松田まなぶの論点 アベノミクスの失敗を自ら認める安倍政権 | 松田学オフィシャルブログ Powered by Ameba

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日本を夢の持てる国へという思いで財務省を飛び出しました。国政にも挑戦、様々な政策論や地域再生の活動をしています。21世紀は日本の世紀。大震災を経ていよいよ世界の課題に答を出す新日本秩序の形成を。新しい国はじめに向けて発信をしたいと思います。

衆院・財務金融委員会 11月12日 一般質疑における松田まなぶの質問のポイント
答弁者:麻生太郎・副総理兼財務大臣、黒田東彦・日本銀行総裁

([ ]内は答弁者)

導入…消費税率引上げに向けた準備
○税率アップの準備ができていない。
・税収のすべてが年金、医療、介護、少子化対策の社会保障四経費に回る消費税は、国民から国民へのおカネの移転に過ぎない。高齢世代、現役世代に将来世代を加えて国民全体を捉えれば、消費税率引上げは世代間の負担の配分を是正するもので、国民経済全体では負担増にはならない。
・政府は、そのような国民の間でのおカネの移転を仲介する役割。その政府も、量的規模ではOECD諸国の中でほぼ最小の政府。

○財政の見える化改革
・次世代の党が提案する公会計改革や財政健全化責任法案について、総理は立法と同じ趣旨が実現するような財政運営と答弁。
・そうではなく、国民にとっての「見える化」が自立の観点から肝要。

Ⅰ.財政の不都合な真実と政治の責任
○財政健全化のロードマップ
・先の政府の試算(2014年7月「中長期の経済財政に関する試算」における「経済再生ケース」)では、政府は、今後の日本の実質経済成長率について、これまでの1パーセント前後から2020年代には2パーセント台半ば近くへ、名目経済成長率については、今後3%台前半から後半へと高まることを想定している。
・しかし、これは相当に無理な想定であり、2010年代は長期金利を名目経済成長率よりも低く抑え込む政策(まさに日銀による力づくの金融政策)が継続することを前提にしている。
・それでも、前述のように、2020年度にプライマリーバランス目標が達成される姿にはなっていないのである。
・この政府試算では、政府債務残高/GDP比が、今後、2023年度にかけて毎年度少しずつ低下を続ける姿が示されており、それは、2020年代にこの比率の安定的低下を実現するという政府のもう一つの目標が達成される姿を示すものであるが、ここに大きな偽りがある。
・すなわち、この試算では公表されていなかったが、背後で想定されていたのは、長期金利がいずれ名目経済成長率を上回るようになって、2020年代半ば以降になると政府債務残高/GDPは収束どころか逆に、拡大に転じる姿だった。
・2024年度には団塊の世代が全員、後記高齢者世代入り。年金に加え、医療と介護で財政爆発。これまで2024年度以降の財政シミュレーションは公表されてこなかった。中期試算も2023年度まで。
・ようやく、財政制度審議会がシミュレーションを提出。
・2020年度プライマリーバランス達成の次なる政府目標は、国債残高/GDPの安定的低下。財政審のシミュレーションでは、2020年度のプライマリーバランス目標が達成され、かつ、名目3%の理想的な経済成長が継続しても、この比率が収束するための要対応額は、2020年度からの数年間で約50兆円。
・これは消費税率換算で15%と、かつて甘利大臣は答弁。
・単純計算では、消費税率は30%程度になる。
⇒これをどこまで抑制するかに政治的選択肢。
(問) 財政審に報告された「財政の長期推計」は、現行制度のもとでは、大幅な歳出削減ができない限り、10年以内に最低、30%近くまで消費税率をアップしなければ日本の財政は持続可能ではないことを示すものではないか。これをどう受け止めているか。[大臣]
・この現実から出発しなければならない。
・もはや中福祉のためには高負担という国に。北欧型か、米国型か、日本型か。
⇒いずれの社会を選ぶのかが意味ある政治の真の選択肢。未来の日本の選択。
 将来の消費税率の想定は、日本の経済社会や社会保障のあり方を、北欧型か、米国型か、その中間の日本型を目指すのかによって異なってくる。日本としては、やはり、中間の日本型を目指すべき。

