松田まなぶの論点 マイナンバー制度について | 松田学オフィシャルブログ Powered by Ameba

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日本を夢の持てる国へという思いで財務省を飛び出しました。国政にも挑戦、様々な政策論や地域再生の活動をしています。21世紀は日本の世紀。大震災を経ていよいよ世界の課題に答を出す新日本秩序の形成を。新しい国はじめに向けて発信をしたいと思います。

衆院内閣委員会4月3日
答弁者 山本一太大臣、甘利明大臣、新藤総務大臣、向井内閣審議官、厚労省局長

Ⅰ.アベノミクスのカギを握るのは実質成長率。IT戦略との関係。

労働力人口が減少する中で、実質成長率2%でインフレ率2%を実現するためには、日本の労働生産性上昇率を倍増させる覚悟が必要。


〇日本経済は二重構造 

・マッキンゼーの調査では、国際競争にさらされる輸出向け製造業(鉄鋼、自動車、精密機器、電子機器)の労働生産性は、米国の水準を100とすると120(総雇用に占める比率は10%)

⇔これに対し、国内製造業(雇用に占める比率15%)と国内サービス業(同75%)の労働生産性は、米国の水準を100とすると日本は63

⇒サービス産業を中心とする日本の生産性の低さが指摘されてきた。IT革命による生産性の上昇は、長らく日本経済の課題とされてきた。
特に第一次安倍政権の下では、生産性上昇率5年で5割アップが謳われ、その中でサービス業などのIT化が生産性上昇の上で大きな位置づけとなっていた。

〇共通番号導入の経済効果
◆「共通番号」推進協議会は、行政分野、準行政分野、民間分野 効率化だけで、年間1兆1,500億円の経済効果と試算。

◆経団連は、国民が受ける行政サービスなどの利便性向上効果、民間企業等が行政に対して行う手続き効率化効果、民間企業等の業務効率化効果、国・地方の行政業務効率化効果の4つを合わせて年間3兆円以上(利便性向上、効率化等)と試算。

⇒コスト効率化による生産性上昇だけでなく、新産業・サービスの創出や新政策展開の効果で付加価値生産性の上昇も達成。


(問)日本経済の生産性向上が急務である中で、特にサービス産業の生産性の低さが指摘されてきたが、政府のIT戦略において、IT化と生産性向上との関係をどのように整理しているのか。これまで政府も、電子行政の共通基盤として官民サービスに汎用可能な「国民ID制度」の整備を謳ってきたが、現状での検討状況如何。[⇒答弁者は山本大臣]


Ⅱ.政治は未来を描くもの。共通番号制度と将来の国家社会像。

どのような国家像、社会像を描き、それをこのように機能させるためのインフラとしてマイナンバーが必要との説明責任が政府にはあるはず。
日本の場合、現在のところ、マイナンバー制の分野は税、社会保障、防災の3分野に限定する方向となっている。また、民間事業者は「情報提供ネットワークシステム」を使用できないこととなっている。

■1 番号制の一つの理念型は、納税と社会保障給付の情報の一元的な把握で不公正な支出を防ぐことと行政のスリム化という思想。日本の現状では、「収入が多いにも関わらず、その親が生活保護を受けていた芸能人。収入先がいくつもあり、収入が国や自治体ではつかめない人が、社会保障の給付を受けている。」こうした事態を防ぐとの文脈でマイナンバー制度が語られることが多い。

⇒財政の合理化と負担-負担の公平の実現という思想なのか。

⇒日本のマイナンバー制度の現状は、ここにとどまっている。

■2 もう一つの理念型 バルト3国のエストニア共和国の事例 :国を挙げて官民一体でITによる国家の発展を目指した。その結果が、電子政府とITベンチャーの成長だった。ネット電話の「スカイプ」もエストニア人の開発だった。医療も年金も銀行も一枚のカードでOK。医療記録から銀行口座に至るまで、あらゆる個人情報を一元管理する世界で突出した電子政府。国家としての生産性の向上という思想。

→ただ、スウェーデンの事例では、共通番号は、当初から一般に公開した形で制限なしに使用され、あらゆる国民の個人情報を各人の共通番号をデータベース化して管理、各種民間機関も同様にそうしている。「データ監視社会化」し、汎用であるがゆえ、成りすましが急増。

