松田まなぶの論点 安倍政権には局面変化が生じ始めたのか | 松田学オフィシャルブログ Powered by Ameba

松田学オフィシャルブログ Powered by Ameba

日本を夢の持てる国へという思いで財務省を飛び出しました。国政にも挑戦、様々な政策論や地域再生の活動をしています。21世紀は日本の世紀。大震災を経ていよいよ世界の課題に答を出す新日本秩序の形成を。新しい国はじめに向けて発信をしたいと思います。

衆院内閣委員会 10月15日 大臣所信に対する松田まなぶの質疑のポイント(要旨)
答弁者:菅義偉官房長官、甘利明経済財政担当大臣


(問)安倍政権の路線
[松田]
我々、次世代の党は、日本維新の会のときから政権に対して是々非々で臨んできた。維新の会も次世代の党も、国家観そのものは安倍総理に大変近いものがある。自民党全体はどうかわからないが、少なくとも安倍政権は、憲法改正、集団的自衛権、道州制などの統治機構改革といった、国家の枠組みのレベルでは我々と同じ方向を向いていると認識。次世代の党が積極的に取り上げている従軍慰安婦などの歴史問題についても、安倍総理も菅長官も我々と認識は同じだと思う。
しかし、先般、平沼党首の代表質問、あるいは私も本会議の代表質問で申し上げたが、今回の総理の所信表明演説も、あるいは今国会でのテーマ設定も、我々次世代の党が安倍政権に対して是々非々の「是」とする論点が棚上げになっており、ほとんど取り上げられていない。憲法改正や道州制を含めて、戦後レジームから決別して新しい国づくりをするというのは、安倍政権の基本的な目指すところであるはずだが、改めて官房長官の決意を確認したい。
[菅官房長官]
 安倍政権というよりも、憲法改正は、私ども自由民主党のまさに立党の精神。それは自民党所属国会議員全員が所有。道州制に対しても、自民党は公約に掲げている。その思いは全く変わらない。

4

(問)保守とは何か
[松田]
 次世代の党は、自立、新保守、次世代という三つのキーワードを掲げて結党された。安倍政権も、本来の保守政党としての自民党として、この点は共通ではないか。
ただ、個別の法案等を見ると、例えば、自立ということを標榜しながら、結果として中央依存、官僚支配につながりかねないような中身もあるし、予算の組み方もある。この点は我々が政権の外側でチェックをすることで、チェック・アンド・バランスによって日本を最適解に導いていくということだろう。
 私たちが提唱する公会計改革とは、国民みずから、財政について把握し、将来世代に対する現役世代としての責任をきちっと考えながら財政の選択をしていくということであり、これも自立の精神につながる。道州制も、地方の自立、自立的経済発展ということで、自立という考え方を明確にしていけば、安倍政権も次世代の党の基本的な方針には賛同できるのではないか。
この夏に野党三党の保守系議員が集まって、保守とは何かということを随分議論したが、保守というのも、一義的に何が保守かはなかなかわかりにくいところがある。単に現状を変えないのが保守ではないということは明らかだが、安倍政権がよって立つはずの保守主義とはどのようなものか、考え方を問う。
[菅官房長官]
 改革マインドというものを常に持ちながら、古きよきものは残していく。

