松田まなぶの論点 国家としての人材登用、河野談話、歴史認識、集団的自衛権に関する基本論点を質す | 松田学オフィシャルブログ Powered by Ameba

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日本を夢の持てる国へという思いで財務省を飛び出しました。国政にも挑戦、様々な政策論や地域再生の活動をしています。21世紀は日本の世紀。大震災を経ていよいよ世界の課題に答を出す新日本秩序の形成を。新しい国はじめに向けて発信をしたいと思います。

国家としての人材登用、河野談話、歴史認識、集団的自衛権に関する基本論点を菅・官房長官に質す
~3月19日衆院内閣委員会・一般質疑~


◎公務員制度改革法の執行に当たって 公務員の再就職
・国家公務員制度改革が衆院で可決された。
・審議でも申し上げたように、内閣人事局ができるからこそ、時の政権による恣意的、裁量的、情実的な人事に対して抑制的な姿勢を意図的にとる必要。まず、内閣人事局を預かる官房長官に、そのような心がけについて釘をさしておきたい。
霞が関が「俺が俺が」の世界になってはならない。
・私は審議で公務員にとっては厳しい改革を主張したが、一貫していたのは、新しい公務員像の設計を提言すること。
・それは「身分から職業」。そのために公務員を魅力ある職業に。
・だから、天下り(再就職を省庁があっせんすること)に対する刑事罰の導入や、特別職(幹部公務員の身分保障の緩和)の導入を主張した。
・「身分」ではなく「職業」。それは憲法で保障された「職業選択の自由」の中で「公務員」が選択されることを意味する。
⇒ならば、公務員の再就職も当然、職業選択の自由の中から自由な選択としてなされるもの。
⇒公務員が「身分」ではないことを徹底させるもの。
・刑事罰は、「天下り官僚」のレッテル貼りが生涯にわたってなされることを排除するもの。人種差別をしていたら、良い人材が公務に来なくなる。
・レッテル貼りは「再チャレンジ」を妨げる日本の悪い風潮。
  挑戦者を応援する維新としては、このような世の中そのものを正したい。
・今般、省庁による再就職あっせんの刑事罰は附帯決議で検討事項に。
今回は刑事罰が見送られたのなら、少なくとも、それが意図するところを実現するために、新設される内閣人事局の所管大臣として、

(問)国家公務員を魅力ある「職業」にする上でも、政府として、「天下り」とはすでに禁止されている省庁による再就職あっせんのことであること、これに対し、本人の実力による再就職は自由、かつ非難されるものではないとして区別し、明確に発信すべきではないか。



◎日本郵政社長人事
 そのような流れの中で考えると、公務員ではないが、政権の恣意的な人事なのではとの疑念を抱かせるものが日本郵政の坂・前社長の更迭。
・坂・前社長は、私自身がよく存じている方だけに、情実が入ってはいけないと思ったが、国家運営の上で重要な問題をはらんでいるので、一国会議員として、あえて質問で取り上げることにした。
・昨年、辞任を迫られたことについて、言われている理屈は極めて政治的。
・政権交代直後、菅官房長官は、もともとは財務省出身の坂氏が日本郵政の副社長から社長へと昇格した人事について、「財務省出身者によるたらい回し人事、官僚が自分たちの権益を守るような人事は許されない。自民党政権になることが分かっていた時で、非常識。」と発言。
・その後、政権の意向で坂・社長は退任したが、最近、退任した坂・前社長がその後も顧問として報酬を受け取っていることが国会で取り上げられ、この問題がまた浮上した。
(問)安倍政権が日本郵政の坂・前社長を事実上、更迭させたことについては、民間による自立的経営という民営化の趣旨にも反する政府介入に当たらないのか。

…坂・前社長は株主総会で解任されており、政府が100%株式を保有しているので政権の意向通りの人事になるのは当然だ。しかし、社長人事は本来、会社の内規で、取締役案を作る郵政の指名委員会を開催する必要があるが、これが開かれていなかった。手続き上も瑕疵あり。
指名委員会は民間としての自立的経営判断を重視したもののはず。民間への政府介入。
…民間企業としての経営面でいえば、坂氏が解任されたとき、日本郵政は2013年3月期の連結純利益は5627億円と07年の民営化以降、最高の業績だった。
・当時、TPP交渉中に向けて、郵政に対する政府の強い関与は国際交渉でもマイナスとの意見もあった。
・そもそも政府の意向で取締役会の決定が覆されるのは、ガバナンスや経営のあり方として極めて危うい。
・2015年秋の上場を前に、政府介入は投資家の敬遠を招く可能性も。
…政府が株主としての立場にあるだけに、そして、日本郵政という日本を代表する会社であるだけに、その人事のあり方は社会全体に大きな影響を与える公的な行為。
ゆえに、更迭人事をするなら、政府としての説明責任があるはず。

