないか、あるいは発行残高や取引の履歴を記録する方法などを検証するものです。②金利を付ける、保有できる金額に上限を設けるといった、通貨に求められる機能の実験。③「パイロット実験」。ここで初めて民間の事業者や消費者が参加します。

デジタル円に熱心な自民党も、所要の法改正(日銀法)を提起しています。

既に昨年7月のG7財務相・中央銀行総裁会議では、リブラに対する規制の必要性とともに、ユーザーに顔を向けていない既存の国際通貨決済システム自体について反省と改革の必要性を、各国当局間で合意していました。そして、デジタル人民元の予想を上回るテンポでの進展を踏まえたためか、今年10月13日の同G7では、下図のような声明が出されています。これは、リブラであれデジタル人民元であれ、自分たちの準備が整わない限り、導入は許さないと言っているようなものです。

まさに新たな世界通貨戦争が起こっているといえるでしょう。

 

●デジタル円はCBDCではなく、マイナンバーと結びついた政府発行で

 以下は、日本の今後の対応ですが、伝え聞くところでは、日銀としては、いざ各国がCBDCを導入するときに備えて準備は進めるが、本音は、やりたくないということではないでしょうか。

ビットコインのような仮想通貨の場合は分散型のパブリックチェーンですが、同じブロックチェーンでも、こうして中央集権的に当局が通貨を発行することとなれば、発行当局に膨大なビッグデータが集中し、その管理責任を負わされる日銀はたまったものではないと思います。

しかし、政府であれば、既にマイナンバー制度という膨大な個人情報のビッグデータを管理運営するシステムが存在します。そこで、デジタル円を日銀ではなく、マイナンバーと結びついたトークンとして政府が発行するというのが「松田プラン」です。

政府には元来、通貨発行権があり、従来の紙幣、硬貨、預金通貨にもう一種類、電子的な形態の法定通貨が政府発行の形で加わる。デジタル円の利用者は、政府や関係機関が提供する(時にはプッシュ型の)行政サービスを、デジタル円の支払い(納税も含む)と一体で、しかも、ブロックチェーンの特性を活かして各種の関連サービスとも連動させたワンストップの手続きで享受できるという大変便利な世の中を実現することになります。

現在、私は、スマホにマイナンバーのアプリを入れる新しい仕組みの導入に向けて、某社と連携して、これに飛びついている総務省との調整に参画しています。そうなれば、将来、スマホに、このデジタル円のウォレットをも装着することで、各種公共サービスと支払いが一瞬にしてスマホでできるようになります。

中国がデジタル人民元に内装するスマートコントラクトを人民の監視に使うとすれば、日本は逆に、国民の利便性と福祉の向上に使う。

いずれにしても、デジタル法定通貨は便利な通貨として世界的に普及していきます。そのなかで、もし、デジタル人民元を日本人が使うようになったら、どうなってしまうのか。既に、何とかペイが日本人の間にどんどん普及しています。私たちの個人情報が人民銀行を通じて中国共産党に管理されることになりかねません。

そうなる前に、利便性の面でデジタル人民元をはるかに凌駕する政府発行デジタル円を導入し、こちらのほうが便利だとして普及させていくことで、日本人の個人情報と通貨主権を守ることが喫緊の課題だと思います。私たちの個人情報は中国政府に持っていかれるよりも、日本政府のほうがはるかにマシというもの。日本のマイナンバー制度はセキュリティの面でも個人情報保護の面でも、世界に冠たる精緻な仕組みになっています。

 

●マクロ政策上も大きなメリットがある「松田プラン」

 このように考えると、デジタル円を日銀がCBDCとして発行しても、ほとんど意味がありません。

「松田プラン」では、デジタル円は、①ユーザーが他の法定通貨(預金通貨)と銀行で両替することによって取得する、②銀行は日銀からデジタル円を購入してユーザーに売却する、③日銀は、銀行から購入の申し出があったときに限って、すでに500兆円にものぼる日銀保有国債を償還してもらうかたちで、政府からデジタル円の供給を受ける、という仕組みのもとに発行することとしています。

このような縛りをかければ、政府が恣意的にデジタル円の発行を増やしたり、通貨量が増えてインフレになったりする懸念はありません。現在、異次元の緩和政策のもとで、日銀は国債を買い続けています。この国債が、市中のユーザーからの両替需要に応じて、徐々にお金(デジタル円)へと変わっていくのですから、その分、国民は将来の国債償還負担から免れられ、財政問題は一挙に解決していきます。