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○これまでの財政運営について政治の責任
・ここまで消費税の合意形成ができなかったことが問題の本質、将来推計がこうなら、合意形成メカニズムの構築が大事。
・消費税は出発点の取り方で大違い。現状を正常と捉えれば、歳出増、社会保障の増大のために消費税アップをするのか、という論理になる。増税の前にやるべきことあり、の論理に。
・現状を異常と捉えれば、5%の中に世代間不公平の是正の部分があることが見えてくる。この不適正な部分は、過去の消費増税先送りの累積部分。
・甘利大臣は、この部分は5%アップ分(13兆円あまの)のうち、7兆円あまりと答弁。基礎年金の国庫負担の財源を国債ではなく、消費税にしたことも、ツケ回しの解消といえるが、それも併せれば、10兆円あまりに。
⇒国民に対する説得という政治の崇高な仕事の放棄、怠慢。政治としてどう責任をとるか。
・まずは、このことへの認識が必要。
・本来は、歳出増=増税⇒乗数は1の経済効果。ましてや消費税は国民から国民へのおカネの移転。国民経済トータルでは、景気に悪影響を与えない引上げ方が可能だった。
・今般、1年半の短い期間の間に税率を2倍に。そのうち、将来世代へのツケ回しを減らす分が、現時点でのフローベースでは純粋な国民負担増になる。この部分が、政治が課題を先延ばししたことによって国民にもたらされた負担増。⇒これまでの政治が責任をとるべき部分。
(問) 今般のトータルで5%の消費税率引上げのうち、将来へのツケ回しを減らす部分は、現時点での国民経済的な負担の純増分といえるが、これは、これまで日本の政治が課題の先送りを繰り返してきたことがもたらしたものと捉えるべきではないか。政治として、その責任をどのように果たし、今後、そうした先送りが繰り返されないようにするにはどうしなければならないか、大臣の所見を問う。[大臣]

Ⅱ.税率引上げと経済
〇税率アップで再びデフレ経済に戻るのか?
・現在の経済状況を踏まえて、という論理には疑問がある。
・そもそも日本の15年にわたるデフレは消費税率引上げによるものではなかった。カネ詰まりによるものだった。
・病気への処方箋は、病気の真因に基づいてなされるもの。
・カネ詰まりが起こるとすれば、国債投げ売りのほう。デフレを回避したいなら、予定通りの引上げ。

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〇消費増税と経済状況
・安倍総理が法律で定めたことを実行するかどうかはニュートラルとしているが。これは異常な状況。
・7-9のGDPの数字をみてということだが、そもそも1年以上も前の統計数字で来年10月という1年後の経済情勢を判断し、それでその時点での増税の可否を判断すること自体に無理があるのではないか。
・この条文に意味があるとすれば、1年後にもほぼ確実に経済が停滞していると見込まれるほどの、例えばリーマンショック規模の経済へのマイナスインパクトが足元で生じている事態ではないということを確認するという意味。
・これは、足元の今年の7-9月期に、それぐらいのレベルの予見されなかった変動が生じている可能性があると考えているということになる。
・引上げ決定を逡巡すること自体、足元でこれぐらいの深刻な経済悪化が起こっていると認識していることになる。
・だとすれば、アベノミクスで想定していた経済の流れから外れている可能性があると認識していることになり、アベノミクスは失敗だったと認識していることが論理的帰結になる。
・今回、消費税率を引き上げたぐらいで次の消費税率引上げを簡単に決断できない経済状況になったとすれば、それこそ、アベノミクスには効果がなかったことを立証するものではないか。
・加えて、7-9月期の経済指標を見極めることのもう一つの意味は、今回の8%への引上げのマイナスインパクトを踏まえて、来年10月の引上げのマイナスインパクトを見極めるということにある。
 消費税率の引き上げが中長期的な経済停滞につながったり、それによってかえって税収が減少するという事態が中長期にわたって続いたという事例は、国際的にも、存在しない。
・足元の日本経済で起こっているのは、名目賃金の伸びが、消費増税や円安などによる物価上昇に追いついていないことによる実質所得の低下。
⇒これと同じ経済状況が1年後も続いているかもしれないと考えていることになる。そのこと自体が、敗北主義の経済政策。
・本来は、アベノミクスが成功し、来年10月には経済状況は改善している、あるいは、改善しているような経済運営を約束する、と言うべきもの。
⇒アベノミクスの効果を将来的にも自己否定していることになる。
(問) 一年後の来年10月の時点での消費増税の是非の判断に迷っているのは、その時点になっても経済は改善していない、つまり、アベノミクスも今後の経済政策も、結果として一年後の時点で成功していないことを想定していることになり、今後の経済運営に対する政権としてのコミットメントが問われることにならないか。[大臣]
・先送りして解散総選挙? アベノミクスへの評価を問う? それは自己否定。審判してください、悪いことしました、と言っているようなもの。

