松田まなぶの論点 有事に強い国づくりのために | 松田学オフィシャルブログ Powered by Ameba

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日本を夢の持てる国へという思いで財務省を飛び出しました。国政にも挑戦、様々な政策論や地域再生の活動をしています。21世紀は日本の世紀。大震災を経ていよいよ世界の課題に答を出す新日本秩序の形成を。新しい国はじめに向けて発信をしたいと思います。

衆院内閣委員会 11月5日 マネロン2法案審議における松田まなぶの質問のポイント
答弁者:山谷えり子・国務大臣(国家公安委員長)(+財務省政府参考人)

(以下、  で囲った問番号は大臣に対してぶつけた質問)

〇マネロンへのチェックを強化する必然性とは
・90年にFATF(マネーロンダリングに関する金融活動作業部会)は「40の勧告」を策定。金融機関による顧客の本人確認、疑わしい取引の金融規制当局への報告が盛り込まれた。
・当時、私は、大蔵省より、この会議に担当者として出席。当時から、日本の金融機関にとっては受け容れ困難な厳しい監視の導入が議論されていた。日本は銀行の立場から反対していた。
・日本は自由市場主義の米国や国際標準に比べて、民間の活動に対するモニタリングが薄い国だと感じていた。
(問1)わが国でFATFが求める国際標準並みのマネロンチェック体制までは必要ないとの判断がなされてきた背景如何。もし、そうだとすれば、今般の規制強化は実効面で意味はないのではないか。単なる国際会議でのおつきあいということにならないか。今般、あえて法改正を行う必然性を説明できるような何らかの事情の変化や予想される事態が実態面で想定されているのか。

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〇国家のリスク管理と国益のための経済介入
・自立、レッセフェールを基本とする経済システムや社会システム
しかし、これからは違う。21世紀を迎える頃から、まさか大丈夫と思っていたものが…。
・リスク認識の高まり。国家の役割が高まっているにも関わらず、新自由主義的発想で判断が邪魔された。経済に国が介入するのか、という認識。平時の発想。リスクへの対応が後手後手に回った。
・住専に対する6,850億円(農協系など預金者保護)⇒大手の破綻で、直後に98年に100倍の公的資金枠が設定。システミックリスク。
・国家システムの問題。平時においても有事に対応できる基盤が必要。
・2001年には同時多発テロ⇒私は関税局監視課長時代、税関への顔認識システムの導入で、プライバシーの侵害と朝日新聞1面で名指しで批判されたような時代だった。
・2011年には東日本大震災。千年に一度。
・テールリスク(起こる確率は極めて低いが、いったん起きると、取り返しのつかない事態になるという性格のリスク)にどう対応するか。
・太平洋プレートの変化。首都直下型、東南海大地震。
・温暖化?→ゲリラ豪雨や相次ぐ災害。御嶽山で火山噴火まで。
・20世紀は戦争の世紀⇒21世紀の新たな戦争、脅威は自然災害。
・財政もテールリスクという点では同じ(国債の投げ売り)。
⇒有事への備えが最大の国家課題に。
・安全保障もそう。沖縄。中国による不動産購入。石垣島や西表島。
・WTOなどの国際ルールは投資の自由を謳う一方、米国も中国も対内直接投資を規制。国家安全保障上の観点。
・米国には「外国投資・国家安全保障法」(旧エクソン・フロリオ条項)があり、外国資本による合併・買収・取得案件に対し、大統領権限でこれを中止させることができる。
・市場か国家か。尖閣か経済か。
(問2)国家としてのリスク管理の強化が問われる中にあって、今後、国家安全保障など国益の観点から経済取引などへの介入を強化せざるを得ない流れにあると考えられるが、一般論として、このことは、本来、民間の自由に委ねるべき市場経済の基本原則に反する面があり、「市場か国家か」という対立軸に関して、大臣はどのような論理を組み立てているか。

(問3)海外からの対日直接投資について、国家安全保障や治安維持の観点から、外為法に基づく現行の規制は十分と考えているか。特に、外国人による不動産取引については、国益の観点から立法措置が必要ではないか。

