【参議院選挙】各政党の公約を切る~果たして示されたのか?日本の選択肢~松田学の論考 | 松田学オフィシャルブログ Powered by Ameba

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日本を夢の持てる国へという思いで財務省を飛び出しました。国政にも挑戦、様々な政策論や地域再生の活動をしています。21世紀は日本の世紀。大震災を経ていよいよ世界の課題に答を出す新日本秩序の形成を。新しい国はじめに向けて発信をしたいと思います。

 今回の参院選に向けて、動画やFB、あるいはこのブログでも、色々な議論をぶつけてきましたが、7月21日の投票日を間近に控え、今回は総括的な議論として、各政党の公約を比較検証いたします。皆さまの選択のご参考になればと思います。

 最初に、7月19日に収録、発信されたチャンネル桜の動画(松田学のビデオレター)をご紹介します。ここでは、各党の公約を一括評価しています。一応、この1本で全体を俯瞰できる内容になっています。

 次に、本動画への理解を深めていただくために、番組で使用したフリップを掲載します。

 そして、参院選期間中に松田政策研究所から順次、発信いたしました「参議院選挙特集!各政党公約比較」の動画を3本、それぞれのコメントとともに、ここに掲載します。

最後に、ご参考のため、国政選挙の度にマニフェスト評価を実施している言論NPOによる公約評価をリンクいたしました。

 

いまの安倍政権の安定を持続させるか、政治の方向転換か。政権の中間評価とされるのが参院選ですが、もし、方向転換を選択したくても、果たして、その先にある現実的な日本の姿を野党は描いているのか。

政権与党の自民党は国民全体にウィングを広げた「国民政党」。これに公明が加わり、野党が依拠する「家計」や弱者の立場も取り込んでいます。野党が付け入る隙があまりない中で、野党を選択するために必要な条件は、第一に、具体的な財源の提案があるか、そして第二に、与党の立場では実現困難な新たな仕組みや政策を提示できているか、さらにもう一ついえば、リアリティーがある提案となっているかどうか。野党に対しては、こうした視点から切っております。

これらから導かれる結論は、野党から提案された政策のほとんどは現実な財源案がないため選択肢になっておらず、日本の本質的な課題解決に答えを出す新しい政治の軸は未だに示されていないという点で、今回の選挙も、有権者による選択の機会を提供する場としては極めて不十分だということです。

特に、私が深刻な問題だと思うのは、与野党を問わず、日本の「病」の本質に迫り、抜本的な処方箋を組み立てて有権者に提示するという、政治に求められるはずの営みを未だに欠いたままになっているという点です。

現在の日本が直面する閉塞状態は、年金も消費税も、その背景にある少子化や超高齢化も、国民の不安に関わる諸問題の根源にあるのは、平成の30年間にわたる日本経済の停滞です。その原因を緊縮財政や金融政策に求める安易な議論ばかりが注目されていますが、日本経済の病はそんなに単純なものではありません。90年代以降の世界経済の大きな転換に適応できなかった日本経済の国際競争力が低下したという、もっと深刻な問題が原因です。

他方で、日本の対外純資産は世界ダントツ一位を続けています。これは、日本が自らの蓄積を国内のマネーの流れへと活かすことに失敗してきたことを意味します。ここに目を向けずに表面の政策を国政選挙で争っても虚しいでしょう。

なぜ、マネーが循環しないのか、なぜ、生産性が上昇しないのか、この問題は、表面に現れている問題へのパッチワーク的な対症療法では、到底解決できません。政治の現状は、未だ、そのような土俵の中で、票目当ての駆け引きに終始しています。

世界の潮流や時代の流れに向き合いながら、国民が納得できる世の中を日本に創っていくためには、まさに、国のシステムや経済社会の仕組みを根本から設計しなおす営みが不可欠な局面にあります。これこそが、政治には問われているはずです。

「新しい国づくり」を唱える安倍政権は、すでに6年半に及んでいますが、未だに、その具体的な中身が出てきていません。野党はなぜ、この点を突き、自らが考える国づくりの設計を示さないのでしょうか。

やはり、国政のバージョンアップが不可欠です。

松田政策研究所や本ブログでは、今回の選挙結果をも踏まえながら、今後とも政治に対して、さらに幅広く、論点を提起してまいります。

 

●松田学のビデオレター「まもなく投票日、各党の選挙公約とその財源をチェック!」チャンネル桜 2019年7月19日放映

 

●松田政策研究所 号外【ニュースを切る!】参議院選挙を切る!各党公約比較

 

・(その1)第1回 外交・安全保障・憲法

 現在の朝鮮半島情勢にも鑑みれば、安保法制を廃止するなどという野党共通政策は話にならないでしょう。自国の軍事力を倍増させたり、場合によっては核武装まで考えない限り、日米同盟の深化にしか日本の国防力の強化の道がないのが現実。最近、トランプは日米安保条約を不公平な関係だと発言しています。米国も民主主義の国。いくら条約があっても、実際にどこまで日本を守ってくれるかは米国の世論次第。

