松田まなぶの論点 アベノミクス成功のカギは銀行の融資姿勢とTPPにあり | 松田学オフィシャルブログ Powered by Ameba

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日本を夢の持てる国へという思いで財務省を飛び出しました。国政にも挑戦、様々な政策論や地域再生の活動をしています。21世紀は日本の世紀。大震災を経ていよいよ世界の課題に答を出す新日本秩序の形成を。新しい国はじめに向けて発信をしたいと思います。

~4月25日衆院内閣委員会での質問のポイント(対甘利明・経済財政担当大臣:一般質疑及び「株式会社地域経済活性化支援機構法の一部を改正する法律案」法案審議)~

〇アベノミクスについての評価

・消費増税後、色々な経済指標が出ており、これまでの推移からみても、消費増税で景気が腰折れすることはないが、心配なのは、それ以前の問題としてアベノミクスの効果の持続可能性。
・アベノミクスは日銀と政府予算におカネを積んだだけ。
・世界一の300兆円の対外純資産が示すように、日本には十分なおカネがある。問題はおカネが国内で回らないこと。
・アベノミクスはまだ、この問題の根源に触っていない。
・日銀では準備預金が「ブタ積み」状態。→オバマ大統領は「尖閣」への言及でアジア太平洋への「リバランス」を印象付けるために来日したが、日銀の「ポートフォリオリバランス」はどの程度の効果があったのか?
・課題は国民一人ひとりまでおカネが回るか。給料が上がるか。
・総理が観桜会で詠んだ句。「給料の上がりし春は八重桜」
・観桜会に来た人は社会的成功者ゆえ、上がったかもしれない。
・高級官僚は給料が元に戻る。国会議員も波乱がなければ歳費が元に戻る。
・しかし、庶民にとっては、①給料が上がったのは一部ではないか、②もし仮に多くの人の給料が上がったからといっても、恒常所得仮説によれば、今後、ある程度持続的に賃金が上昇するとのコンフィデンスがなければ、所得アップによる消費増大には結びつかないのではないか。

(問)賃金上昇など、アベノミクスの現時点での評価について。異次元の金融緩和で銀行のリスクテイクがどのように進み、それが実体経済にどのような影響を与えたか、経済再生担当大臣としてのこの1年間を総括すれば、当初の期待と照らしてどのような評価になるか。
⇒甘利大臣答弁



松田
・もう一つ、考えるべき要素は、実質賃金。
・消費税の影響を除いた実勢でみて、円安などで物価は賃金以上に上昇しているのではないか。
・円安などによるコストアップで物価が上がる限り、それは実質賃金を低下させ、デフレ効果になる。大事なのは需要が増えることによる物価上昇。

・インフレ目標2%
・デフレは貨幣的現象というのは結果論。貨幣数量説のMV=PTは恒等式。因果関係ではない。日銀のバランスシートを拡大できても、最終需要が増えないと市中のマネーは増えない。
・安倍総理は2つの点で経済を間違えている。一つは、デフレを貨幣的現象と捉えていること。もう一つは、甘利大臣が前回の私の質問に対する答弁で認めたように、97年の消費税率引き上げがその後のデフレ経済の原因になったと考えていること。
・甘利大臣からぜひ、安倍総理に進言してほしい。
・しかも、実際のGDPと潜在GDPとの差であるGDPギャップがプラスの需要超過にならないと望ましい物価上昇にならず。
・潜在GDPは労働と資本の投入を過去のトレンドからみて平均的な水準とみた場合に実現可能なGDP
⇒これが潜在的な供給力かも疑問。ギャップはもっと大きいかもしれない。

(問)日本経済の需給ギャップの解消はいつだと考えているか。需給ギャップの計測に当たって、供給力に対応するGDP水準をどのように計算しているのか。
⇒豊田欣吾・内閣官房内閣審議官答弁…「ギャップの解消は2015年度頃」
⇒松田「やはり容易ならざるもの」
・おカネが回る仕組みとして今回の本改正案がどう評価されるかが重要。

○REVIC改正法案について
●官民ファンドの評価
・民業圧迫懸念が言われる。
・官民ファンド…政府出資による機構設立傾向。官民ファンドが流行。クールジャパン機構、PFIファンド、今国会では国交省の海外インフラファンド。

(問)近年、我が国で設立が相次いでいる「官民ファンド」という政策ツールが、日本経済にとって必要不可欠である理由について、政府はどのように説明するのか。官民ファンドの定期的検証に当たる機関として「官民ファンド総括アドバイザリー委員会」は、地域経済活性化支援機構(REVIC)についてはどのような検証方針で臨んでいるのか。
⇒古谷雅彦・内閣官房内閣参事官答弁

