例えば、6月17日には医学通信社の「月刊保険診療」7月号掲載予定の座談会「TPPと医療の真実」に論者として参加しました。論戦の相手は、名立たる有識者、金子勝・慶應義塾大学教授、孫崎享(元外交官で評論家)、中川俊男・日本医師会副会長、松山幸弘・キャノングローバル戦略研究所研究主幹、それに私、司会は宮武剛・社会保障制度改革国民会議委員というメンバーでした。
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私と松山さん以外はTPP参加反対ないし懐疑派で、TPPは日本の医療を崩壊させる、ISDS条項で米国資本の利益のために日本は国益を失う、日本の地域社会は崩壊する…などと、かなり強硬な意見が大勢を占める中で、私としては、少しでも議論が公平なものになるような発言に努めました。結果として、TPPが直接、医療そのものに影響を与えるものではないという点では合意が得られましたが、医療とは別の交渉分野、例えば知的所有権で薬価を吊り上げたり、ISDSが医療に及んだりといった間接的な影響への懸念を払拭するところまで議論するには時間不足でした。
また、TPP交渉が米国の対日要求をTPPとは別の場所で強める可能性はあるのではないかという論点も残りました。しかし、仮にそうだとしても、TPPという多国間の交渉枠組みは、例えば、同じく多国間の枠組みであるWTOが米国のスーパー301条という、米国の一方的な要求の武器となってきたものを無効化する場になったように、米国の不当で恣意的な要求を抑え込む場にもなるものです。
いずれにしても、風が吹けば桶屋が儲かる式の不安をかきたてるより前に>なすべきことは、医療であれ農業であれ、そもそもTPP以前の問題として持続不可能になっている日本のさまざまな仕組みや社会システムを再設計し、そこから日本の国益を明確化して、TPPをそれを実現する場にしていく戦略性です。日本がこうした戦略性に欠けた国であるにも関わらずTPPに参加することが、なし崩し的に国益の喪失につながるという金子教授の指摘には私も合意します。
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問題はTPPではなく、日本の側での戦略形成システムの問題だと思います。
このほか、6月20日には台北経済文化代表処で20人ぐらいの台湾の方々の勉強会でTPPについて講演し、6月25日には大樹総研セミナー「TPP交渉と医療分野の規制緩和」で講師をいたしました。