ブロックチェーン革命について(その2)~政府暗号通貨「松田プラン」の提唱~松田学の論考~ | 松田学オフィシャルブログ Powered by Ameba

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日本を夢の持てる国へという思いで財務省を飛び出しました。国政にも挑戦、様々な政策論や地域再生の活動をしています。21世紀は日本の世紀。大震災を経ていよいよ世界の課題に答を出す新日本秩序の形成を。新しい国はじめに向けて発信をしたいと思います。

 前回(その1)では、なぜ、日本がブロックチェーン革命なのか、これを主導することで日本が世界の中で独自のポジションを取れるのはなぜなのかについて、ブロックチェーンの社会実装の本当の意味にも触れながら論じました。

 前回(その1)は、こちらをご覧ください。↓

 https://ameblo.jp/matsuda-manabu/entry-12439137692.html

 今回(その2)では、日本の財政再建と、日銀の出口戦略と、新たな通貨基盤の創出と、国民の利便性の向上を一挙に達成することになる政府暗号通貨「松田プラン」の中身をご紹介したいと思います。

 以下、本年1月23日にSCIS2019(暗号と情報セキュリティシンポジウム:Symposium on Cryptography and Information Security)でプレゼンテーションをすることになった私の論文から、政府暗号通貨の部分を引用いたします。

私のプレゼンの中で最も注目を浴びた部分です。

 

 ブロックチェーンを行政に実装し、これをトークンと結び付けて暗号通貨を発行することで利便性と効率を追求する考え方は、何も自治体レベルにとどまるものではない。むしろ、国全体で実施したほうが、その効果はより一層高まるはずである。

 以下、政府が暗号通貨を発行することで、日本の財政を累積した国債から解放し、将来世代への負の遺産を解消するためのバランスシート処理により、財政再建を達成するとともに、安倍政権の「アベノミクス」のもと、日本銀行が2013年4月から継続している「異次元の金融緩和」を出口へと円滑に導き、日本に信頼できる通貨基盤を創出することにもつながる「松田プラン」について述べる。

 

●統合政府ベースでみると国債は日銀が保有することで消滅している。

 まず、(図1)に示した日本銀行のバランスシートをみると、アベノミクスのもと、異次元金融緩和政策で保有国債は5年間で約320兆円積み上がり、18年3月末には約450兆円に達した。その裏側で、日銀当座預金というマネタリーベースも320兆円増え、380兆円に達している。これを国と日銀を連結させた「統合政府」ベースでのバランスシートでみれば、1,200 兆円を超える国の負債も、「純債務」ベースで100兆円あまりにまで縮小している。

(図1)

 安倍政権が成し遂げたこの財政再建効果が後戻りしないよう、これを恒久化させるのが、日銀が保有している国債を、満期が到来するたびに、償還期限の定めのない永久国債へと乗り換え、これを日銀が永久保有することについて、政府と日銀がアコードを結ぶ「永久国債オペ」である。結果として、その分、政府の国債は日銀当座預金という、返済義務のない帳簿上の日銀負債に姿を変えることになる。

日銀のバランスシートでは、資産の側に積み上がった永久国債に対応する負債は、金利がほぼゼロの日銀当座預金であるから、政府が永久国債の金利を支払っても、それは日銀の純収益になる。これを国庫納付してもらえば、政府には金利負担も元本償還負担もなくなる。国債は事実上、消滅する。

 今後、日本の財政が破綻する最大の要因は、現在の異次元緩和政策が出口を迎え、金利が正常化するときに現在の何倍にも増える政府の国債利払費である。普通国債発行残高は約900兆円であるから、現在の日銀保有国債の規模の全額の約450兆円に対してこのオペを実施するだけでも、国債発行残高は半分にまで縮小することになるため、結果として、財政再建に寄与する効果は絶大なものがあるとともに、将来世代の返済負担も半減する。

 ここで残る疑問は、それでは、ここまで異常に拡大した日銀のバランスシートが永久にこのままとなってしまい、何らかの形で縮小させられる「出口」が描かれていなければ踏み切れないオペレーションなのではないか、ということであろう。

 

●日銀保有の国債を満期到来時に永久国債に乗り換えて政府暗号通貨で償還する。

 もし、政府が暗号通貨を自ら発行することとすれば、日銀のバランスシートを縮小させていくことが可能になる。政府には通貨発行権があり、これはいかなる国家においても政府が本質的に有する高権である。政府が発行する通貨の形態が紙であるか金属であるか、電子的形態を採るのかの違いがあるに過ぎない。

 実際に、世界では既に、政府が法定電子通貨を発行する動きが出てきている。それも中央銀行ではなく、政府が発行する電子通貨

として検討している国がいくつか存在する。

 他方で、政府が自ら通貨を発行すると財政には規律がなくなる、インフレになるのではないかとの懸念もあろう。しかし、上記の永久国債オペを前提にした発行であれば、そのような懸念はない。預金者が自らの預金を政府暗号通貨と交換したい、民間の個人や企業が現金を政府暗号通貨と両替したいといった、市中の需要に応じて発行する形をとるからである。これに応じる形で、日銀は政府に、自ら保有している永久国債を政府暗号通貨で償還してほしいと要請する。

