松田まなぶのビデオレター第32回、財政を語ることは政治家の基本。メリハリある財政運営を。 | 松田学オフィシャルブログ Powered by Ameba

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日本を夢の持てる国へという思いで財務省を飛び出しました。国政にも挑戦、様々な政策論や地域再生の活動をしています。21世紀は日本の世紀。大震災を経ていよいよ世界の課題に答を出す新日本秩序の形成を。新しい国はじめに向けて発信をしたいと思います。

国政選挙を見据えて、経済対策の議論がいよいよ本格化しています。
経済政策の上で政治が力を発揮できる最大の現実的なツールが財政です。

国政を担う政治家に不可欠な資質は、財政についての知見です。
政治に次の時代を切り開くことが求められているとき、これに加えて政治家に問われる資質は、自ら財政を語る言葉を有し、官僚からは出てこない知恵を発揮することではないでしょうか。

だからこそ、
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松田まなぶのビデオレター、第32回は「日本の財政の仕組み、財政法と国債の話」。チャンネル桜、4月5日放映。
こちらをクリックすると、今回の松田まなぶの動画を見ることができます。


 世界経済の安定のため2月に上海で開かれたG20でも、各国は金融政策に頼らず、財政、構造政策など総合的な政策をとるべきとされました。

●財政出動に向かう中国
 かつてリーマンショック後に4兆元(56兆円)の経済対策で世界経済を救った中国は、今回も積極財政を打ち出そうとしています。
 中国は過剰設備、過剰債務と言われますが、今回も再びやるのか。実は、中国は財政状態はそんなに悪くありません。先の全人代でも、「2016年の財政赤字の対GDP比を3%に引き上げ」とされたところです。
 減税に加え、「財政支出と民間資本を活用し、高水準のインフラ投資を継続」とされています。
 政府投資で、道路投資8,000億元以上、鉄道建設1兆6,500億元、日本円にすると、この2つだけで、40兆円規模です。
 さらに、西部開発でもっとインフラ投資をするという話もあります。
 中国の場合、西部にインフラ投資のフロンティアがあり、雇用の吸収先としてサービス産業などへの労働力移動がノウハウの不足で難しい中国では、インフラ投資なら雇用を移せるということになります。

●では、日本は?
 他方、日本は先進国最悪の財政状況です。
 それでも、消費税率引き上げの再延期がささやかれるほど、経済はパッとしていません。
 かと言って、消費増税をする場合は、それによる景気マイナス効果を打ち消すだけの財政出動が必要であるのも事実です。

 景気か財政が…。両者はいつも二律背反になっています。
 私はかねてより、こうしたガチガチの状況を打破するために、財政運営の仕組みに工夫を加えることを提案してきました。

●国債の負担は3世代に及ぶ
 下図は今年度の国の一般会計予算です。歳出は社会保障も公共事業も国債費も、歳入は消費税も他の税金も建設公債も赤字公債も、一種のどんぶり勘定になっているように見えます。


しかし、実は、支出と結びついている収入があります。下図をご覧ください。




 一つは建設公債です。将来世代に資産を残すための借金です。本来は、バランスシートで資産負債管理ができる世界です。財政法の4条で、公共事業や出資金に充てられる借金だけが許されており、これを「4条公債」と言います。

 もう一つは消費税です。社会保障以外には充てられていません。それで社会保障費が不足する分は赤字国債で賄われます。

 これら以外の政府の経常的な支出が、消費税以外の税収、税外収入で賄われます。そして、その不足分も赤字国債で賄われます。

 以上のように整理すればわかりやすくなります。

 実は、赤字国債は「特例公債」と呼ばれ、財政法違反です。
 現状では、歳入の3割が、この財政法違反の例外措置として赤字国債に依存しています。
 その例外がずっと40年ぐらい、ほぼ一貫して継続してきました。

 さらに大きな問題は、この赤字国債も「60年償還ルール」に入っていることです。
 国債はいったん発行すると、満期ごとに借り換えを続け、60年かけて税金で償還する建前になっています。
 ですから、毎年度の国債発行額といっても、それは、その年度の予算支出に充てられるための「新規国債発行」だけでなく、満期が来た国債の返済財源を調達するために発行される国債、すなわち「借換債」が大半を占めています。下図をご覧ください。



 国債を発行すると60年という、およそ3世代にわたって借金返済のための税負担が続くことになります。
 これは建設公債については許されることでしょう。
 なぜなら、将来の世代にも、それによって形成されたインフラなどの資産が残り、そこからの受益があるので、それに見合った負担を将来世代が分かち合うことには合理性があるからです。

●大蔵省の悪知恵
 しかし、将来世代に資産を残さない使途に充てられる赤字国債は、将来世代にツケだけを残します。
 
 戦後の日本で最初に本格的な赤字国債の発行に踏み切ったときの大蔵大臣だった大平正芳氏は、のちに総理になって亡くなるまでこのことを悔やみ、今の世代のうちにできるだけ早く償還すべきだと考えていたそうです。

 ところが、当時、大蔵省は悪知恵を働かせました。
 赤字国債まで「60年償還ルール」に入れてしまったのです。
 こうした債務の「飛ばし」の結果、国民にとっては毎年度の国債償還の痛みが小さくなり、官僚にとっては毎年度の予算編成がやりやすくなりました。
 まさに、秀才が得意とする「自分の庭先をきれいにする」、「問題の先送り」でした。
 もしかすると、このことが日本の国債発行残高をずるずると拡大させてきた大きな原因だったのかもしれません。

●財政規律とは…
 ただ、これは逆に言うと、一種の発想の転換につながることかもしれません。

 つまり、「財政規律」の考え方を組み立て直して、それは、第一に、赤字国債を減らすことであり、第二に、将来に資産を残すための国債はバランスシートで資産負債管理を徹底することであると、財政規律のあり方を再定義するということです。
 何もかも一緒くたにして「国債=悪」と決めつける必要はないかもしれません。

 いま、赤字国債が増えているのは、社会保障の財源が消費税収だけでは圧倒的に不足していることが主因です。将来世代に、負担をおんぶに抱っこ状態で、社会保障制度が維持されています。
 これでは将来世代はあまりに気の毒。世代間の負担を調整するのが、消費税率です。

 日本の財政運営は、このことがもっと国民にとってわかりやすいようにすべきです。
 私は、「社会保障特別勘定」を提案しています。それによって、「一億総納得社会」をめざす。

●総需要創出
 他方。将来世代に必要なインフラ、子や孫たちからも感謝されるような資産、これらを形成するのであれば、そうした資産にふさわしい債務調達を積極的に考えていくべきです。
 私は、もう一つ、「政府投資勘定」を提案しています。

 国債も一般会計も、どんぶり勘定でなく、機能別に分けてメリハリある財政運営をしていく。

 こんな知恵を国政で実現していきたいものです。