新内閣の発足と自国の中核課題に向き合えない日本の政治~政界再編の対立軸を「後ろか前か」に~ | 松田学オフィシャルブログ Powered by Ameba

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日本を夢の持てる国へという思いで財務省を飛び出しました。国政にも挑戦、様々な政策論や地域再生の活動をしています。21世紀は日本の世紀。大震災を経ていよいよ世界の課題に答を出す新日本秩序の形成を。新しい国はじめに向けて発信をしたいと思います。

 9月11日に組閣が行われ、安倍新改造内閣が動き始めていますが、組閣のたびに、どうも何か大事なことが欠けているように感じるのは私だけでしょうか。これは安倍自民党政権の問題ではなく、日本の政界そのものの構造問題が原因なのかもしれません。

 

 今回の組閣は、台風15号で千葉県では何十万戸もの停電が続くなかで行われました。命の危険にすらさらされる多数の国民を尻目に大臣病の政治家のほうを救済?するのが本旨の組閣作業に永田町の人々が身をやつしていた姿は、日本の政界の根本問題を象徴するかのようです。かつて組閣の前日に発生した東海村JCOの臨界事故対応のため組閣を4日間延期した小渕内閣のことが念頭にあるのではありません。今回の場合、復旧は数日以内との東電の発表があった以上、政治日程は変えにくかったでしょう。

 それよりも、私が何かが欠けていると感じているのは、日本の中核課題に答を出せない政治の姿を、今回の組閣がまたも突き付けてくれたようにみえたことです。

 3・11の原発事故で経営が悪化した東電は、送配電設備への投資を数分の1まで減らしていました。電線地中化も先送りが続けられています。国民生活に不可欠な基盤すら、民間会社の都合に左右される。台風も「想定外」が想定外ではなくなるまでに激甚化しているにせよ、台風が来ただけで生活もできなくなる日本は本当に先進国なのか、政治は何をやってきたのか…、多くの国民が抱いた率直な思いではないでしょうか。

 

 かたや、組閣…。内閣の骨格を維持しつつ、初入閣組が安倍政権発足後最多の13人と言いますが、今回も政権が重視する重要閣僚と、それ以外の処遇たらい回し閣僚とで露骨に差がつけられた組閣でした。

 党の役員人事も含めて代わりばえがしない、何か大きな政策や長年の懸案に切り込むよりも政権の存続が目的の布陣だ…等とも指摘されていますが、もっと大きな問題は、年功序列のサラリーマン社会の如く、新内閣発足が毎年のように繰り返されることだと思います。

 

 政権として課題にじっくりと取り組まなければならないはずなのに、そもそもなぜ、こんなに組閣を繰り返さなければならないのか?この疑問を払拭するのが、安倍総理得意のスローガンやレトリック。組閣のたびに看板を変えて、新しい大臣ポスト名を設けてきました。

 2012年末の第2次安倍政権発足時はデフレの克服へとアベノミクスを掲げる「危機突破内閣」でしたが、その後の推移をみると、14年の改造は「実行実現内閣」、地方創生相と女性活躍相が新設、15年の改造は「未来へ挑戦する内閣」、1億総活躍相が新設、16年の改造では「未来チャレンジ内閣」、働き方改革相が新設、17年の改造は「仕事人内閣」、人づくり革命担当相が新設、18年改造は「全員野球内閣」、全世代型社会保障改革担当相が新設されました。一見、その時々に生起した重要課題を次々と政権の視野に取り込んでいるかにみえますが、いずれも長年にわたって言われ続けてきた日本の長期的課題。看板やネーミングがなくても、内閣として継続的に取り組んでこなければならなかったものばかりです。

 今回の改造については、「安定と挑戦」というやや抽象的なスローガンのもと、新ネーミング大臣いないため、何をめざすかがよく見えないという指摘もあります。

 しかし、将来の総理候補を何人か並べた新内閣の中で、厚労相から自民党総務会長を経た加藤勝信氏が厚労相に再任されていることをみると、懸案の消費増税をクリアーした安倍政権が、今回、これまで課題先送りと批判されてきた重要テーマである社会保障改革にいよいよ本腰を入れて取り組む姿勢を示したとみることが可能かもしれません。ついに給付と負担という、国民に痛みを伴う最重要の改革に進むのか…。

 