 政府暗号通貨の発行は、日銀が永久国債など政府に対する債権の償還に際して、日銀からの要請があったときに限定して発行するということをルール化する。現在の日銀券も硬貨も政府が製造はしているが、日銀を通さなければ法定通貨にはならない。政府暗号通貨も、上述のように、日銀というフィルターを通す形にする。政府はあくまで、市中からの需要に応じた日銀からの要請に応じる形で受動的に政府暗号通貨を発行するに過ぎない。

 こうした規律ある政府貨幣の発行ができるようになるためには、日銀が巨額の永久国債と巨額の日銀当座預金、つまり市中銀行が政府暗号通貨に対する市中からの需要に応じられるだけの準備預金が積み上がっていることが必要である。

 政府暗号通貨は、これを日銀が保有すれば、(永久)国債同様、日銀の資産になる。これを国債と等価交換し、市中銀行に売却すれば、国債を市中銀行に売却した時と同様、日銀の資産は減少し、同額の日銀当座預金の減少(市中銀行から日銀への支払い)が起こり、日銀のバランスシートは縮小する(図2)。

(図2)

 

●スマートコントラクトで各種手続きと一体となった利便性の高い政府暗号通貨の普及。

 これは民間の企業や個人が市中銀行の窓口に来て、政府暗号通貨を、自らの銀行預金口座から引き落としたり、現金と両替する形で購入しようとする際に起きる現象だ。

 かつての政府通貨のように、政府が自らの意思で増発ができるものではない。あくまで民間側の通貨多様化の要請に従う形で発行・流通量が増えていく性格のものである。

 こうした民間側からの政府暗号通貨保有の要求に応えられるよう、銀行は支払い準備として日銀当座預金を、日銀は政府暗号通貨と交換する資産として(永久)国債を、それぞれ相当な規模で準備しておかねばならない。

 その意味で、異次元緩和で国債と日銀当座預金を莫大な規模で積み上げて、政府暗号通貨をもっぱら民間の要請に従う形で発行するに必要な準備を用意することになったアベノミクスは、政府暗号通貨を規律ある形で発行できるチャンスを創出したものと評価できるものである。

 これは安倍政権の歴史的功績といえるかもしれない。

 現在、市中マネー(マネーストック)は、狭義で約700兆円、広義で約1,000兆円、存在する。その一部が政府暗号通貨に振り替わる額として、450兆円の国債資産や400兆円近い日銀当座預金は、準備としては十分な水準であろう。

 以上の「松田プラン」のもとで、経済に中立的な形(市中マネーは増えない)で、①法定という価値に裏付けられた暗号通貨の流通(社会の利便性と安心)、②日銀の出口戦略の円滑化、③財政再建、が、同時達成されることになる。

 この効果が十分なものとなるためには、市中において相当規模の政府暗号通貨への需要が発生する必要がある。この政府暗号通貨に、例えば、納税手続き、社会保障関係の保険料や手数料等の納付手続きなど、政府との価値のやり取りに伴う手続きをスマートコントラクトで盛り込めば、国民や企業等の利便性の増大や効率化などの効果が大きく発生することになる。

 政府に個人情報を知られたくない主体は、従来通り、預金通貨や現金で納税や政府部門への支払をすればよい。利便性や効率を重視する主体が政府暗号通貨を利用するだけで、相当規模の需要が発生することになると考えられる。

 言うまでもなく、この政府暗号通貨は、法定かつ現行法定通貨との交換比率が1対1対応となるステーブルコインとして、民間においても広く決済に使用されるペイメントトークンの形で使用されるものである。この点は、特定地域等のみで使用されるユーティリティトークンとなる地域暗号通貨との大きな違いである。

 

 以上の「松田プラン」の意義などについて、次の(図3)にまとめました。

(図3)

 この政策提案は、以前から私が色々な場で発信しておりましたが、書籍の形で世に問うたのが、昨年2018年8月に出版した、松田学「サイバーセキュリティと仮想通貨が日本を救う」(創藝社)の第8章でした。この本を私の友人で、現在は官邸で安倍総理のもとで活躍している谷口智彦さんにお送りしたところ、本書の内容、特に、第8章の「松田プラン」は安倍総理にぜひ、説明してほしいと言われました。ただ、彼自身は外交面でのアドバイザーなので、他のルートを探してほしいと言われた次第です。

 私には安倍総理に直接、ご説明に伺えるルートがなく、そのままになっています。

 この「松田プラン」を、いかなる質問にも答えられる形で説明できるのは、この世の中で私だけですので、どなたか、安倍総理につないでくださる方がいらっしゃれば、ぜひ、お願いしたいと思っております。下記、松田政策研究所のメールアドレスまでご連絡いただければ幸いです。

matsuda@yd-con.com

 

松田学のビデオレター、第105回は「新戦略資源『電子データ』を巡るグレートゲーム、日本もブロックチェーン革命で参戦を!」

チャンネル桜2019年2月7放映。番組の後半で「松田プラン」についして解説しています。こちらをご覧ください。↓