「米中冷戦」?の中で、中国事情と日本の道(その2)~松田学の論考~ | 松田学オフィシャルブログ Powered by Ameba

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日本を夢の持てる国へという思いで財務省を飛び出しました。国政にも挑戦、様々な政策論や地域再生の活動をしています。21世紀は日本の世紀。大震災を経ていよいよ世界の課題に答を出す新日本秩序の形成を。新しい国はじめに向けて発信をしたいと思います。


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世界のデータ覇権を巡って米中間で熾烈な戦いが展開されています。前回(その1)では、私の中国出張の報告と中国の経済事情について述べましたが、それに続く今回は、104日のペンス副大統領の演説でいよいよ本格化する「米中冷戦」について考えてみたいと思います。

前回の記事はこちら↓をご覧ください。

https://ameblo.jp/matsuda-manabu/entry-12428042398.html

 

●米国からみると…、

中国は本来は自由でグローバルであるはずの電脳サイバー空間に国境を引いて主権を宣言し、知的所有権を侵害しても平気な国だと捉えられています。人口的に膨大なデータを擁し、個人情報もあたかも国家のものとして利用できる国には、米国も、未来の技術覇権の核となる人工知能(AI)で太刀打ちできなくなってきたという指摘があります。

現実に、私が客員教授をしている東京大学大学院Sisocの研究員の方からの報告によれば、AIの国際カンファランスに出てみると、研究成果の数も勢いも、もはや中国は米国を抜いたと実感せざるを得ないということでした。

中国では情報技術の研究開発に関して国家主導でアジェンダが網羅的に設定され、そこに兆円単位のカネが投じられており、軍事費からも相当程度の資金が回っているそうです。ちなみに、日本政府では、この分野のSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)の予算は45億円と、3つぐらい桁が違うようです。

そんな中国は米国にとって脅威そのものでしょう。これは、欧州が個人情報は個人のものと明確化してルールを打ち出したように、日米欧とは真っ向から対立するパラダイムにみえます。最新の情報デジタル技術まで中央集権管理に活用し、統制を強める中国秩序の伸長にどう向き合うか。これは米国だけの問題ではありません。

 電子通貨の分野では、例えばアリペイなどが日本に進出していますが、個人データのルールが不明確な中国との間でこうした動きが進展していくことに、日本としても大きな懸念を抱かざるをえません。10月半ばの言論NPOの東京-北京フォーラムでも、デジタルエコノミーの分科会では、この点について日本側の関係業界の方々が中国側パネラーの皆さんに鋭く突っ込んでいましたが、中国の方々からは明確な答は聞かれませんでした。

私も、この分野の第一線の中国実業家に問い質しましたが、今の中国はこれからルールが整備されていく段階にあるとの答え。ただ、中国国内でも国民から個人情報保護の声が全くないわけではなく、いずれ、何らかのルールは整備されるという見方もあります。


いずれにしても、この問題は、ブロックチェーンの研究を重ねている中国人民銀行がいずれ、人民元暗号通貨を発行する際には、大きな問題になるでしょう。ブロックチェーンは、本来、誰もが参加できる分散型の仕組みですが、これを中央管理者がプライベートチェーンとして活用すれば、中央集権管理の上で大きな力を発揮することになります。暗号通貨の発行者は、他の仕組みでは考えられないような高い精度の情報を得ることができるとされます。

暗号通貨は貿易金融で最も使い勝手が良いという指摘もあります。もしかすると、中国は、暗号通貨をもって一帯一路を中心に人民元の基軸通貨化を目指しているのではないか、こうした憶測も必ずしも否定できないかもしれません。この暗号通貨を巡る米中覇権争いについては機会を改めて論じます。

●ペンス演説と米国の戦略

 104日のペンス副大統領演説については次の図をご覧ください。

この演説は、かつてレーガン大統領がソ連を「悪の帝国」と決めつけたことを想起させるものですが、当時、レーガンは指令型社会主義で停滞していたソ連経済を軍拡競争で疲弊させ、これが1991年のソ連崩壊につながりました。

米国は自国の脅威となる国に対しては、国家体制を崩壊させることも辞さない国。ペンス演説で私がもう一つ、想起したのは、90年代の日本でした。

米ソ冷戦の終了後、米国にとって次の脅威となったのが、日本の金融力でした。かつてロックフェラーセンタービルを買収した日本勢、80年代の日米円ドル委員会から始まっていた米国の対日戦略は、90年代には日米構造協議へ、そして大蔵省解体へと向かい、日本の官僚機構を締め上げました。冷戦後、金融力をもって世界の覇権国の座を得ようとしていた米国にとって、日本の金融資本市場を自らのコントロールのもとに置く上で邪魔になったのは、そこにナショナルフラッグを立てる大蔵省だったといえます。