松田
・官民ファンドには色々と批判があり、「リスクテイクは民間で」が基本なのは原理論としてはその通り。
・しかし、日本には2つのネック。
 一つは、年金基金の運用が国債に偏っていること。
 もう一つは、個人がリスクマネーを出さないこと。
かつて護送船団方式の銀行は、国がリスクカバーしていたので、銀行がリスクマネーの主体。家計はそこにノンリスクで預金。護送船団が崩れたのに、家計の行動は以前のまま。
 それを補完するものとして官による呼び水は不可欠。必要悪。
 リスクをとる個人の不在→国によるリスク分担のあり方が変化しただけ。
背後には、家計の資産保有の平等性。社会構造の特質。資産格差なくしてリスクテイクは家計からは起こりにくい。



●年金資金の活用。GPIFの運用多様化。
・本来、年金とは国民経済の果実。
・年金は労働分配の一形態であり、その財政的基礎は国民の生産に依拠する必要。国債ではなく、事業投資の成果の分配を基盤にすべき。
・欧米の公的年金では、年金の産業金融的な重要性に鑑み、一定割合の産業投資が法制化。
・多様なVC(ベンチャーキャピタル)やPE(プライベートエクイティ)という金融ベンチャー会社と呼ばれる存在は、適切な規制の下に、国策として積極的に奨励・育成されるべき性格のもの。
・運用の基本は、リスクとリターンを勘案した適切なポートフォリオ。日本の金融市場そのものが、それを組みにくい構造にあったことが問題。
富を生むのは国債ではなく、産業。日本の産業金融は銀行による間接金融が主体。しかし、企業の成長の過程では、その各段階において、それぞれにふさわしい金融のあり方がある。
①新規設立・研究開発時期や商品化時期などではVCがリスクキャピタルを担う時期。
②上場した企業がさらに成長するための私募調達や事業再生などはPEがリスクキャピタルを担う時期。
 日本ではこれらの時期においてファンドの運用資産が集まらないボトルネックが発生。
 規模集中のリスク(寡占リスク)にさらされているが、資産運用という業務は「規模の経済」とは反する性質のもの。
・GPIFは運用資産の約55%を国内債、その多くは長期国債。厚生労働省から指示されている基本ポートフォリオによる。
⇒異次元金融緩和が奏功してインフレ率がアップし長期国債の金利が上昇することで相当な評価損。国債は低リスクではなく、国債への集中はかえってリスクを高めている。
⇒年金支給に大きな支障に。
・現在のような異次元緩和実施中に、日銀は年金基金から国債購入⇒年金側では運用資産の多様化が正しい答。
・プレーヤーが多様化し、かつ寡占的状態を排除された「適切な規模に限定された」状態が、本来の市場の機能が活性化され、投資家にも良好なリターンとリスクの関係が提供される状態。⇒リスク軽減にも寄与

(問)企業の成長過程の各々の段階に即した金融サービスの提供が図られるよう、独立系のVCやPEの育成を強化するなど、金融の担い手を多様化し、日本の金融市場に、資金の借り手に全体として総合的な金融サービスが提供されるよう、様々なメニューがそろった総合的な金融クラスターを形成することは、わが国の金融行政の目的の一つに据えられているのか。それに向けてどのような進展が図られているのか。また、どのような措置が講じられているか。
⇒福岡資麿・内閣府大臣政務官答弁

●銀行の融資姿勢と経営者保証に関するガイドラインに従った特定支援
・本機構のような官民ファンドが必要なのは民間金融部門の不備。
・銀行は、と言えば…、
・バブル崩壊後、多くの有為な中小企業経営者が、個人保証で消えていった。
・いったん会社を破綻させた者はレッテルを貼られて二度と立ち直れない社会。
・そもそもが銀行の融資姿勢。
・事業やヒトに融資しているのではなく、担保土地か個人保証に融資している。
・不動産鑑定士に従う銀行判断。
 「思考停止・責任回避」…コンプライアンスと混同
  ⇔コアコンピタンス:成功するのは10のうち2つ。
・稟議で通りやすい責任回避姿勢の結果、銀行はリスクテイクより国債運用に。
  ⇒異常な低金利。
・民間銀行がリスクテイクしない=デフレ経済=財政が回るという異常な状態に。

