松田まなぶの本会議代表質問原稿 | 松田学オフィシャルブログ Powered by Ameba

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日本を夢の持てる国へという思いで財務省を飛び出しました。国政にも挑戦、様々な政策論や地域再生の活動をしています。21世紀は日本の世紀。大震災を経ていよいよ世界の課題に答を出す新日本秩序の形成を。新しい国はじめに向けて発信をしたいと思います。

独立行政法人通則法一部改正法案等
平成26年4月22日
  
 日本維新の会の松田学です。
 私は、今般、政府が改革提案を行っている独立行政法人制度が、行政の効率化とスリム化を図る仕組みとして、わが国に導入された経緯に鑑み、以下、行政改革への基本的な取組み姿勢を中心に、政府の所見をうかがいたいと思います。

一、消費増税と行政改革への姿勢
 この4月1日に消費税率が8%に引き上げられ、安倍総理は来年10月から10%まで引き上げるかどうかを、経済情勢を踏まえて判断するとしています。
 消費増税について、これまで多くの政党が主張してきたのは、国民に負担増を求める前に、まずは行革で政府が身を切る改革を、ムダを撲滅し、増税は然るのちにというシナリオでした。
 ただ、実質的に社会保障目的税である消費税とは、国民から国民へのおカネの移転であり、政府はそうしたおカネの流れを仲介する立場といえます。国民の誰かが負担したおカネが、国民の誰かに社会保障給付として移るわけですから、その限りでは、トータルでみれば、消費税を増税しても国民経済的な負担が増えるものではありません。
 消費増税の経済的な負担とは、将来世代にツケ回しをしていた分を減らす部分にあります。増税を先送りすればするほど将来世代へのツケ回しは増えますから、それを是正する際の、こうした経済的な負担は大きくなります。
 その金額について、甘利大臣は4月11日の内閣委員会で、消費税率を10%まで引き上げると、満年度化ベースで、後代へのツケ回しの軽減分では7.3兆円、基礎年金の部分が3.2兆円と答弁されました。つまり、この1年半の間に5%消費税率がアップすることで、年間で10兆円あまりの国民経済的な負担増が生じる計算になります。
 これは、社会保障費の増加のテンポに合わせて消費税率を引き上げていれば発生しなかった負担増分であり、既成の大政党が選挙を恐れて「不都合な真実」を国民に説得せず、課題を先送りしてきたことがもたらした負担増分でもあります。
 10%への引上げを前に、いま、政治がとるべき責任は、この部分にあると思います。
 私たち日本維新の会は、世論を恐れずに国民に真実を語り、ともに課題に向き合う政治を実現しようとする責任政党であります。その立場から、安易な消費増税には反対しつつも、消費税が「安易でない増税」として容認できる前提として、国民が負担に向き合う上で納得が得られる改革を強く迫っております。こんにちの事態が、国民と課題を共有できなかった「政治の失敗」にあるとすれば、国民が自ら国家財政の真実を把握し、納得をもって政策選択ができるような、透明で分かりやすい予算編成と財政運営のインフラとなる公会計改革や、次世代への財政責任を法律で政治家にも課すことを趣旨とする、我が党提案の「財政健全化責任法案」は、政治がとるべき責任として不可避なものと考えます。
 こうした改革、立法措置の必要性について、安倍政権はどうお考えでしょうか。麻生財務大臣におうかがいします。
 国民の納得を得るために必要な行政改革もそうです。独立行政法人について、民主党政権は、法人数を102から65法人へと37、削減することを決定していたのに対し、今回の法案では、100から87へと、削減する法人数は13にまで減っています。
 消費増税が実施されている時点での政権の決定としては、行革に対する取り組みが甘いという印象を与えることになっていないでしょうか。
 先般、今国会で成立した国家公務員制度改革もそうでしたが、どうも、安倍政権に目立ち始めいるように見えるのは、官僚主導という色彩です。公務員改革では、自民党が政権に返り咲いてから提出した政府提出法案は、自民党が野党の時に提出した法案よりも改革色が後退し、官僚が困らない範囲に収まっていました。独法改革も、官僚のもっともらしい言い分を聞いていれば、統廃合は難しいという独法が次々と出てきます。
 今般の通則法改正も全体的に、民主党政権が提案した24年法案の内容を、官僚機構が受け容れやすいものへと微修正したに過ぎないものに見えます。消費税を負担する国民が、なるほどといえるような行政改革の分かりやすい目玉があるのかどうか、安倍政権の行革に向けた姿勢を稲田大臣に改めてうかがいます。

