松田まなぶの論点 谷垣禎一・法務大臣に対する質問に当たって | 松田学オフィシャルブログ Powered by Ameba

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日本を夢の持てる国へという思いで財務省を飛び出しました。国政にも挑戦、様々な政策論や地域再生の活動をしています。21世紀は日本の世紀。大震災を経ていよいよ世界の課題に答を出す新日本秩序の形成を。新しい国はじめに向けて発信をしたいと思います。

谷垣禎一・法務大臣に対する質問に当たって(論点) 松田学
於:2013年5月17日 衆院法務委員会

〇道州制のエコノミクスは都市集積
 日本維新の会の立場は道州制だが、道州制の経済的な狙いを考えると、そのエコノミクスは、一つには、グローバル時代にあって地方が真に自立できるようになるように、各地方に広域経済圏を形成して各地方自らがグローバル大競争に対応できるようにすること。世界が集積を競い合う時代にあって、中核都市への集積の裾野を広くとろうとするのが道州制。
 もう一つは、人口減少社会では、都市への人口集積を起こすことが、一人当たりソーシャルコストの増大を防ぐためのソリューションであるということ。外延化した人口の戦略的撤退と都市中心部への人口集積を促すために、魅力あるある都市の形成と、人口移動のインセンティブを組み立てることが課題。例えば、中心市街地を高齢式化社会の拠点にすることなどが考えられる。
 そもそも道州制改革には、成長戦略としての位置づけがある。
 人口減少下で効率よく経済を発展させるカギは、都市への人口集中。
 規模の経済の利益が生じる(収穫逓増、費用逓減のメリット)。
 福祉のコスト、技術革新の起こりやすさでも有利。
 日本の経済成長は都市にかかっている。
 「稼ぐ都市」の構築で、地域に分配する資源を増やす。
 ばらまきの分散投資では効果が薄く、特定都市への集中投資の方が効果大。
 国土強靭化計画も、日本全国の強靭化は広すぎて財政が持たない。むしろ大事なのは、都市強靭化。
 家族に頼れない単独世帯が40%を超え、高齢化が進めば非血縁者同士が安心して暮らせる都市を築くことも大切な視点。誰もがコミュニケーションが取れる広場を中心に据えるなどの新たな都市設計が必要。
 ⇒集積を生み、超高齢化など日本の課題解決をするためにも
 「都市のリフォーム」が不可欠。

〇老朽化したマンションの建替え促進
 今回の法改正案(罹災都市法、被災マンション法)の方向性自体は、そもそも全国共通の課題。Reconstruction が必要なのは被災地だけではない。
 現実に、マンションを建て替えるにしても、管理人は大変な苦労。大きなマンションなら管理会社が同意をとるが、中小のマンションだと管理人が一軒一軒、同意をとっていくのは大変。外国人が多いマンションでは、つかまらない。

(問1)今回の被災マンション法改正案で検討されている区分所有建物の決議要件緩和の方向性は、そもそも大規模な災害のケースに限られるものではなく、一般に老朽化したマンションの解体等においても共通なのではないか。

〇戦後システムと借地借家法
 戦後システムとして生き残ってきたものの一つに「借地借家法」がある。
 野口悠紀雄氏は戦後続いてきた日本のシステムを「1940年体制」と表現。
 それ以前の日本は、「明治大正経済システム」が典型。
 株式中心(戦後の銀行系列融資ではない)の資金調達、資産格差は今の米国以上、地方の自立、民には独立自尊の精神、労働市場は流動的といったように、戦後の風景とはおよそ異なる日本の経済社会の風景があった。
 それが、1937年からの中国との戦争で長期的な全面戦争に向けて、統制経済の採用を余儀なくされ、国家総動員体制が構築。
 統制3法(1937年)、1938年「国家総動員法」が制定。これは戦争目的のために動員する統制権限を政府に委任した授権立法だった。
 このときに出来上がったシステムが「戦後システム」の土台に引き継がれた。
 年功序列賃金体系、企業別労働組合(原型は産業報国会)、統制的金融制度の確立、直接税中心の中央集権的税制度の確立、所得課税の国への集中など。
 給与所得の源泉徴収制度も、もともとは戦費調達のために導入されたもの。
 ここに「戦後システム」の基礎が築かれた。
 ⇒システムの目的が戦争から経済成長に変化しただけ。
 戦後システムは「分配型」、ナショナルミニマム一律達成型などと言われる。
 「世界で最も成功した社会主義」(ゴルバチョフ)
 それが賞味期限⇒戦後システムの再設計こそが改革であり、「戦後レジームからの決別」が必要である。

