令和二年を迎えて~問われる日本の選択…世界の新潮流と「日本新秩序」-その2-論考後編 | 松田学オフィシャルブログ Powered by Ameba

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日本を夢の持てる国へという思いで財務省を飛び出しました。国政にも挑戦、様々な政策論や地域再生の活動をしています。21世紀は日本の世紀。大震災を経ていよいよ世界の課題に答を出す新日本秩序の形成を。新しい国はじめに向けて発信をしたいと思います。

令和時代に日本はどんな国をめざすのか。「令和二年を迎えて~問われる日本の選択…世界の新潮流と『日本新秩序』」の前編では、主として経済面から、「ブロックチェーン」革命を軸に、日本の新しい道について考察してみました。

今回の後編では、外交や安全保障に加え、人類社会に訪れる大きな波を展望し、これからの国際社会における日本のあり方について論じることとします。

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前編はこちらをご覧ください↓

https://ameblo.jp/matsuda-manabu/entry-12563944647.html

 

【新年を迎えて:松田学の論考…後編】

本稿の前編で論じたように、まずは、世界の潮流変化を踏まえながら、日本のこれからの繁栄の道は何なのかを見極め、経済面で足元を固めることが何よりも重要だと思います。日本としての経済成長の道を拓き、ここに一定の将来展望を描くことなくしては、現下の日本の最大の課題である少子化・人口減少問題や、超高齢社会における社会保障の持続可能性の問題の解決も覚束ないでしょう。

まずは日本自身が、課題先進国の強みを活かし、次なる社会の建設を通じて力強い成長の道を歩み、国力を取り戻す。これをもって、米中両大国の狭間で埋もれることのない、国際社会における独自の存在を築く。このことがすべての前提になると思います。

以下、本稿の後編では、国際情勢や日本の外交を展望してみます。

 

●朝鮮半島情勢と中国に日本はどう向き合うか

まず、昨年悪化した日韓関係ですが、ここから得られた教訓は、韓国のためにも、日本としては「法の支配」の原理原則を貫き、安易な妥協はすべきでないということでしょう。

金一族を崇拝するチュチェ思想派とも言われる文在寅政権のもとで、今後の一つのシナリオとして考えられるのは、北朝鮮主導での南北統一かもしれません。そこで誕生する統一朝鮮が民族的なアイデンティティを希求し、歴史的に朝鮮半島を虐げてきた中国と対峙する勢力となれば、日本にとっての防衛ラインは38度線から鴨緑江に後退するというシナリオを想定する人もいます。

さらに、あえて楽観ケースに言及するとすれば、経済制裁で追い詰められた北朝鮮とトランプとのディールが奏功して北朝鮮が親米国家化し、日本が経済援助で実現する北朝鮮のインフラ投資からの特需を享受することになる可能性を指摘する向きもあります。

しかし、北朝鮮が中短距離の核ミサイルを廃棄する可能性はゼロに近いと、一応、考えておくべきでしょう。加えて、南北統一なきまま、韓国が中国「華夷秩序」に編入され、韓国が自由主義と米韓同盟の韓国ではなくなる事態が、もう一つのシナリオです。この場合、日本は核の脅威にさせされたまま、軍事フロントが38度線から対馬海峡へと近づくことになります。日本の国防はこちらの方の最悪の事態に備えるべきでしょう。

ただ、日本も世界も、最大の難題は、最先端の情報技術で覇権を狙う中国にどう向き合うかです。電子データを国家が自由に使えるだけで、経済面での付加価値競争で自由主義圏は勝負になりません。

安全保障面でも、すでに中国は高度な情報技術の活用も含めた「ハイブリッド戦」を仕掛けています。その対象は相手国の世論や人間の意識にまで及びます。

米国は中国の情報技術覇権を抑え込むため、政体レジームの変更に至るまで容赦ない米中新冷戦を続けるでしょう。サプライチェーンの世界的な分断が進み、米国か中国かのいずれを採るかの究極の踏み絵を世界各国が踏まされていくなかで、日本の経済界も中国との依存関係を断ち切る覚悟が迫られていくと予想されます。

外交面でも、日本は、「インド太平洋構想」のもと、地政学的な観点から、中国などの大陸国家軸(ランドパワー)に対抗する海洋国家軸(シーパワー)の形成を、台湾、フィリピン、ベトナム、インドネシア…インドとの間で、米国とともに、意識的に進めていくべきだと思います。

