松田まなぶ TPPについて~その2~農業とTPP | 松田学オフィシャルブログ Powered by Ameba

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日本を夢の持てる国へという思いで財務省を飛び出しました。国政にも挑戦、様々な政策論や地域再生の活動をしています。21世紀は日本の世紀。大震災を経ていよいよ世界の課題に答を出す新日本秩序の形成を。新しい国はじめに向けて発信をしたいと思います。

 日本維新の会は、供給者側(業界や既得権益)ではなく、消費者側、一般国民に軸足を置く政党です。いまTPPで問題になっているコメの関税撤廃も、消費者側の視点に立って日本の農政を組み替えることと一体として行うことが大切です。


●必要なのは消費者視点の農政への転換

 日本ではコメの価格を吊り上げる方向の政策がとられてきました。778%もの高い関税と、減反によって生産を減らすことで、日本の消費者は高いコメを買わされる形で負担をしています。減反のために政府は多額の補助金(税金)を出していますし、高い関税率の代償として、日本は毎年、ミニマムアクセス米を外国から買うことを義務付けられ、その保管料だけでも結構な財政負担になっています。消費者に高いコメを食べさせるために税負担までさせられている、この二重の負担を消費者が負う形で農業保護がなされています。

 いけないのは農業を保護することではありません。多くの国が農業保護政策をしています。問題は、農業保護をする方式です。日本のような関税方式は、どちらかといえば開発途上国型の保護方式ですが、欧米で採られている農業保護の方式は、水際で輸入を制限する方式ではなく、外国から安い農産品が輸入されても国内農業が競争で負けないよう、農家に補助金を直接支払う財政方式となっています。
 これは消費者にとっては主食の値段が安くなるというメリットがあります。主食が安く手に入るということは、低所得者にもやさしい政策ということになります。もちろん、財政負担は伴いますが、日本の場合、減反のための補助金や戸別所得補償などをスクラップすれば、追加の財政負担はほとんどないという試算もあります。
 座談会で金子勝教授は、日本の競争力からみて、莫大な財政負担になるとして私に反論していましたが、もしそうだとしたら、日本の消費者は高いコメを買うことで莫大な負担をしていることになります。

 また、例えばクルマに高級車もあれば小型の低価格車もあるように、同じコメでも品質の差に応じて色々な種類のコメがあり、それぞれ別の市場があって、その中で競争しています。日本の高い品質の美味しいコメを、日本のコメ農家が壊滅的打撃を受けるまで大量に生産できる国はないとされます。農家一戸当たり農地面積が世界最大のオーストラリアも、気候条件からコメの生産には限界があり、逆に日本からコメを輸入しています。
 農業の競争力は農家の規模だけで決まるものではありません。品質の良い日本のコメは世界的に人気が高く、日本が減反をやめて日本米の値段が下がれば、海外でもっと売れるようになります。


●農業について確保すべき国益とは何か

 実は、食料の輸出は最大の食料安全保障になります。国内の需要に合わせた生産規模だと、農業は工業製品と違って急に生産を拡大できる性格の産業ではありませんから、いざ食糧危機となって外国から食料が輸入されなくなった場合に、日本は困ってしまいます。輸出に回していた分を国内消費に回せるよう、普段から国内消費を上回って輸出をしていることが肝心です。
 そのためにも、生産量を減らして値段を上げる政策ではなく、生産性を上げて値段が下がる方向の政策が必要です。ちなみに、TPPは相手国の障壁を撤廃する方向の交渉にもなりますから、日本の食料輸出にはプラスです。そもそも世界的な人口爆発の中で食料不足が懸念されているのに、コメの生産を減らす政策を日本がとっているというのは、いかにもおかしいことです。
 TPPによるコメの関税撤廃も、10年をかけて行われるものです。このままでは担い手が高齢化して農業が崩壊するのを座して待つのではなく、この10年の間に農業を若者にとっても魅力的な産業にして生産性を上げていかなければ、TPP以前の問題として日本の食料安全保障は確保されません。
 財政方式の農業保護政策は、補助金の支給要件を多様化して色々な工夫をすることにより、さまざまな政策目的を達成することができる優れた方式です。単に規模を拡大する競争力強化だけでなく、例えば環境保全型農業の振興、中山間地の零細農業の高付加価値化など、多様で多彩な農村を創りあげる上でも役に立つはずです。
 もう、関税方式から財政方式へと転換するときです。自民党はTPP参加に当たって国益を守るとしていますが、その国益の中身が曖昧です。日本維新の会が考える「国益」は、以上のように、消費者の視点に立って品質の高い国内産の食料を安く供給できるようにする、食料輸出で食料安全保障を確保する、農業を持続可能な産業として発展できるようにする、魅力的な農村を生み出す…といった前向きの国益です。


●大きな幸せを構想しなければ改革は進まない。

 農協にとっては、コメの値段が高いことが利益です。そのほうが手数料収入が多いからです。だから、TPPには当然、大反対することになります。自民党は選挙で農協という集票マシンが離反することを恐れて、ここで述べたような方向を選挙で打ち出せないでいます。農業の衰退を放置することが国益だと考えているのでしょうか。
 大事なのは、高関税などの水際規制方式から、先進国にふさわしい手法である直接支払の財政方式へと、農業保護政策の抜本的な転換を決断し、これをコメの関税の段階的削減と整合的に組み合わせながら実現していくロードマップを、きちんと描くことです。このことから逃げてはいけません。

 こうした大きな方向性のもとに、農業に「経営」、マネージメントを持ち込むことが大事です。かつて日本の農村はそうでした。戦後の食糧管理制度のもとに一種の社会主義が営まれてきた日本の農業システムを再設計しなければ、日本の農業に明日はありません。農協には新しい役割と存在意義が開けるはずです。
 将来の「大きな幸せ」を描かなければ、既得権益を持つ者は現状の「小さな幸せ」にしがみつくしかありません。いまの日本に問われているのは「大きな幸せ」の構想です。
 農業に限りません。真の改革を進めるなら、改革の先にある日本の将来像を示す必要があります。選挙で不利になることを恐れてレトリックに逃げているようでは、本物の成長戦略にはなりません。

 TPP交渉参加には、実はもっと大きな戦略的な意味があります。それはジャパンマネーの創出です。この点については機会を改めて論じてみます。


●櫻井よしこ・国家基本問題研究所理事長

 ぜひ、拙著「TPP興国論」(kkロングセラーズ新書)をご購読ください。
 この本は、表紙に写っている櫻井よしこさんとともに、私が国家基本問題研究所の企画委員としてTPP交渉参加を提唱する議論をしていた頃に執筆したものです。

$松田まなぶ(松田学)のブログ

 
 7月5日、参院選の応援の合間をみて、衆議院議員当選後初めて、この企画委員会の場に出るべく、国家基本問題研究所を訪ね、櫻井よしこさん始め企画委員の皆さまと久しぶりに議論いたしました。
 これからも、この国基研と連携をとりながら政策論を展開し、国政に反映させていきたいと思っています。