☆「借地借家法」も「戦後システム」
 戦前では、日本人は借家住まいが一般的だった。居住の流動性は高かった
 1941年の借地借家法改正で、地主・家主の解約権が制限された。「正当な事由」(ここで導入)なければ、借地・借家人の希望により契約を延長できることに。
 これは統一的規律による社会政策的制度だった。世帯主が敵地に赴いている間、留守家族が追い出されることを防ぐためのものだった。
 戦後、これが借地を減少させることになる。「借地法」では、戦後の住宅難の中で裁判所は「正当な事由」を極めて狭く解釈した。
 現在でも社会的弱者保護のために必要との意識が強い。しかし、必ずしも借り手のほうが社会的弱者とは言えなくなっている。
 本来、再開発で都市中心部の土地の利用度を上げる余地があったが、十分になされてこなかった。
 マンション居住者は、悪条件の地点に。本来は高層化すべき便利な土地が借地で固定化したためだった。
 戦後は住宅といえば、いずれも駅から遠いマンションか、遠距離の郊外での「持ち家」ということに。
 必要なのは、「契約の自由」を基本に据えた改革。

(問2)借地借家法の「正当事由」(6条、28条)については、建物の老朽化や耐震性の不足等を明示する等、要件緩和に向けた見直しをすべきではないか。そもそも、「正当事由」が必要とされる理由付けとして、借地人・借家人の立場が弱いからということが言われるところ、現代において本当にこれらの者が社会的弱者かどうか、賃貸契約の内容、貸主、借主の経済状況などを実証的に分析する必要があると考えるが、法務省の見解如何。

〇定期借地権(質問せず)
 関連して、「都市のリフォーム」の観点から、平成3年の借地借家法で新設された「定期借地権」により、「土地の所有から利用へ」という流れは進んだのか。定期借地権を利用した地域活性化について、実効はどの程度上がっているのか。

(問3)借地借家法上、「事業用定期借地権」は10年以上30年ないし50年未満の間で設定できるとされているが、遊休地等の活用のため、貸主と借主の双方が合意していれば、10年未満の期間であっても事業用定期借地権の設定を認めるべきではないか。

〇IRとカジノ
 都市の活性化、地域の自立的発展、海外の経済活力の取り込み、人口減少社会における消費振興、マーケット拡大の視点から、観光やIR(統合型リゾート)の推進が提唱されている。

(問4)現在、経済活性化のためIR(統合型リゾート)をわが国に導入することが検討されているが、IRの重要な構成要素となるカジノに対する法務省の見解如何。

○法務局の登記事務の地方移管
 地方の出先機関改革について、日本維新の会は道州制基本法案とセットでの議員立法の提案を検討。
 ここには、国の基本的機能である法務省は含まれていない。道州制でも国家の基本に関わる部分は国が担うべき。むしろ、国は国にしかできない機能に特化して「強く賢い」戦略的国家⇒道州制の提案のもう一つの考え方。
 その上で、例えば、国税局や税関などのように地域を超えて国全体で機動的に運営しなければならない機能は国の役割。
 しかし、法務省関連では、法務局の登記事務は全国共通のガイドラインさえあれば、地方でもできると言われれば、反論しにくいのではないか。
 先般、今国会でマイナンバー法案が成立する。⇒国民にとって利便性の高い社会に向けて一歩を進めるものだが、例えば、

(問5)出先機関改革に関連して、法務局の登記事務を地方に移管し、自治体におけるワンストップ化を推進すれば住民の利便性向上に資するのではないか。

〇州ごとに会社法制(質問せず)
 道州制のもとに、地方の自立を進め、地域間競争を起こしていく際には、経済活動を全国や世界からいかにひきつけるかの競争になる。

(問6)例えば、アメリカでは州ごとに会社法が定められているように、将来わが国において道州制が導入された際に、州ごとに企業法制を変えられるようにして、企業誘致しやすくするような工夫を行い、経済活性化を図るという取り組みが考えられるが、法務省の見解如何。

○TPPをにらんで(質問せず)
 世界を日本に対して開かせるのが日本にとってのTPP交渉参加。
 インフラ輸出が言われているが、ソフトな制度やシステムも輸出すべきインフラ。税関などでは「キャパシティービルディング」で税関システムを組み立てることで途上国を支援。それが日本にもプラスになる。
 法制度も同様である。それにより海外で活躍する日本人の人材も増加。活躍の場が拡大。
 日本経済にとっても、日本の実情を反映したルールづくりになり、プラス。

(問7)法律や司法システムの海外輸出について、法務省としてどのような取り組みを行っているか。

(問8)グローバル化に対応した法律の外国語訳について、法務省としてどのような取り組みを行っているか。

 法務省は財務省とともに「守り」の役所。それは必要なこと。
 しかし、新しい国づくりをするうえで、法制度を預かる役所として、改革の上でも重要な機能。経済活性化やグローバル化に対する意識を期待。