中国の脅威との関係で日本の安全保障を考えれば、情報技術の研究開発投資に桁外れの国家資金を投入する中国に少しでも対抗すべく、日本として政府主導での取組みの強化が不可欠です。

そのためには、国債発行をトンカチ公共事業に限定する財政法4条を改正し、広く知的財産や人的資本などの無形資産をもバランスシートの資産として裏付ける投資国債を発行可能にする財政改革が喫緊の課題だと考えます。

近年、軍事的な安全保障の概念も大きく変化しました。これまでの陸、海、空から、サイバー空間や宇宙へと、その領域は拡大しています。

しかし、日本はサイバー攻撃に対してあまりに脆弱な状況にあります。今年は東京オリパラの年。計り知れない量のサイバー攻撃が日本に対してなされることが予想されます。特に心配なのはインフラへの攻撃で、これをどう乗り切るかは、国民の命はもとより、日本の電脳空間の国際信用にも関わる重大な課題です。

 

●「第4の波」…今年は人類社会の変化の始まりが始まる年

サイバー空間については、筆者は、情報技術の急速な進歩が人類社会にもたらす「第4の波」を提起してきました。これは、農業革命、工業革命、情報革命(トフラーの「第3の波」)に続く「人間(生体)革命」のことです。人間の頭脳や肉体そのものが無数のデバイスでネットやAIとつながることで、人間自体が進化する時代が訪れようとしています。

ここでの最大の課題は、未だデータの盗取、改ざん、なりすまし攻撃に対して完全な防御が確立していない電脳空間のセキュリティを、完成に近づけることです。

今年は5Gの実用化が、いよいよ日本でも始まります。これは従来の4Gに比べ、通信速度が100倍になることで、大量の情報を瞬時にリアルタイムで共有できることを可能にします。5GはIoT(モノのインターネット)の社会実装を進める基盤となるものです。自動運転なども、5Gあってこそのものでしょう。

こうして進むのが、物理的な空間(フィジカル)とバーチャルな空間(電脳空間)とが一体化することであり、日本政府はこれからの社会を、情報技術革命によってもたらされたソサイエティ4.0に続く「ソサイエティ5.0」と表現しています。

「第四の波」は、ソサイエティ5.0の発展形として、バーチャルな電脳空間がリアルな存在である人間と一体化していく流れを想定するものです。IoTから、今度はIoH(人間:Humanのインターネット)の時代となる。これまで道具から始まって、機械や産業から国家システムまで、人間は自らと外界との間を仲介する「中間機能」を発達させることで、文明を発展させてきました。

これからは人間そのものが、電脳空間と一体化することを通じて進化を遂げていく。そうなると、「人間」とはそもそも何なのかという深刻なテーマが人類社会には突き付けられていくことになります。これが「第4の波」がもたらす衝撃です。

ただ、その前提となる5Gの実装は、今年は日本ではわずかな範囲にとどまります。その意味で、今年は世界が大きく変り始める年になるとは言っても、それは未だ、変化の始まりが始まるという年に過ぎないと位置づけたいと思います。

 

●サイバー時代の安全保障と憲法改正

IoTからIoHへ…、これは同時に、サイバー攻撃が人間の意識を狂わし、人命に直接的な脅威を与えるリスクが新たな脅威として浮上することをも意味します。

その意味での「人間の安全保障」とともに、サイバー攻撃に対する国防を考えたとき、日本の大きなネックは、現行憲法下での「専守防衛」にあるといえるでしょう。

サイバーセキュリティの要諦は「攻撃は最大の防御なり」。そのために不可欠な「ディフェンディング・フォーワード」(平時から敵のサイバー空間に侵入して予兆をつかむ)は、現に米国が行っていることですが、専守防衛のもとでは実行できません。

時代の変化に即して変えられる憲法にしておくのは、現世代の次世代に対する責務であるはずです。サイバーに限らず、そもそも国防に不可欠なのは防御と攻撃をバランスよく機能させることです。国会での改憲論議は昨年から今年へと持ち越されましたが、専守防衛自体を見直さずに、9条に「自衛隊を置く」だけの改正にとどまるようでは、本質的な問題解決にはなりません。

ただ、自衛隊を明記する改憲をしておくことに意味がないわけではありません。自衛隊はすでに国民に定着し、改憲の必要はないとの声も強いようですが、「法の支配」を国是とすべき日本国の基本ルールたる現行憲法は、9条2項で交戦権を明確に否認しています。条文を素直に読めば、自衛のための武力行使もできないのが日本です。