2%のインフレ目標が達成されるまでは、政府が国債発行を増やしても、その国債が日銀に購入されてデジタル円に転換していくことを考えれば、政府は後顧の憂いなく財政支出を増やせるようになります。日銀にとっても、この過程で、異次元の金融緩和で異常に膨らんだバランスシートが自然に縮小していきますので、円滑な出口戦略が実現します。

政府がお金を発行することに抵抗感のある方が多く、講演などで「松田プラン」の話をすると、その場合のデジタル円の価値の裏付けは何なのかとよく聞かれます。中国がビッグデータを資産の裏付けとするように、日本の場合は、デジタル円が生み出す利便性が裏付けだと説明できるでしょう。みんなが使いたいと思うこと自体が価値です。通貨発行量が一定のもとで両替で取得されるのですから、既存の法定通貨の円そのものが裏付けだともいえますし、他の法定通貨と同様、政府に対する信用が裏付けだということもできます。

 

●時代についていけない日本のエスタブリッシュメントたち…世界は前へ進んでいる

先日、丸の内にある日本倶楽部で講演をしました。かつて中曽根康弘氏も安倍晋三氏もここで講演した直後に総理大臣になったそうで、この名門の場でのせっかくの講演の機会、元大蔵事務次官や元日銀総裁など錚々たる各界名士たちが名を連ねるこのエスタブリッシュメントクラブでこそ、この頭の固くなった?世代の方々にブレーンストーミングをと、ブロックチェーン革命や「松田プラン」、トークン・エコノミーの話をいたしました。

いかがわしい話としか理解できなかった人もいたかもしれませんし、経済関係出身以外の方々には少し難しかったようですが、面白がって聞いていた諸先輩もいなかったわけではありません。昔、経済企画庁のエースだった元内閣府事務次官や、日銀OBなどはさすがに、通貨というものに対する新しい考え方に新鮮な驚きを感じていたようです。

ただ、私の元上司の某元大蔵事務次官は、やっぱり仮想通貨は怪しいとか、野口君(経済学者の野口悠紀雄先生)はブロックチェーンは道具に過ぎないと言っていたよ、とか…。どうも頭が受け付けなかったようです。どんなに賢い諸先輩でも、時代についていけない人たちは置いていくしかないのか…。世界はどんどん、前に進んでいるのですから。

そもそも仮想通貨ではありませんし、いま話題のデジタル人民元の内容を知れば、現実に、ブロックチェーンでこれまで考えられなかったことが世界で起ころうとしていることが理解できるはずです。

しかも、近未来に訪れるのはトークン・エコノミーの時代。日本は日銀のCBDCではなく、政府発行のトークンとしてデジタル円を考えていかないと、世界の主要国で最も成長しなかった国が令和時代にも続いてしまうことになるでしょう。

いま「松田プラン」を理解できる人々の輪が少しずつ広がっていますが、さらに声を大にしていかなければいけないと、改めて感じております。

 

●関連動画

1.松田政策研究所チャンネル

・号外【ニュースを斬る!】待ったなし!デジタル人民元実用化と日銀によるCBCD実証実験↓

 

2.チャンネル桜

・【松田学ビデオレター】政府への緊急提言、デジタル円は日銀よりデジタル庁での展開を![R2/10/13]↓

 

・【松田学ビデオレター】「実務の菅」へ緊急提言、日本は国家戦略として「政府発行デジタル円」を![R2/10/27]↓

 

・【Front Japan 桜】デジタル人民元が世界通貨に!?松田学 /中国が最初に侵略する場所/ 立皇嗣の礼で再開した秋篠宮家誹謗 / ウポポイの反日自虐映像を暴露 他[桜R2/10/15]↓

 

↑この中で私が出ているのは、番組開始時点からの(時間、分、秒)で示すと、

(1時間03分44秒)~(1時間42分00秒)の約39分間です。

日頃、ビデオレターや討論番組で登場しているチャンネル桜に、今度は水島社長から呼ばれて、デジタル人民元の驚くべき現状を解説し、日本で検討しているCBDCの状況に加え、これを超える政府発行デジタル円「松田プラン」がなぜ必要なのかを発信しました。いつも難しいと言われるこの私の話も、今回はかなりわかりやすかったようです。