(問)銀行にリスクテイクを促すビジネスモデルへの革新に向けて、金融行政はいかなる方針で臨んでいるのか。その成果如何。
⇒福岡資麿・内閣府大臣政務官答弁

松田
・銀行側は、融資が伸びない理由を資金需要の低迷と説明しているが、これまでの銀行の手のひらを返すような行動が、借り手である企業側で、銀行融資を回避し、手元流動性を厚くする防衛的な態度を生んだことも大きな原因。
・この状況を打破するためには、よほど強いメッセージを金融行政が出す必要。
・そもそも銀行側では経営やヒトを見抜く力が低下
・私の父は某都市銀行の元銀行員で、銀行の仕事とはヒトや事業や経営を見抜くことだった。退職後、ある公的信用保証機関のお手伝いをしていた時、最近の銀行員は銀行業務の能力がなくなっている、結局、騙されて保証の実行に追い込まれている、と嘆いていた。
・金融処分庁がいくら変身しても、銀行自体に能力がなくなっている。
・官民ファンドの中でもREVICは、金融機関の役割と相当重なる。
・本当の課題は銀行の本来の仕事の立て直しではないか。
・同時に、新しい銀行のビジネスモデル
・「共に働き共に分かち合う」日本型の金融モデル
・本機構が実績を上げて、色々なファイナンスモデルの成功事例が生まれてくれば、それを民間金融機関が吸収し、機能強化していく、それを見極めて機構が使命を終えた段階で解散する。
⇒このような建付けにすれば、民間の自立的成長を生み出すことをサポートするものとして、本機構や今回の改正の設計思想が明確化、官民ファンドの弊害への懸念は消える。



(問)地域経済活性化支援機構が必要なのは、民間金融機関の問題(リスクテイクの機能不全)なのではないか。本機構は、こうした銀行側の機能強化が奏功するまでの間の臨時的なものと位置付け、これを見極めて存続を判断するという意味での時限措置として構成すべきなのではないか。
⇒甘利大臣答弁「まったくその通り」
⇒松田「甘利大臣はこのことを認めたということ。」
…(注)これは附帯決議に関連(後述)。
・不動産担保や個人保証に頼らない中小企業融資の促進策こそが王道。
・問われているのは金融行政。機構は、こうした銀行側での融資改革が奏功するまでの間の臨時的、非常時措置。
・今回の法改正は、機構が便利だからと、様々な要請が出てきたことに応えるところに落とし穴。
⇒銀行の改革にとってのモラルハザードと官民ファンドの機能の肥大化。

○TPP
・TPPは本質的には、日本の開国ではなく、日本に世界(成長するアジア太平洋地域を皮切りに)を開いてもらうこと。
・安倍政権は「聖域なき関税撤廃」に反対すると公約して政権に就いた。
・そこの出発点が間違っているから、甘利大臣は苦労。
・そもそも関税撤廃は、すぐに関税をゼロにするという選択肢はない。
  そんなことをしたら国内農産品が壊滅。
関税撤廃は10年から何十年もかけて行うもの。米国の自動車関税もそうした超長期のタイムスパンの話が出ていた。
・しかし、いきなり、この着地点を出すと、相手国に市場を開いてもらうという本筋の交渉上、有利ではない。
・この本筋の交渉を有利に展開するために、関税撤廃をはしないと突っ張る。
・まだ、落としどころは出せない。
・答えられないと思うが、こういう理解でよいか。



(問)海外との間に農業の生産性に差があるのであれば、国境措置という方式によって外国農産品と競争させない保護政策ではなく、
(1)財政方式でゲタをはかせて競争させ、競争によって生産性が高まる度合いに応じてゲタ(財政負担)を低くしていく方式による保護のほうが、結果として農業を保護することになること、
(2)これと並行して、生産性の向上に応じ、例えば15年以上の長期にわたり、徐々に関税を引き下げる関税撤廃を行うのであれば、農業が打撃を受けることにはならないこと、
⇒このエコノミクスが正しいことを甘利大臣は認めるかどうかを問う。

⇒甘利大臣答弁…よくわかっていない趣旨不明の答弁

松田
・今般、日本の農業保護政策は高関税という国境措置の方式から、直接支払という財政方式に大きく転換しようとしている。だからこそ、その意味合いをきちんと明らかにすべきという趣旨である。
・TPP交渉の本筋は先日申し上げたように、新興国・途上国を日本に対して開いていただくことにある。日本にとっては「攻め」の場であることを強調してほしい。
・これは、法の支配(Rule of Law)を経済面で貫徹しようとするもの。
・中国のようにルールに従わない国があることをどうするかが、今の世界の大課題。日米が協調して、安全保障面だけでなく、経済面でもこれに対処しようとするのがTPP。

(問)今般、交渉の結果、TPPで作られる経済取引の国際ルールが日本にとって都合の良いものになる事例を国民にアピールしてほしい。
⇒甘利大臣答弁

松田
・TPPは21世紀の国際秩序形成。日本はTPP、日米EU、RCEPのいずれにも入る国。世界スタンダード形成への参画でこんなに大きなチャンスはない。
⇒どうか、歴史を作っている大臣として、「二度とやりたくない」とは言わないでほしい。

(注)今般、REVIC法改正法案に附帯決議が付され、その中に、日本維新の会の提案により、次の項目が盛り込まれた。
「(政府は、)この法律の施行三年以内に、民間金融機関等の自らリスクを取る経営姿勢への改善状況を見据えながら、株式会社地域経済活性化支援機構の組織の在り方を含め、この法律の施行状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講じること。」