トランプ276、合理よりも感情、建前は本音の前には無力なのが民主主義なのか | 松田学オフィシャルブログ Powered by Ameba

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日本を夢の持てる国へという思いで財務省を飛び出しました。国政にも挑戦、様々な政策論や地域再生の活動をしています。21世紀は日本の世紀。大震災を経ていよいよ世界の課題に答を出す新日本秩序の形成を。新しい国はじめに向けて発信をしたいと思います。

 「大方の予想」が相次いで覆る。英国の「ブレグジット」に続き、米国では「トランプ276」、勝利確定の票数276票、これで、2(日本は)、7(泣く泣く)、6(無理を聞く)にならないことを祈ります。

 あるシンポジウムで米国の世論調査の専門家であるブルース・ストークスさんという方が、

…自分たちが子どもだったときの母親は専業主婦だったのに、今や職場では女性が進出して大活躍、50年代の偉大なるアメリカの時代まで黒人はバスに乗れなかった、いまや同性愛者たちまでマイノリティーではなくなった、そんな米国社会の変化についていけないと感じている白人男性たちの『時計の針を巻き戻せる人間』への期待がトランプ現象につながった…

という趣旨の指摘をしていました。

 もちろん、権利平等を進めてきた米国は正しいことをしてきたのですが、人間の深層心理には、建前では割り切れない非合理な面があることが如実に現われたのかもしれません。

 その是非はともかく、こんな、人には公言できない本音が、世論調査ではつかみきれなかったようです。聞かれて、トランプ支持とは言えなかった米国人が多かったとのこと。

 しかし、それが「民意」になったとすれば、それだけ、格差拡大、実質所得の低迷など、米国民の閉塞感が強かったということでしょうか。

 既成の政治やエスタブリッシュメントたちに対する不信と言われていますが、かつて「チェンジ」を唱えたオバマのときもそうだったように、国民が変化を求めるとき、それを投票のかたちで体現できる民主主義のダイナミズムが米国にはあると受け止めるべきなのか。

 最近、インテリ層は、世界的な民主主義の危機をさかんに議論していますが、ポピュリズムをいくら嘆いてみたところで、合理よりも感情で激動していく世界の潮流には無力にみえます。

 これにどう向き合うか。不確実性が高まる国際社会、これで「世界の警察官」がいなくなるとすれば、日本の安全保障は米国依存がますます許されなくなる。

 保護主義が強まっていくとすれば、海外の成長に活路を求めねばならない日本は、まずはTPPを批准するなど、あえて自由貿易の先導者としての存在を国際社会で築いていくのか。

 軍事はシステムで動いていますので、日米同盟がここまで機能的に一体化している以上、いくら大統領といえどもシステムまでは簡単に変えられませんから、急に物事が大きく変わるわけではないでしょう。メキシコとの間に万里の長城など実際には作れないでしょう。

 選挙時の公約と、政権をとってからの実際の政策との乖離について、国民が納得できる説明をするのも政治家の重要な仕事だと言いますが、トランプの大きな仕事がこの仕事になる可能性もあると思います。

 ただ、長期的には大きな変化の始まりもしれません。

 いずれにしても、トランプ大統領の誕生は、日本人に、自立的な戦略思考に向けた覚醒を促しているように感じます。

 写真は、英国に詳しい宇田信一郎氏と英国EU離脱について議論した某勉強会の場です。ブレグジットは自国の新しい立ち位置へと、英国民が自ら選んだ運命だと申し上げました。

 大衆民主主義の時代は、国益とは何かを決めるのも大衆。

 それだけに、民主主義に向き合う政治家の資質が世界的にもますます問われる時代になったのではないでしょうか。