平和安全法制は、命も軍事負担も惜しんで自分たちだけトクしようとする卑怯な日本人との見方が蔓延しないために、現行憲法の専守防衛の枠の中でギリギリ、集団的自衛権の限定行使を容認することで、日米同盟の深化を円滑化しようとしたものであったはずです。

憲法9条については、自衛隊違憲?合憲?論の基本論までさかのぼって議論を整理してみました。

安全保障や改憲論議こそ、松田政策研究所が標榜するリアリズムが求められる分野です。

 

・(その2)第2回内政 自民党、公明党、立憲民主党、国民民主党編

自民党は自らを「国民政党」と称しています。確かに、共産主義を除けば保守からリベラルまで幅広い立場を抱え込んだ政党であることは事実。野党が提案する政策まで幅広く取り込んで、実現してきました。しかも、公明との連立で、野党が拠って立つ「家計」や「弱者」の立場まで取り込み、野党がつき入る隙がない。今回選挙の争点は年金と消費税とされますが、与党の立場は、打ち出の小槌はない、大事なのは働きたい人が働けるようにすること、国民の「安心」のために必要なのは、安定政権の持続で経済全体を良くして様々な政策を着実に実施すること。

このオールジャパン?的な自公政権以外の野党を有権者が選挙で選択する意味があるのは、第一に、財源を示すことと、第二に、いまの与党の性格上、実現困難な新たな仕組みや政策を提案しているかどうか、これらが最低条件ではないでしょうか。与党のもとで実現していない政策の多くは「言っていることは誰もがやってほしいことだが、増税でもしないと財源がない」です。野党としては、自分たちが政権をとった場合には、こうした社会層に対する財政支出は切って、別の社会層に対する支出の財源にする、それができないなら、自分が支援する社会層のために国民に新たな負担を求める、それは自分たちならこういう理由でできるのだ、ということを示さなければ、結局、先立つものがないからできないものはできなかった、で終わりです。

しかし、10月の消費増税に反対している野党各党の今回の公約では、教育無償化や低年金者への給付金など、公共サービスを拡充したり、家計負担を軽減したりする措置がズラリと並んでいますが、立民も国民民主も、公約は、具体的な財源の措置に踏み込んでいるとは到底いえないという点で、失格。

 

・(その3)第3回内政 共産党、日本維新の会、れいわ新撰組編

財源案ということでは野党の中で唯一、消費増税に代わる7.5兆円の増税で家計を直接応援するとしている共産党だけが形式的には合格です。問題はその現実性。ただ、共産と維新は、単なるバラマキではなく、与党の立場からは実現できない政策を提案している点は評価できます。

特に維新は、特定の業界に支援された政党では成長戦略は実行できないと謳い、自民党とも、労組という利害を代表する旧民主系とも、違いを打ち出しています。年金の賦課方式から積立方式への転換や、給付付き税額控除、統治機構の改革や税制体系の抜本転換など、新たな仕組みを提案している点では評価できるでしょう。しかし、消費増税に代わる財源案となると、行革頼みで抽象的。大阪での改革を国政でやればできる、を未だに言い続けているようでは、国政政党への脱皮という課題を抱えたままに見えます。年金の積立方式への移行に必要な莫大な財源も曖昧です。

既成の政党がパッとしないと、欧州もそうですが、その間隙で勢力を拡大するのがポピュリズム政党。特に、新興の「れいわ新選組」が消費税廃止などを掲げて躍進しています。しかし、インフレ目標達成までは国債増発を続けるとの彼らのMMT的な政策は、もう一段のバージョンアップなくしては、毒薬のまま。ほかにもNHK…、安楽死などのワンイシュー政党も登場していますが、これら政党の主張の内容もさることながら、今回の参院選で一つの注目点となるのは、SNSが選挙に与える影響がどの程度のものになっているかが見えてくることかもしれません。

 

●松田政策研究所 参院選期間中に行った対談より

・特番『渡邉哲也さんにいろいろ訊く!時事解説。参議院選挙、年金、消費税、米中関係…』

 

・特番『生田よしかつさんが吠える!参議院選挙と自〇党、、そしてあの人のことも・・・』

 

【ご参考】言論NPO「各党の公約は課題解決のプランとして点数がつけられない事態に~2019年参議院選挙 マニフェスト評価 総論~」

 言論NPOが長年にわたり国政選挙の度に実施してきている「マニフェスト」評価は、当初は、まだ財務省の官僚だった時期に個人の立場で言論NPOの運営や議論創りに関わっていた私が、事実上、そのほとんどを担っていたものです。現在では、各分野の有識者グループが参画し、政策を細かく検証しています。

 この言論NPOの工藤泰志代表は、「全ての政党の公約は日本が直面する課題に対する回答ではなく、かつてのウィッシュリストに完全に後戻りしてしまったため点数化を見送りました。これは言論NPOにとっても、12回目で初めての事態となりました。」と、かなり厳しい評価を、どの政党に対しても下しています。

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http://www.genron-npo.net/politics/archives/7307.html