(問)坂氏が日本郵政の社長としてふさわしくないと判断したことについての客観的、実体的な理由は何だったのか。

…坂氏は副社長として事実上、日本郵政を仕切っていた。
 その社長就任に際しては、取締役会の全員一致だけでなく、労組や全国郵便局長会も賛同していた。
→私も地域の特定局長さんたちを知っているが、坂氏の評判は良かった。「天下り官僚」との批判は聞かなかった。
・その時に経営上、社長にふさわしくないと判断される実態があったのか疑問。
…少なくとも坂氏の更迭については、どうも、「天下り官僚」というレッテル貼りが先行した政治的介入だったのではという懸念が拭えない。
・「天下り官僚」というレッテル貼りが生涯にわたって続くようなら、これは公務員の士気にも影響するので、きちんと区別していただきたい。

⇒以上の質問のやり取りの中で、菅・官房長官は、まず、省庁あっせんによる天下りと、本人の実力による再就職をきちんと区別することについては、「そのとおりであり、公務員がその能力を色々な分野で活かしていくのは国としての人材活用の観点からも重要」とて肯定したものの、こと坂・前社長に関しては、新聞報道のように、「その後も顧問として週2日の勤務にも関わらず、年1,000万円の報酬を受け取り、クルマもついていた」と述べるなど、トーンを上げながら批判していました。
                   
 確かに、23人も顧問がいて、しかも、その半分が各省庁出身者に手厚い待遇を与えていたとなれば、これが本当に「本人の実力による再就職」か疑われてしまうでしょう。
しかし、この問題は、私の質問が意図することとは次元の異なる問題です。これを持ち出すことで、かつて坂氏が社長に就任したことがいかにも天下りだったような印象を強め、あの、必ずしも十分に合理的な説明がなされていない社長更迭人事を正当化する手法は巧みでした。メディアならこの点だけを取り上げるだろうことも計算済みだったのかもしれません。
ただ、このようなポピュリズム的な手法で、私が明らかにしようとした、この人事の背後にある根本問題が報道されずに隠されてしまうことは残念です。私はそんなことを議論していたのではなく、逆に、坂氏には不愉快な思いをさせてしまったかもしれませんが、やる気と能力と志のある人ががんばれる社会への「維新」に向けて、引き続き議論を深めていきたいと思います。



〇この問題について、さらに少し、コメントさせていただきますと…、
・社長退任後の坂氏の顧問就任も、約4年間、副社長として郵政の経営に関わった坂氏の経験を活かすため会社側からお願いして顧問に来てもらったものと言われます。それを決めたのも、菅・官房長官が民間企業の経営者としての経験が豊富という意味で坂氏よりも社長に適任と判断した現在の西室社長であり、同社長は「民間との比較で理不尽に有利な契約はしていない」と述べています。問題は、各省庁から多数の顧問を迎えていたことで、この点は、逆に、民間出身の社長として脇が甘かったのではないでしょうか。
・坂氏が副社長時代、現場からも評判が良かったことは事実ですし、取締役会全員一致での選任での社長就任は、経営陣・従業員の総意だったの見方もあながち否定できません。これをやめさせるというのは、やはり、民間の経営判断を軽視するもののように思えます。
・また、顧問就任についても、日本郵政という巨大機構の運営は容易なことではなく、産業界からいきなり社長に就任した西室氏としても、民営化以降の数年間、日本郵政を仕切ってきた坂氏の協力が必要と判断したことは容易に想像できることです。
・いずれにしても、郵政の社長人事への政治介入は、郵政が票と結び付くからではないかとの疑念をも生むものです。票のために民間の合理的な経営もゆがめかねないのが安倍政権なのかと思われてしまいかねません。
・また、ここでも「レッテル貼り」人事がされたという実績ができてしまうと、今回の公務員改革も、実は政権が好き放題の人事ができることを狙ったものという次元の低いものへと、評価を落としてしまいかねません。
・これは民を登用する上でも悪しき事例になるでしょう。歴代トップが政治の渦にのみ込まれて退任を迫られるという経緯は、民間人も尻込み、引き受け手不足につながるからです。現に、日本郵政はそうでした。
・こうした疑念に、政権はきちんと応えてほしいと思います。