〇有事法制と憲法改正
 一般に「有事」という言葉で思い浮かぶのは、①戦争(サイバー攻撃も含む)、②大災害、③その他、広範囲にわたって治安や社会秩序が混乱したり、国民の生命や財産が脅かされる事態(内乱やテロなどの破壊活動や、疫病や急激な環境汚染、食料・エネルギーなど物資の途絶なども含む)、の3類型に代表される緊急的な事態。
それらをここでは、平時の統治体制では対処できない、一刻も早い対処が求められる事態として、「国家緊急事態」と表現。
 ただ、国家の有事としては国家緊急事態以外にも色々なケースが考えられる。恐らく、国家基盤の破綻現象も、広い意味での有事。思い浮かぶものとしては、社会保障や財政の破綻、国防や治安体制の破綻、国民の健康や生命保護の破綻、物資供給システムの破綻、社会の破綻(文化、国家アイデンティティー、モラル、教育、精神、結合力、コミュニティーなどの崩壊)が挙げられる。
 重要な国家基盤の持続可能性を確保し、その破綻を防止することや、破綻状態にある国家基盤を再建することも、平時における「有事対応」として国家の担う機能。
ただ、憲法との関係で論じられるのは国家緊急事態。問題となるのは、それへの対処が、国民の権利に一定の制約を加えたり、平時には法的に授権されていない行政権限を行使するなど、憲法の一部を停止して「超法規的措置」をとることを必要とすること。
 これは「国家緊急権」と呼ばれ、国家非常事態に直面した際に、通常の行政手続きを経ずして国家が行使する権限。具体的には、戒厳状態や非常事態宣言を発令して憲法の一部を停止または制限する、予算に基づかない財政措置をとるなどの手段が考えられる。日本の現行憲法には、これに該当する規定はないが、多くの国の憲法に、この国家緊急権の規定がある。
 何も憲法に規定するまでもなく、およそ国家である限り、国家緊急事態においては国家緊急権の発動が当然に想定されていると考えてもおかしくない。発動の際の要件や手続きなどを定めることで、政府が適切に対応できるよう、有事法制を整備しておくことは、日本の現行憲法下でも当然になされねばならないこと。3・11は、こうした日本の法制上の欠陥を見事に露呈。
(問4)有事法制の整備や、憲法に緊急事態条項を盛り込む憲法改正の必要性について、大臣の所見如何。具体的に、検討を行っているのか。

〇朝鮮総連に資金提供を行っていた朝銀信用組合の公的資金による救済
・三宅博議員の10月29日の衆院法務委員会での質疑。拉致事件や文世光事件に関与してきた朝鮮総連に対して資金を提供した朝銀信用組合に対する1.4兆円の公的資金の注入を行った日本政府は、テロ行為に協力したことになるとの指摘。上川大臣からは、犯罪の成否は個別に判断されることなので、答は差し控えるとの答弁。
(問5)拉致事件等に関わっていた朝鮮総連に資金提供を行っていた朝銀信用組合を公的資金で救済したことは、テロ行為への協力に当たる可能性があり、こうした金融機関はむしろ破綻させるべきだったとの意見がある。このようなケースにあっては、信用秩序の維持よりも国家安全保障が優先されるべきだったという考え方もあり得るが、公安を担当する大臣としての所見如何。

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〇個人情報の活用
・日本では個人情報は「政府にプライバシーが監視される」。戦時の遺物のトラウマ。ここからの脱却も「戦後システム」からの決別。
・スウェーデンの事例。個人情報管理が国民に根付いている。戦争の脅威にさらされた欧州では国に対する信頼が違う。日本は平和ボケ。
・スウェーデンでは全ての資産取引に個人番号が必要。
・国家には国民の生命と財産をしっかりと守ってほしいと考えるよりも前に、「私」の領域に政府が介入することへの警戒感が異常に強い日本は、その意味でも平和な国。
・スウェーデンではかねてから、住民登録が教会に対してなされてきたという歴史的な背景も。個人情報が何らかの公的な存在によって把握されているという状況に対するスウェーデン国民の習熟度が歴史的に高い。
・個人情報は保護から活用へ。安全安心、見守られていることの価値。地震シミュレーションも。
(問6)本法案の目的達成の上で、マイナンバー制度にはどのような効果が期待されるか。本法案の目的に資するためにも、マイナンバーを預金や金融資産に拡張すべきではないか。マイナンバー制度を将来、有事対応にも活用していくことについて、大臣の所見如何。

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〇外為法と金融行政
・湾岸戦争のときのイラク資産の凍結時の経験。
・1990年の湾岸戦争のとき、欧米各国政府はいち早く大統領命令や大蔵省指令などによってイラクの資産を凍結したが、日本政府は国会が必要な議決をするまでの間、法的根拠のない状態のまま、イラク資産の凍結を大蔵省による金融機関への行政指導に頼らざるを得なかった。
・それができたのも、外国為替取引を外国為替公認銀行という特別な地位を大蔵省が与えた銀行に限定するという、かつての外国為替管理における「為銀主義」が営まれていたから。
・かつての為銀主義。日本型行政で小さな政府。民間に特典を与える見返りとして義務や責任を負わせる。
・アジア通貨危機のとき、日本の当局は裁量行政批判で身動きできず、その間に米国財務省は米銀に対韓国エクスポージャー確保を行政指導。韓国は米国・IMFの支配下に。
⇔事後摘発型行政。大きな政府。金融の検査監視体制。米国と比べて人員が一桁少ない。
・日本版SEC設立に際し、大蔵本省でも、銀行局、証券局、国際金融局に分かれていた金融機関に対する検査機能を統合。SECは行為規制、大蔵本省は財務の健全性に係るチェック。外為法上の独自の検査、為替検査も、ここに統合。本当に大丈夫か? 平時の発想。
・有事を意識した検査監視体制は外為について強化されているのか。
(問7)外為法上の行政調査について、金融機関等に対する検査監視体制の運営の現状如何。現在、何を目的に、どのような観点から、どのように行われているのか。かつて為銀主義のもとに、外国為替公認銀行に対外資金取引を集中させていた頃に比べて、現状のもとでの効率性や効果を、どのように評価しているか。
[財務省国際局可部審議官答弁]

日本国家のリスク管理強化のために、山谷大臣にはがんばってほしい。

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