松田まなぶの上海訪問記 中国経済最新事情 | 松田学オフィシャルブログ Powered by Ameba

松田学オフィシャルブログ Powered by Ameba

日本を夢の持てる国へという思いで財務省を飛び出しました。国政にも挑戦、様々な政策論や地域再生の活動をしています。21世紀は日本の世紀。大震災を経ていよいよ世界の課題に答を出す新日本秩序の形成を。新しい国はじめに向けて発信をしたいと思います。

 1月某日、上海を訪問、目的は中国政策筋との意見交換でした。中国でもトランプ大統領誕生で話題沸騰、質問攻めになりました。

Q.「TPPが挫折したら日本はどうするのか?(中国主導の)RCEPが優先課題になるのではないか?」

→A.「トランプがいずれ現実的な政策に転換するとき、選挙時の公約を変更できるような材料や環境を与えるのが日本の役割だ。そのために、G7で最も信頼されている安倍総理とトランプ氏との個人的な信頼関係は世界全体にとって重要な意味がある。安倍総理の言うことなら耳を傾けよう、と。だから、真っ先に訪米したのだ。」

Q.「中国が進める一帯一路構に対して日本は協力するのか、競争するのか?」

→A.「中国の利益ではなく、そもそも世界にとって何のための一帯一路構想なのか。まず、そのことを習近平は明らかにすべきではないか。中国によるインフラ整備については、例えばアフリカなどでは色々な摩擦を起こしていると聞く。日本の場合は、質の高いインフラパートナーシップ、だ。現地の民生への貢献、環境との調和、ライフサイクルコストなどの原則を伊勢志摩サミットで打ち出した。」

Q.「中国は現地との間で必ずしもうまくいっていない。日本の長年にわたるノウハウを教えてほしい。」

→A.「日本の国民性は、相手の目線に立って、ともに働き、ともに分かち合う、だ。一朝一夕に模倣できることではない。」等々…。

 先方は、トランプノミクスでドル高となっていく中で、中国に対する保護主義的な圧力が高まるだけでなく、いずれ、かつてのプラザ合意のような形で米国が強力な圧力をかけてくることを心配していました。

 上海は短い滞在でしたが、朝から晩まで議論。合間の食事が楽しみでした。

「上海老站」の典型的な上海料理はさすがに美味でした。

 

●中国経済の現状

議論の内容はさておき、ここで以下、先方から聞いた最新の中国経済の状況をご紹介しますと…、

 いつも巨大マンションが目立つ中国も、最近は不動産投資を抑制しているようです。

 ただ、不動産バブルや過剰設備、過剰債務ばかりが注目される中国経済にとって、今は、むしろ、人件費や不動産価格などのコスト高で、民間企業の事業が困難化していることが大きな問題であるようです。

 サービス業など新しい分野を担える人材が不足していることも大きいようです。企業を国営企業などに売却して換金して引退する事業家が増えているとのこと。

 かたや、中国経済の中核は国営企業ですが、問題はコーポレートガバナンスで、効率が悪く、腐敗しやすく、新技術もなかなか導入されず、今年から本気でその改革に乗り出すようです。

 グループ企業が多く、不動産事業など本業とは関係のない事業を売却したり、株や資産を売却したり、民営化を進めるということです。民間企業のほうが市場に参入しやすく、外国との競争も自由にできるという認識のもと、企業の指導者を合理化し、市場の要素や有能な人材を取り入れていくという改革だということです。

 今の体制が良くないことは誰もが知っており、内部からの改革は期待できない。国営企業の中に共産党の力が張り巡らされており、習近平の指令もなかなか届かない、党の中の派閥も複雑ということで、企業の中でのそうした共産党の力を弱めてでも、企業の力を強めようとしているのが、習近平の腐敗撲滅運動の一つの眼目だそうです。

 その習政権、最近では軍も警察も司法も抑え、政権基盤が強まり、政治は安定期に入ったとのことです。

 「一帯一路構想」の眼目は、上海条約機構を中心に、安全保障の観点や資源などの目的から、ウズベキスタンやカザフスタンなど中央アジアの国々を取り込むことにあるようです。もう一つ、人民元の国際化を、やりやすい所から進めるということもあるようです。

 中国はもともと、成長する東南アジアを狙っていますが、そこには南シナ海問題も絡み、複雑なので、やりやすい地域からというのが一帯一路構想の本音だそうです。

 最近、人民元の急落が大きな問題になっていますが、資本流出規制を相当大がかりにやっているので、暴落には至らないという認識のようです。規制を発動しているので、人民元の国際化はいったん後退し、むしろ、人民元の「健康化」に関心が向かっているようです。

 よく、人民元の裏付けは外貨準備(米ドル保有額)にあるとされますが、それはあまり根拠がないようで、むしろ、中国が有する莫大な資産が中国マネーの源泉だと言ったほうがよさそうです。そもそも土地は国有で、その使用権が投資対象になってきたわけですが、その限界は、すぐには来ないようです。

 なぜ、中国はあれだけおカネがあるのか、その秘密は、こうした土地の国有制ということのほかに、歴史的に長年にわたって蓄積された財産ということもあるようです。中国の土地を掘れば、大昔から隠されてきた金がザクザク出てくるという噂すらあるほどです。ただ、かつて国民党が多くの資産を持っていき、共産党には資産はないという話もあるようですが。

 バブルが言われる中国、不動産バブルに対して中国政府はなすすべを知らず、まずは取引を抑制し、現状を凍結した上で、日本のバブル崩壊の経験も踏まえながら対策を考えようとしているようです。つまり、取引を少なくするために、二つ目のマンションは買うことも売ることもできないよう規制しており、北京でも上海でも不動産取引はストップ状態、暴落のリスクも上がるリスクも封じ込め、少なくとも今年のバブル崩壊はない状態にしているということです。

 今回、中国側から強く伝わってきたメッセージは、中国は、市場は広大、おカネは豊富、しかし、技術やノウハウがない、しかし、日本は逆に、人口減少で市場は縮小、おカネも回っていないが、技術やノウハウがある、両国には貴重な補完関係があり、今がチャンスだということでした。

 特に、中国側が関心を持っている分野として、まず、環境のニーズが高く、土壌の改善、空気の浄化(例えば、スリーエムというPM2.5対策の米国製のマスクが供給不足で大変儲かっている)、廃プラスチックをオイルにする技術、タイヤの再利用技術、工業用石炭(他の代替燃料はコスト高なので、汚染の出ない石炭利用技術に高い関心)といったもののほか、省エネ用の新技術、電池パックの技術、電力輸送ケーブル(温度が下がって凍結するのを防止するための塗料など)、産業用ロボットにも関心が高いそうです。

 ただ、多くの日本側企業は、中国の市場やおカネがほしくても、技術が盗まれたり、現地での収益の国内還流に不安があったりなど、いま一つ、中国企業やビジネス環境などに対する信頼度が高くないことがネックのように思われます。

 今年は日中国交回復45周年。写真は当時、田中角栄と周恩来の両首相が乾杯したものと同じマオタイ酒ですが、日中の補完的協働関係の発展のためには、中国側にこそ課題が多いようです。