⇒共通番号制にはいろいろなデメリット、問題があろう。国家による一元管理への懸念や情報漏えいリスクなど。問題点を挙げだしたらキリがない。完全に解消できない。

⇒だからこそ、それを乗り越えるメリット、夢を国民に対して描かねばならないはず。

例えば、引っ越しワンストップ(引っ越しに伴って発生する住所変更届などの各種手続きを一度に完結できるサービス(公共部門の手続きだけでも最大7か所の窓口を訪問し、最大13種類の書類を窓口に提出しているとされる)、退職ワンストップ(年金、健康保険などの切り替えなど各種手続きを一度にできるサービス。最大訪問箇所で6か所以上、添付書類が15種類以上)をなど生活に密着した具体黄な利便性の説明を。

⇒将来的には、民間などの個別の番号制度とマイナンバー制度との接合が可能になる。例えば、地域ごとに構築したものとの接合など。今回は小さく生んで大きく育てる。


(問)マイナンバー制度について指摘されている各種の懸念を乗り越え、国民合意を形成するためには、「国民ID制度」あるいは民間も含めた様々なサービス分野とマイナンバー制度とが接合された後に実現される社会の姿を描き、それによって実現される利便性について国民に具体的に示すべきではないか。[⇒答弁者は甘利大臣]


Ⅲ.医療システム改革の決め手は地域での機能分化と統合。
←番号制とIT化は不可欠。

・亀田総合病院は、地域の長期療養型医療機関・診療所・福祉施設との連携ネットワーク、その間は一つのカードで。医療システムの効率化のためには、地域医療を効率的に提供する日本型IHN(Integrated Healthcare Network)を作るべき。日本型IHNは一つの医療圏内の住民に必要な医療サービスを可能な限り網羅する事業体である。統合される機能は、急性期・亜急性期ケア病院、外来手術センター、プライマリークリニック、検査・画像診断センター、リハビリ施設、介護施設、在宅ケア事業所、医療保険会社などである。

・日本型IHNは、域内開業医・医療機関の端末に情報を配布する機能を有する。患者の承諾があれば、域内医師に医療情報を開示することができるので情報共有となる。域内に医師(専門医)を派遣することで、サポートも可能である。

・IHNの強みは、病院・クリニック・自宅療養サービス・老人ホームなどを含む多種の医療関連機関が連携して単一の事業体を構成することにより、マーケティング・運営管理・財務・購買などの共通事業活動を統合し、全体として業務の効率化を図ることができる点であることと、過疎地の医療提供体制の構築に強みを発揮できる。

・また、それぞれの持つリソースを事業体全体でより効果的に利用することによって、医療の質が向上することも期待できる。

・IHNが統合事業体として培った医療連携ノウハウが活用されることにより、医療IT連携による広域の医療情報共有化などの取り組みが加速する。
⇒亀田病院IHNと接合。そのような地域医療連携システムが全国各地で展開されれば、それぞれの間で、マイナンバーを通じた情報連携が可能になる。移動してきた人がスムーズに地域連携システムに入れることになる。マイナンバー制度は、医療システム改革の突破口になる。

〇医療問題を改善するセンターピンはマイナンバー制である。マイナンバーが進まない理由として、抵抗勢力の存在が指摘されている。


(問)医療システム改革のセンターピンは地域におけるIHN(Integrated Healthcare Network)とされるが、そのために必要なIT化が日本で進展していない理由は何か。マイナンバー制度とこうした改革との関係について、どのように認識しているか。[⇒答弁者は向井審議官と厚労省局長、厚労省局長からは亀田総合病院のような取り組みを支援していきたい旨の答弁。]


Ⅳ.超高齢化社会を支えるコミュニティー形成と番号制度

・コミュニティやまちづくりに当たって、例えば商店街を超高齢化社会の拠点にする、その上でこのように有用だということが示されるはず。高齢者の見守りシステムも進んでいる。それらとの連携の可能性があるのか。各人のパブリックへの貢献度合いに応じて公共サービスの負担を軽減する考え方もある。それにも使えるのか


(問)超高齢化社会を「自立と共助」の考え方で運営していく上で、例えば地域コミュニティーの形成が課題であるが、そのための社会インフラとしてマイナンバー制度の導入はどのような可能性を有するものと考えられるか。{答弁者は甘利大臣}
 マイナンバーが整備されていると、そうした拠点に入る人の情報が最初からアイデンティファイされることで利便性が高まる。高齢者拠点に移動しやすくなる。
 本制度の特長は、個人を強力に特定できるようになること。それが長期間に持続できるようになること。個人単位で縦系列に続くということは、今までになかったこと。これまで、免許にせよ何にせよ、失効すればその時点でタテの流れは途絶えてしまってきた。