(問)従軍慰安婦に係る参考人招致について
[松田]
杉田委員が従軍慰安婦の問題を聞いたので、省略しようと思ったが、けさほど近藤委員が配った朝日新聞の「綱領」を見て、改めて聞くこととした。これをみると、最初に、「不偏不党の」と始まっている。しかしこれは、先日、予算委員会で次世代の党の山田宏幹事長が「偏向報道」と表現したとおりだった。また、「真実を公正敏速に報道し」とある。真実の報道ではなかった。まさにこの新聞社の根幹が揺るがされている。
予算委員会で総理も、「日韓関係に大きな影響を与えた、そして打撃を与えた、この記事によって傷つけられた日本の名誉を回復するためにも今後努力していただきたい、民主主義がしっかりと健全に機能する上においては、報道の自由、極めて重要であろうと思います、であるからこそ報道機関の責任は重たい」と答弁している。
我が党は、先般、山田宏が申し上げたとおり、今国会において、朝日新聞の社長あるいは河野元官房長官の参考人招致ということを求めている。改めて官房長官の見解を問う。
[菅官房長官]
この誤った報道によって多くの方が苦しみ、そして日韓関係、さらには国際社会で日本の名誉が傷つけられたというのは事実であった。朝日新聞においては、現在、第三者委員会において徹底した検証を行うと社長が表明している。しっかりと検証していただいて、それと同時に、日本だけでなく海外にも大きな影響を与えているので、しっかり是正に努めてほしい。いずれにしろ、この問題については、国会で判断することに委ねるべき。

2

(問)集団安全保障と憲法解釈
[松田]

 7月1日の閣議決定では、「新三要件」が示された。閣議決定を論理的に見る限り、集団的自衛権だけではなく、集団安全保障の方も、新三要件さえ満たせば、武力行使ができるという論理構造になっている。一方で、総理の答弁は、「自衛隊がかつての湾岸戦争やイラク戦争での戦闘に参加するようなことは、これからも決してありません」とした。
先般の閣議決定は政府としての新しい憲法解釈を示したものだが、この総理答弁は憲法解釈として言っているのか、あるいは、憲法解釈に上乗せした安倍政権の方針として言っているのか、あるいは、この閣議決定、憲法解釈の論理的な帰結として出てくるものなのか。
[菅官房長官]
 今回の新三要件の必要最小限の範囲を超えるものであるから、湾岸戦争やイラク戦争に参加することはできないというのは明快。
[松田]
 我々も基本的に方向性は同じだが、ただ、我々が考えているのは、安全保障の全体像を示して、その中で、ネガティブリスト方式で、できないものを明らかにしていくということ。そうであれば、やはり安全保障基本法をしっかり出して、それと一体の形で、憲法解釈はこうである、しかし、できないものはこうである、こういう全体像が示されないから、国民は、なし崩し的に拡大解釈されていくのではないかという不安を抱くことになっている。集団的自衛権の行使を支持する立場としても、非常に説明がしづらいところ。やはり基本法というものを、我々も提案するが、政府としても、その点についての物の説明の仕方について一層の工夫をしていただきたい。
[菅官房長官]
 今、この閣議決定を基本として法案を整備している。法案が整備されて国会に提出されたときには、そこはしっかりと、そうした不安は払拭できる。

(問)物価上昇
[松田]

 物価はもともと経済の体温計と言われているもの。体調の結果として体温たる物価が上がったり下がったりする。何が何でも物価が上がってよいかというと、そうでもない。何が重要かといえば、体温が何を要因として上がったり下がったりしているか、つまり体の方が重要である。インフレ目標2%ということが議論されるたびに、インフレ率が大事なのではなく、やはり経済が大事なのであり、あえて言えば名目成長率であると、昔から議論してきたもの。
現在の物価上昇は、やはり実態を見れば、円安などによるコストプッシュ型の物価上昇という要素が相当強い。もともとインフレ目標2%の物価上昇とは、体温が上がっていくその結果として体調がよくなっていく、経済全体がよくなっていって、その結果として2%に上がるというディマンドプルの2%の想定だったはず。しかし、実質可処分所得が前年比5%ものマイナスが足元で続いている。物価上昇による実質的負担というのは、消費税の増税であれば、その分が社会保障の給付に回るのであれば国民全体で見ればチャラになるのに対し、交易条件が悪化することによって実質的な所得がコストプッシュで下がるというのは、じわじわと現われてくる大きなマイナス要因である。
特に、為替予約というのは数年単位でなされている。これまでは、円高のときに、輸入の支払いのために結んだ為替予約が効いていたのが、これから円安に洗いがえされていくと、輸入物価がさらに上がっていく要因になっていく。企業の収益も圧迫されていく。
現下の日本経済は、アベノミクスが想定していた経済の動きと少し軌道がずれてきているが、その点についての甘利大臣の見解をうかがいたい。
[甘利大臣]
 一巡目はうまくいったと思う。賃金も、まだ不十分ではあるが、過去に例がないくらい上がった。ただ、一巡だけでは物価上昇プラス消費税上乗せ分を乗り越えていけない。これが常にサイクルで起きるようにしなければならない。二巡目の環境をつくるというのは大変大事。好循環がしっかりとでき上がっていくように最大の努力をしているところ。