これまでの政府の憲法解釈は、憲法前文の平和的生存権や同13条の幸福追求権を援用することで、何とか自衛隊の合憲性を導き出していますが、理屈に理屈を重ね、無理をした曖昧な解釈ではないでしょうか。

韓国に対してルールの尊重を説く立場の日本国であるならば、自衛隊を憲法に明記することによって、自衛権の行使を解釈の余地のない明確なルールのもとで宣明できる国になる必要があると思います。日本は実際には武力行使をしないだろうと、韓国から足元を見られていることが、日韓関係悪化の背景にあることを忘れてはなりません。中国や北地用船も、同様に日本を舐めています。

 

●分断される世界をつなぐ「日本新秩序」を

さて、昨年はベルリンの壁崩壊後30年の年でしたが、現在の世界には新たな「壁」が次々と誕生しています。移民難民を阻止する「欧州の壁」、メキシコ国境の壁、そして米中分断の壁…。

冒頭で触れたように世界が単一化する流れが逆転しているなかで、国家や民族のアイデンティティ・ポリティクスが台頭していく。これも今年の大きな流れになるでしょう。

ここで一つ、留意すべきなのは、こうした東西冷戦の「壁」が未だ残るのが日本を取り巻く東アジア地域であり、日本がその影響を強く受け続けるなかで、「東京の壁」が牢固として存在することです。その壁の東側には反日左翼のメディアがいる。日本国民の洗脳は、メディア報道などを通じてますます巧妙になっていると指摘されています。

このようななかで私たち日本人に問われるのは、自国のアイデンティティ意識を取り戻し、独立自尊の基盤を物心ともに強固なものにすることではないでしょうか。

それは自国の独自性に価値に見出す営みを通じて得られるものだとすれば、自らが世界で唯一、万世一系の皇統を営む皇室のもとにまとまる国民であること自体に、かけがえのない日本の大切な価値があると考えるべきでしょう。昨年の天皇陛下のご即位や、関係する諸行事が内外の注目を集めたことは、私たちに日本国家というものをあらたて強く意識させるものでした。このことは今後、日本人の大事な精神的基盤になるものだと思います。

同時に、日本が古来、鎖国の時代にあっても、世界から異質の要素を取り入れて日本独自のものに仕立て上げる創造性に満ちた国であることも忘れてはならないでしょう。

昨年、日米間で日米貿易協定が合意され、今年1月1日に、これが発効しました。日本政府はEPAカバー率(経済連携協定を締結する相手国との貿易額が日本の貿易総額に占める割合)を70%とすることを目標としていますが、これまでは37%でした。この日米協定を加えると52%に高まり、米国、EU、中国を追い抜きます。韓国の68%には及びませんが、一応、自由貿易を国是とする国家としての面子が立つことになります。

ここで重要なのは、一昨年末に発効した「TPP11」と昨年2月に発効した「日・EU」EPAとあわせて、世界経済の約6割をカバーする自由な経済圏が誕生したことです。

さらに、交渉が大詰め段階のRCEP(日中韓+ASEAN+豪、NZ+インド?の16カ国による東アジア地域包括的経済連携)も、今年は妥結に至る可能性が高く、そうなれば、日本は世界のメガ経済圏のいずれにも属する世界唯一の国として、国際社会のルールや経済秩序形成の「扇の要」の位置に立つことになります。

昨年妥結された日米デジタル貿易協定もそうです。電子データが主導する世界経済において、この日米の両経済大国が電子商取引ルールを合意したことの意義は大きいでしょう。日本もようやく、国際標準を押し付けられる国から、ルールメーカーへと脱皮できるかもしれません。これは日本のチャンスです。

これまでは、日本が生み出すさまざまな社会的課題解決モデルが、ソフトパワーとしての魅力を通じて世界に伝播していくという意味で、日本は国際影響力のある国でした。これからは、それを国際標準やルールという「秩序」のかたちをとって、世界に伝播させていくことができる可能性が出てきます。まさに日本は「世界のソリューションセンター、ニッポン」として、国際社会のなかで独自の存在を築き、新しい繁栄の道を拓く。

世界の分断化が進む時代であればこそ、日本は、さまざまな分野で日本ならでは課題解決モデルを構築し、人類共通の課題解決に向けて世界に独自の価値を生み出す国になることをめざす。そして、「日本新秩序」をもって世界のソリューションモデルを先導することで、分断化する世界のかけ橋となる。。

そんな「新しい国づくり」に向けて、今年、令和二年が、日本が本格的な歩みを始める年になることを祈るものです。