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Ⅲ.リスク管理と金融政策
〇リスク管理
・テールリスクを意識すべき。現状は、「危機認識先送り状態」。
⇒危機認識先送り状態の終焉。
・これはもう、有事対応の世界に。国家としてのリスク管理の問題になる。
(問) 消費増税先送りとなった場合に懸念される国債投げ売り、金利急騰などのリスクに対して、黒田日銀総裁は政策的に対応のしようがないと述べているが、消費増税を決めない場合に向けたリスク管理について、どう考えているのか。[大臣]
・「やめられない、止まらない、日銀の国債購入」
・国債購入を増やしたところで金利低下余地はほとんどないのに、なぜ、今般、長期国債30兆円追加購入を決定したのか。現状は、放置しておくと長期金利が上昇しかねないからではないのか。力づくでの金利抑制のための追加購入ではないか。と疑ってしまう。
・この政策はもう限界。効果が出ない。
(問) 短期金利がこれ以上、下がらない中で、国債購入によって長期金利上昇を抑制すれば、銀行にとっては融資の利ざやの確保が困難になり、かえって銀行の融資を抑制する方向に働き、マネーストックの増大を抑制することにならないか。[日銀総裁]
・それどころか、国債購入で金利上昇リスクはとんどん高まっていく。…新発債10年ものの7割を日銀が購入。市場は玉不足。4月14日の債券市場で長期金利の指標となる10年もの国債の取引がゼロに。薄いマーケットではささいなことで金利が上がる。絵を売りたくても市場がなければ値がつかないのと同じ。買う人がいなければそうなる。
(問) 長期金利上昇を抑制しようとして国債購入を増やせば増やすほど、市中の国債マーケットの厚みが低下し、何らかの要因で長期金利が上昇するリスクが、かえって高まっていくのではないか。[日銀総裁]
・10%の先延ばし。10年内に将来30%?の世界なのに、10%にもできない。
・国債への信認低下はマーケットだけでない。中央銀行も。
・いまの日本国債は、最終的には日銀が買ってくれるという信頼で買われているという面。日銀が買わなくなったら大変なことに。
(問) 消費税率10%への引上げが先送りされた場合でも、日銀は現状のような国債大量購入を続けるのか。国債への信認が低下した場合、そのような国債を大量に購入・保有することは、通貨の番人として受け容れられることなのか。[日銀総裁]
・問題は、実体経済。もし、デフレに舞い戻るとするなら、こうした長期金利上昇。
・欧州債務危機型のデフレ。かつては民間の不良債権。今度は財政要因での銀行の資産価値毀損⇒マネー収縮。
・ただ、国債残存期間は商業銀行はすでに平均3年までに圧縮したので大丈夫という声もある。他方で、信託が運用している企業年金ではまだ8年であり、業態によって異なっている。
(問) 消費増税の先送り→国債への信認低下→長期金利の上昇→銀行保有の国債価値の毀損による信用収縮によって、欧州債務危機型のデフレリスクが日本でも懸念されると考えるか。[日銀総裁]

〇日銀によるリスク資産の購入
・こうした極端なマネタイゼーションの立場をとるものではないが、日銀が銀行におカネを出す、金融資産を購入するだけでは、マネーは増えない。限界がある。
・日銀のバランスシートを2年間で2倍にして、銀行の融資の増加やマネーストックの増加が2~3%ということでは、あまりにコストパフォーマンスの悪い政策ではないか。
・通貨の価値や信用は、日銀が保有する資産の価値によって裏付けられている。日銀の資産は国債であり、金利の上昇で国債の価値が大きく下がれば、日本の通貨の信用はガタ落ちになる。「国債本位制」
・日銀が異常なレベルでの国債購入を継続し続ければ、マネーが増えない割には、リスクが拡大する一方。ブタ積みを抱えて金融政策は身動きできなくなる。
・むしろ、実体経済に直接働きかけるべきではないか。
・日銀はリスク資産の購入へと、もっと踏み切るべきではないか。実物の購入は、論理的にはマネーを直接増やす手段になる。
・投資分野を絞り、そこに政府保証をつけて、日銀がそれに投資する勘定を設ける。
・後世に負債は残さない。未来への投資。次世代の日本を創る。マネーは確実に増える。
(問) 日銀がマネーを増やそうとしても、日銀が専ら銀行にマネーを供給しているだけでは、そこから先の実体経済にマネーが思うように回らないのであれば、日銀が自らリスク資産を購入する、あるいは、例えば、政府保証のついた国家主導の技術開発に投資するなど実体経済に直接マネーを供給する仕組みを構築することを検討することは考えられないか。[大臣、日銀総裁]

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