米国の対日戦略は着々と練られ、官民一体で遂行されてきたものと考えられます。当時、米国ウォッチャーである私の知人の某評論家は、これを第二の占領政策に擬していたことをよく覚えています。すなわち、戦後の財閥解体は株式持ち合い解消、農地解放は市場開放、内務省解体は大蔵省解体…。

大和銀行NY支店の事件を契機に、米国の指導者からは日本の大蔵省の護送船団行政の弊害を指弾する声が次々と飛び出し、同省のスキャンダル、接待汚職捜査、そして財政金融分離という一連の流れにつながっていきました。その帰結は、官僚主導国家体制の崩壊だったといえるでしょう。

今度は中国です。今回も米国は国家体制の変更まで視野に入れているかもしれません。日本の場合、当時の最大の戦略分野は金融でした。現在、それは「情報」です。ここにナショナルフラッグを立てるのは中国共産党。米国の照準は国営企業体制から共産党一党独裁体制にまで当てられている可能性があります。ペンス演説でもオーウェル的世界への言及がなされています。

●難しい対応を迫られる日本

121日の米中首脳会談でトランプは習近平に対し、追加制裁関税の発動について90日の猶予を与え、今後、中国が知的財産関係を中心にどのようなタマを差し出すかが問われています。このところ話題となっているファーウェイ逮捕事件は、情報技術を巡る米中覇権争いやペンス副大統領による米中関係リセット宣言などがいよいよ本物なのかと感じさせるものがあります。

そのような中で、日本は中国との関係で難しい対応を迫られることになります。このところ改善してきた日中関係の流れをそのまま促進することが果たしてできるのかが問われてきます。そのような中で、日本国内からも、10月の日中首脳会談で決められた日中通貨スワップは媚中外交ではないかと、安倍政権は保守勢力から強い批判を浴びました。長年にわたりODAで中国を発展させてきた日本に対して感謝もしない中国は、こうした支援をしても、また状況が変われば掌を返してくるだろう…と。

ただ、このスワップ協定、その直後に日本がインドとの間で結んだ通貨スワップ協定とは異なり、中国への支援という性格は薄いようです。むしろ、日本企業がビジネスのために人民元を調達しやすくことに主眼があり、すでに日中財務当局間で進められてきた、日本の対中投資の枠(RQFII)の拡大や人民元オフショア市場の創設といった流れの延長上にあるものです(下図)


また、一帯一路についても第三国での日中協力が出ていますが、日本政府(特に財務省)の本音は、日本が一帯一路に協力するための4条件(経済性、開放性、透明性、債務の持続可能性)とは、これらが満たされない限り協力しないという意味だというものです。

一帯一路に限らず、これらが満たされるプロジェクトなら世界どこであれ協力するし、満たされないものは世界のどのプロジェクトも協力できない。これは、質の高いインフラパートナーシップの伊勢志摩原則を国際社会に打ち出している日本としては、当然の立場でしょう。恐らく、一帯一路の中でこの条件を満たすプロジェクトはほとんど存在しないというのが財務省の見方です。

問題は、ビッグデータやAI、自動運転、さらにはドローンまで、日本の某大手電気メーカーのトップが、残念ながらデジタルエコノミーではもう、日本は中国には追い付けないとしている状況において、日本には中国と情報技術面で連携していくビジネス上のメリットがあるということです。

中国の持つソフトの力と日本の持つハードの力(工学力、現場力)を組み合わせることは、日本をも利する面が大きいでしょう。AIロボットとの共存については、ロボットを人間より下に置くキリスト教ヨーロッパ文明とは異なる共生文明という点において、日中には共通の土俵があります。この面で、欧州が個人情報についてGDPRという国際スタンダードを創ったが如く、AIについても倫理規範のスタンダード創りへと動いている現在、日中が先手を打って世界の基準を構築することが日本の利益になるという声にも一理あるといえます。

今後、日本でニーズが爆発的に増大していく介護の分野でも、介護ロボットの普及が喫緊の課題ですが、この面でも中国との連携には意味がないことはありません(下図参照)

いずれも日中両国にとってウィン・ウィンの成果をもたらすことになります。

日本としては何よりも日米同盟を優先し、米国や日米欧連合に不利益になることは慎むべきですし、情報技術や重要な情報がこれ以上、中国に漏洩しないよう、米国と共同歩調をとっていくことが喫緊の課題です。

ただ、その枠組みの中で、中国からも実益を得ていくしたたかさが、これからの日本には問われているといえるでしょう。

相互依存を深める現在の世界には、敵味方の単純な二分法では泳いでいけない複雑さがあります。米中覇権争いの中で日本に問われているのは、では、日本は自らの道をどのように切り拓いていくのか、国際社会の中での自国独自のポジションをどう取っていくのかを見極めることだといえます。機会を改めと論じます。

 

松田学のビデオレター、第98回は「中国出張で見えたもの~中国経済とパックスアメリカーナの先行き」

チャンネル桜112日放映。

 

 

 

 

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