 ただ、問題はやはり、どの省庁でも先送りされてきた長期的課題がこれだけ山積するなかで、1年あまりでコロコロと大臣が交替していること。

 官僚も1~2年で異動します。しかも、いまや霞が関官僚は官邸の端た女?と化し、プロとしての建言もままならない…。問題点を指摘する官僚は、官邸が握るようになった人事権を行使されて飛ばされるという声も聞こえてきます。

 政権交代のたびに幹部が入れ替わる米国のようなポリティカルアポインティーではなく、日本が事実上の終身職業官僚制度をとっている理由は、時の政権に対してプロの立場から問題点を指摘する機能が期待されているからでしょう。その上で最終決定を下すのが政治。イエスマンだけが出世する仕組みになってしまったのなら、職業官僚は要りません。

 いずれにしても、これまでも長年にわたって日本に問われ続けてきたのは、各分野のプロフェッショナルによる政治的リーダーシップがなければ不可能な大胆な仕組みの組み替えです。政治家も官僚も、肝心の政府がこれでは、日本は「課題先進国」どころか、課題解決逃避国にとどまり続けるかもしれません。

 

 では、いまの硬直化した政府与党体制に大胆な政策を迫る役割を担うはずの野党はどうか。立憲民主党と国民民主党が「安倍政権に対峙する、国会での力を作る」べく、統一会派形成へと動いてきました。ただ、どうも、電力労連を抱える国民民主と「原発ゼロ」を党是とする立民とは政策面で相容れないようです。数合わせとの誹りは免れず、これでは有権者からみれば、また、あの民主党か…。

 巷では、新会派名の案として「帰ってきた民主党」、「そのまんま民主党」、さらには韓国の「共に民主党」?まで飛び出したようです。

 統一会派の動きの背景として、今回の参院選では前回衆院選時のブームが去り、得票数を減らした立民が野党のイニシアチブを維持する上での焦りが指摘されています。ただ、立民の票を吸収して政界で大きな存在として誕生したのが「れいわ」。背後で小沢一郎氏が動き、れいわと国民民主の合流、さらには立民との連携で非自民連立政権へ…?との噂も。

 確かに、立民の支持率が伸び悩み、国民民主に至っては1%の周辺で低迷する一方で、れいわやN国が行きどころのない民意を吸収して躍進する形となったのが、先般の参院選でした。しかし、マレーシアで実は大失敗だったとされる消費税廃止や、生煮えのままのMMTを掲げるなど、れいわのポピュリズム体質を危険視する国民が多いのも事実です。

 同じ斬新な政策でも、現実的でまともな対抗軸を打ち立てられる政党が現われないものか…、そんな思いを抱く国民がマジョリティではないでしょうか。自民党支持者であっても、他に選択肢がないから自民党を支持するしかないと考える有権者が極めて多いのは事実です。

 

 かつての中選挙区制と比べた現行の小選挙区制の弊害は、それが二大政党を前提とするものであり、政権交代可能な野党が現われない限り、個々の選挙区が与党現職議員が必死にしがみつく既得権益へと化してしまうことにあります。

 結果として、有為な人材が政界に新規参入することは極めて困難。そのもとで、当選回数を重ねる与党議員たちによるサラリーマン政治が続き、日本が大胆な課題解決モデルを構築することを遅らせていく懸念なきにしもあらず。

 これだけネットやSNSが発達した世の中なのですから、これを「れいわ・N国現象」ではなく、もっと有為な方向に活用できないものか。各政策分野でリアリズムに基づいた日本の未来の姿を設計し、プロフェッショナルたちが政策論を主導しながら広く民意を集約し、新しい政治の理念の構築と、その支持層の拡大へとつなげていく。そうすることで、政治の対立軸を「左か右か」から「後ろか前か」に転換していく。

 そのために「未来社会プロデューサー」を名乗る私が取り組んでいるのは、最先端技術を活用して未来社会の姿を具体的に実現するプロジェクトを推進しつつ、国民に未来への選択ができるような新たな軸を形成することです。現状の「小さな幸せ」にしがみつく人々もいれば、次なる「大きな幸せ」に夢を託す人々もいるでしょう。冷戦が終了して30年、政治の軸も「左か右か」のイデオロギー対立からそろそろ卒業しなければ、真の民意を掘り起こせないのではないかと思います。

 「後ろか前か」、「前に進む」…松田政策研究所は、そのための発信・研究活動を今後とも強化してまいります。

今回の組閣に関しては、こちらをご参照ください↓

号外【ニュースを斬る!】新内閣発足!真の課題解決は可能か?