◎従軍慰安婦問題・河野談話の検証
…2月20日の衆院予算委員会・山田宏・衆議院議員の質疑では…、
「日本軍や官憲が直接強制連行に関わって少女たちを性奴隷にしたんだというものを、この河野談話は認めたものではなかった。しかし、現在、それを一方的に曲解し、そして自分たちの主張に合せて、この河野談話が使われることになりました。そのすべての原因は、この河野談話の曖昧さににあった。」、証言内容について「きちっとその内容、裏づけ調査も含めて、検証すべし」との山田委員の意見に対しての答弁で、菅・官房長官は、「機密ということを保持する中で、そこは検討もしてまいりたい。」と答弁。山田委員は「その内容によっては、新たな官房長官談話も考えていくべき。」とした。
…しかし、その後、参院予算委員会で、安倍総理は、河野談話は見直さない旨を答弁した。

(問)従軍慰安婦問題に係る河野談話を見直さないと明言するのであれば、約束した検証は何のために行うのか。結果として、証言は裏づけのない、韓国側の要請に従ったものとの結論になった場合、安倍内閣として河野談話をどのような位置づけの文書にすることになるのか。

・2月末の某新聞社の世論調査では、国民の過半数、3分の2近くの方々が、河野談話の検証を支持しており、国民は知りたがっている。国民の知る権利に応える意味でも、せめて、検証結果は公表すべきではないか。
⇒菅・官房長官は、国会からの要請に応じて提示すると約束。

〇コメント
・検証をするなら、単にその内容を公表するだけでなく、河野談話そのものを見直せないのであれば、例えば、新たな談話を出して上塗りすることは考えられないでしょうか。
・日韓の間で厳しいやり取りが続いてきましたが、交渉の要諦は、最初は自らの立場を強く打ち出し、その後、相手側に歩み寄ること。歩み寄りの部分が、相手側が自らの成果としてアピールできる部分になります。その部分を持たせるのが交渉の基本。
・本件の場合、すでに「河野談話」が既成事実となって、今の交渉の出発点になってしまっています。維新からの提起は、この出発点を正しい方向へとズラす効果があったのではないでしょうか。

◎歴史認識、侵略戦争
…河野談話は見直さないというのは、米国や韓国との間での外交的配慮だろう。
 しかし、外交的配慮ばかりしていると、国民のナショナリズムをかえって高めかねない。
愛国心が喚起されることは大切だが、外交的にも、それが狭量なナショナリズムになるのは避けるべき。
国際社会で、安倍政権が「右」であるとの誤解がなされていることが問題。これは、政権の政策を制約することになる。本来やるべきことも、右だと批判されることで、できなくなってしまう。
…安倍総理は、日本の戦争が「侵略戦争」だったかどうかについて国会答弁で、 「村山談話をそのまま踏襲しているわけではない」としつつも、「政権としては全体としてこれを引き継いでいく」として村山談話を継承する姿勢。これは、少し分かりにくい。
また、「行政府の長として歴史認識に踏み込むことは抑制すべき」、「歴史家に任せるべき課題」としながらも、戦後50年で村山談話、60年で小泉談話、そして「70年を迎えた段階において安倍政権の談話を出したい」と答弁(参院予算委員会2013年4月22日)。

(問)安倍総理は、歴史認識は歴史家に任せるべき問題としているが、他方で、「21世紀にふさわしい未来志向の談話を発表したい」と答弁している。歴史認識について何らかの認識を示すことなくして、こうした談話は発表できないのではないか。そこにおいても村山談話は全体として引き継いでいくことになるのか。

…東京裁判史観が「陰謀史観」かどうかは別として、マッカーサーが昭和26年5月3日の米国上院・軍事外交合同委員会での証言、「従って、彼らが戦争に飛び込んでいった動機は、大部分が安全保障の必要に迫られてのことだった」(Their purpose, therefore, in going to war was largely dictated by security)と述べたことについて、「日本の戦争が侵略戦争ではなかった旨を述べたもの」と広く解されている。
…当時の日本の新聞は、このときの議会証言の報道はしたものの、この下りについては触れようとせず、黙殺したとも言われている。
…私がなぜこのような質問をしたのか。→外国の方々からよく言われるのは、日本人は日本の歴史を自らもっと知ることが必要だということ。これは色々な意味で言われる。
政権を預かる者としては、歴史認識から逃げず、歴史に向き合う態度を自ら範として示すべき。