3

(問)円安のメリット・デメリット
[松田]

 昔、プラザ合意後の円高のときに、経済企画庁系のある著名なエコノミストが、円高はプラスマイナス差し引きでおつりが来ると言っていた。逆に言うと、円安は、プラスマイナス差し引きで、取られる分の方が多いということになるのかもしれない。しかし、これは経済の局面によって変わってくる。
例えば、円安が典型的に効くのは、不完全雇用の状態。不稼働資産があるので、円安で海外への輸出がふえれば、不稼働な資源が稼働し始めて、所得が増え、乗数効果が働く。しかし、逆に、現状は、失業率がかなり低下しており、完全雇用と言っていいかどうかわからないが、自然失業率に近づいている。その状態にまで来ると、そういった現象が起こらず、逆に、円安のデメリットの方が大きい局面に入っているのではないか。
望ましい円レートの水準は幾らかといえば、それはファンダメンタルズを反映したのが良いと言うに決まっているが、先般、黒田日銀総裁は、予算委員会での答弁で、ファンダメンタルズを反映した円安であれば、むしろ経済にとってプラスであるとした。ただ、本当にそうなのかはやや疑問である。
今の日本経済がどういう状態であれば、円安が大きくメリットに出てくる、あるいはデメリットになる、そのあたりの判断の分かれ目について、どう考えているか。
[甘利大臣]
 実体経済を反映した為替レートだとすれば、為替は強い方がいい。購買力は強くなっていくし、輸入品は安く入ってくる。それでも輸出は競争力があるというのが最高である。差し引き、輸入によるマイナスと輸出によるプラス、特に輸出によるプラスは、物量ベースではなく、利幅を稼ぐというのと、円ベースで返ってくるということの両方ある。それを差し引きして、残っている方が多いのか、むしろなくなってしまう方が多いのか。その幅の上の方かなと考える。

(問)TPP
[松田]

 TPPについて、所信表明では、大臣は「国益をしっかりと最終的な成果に反映すべく全力を挙げて交渉に取り組んでまいる」と述べていたが、ここで言っている「国益」というのは、これを普通に解釈すると、自民党政権の場合、農業の関税をできるだけ守って、今の保護方式を維持すると受け取れる。しかし、TPPが目指している最終的な成果とは、日本に関して言えば、従来の関税で保護する方式から、直接支払い、ヨーロッパ型の財政方式ということにしながら開放していくということになる。そこには齟齬がある。甘利大臣が言う「国益」が、TPP自体としての「成果」とどのように関連しているのか、論理的に説明していただきたい。
[甘利大臣]
 TPPは、知的財産権の共通のルールをつくる、あるいは環境に対する取り決めをきちっとするなど、広範なルールづくりに資するもの。大事なところは、そのルールがこれから
もっと広範囲な場所でのルールになっていくのではないか、だとすれば、チャーターメンバーになっておいた方が得だということである。その点の全般を含めて、国益、国民益と称している。
[松田]
 TPPというのは、アジア太平洋に経済取引の秩序づくりをするということにほかならない。それが日本の国益を反映した秩序づくりになるということが、TPPの成果と一致すると認識。そこをもっときちんとアピールしていただきたい。頑張ってほしい。

1