第15回「瀬戸際中国が描く2つの経済再生物語」チャンネル桜、8月11日放映。
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中国経済は大きな転換を迫られています。かつてのような「世界の工場」としての投資主導型、輸出主導型の成長路線は採れなくなり、国内では、消費主導型成長への移行が不可欠です。それが、農村から大都市へと人口集中をさらに進めて消費を促進する「都市化の物語」。輸出促進のために為替介入し、結果として外貨準備が積み上がって過剰流動性やバブルの原因にもなるという政策も採れなくなりました。人民元を国際通貨にしようという野望のためには、金融資本市場の自由化が迫られますから、資本規制は撤廃して人民元レートを市場実勢にゆだねるしかなくなってきます。
他方で、リーマンショック後の四兆元(57兆円)の景気対策で膨れ上がった過剰設備や過剰債務問題の解消のためには、国内の過剰な供給能力の捌け口を海外に求めざるを得ません。それが「一帯一路」。「シルクロード経済ベルト」と「21世紀海上シルクロード」で、インフラ整備を中心に、アジアを一体化させる中国の地政学的な戦略構想です。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20150820/23/matsuda-manabu/44/ff/j/t02200165_0800059913401925673.jpg?caw=800)
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図をご覧ください。ここに例示しただけでも、中国がこの物語に込めた野望には限りないものがありそうです。経済面では、TPPで日米中心の経済秩序がアジア太平洋地域に築かれようとしていることへの対抗軸との位置づけになりますが、他方で、日本にとってはもう一つ、安全保障面も気になります。太平洋からインド洋にかけてのシーレーン、そして、あの南シナ海も射程に入っています。
日本は手をこまぬいているわけにはいきません。経済面では、1,100億ドルの「質の高いインフラパートナーシップ」を政府は掲げています。もともとは財務省の私の同期の浅川財務官の発案だと聞いています。アジア太平洋地域のインフラ整備の上では、特に「質」の面で、中国の資本金1,000億ドルのAIIBよりも大きな力を発揮すると期待されます。TPP戦略も日本の国益上、重要な位置づけを占めてきました。
もちろん、これら中国の夢はそう簡単には実現しませんし、これをもって中国を敵視しているだけでは問題解決になりません。大事なのは、日本自らがアジア太平洋地域に独自の堂々たる存在を築くことだと思います。やはり、基本は日本の経済力であり、「国力倍増」です。