◎集団的自衛権
…安倍政権は右寄りと認識されていることで、やるべきこともできなくなる一つの事例が、集団的自衛権の行使という課題。
…集団的自衛権は、いきなり法の議論になっている。中身はどうなのかとの国会質問に対しては、いつも「法制懇の結論を待って」、「法制懇、法制懇」だ。
その必要性、必然性からのアプローチが足りないのではないか。
(問)集団的自衛権の政府解釈について、現状の何が問題で、集団的自衛権のうち具体的に何ができるようにすべきで、その結果どうなることを目指すのか、集団的自衛権の行使容認の是非の前に、政権としてまずはそれらの明確な説明が、国民に対しても関係国に対しても不足していることが問題なのではないか。
…本当に実現したいなら、政権自ら、まず、そこから入るべき。国会でも内閣法制局の法律論ばかりしている。抽象的で国民には実感なし。

(問)内閣法制局は内閣を構成する一員であって、総理大臣への助言機関であっても、その憲法解釈権は内閣とは独立に行使されるものではなく、政府解釈は最終的には内閣が決めるものであるという理解で正しいか。改めて確認したい。また、
(例えば、集団的自衛権に関する政府の憲法解釈が国会論戦を通じて積み重ねられてきたことに鑑みれば、)政府の解釈は政府が一方的に決めるのではなく、国会での議論を経て決めるべきものではないか。

…そこで、議論の準備として、現行の政府解釈について基本的な事項を確認しておく。
まず、政府解釈に対する素朴な疑問は、「集団的自衛権を主権国家として固有の権利として保有するとしながらも、それを行使できないということは、行使できない権利なら権利を持っているとはいえないという常識的な理屈からしても、論理破綻ではないか。」ということ。
…昨年2月28日の衆院予算委員会・安倍総理答弁「西村眞悟議員は、財産は持っていてもそれを処分する能力に欠けている場合、いわゆる禁治産者と言われている場合は、それは、財産に対して権利は持っているけれども、処分することはいわば許されていない…それでいいということではないわけであります。」
⇒この総理答弁にあるように、日本が禁治産者の国であるというのはいかにもおかしい。禁治産者とは、判断能力がない者、一人前でない者。いまの解釈では、憲法は、日本は自立していない、半人前国家だと言っていることになる。

(問)日本国憲法上、集団的自衛権は行使できないという政府解釈は、国際法上主権国家として当然に与えられている権利の保有を、日本国憲法が放棄している、つまり、日本は憲法上、その権利を保有していないということを意味しているのではないか。もしそうだとすれば、国際法上、主権国家として有していることが当然の権利を日本は保有していないとの政府解釈は、日本国憲法は日本を主権国家とはみなしていないというのが政府解釈になることを意味するのではないか。これは、日本が主権国家であることを憲法が否定していることにならないか。

…次に、政府の見解では、「自衛権発動の3要件は、①「わが国に対する」急迫不正の侵害があること、②これを排除するために他の適当な手段がないこと、③「必要最小限度」の実力行使にとどまるべきこと。」



(問)自衛隊発動の3要件(政府見解)のうち、わが国に対する急迫不正の侵害にいう「わが国」、あるいは、個別的自衛権の行使が許される「自国に対する武力攻撃」にいう「自国」とは、日本の領土領海領空に限定されているのか。海外のある場所への他国からの攻撃が日本の自衛にとって甚大な支障を生じることが十分に見込まれる場合でも、憲法上、自衛権は発動できないという解釈なのか。

…「わが国」の解釈をもう少し広く考えることは憲法上、できないものなのか。
…集団的自衛権を行使できるかできないかという議論の前に、そもそも集団的自衛権とは何なのか、その定義を議論すべき。
・どうも、「行使できない」という議論をみると、トートロジーに見える。
 最初から集団的自衛権を日本が行使できないようなものと定義し、その定義のもとに、日本は行使できないと言っているのが政府解釈にみえる。

(問)集団的自衛権を、「自国と密接な関係があるがゆえに、その攻撃が自国に対するものと認められる場合」と定義し直すことについて、どのような障害があるのか。このような意味での集団的自衛権であっても、これまでの政府解釈では、現行憲法下では行使できないのか。

…集団的自衛権の政府解釈は、あまりにも論理的な欠陥が多く、きちんとした組み立てになっていない。この問題は、単に政府が閣議決定をして終わりではなく、この内閣委員会でもきちんと議論する必要がある。
  その点、政府としてもしっかりと配慮することを約束してほしい。
  ⇒菅・官房長官「約束する。」