二、量から質への行政改革の転換
 さて、わが国では、政府の量的規模を小さくすることに行革の焦点が充てられてきました。確かに「ムダの削減」は永遠に続けるべき大事なテーマです。しかし、量的な意味では、日本は諸外国と比較しても「小さな政府」であるのも事実です。
 先進国34カ国が加盟するOECD諸国のうち、統計比較が可能な国々の中で比較した数字をみると、日本の租税負担率は最低水準、社会保障以外の政府支出の対GDP比も日本は最低水準、総労働力人口に占める一般政府雇用者の割合、つまり、人口当たり公務員数は先進国でほぼ最少、一般政府の雇用者報酬の対GDP比でみると日本は先進国の中で人件費が「最も安上がり」という数字になっています。国・地方・政府関係企業などを合わせた公務員数の人口比は、英米仏のほぼ4割、ドイツの6割に過ぎません。
 雑巾を絞りに絞ってきた日本では、いまや、量的削減という意味での行革は簡単なものではなくなっています。政府は、すでにOECD諸国の中で最も低い総人件費のGDP比を、2015年度には05年度の2分の1にするとの目標設定をしてきました。世界で最も「小さな政府」を、どのようにして世界に類例のない「極小の政府」にするつもりなのか、目標達成の見通しも含め、稲田大臣、お答えください。
 もはや、日本の行政改革は、量よりも質的な改革の側面に注力しなければ、量的なスリム化も実現しないところにまで来ています。そのためには、行政の仕組みを大きく組み替える改革が必要であります。それは、私たち日本維新の会が主張しているような統治機構の改革といったレベルでの大改革であり、よほどの覚悟で取り組まねばなりません。
 今回の通則法改正の中には、「肥大化防止・スリム化」が掲げられていますが、政府案がどのようにして行政の質的な改善につながり、それがどのようにして行政のスリム化にもつながるのか、稲田大臣、その道筋をお答えください。

三、人材の確保と役職員のインセンティブ
 今後さらに量的に「小さな政府」をめざす上で必要なのは、行政の一人当たり生産性を高めていくことです。そのためには、これまで以上に公共分野に優れた人材を確保していく必要があります。独法も公募の推進が課題となっており、かつて民主党政権下で、退職公務員や国からの出向は、独法の役員就任を認めないということも議論されました。
 しかし、現状では、独法への民間人登用は期待された成果を挙げていないと言われます。
 その理由は何でしょうか。今般の法案で、それはどのような仕組みによってどのように是正されると期待されているのでしょうか。稲田大臣、お答えください。
 先般、iPS細胞で著名な山中伸弥氏は、健康・医療戦略推進法案の内閣委員会での審議に際し、参考人として意見を述べられましたが、その中で、新たに設立される独法である日本医療研究開発機構の人事に関して、公務員人事が内閣主導になる流れの中で政治主導の名のもとに、こうした機構の人事に政治が介入することについて不安を表明されました。米国も大統領が変わるとNIHのトップや上層部も変わりますが、その結果、プロジェクトが短期で縮小変更されると、非常に不安定になり、現に、この分野の人材が機構に来ることを敬遠するのではないかとの懸念の声も聞かれます。
 米国の場合は、政府の周辺に人材を受け容れるさまざまな機関がありますが、官民ともに終身雇用を前提とした、労働市場の流動性が低い日本において、公務であれ独法であれ、民間から有為な人材が集まるためには、官と民との間でリボルビングドアを支える、層の厚い社会システムを新たに構築していかなければなりません。これは今回の内閣主導への公務員改革がめざす方向の前提にもなるものです。
 行政改革はいまや、行政改革を超えて、国家全体の構造改革が必要な局面に至っていると思いますが、安倍政権にそのような認識と覚悟があるのかどうか、稲田大臣にうかがいたいと思います。
 先の公務員制度改革の法案審議に際して、私たち日本維新の会は、幹部職員の身分保障の緩和などを主張しましたが、それは、「公務員を身分から職業へ」という観点から、公務の分野を各分野のプロフェッショナルが活躍できる魅力ある職業にしなければ、人材を確保できないと考えたからです。
 魅力ある職業とすべきなのは独法も同じです。独法の役職員の創意工夫や、やる気を引き出す環境を整えることが、行政の効率化や生産性の向上に何よりも寄与するはずです。その意味で、今般、政府が独法の経済的インセンティブを改善しようとしている点は評価いたします。
 しかし、日本の独法は制度上、事業の目標を主務大臣から一方的に与えられ、事業実施の効率性には責任を持つものの、事業そのものの適否については責任を負えない建てつけになっています。企画と業務執行とを分離するという独法制度のそもそもの考え方は果たして正しいのかという議論もあります。現場は常にダイナミックに変化しており、現場からしか生まれてこない戦略もあります。
 中期目標の設定に当たっては、英国のエージェンシーのように、主務大臣と独法との協議によるべきだという指摘もありますが、創意工夫が現場から生まれるようにするために、今般の改革ではどのような配慮がなされているのか、稲田大臣、お聞かせください。

四、独法の説明責任
 独法改革の背景の一つには、「独法に多額の税金がつぎ込まれて官僚の天下り先として肥大化し、税金を無駄に食っている」との独法性悪説、独法白アリ論があります。民主党政権はこの立場から、独法制度の廃止を提案していますが、組織の形態よりも大事なのは、税金を投入することに見合う説明責任であり、改革とは説明責任の向上であると考えます。
 私たちが財政について提案している公会計改革もそうですが、改革の理想は、国民にとって国家がガラス張りになることにより、ムダが省かれ、効率性が高まることにあります。
 政府は12月の閣議決定で、独法に関する情報公開の充実を謳っています。
 しかし、説明責任とは単に情報を開示することだけを意味するものではありません。
 一般に、責任に対応する言葉としては、responsibilityと、accountabilityがありますが、前者が職務の結果がおもわしくない場合に非難を引き受ける意味なのに対し、後者は、一定の職務について説明すべき権限と義務とを排他的に引き受け、違法あるいは不当な業務執行について然るべき事後措置を講じるという意味での責任を意味するとされています。
 日本の独法制度の参考とされたのが、これとは似て非なる英国のエージェンシー制度ですが、これを本格的に整備したメジャー首相は、中央省庁の多くの部局をエージェンシーに変身させる大改革を断行しました。エージェンシーの最高責任者は企画書を提出して公募で選ばれ、独裁に近い権限が与えられる一方で、その企画書を守れなかった場合は賠償責任を負うため必死に仕事をするため、そのもとで働く若い職員からの提案が必要になり、公務員から移った者も含めて職員たちにとってもやりがいのある職場となり、成果に結びついたとされています。英国では政策立案は各省庁に入った国会議員が中心ですが、彼らは同時に、所管のエージェンシーのチェックについても責任を負っています。結果として政治家も、無理な要求はできなくなるメカニズムが働きます。
 今般の通則法改正で、各独法の業績評価はこれまでの第三者委員会ではなく、主務大臣が責任をもって行うなどの改革がなされますが、responsibilityとaccountabilityに係る責任分担はどのように設計されているのか、また、各省庁が官僚主導で運営されている日本の場合、それが結果として官僚の介入権限をいたずらに強める恐れはないのか、加えて、改革は官僚ではなく政治家による説明責任の強化につながらなければなりませんが、その上でどのようなメカニズムが存在するのかについて、稲田大臣に説明を求めます。

五、改革を成長戦略につなげるために
 政府案では、独法をその性格に即して3つに分類し直し、それぞれ異なるルールを適用することとされています。ただ、理研のような研究開発法人に分類される機関については、その性格上、各省庁との間で成果目標の達成を義務付けられる独法とは、そもそも異なる設計思想が必要です。政府内でも、独法制度とは切り離すべきとする「分離派」と独法制度の枠内に収めるべきとする「制度派」との対立があったと聞いております。
 研究開発には結果が見通せない不確実性があり、研究で思わぬ成果が出ることもあれば、何度やってもうまくいかない、しかしそれも成果であるというケースもあります。山中伸弥・参考人も、米国で与えられた自由な研究環境こそが基礎研究の成果に結び付いたことを強調しておられました。政府は「特定国立研究開発法人」を別法で定め、政府の関与を強めることとしていますが、これはその点を十分にクリアーしたものなのか、また、そもそも根本的に異なるものを一つの制度に入れていること自体の妥当性について、どのように考えているか、稲田大臣にうかがいたいと思います。
 最後に、成長戦略との関係について質問します。政府は、今回の独法改革を成長戦略の推進に貢献させるとしていますが、安倍政権は、本法案はどのようにして日本経済の成長につながると考えているのでしょうか。稲田大臣にお尋ねします。
 いまや日本は、世界で最初に人類共通の課題に直面する「課題先進国」になっており、これを強みとして活かして「課題解決先進国」になるべきだと言われています。それは、日本が、課題が何であるかそれ自体が課題である時代に、法律で「成果の最大化」と定めても、成果自体が何なのかを特定できない時代に入っていることを意味します。
 このことを十分に踏まえ、今回の独法改革が真の成長戦略へと結実する道筋をしっかりと確保するよう強く求めて、私の代表質問とさせていただきます。ご清聴、ありがとうございました。