〇モビリティーのある社会が人口減少・超高齢化社会のソリューションの一つ。
 これから30~40年にわたり高齢化が進展。一人当たりソーシャルコストが上昇。
 郡部から都市の中心市街地に高齢者に移住していただく。
 その上で、個人を強力に特定できることは不可欠。


Ⅴ.現状のマイナンバー制度の思想「受益と負担の公平公正」の視点。

 個人番号制度で所得の捕捉が強まることが期待されている。
ただし、「税務調査において番号を利用して他の行政機関が保有する個人情報利用することが法律上可能となることで、税務当局が個人の所得状況に関する情報のみならず、様々な個人情報を収集利用しながら税務調査ができるようになる」というのは大誤解。
そもそも税法に規定された範囲でしか情報は当局には集まらない。マイナンバーによって、これまで集まりにくかった情報が集まりやすくなる効果があってこそ、適正公平な課税に資するものであるが、その部分はどの部分なのか。単に、複数の収入先のある納税者について名寄せが効率的にできるようになるという意味以上の部分で、どのような意味とメカニズムで課税の公平に資するのか。


(問)マイナンバー制度は、どのような意味で課税の公平に資すると考えられるのか。所得の捕捉の向上に大きく貢献するものと考えているのか。[答弁者は向井審議官]
結局、税の捕捉が大きく進展するものではない。画期的効果は税務については無い。

〇自立型社会
 日本維新の会の考え方は自立であり、自立あってこその共助である。
各個人が自ら国との受益と負担との関係の全体像を把握できるようになる、しかも、それができるのは各個人のみで、国のどの機関もそれはできない。

→それ自体が「自立型」社会。

 ⇒そこからさらに、「世代としての自立」を考えるべき。世代間不公平の是正こそが日本が取り組むべき所得再分配の課題。
個人金融資産の大半を高齢世代が保有。それを世代内の相互扶助に活用することこそが再分配政策として必要。→高齢世代の世代としての自立に。
 日本維新の会は、世代内で受益と負担の関係を完結させることを原則とし、世代間の移転は「見える化」して納得できるようにして、世代間の協調関係を構築することを主張している。そのインフラとしてマイナンバーが使えるようにすべき。


(問)超高齢化社会を公平な社会として運営していく上で、所得のみならず資産の捕捉は重要な課題であり、マイナンバー制度は資産をも対象にしていくべきではないか。実現に向けた展望如何。[答弁者は向井審議官]
 マイナンバー導入後の最初の仕事は、対象を預金に広げることであろう。これはマネロン対策にもなる。それを突破口に、いずれ資産へと進んでいくということではないか。


Ⅵ.地方の自立との関係

 日本維新の会は「地方の自立」の立場。それにマイナンバー制度がどのように関わってくるか。
 最も重視すべきは各基礎的自治体レベルでの地方の自主的な創意工夫である。
一定の全国統一標準化があってこそ利便性が高まるが、地方の自主性を尊重する観点からは、利用範囲について地方の裁量に委ねるべきとの声も地方側にある。
この両者の要請をどのような考え方で両立させるのか。


(問)社会保障、税、防災の3分野で導入されるマイナンバー制度については、利用範囲について地方の裁量に委ねるべきであるとの声もあるが、「地方の自立」の観点からは、マイナンバー制度はどのような意味を持ち得るものなのか。[答弁者は新藤総務大臣、松田の今回の質問での各種提案のいずれにも賛同、それらを地域の自主的な取組みで実現し、地域再生を図ることを視野に入れている旨、答弁。]
分権型社会の設計にこのように役立ち得るとの説明が必要である。
 マイナンバーは地方の裁量権の拡大、地方の自立に大きく寄与する。「税、社会保障、防災に『類する事務』」と規定している(法案第六条2項)。その部分は自治体の裁量。自治体番号を作り、例えば、地域医療システムを自治体として営むことが可能になる。



 以上のように日本の望ましい社会のあり方、将来像を考えると、マイナンバー制度は様々な発展可能性を持つ。少なくとも、そうした可能性を現実のものにするためには、最低限、マイナンバー制度を、小さく生んでおく必要がある。
 しかし、小さく生むに当たっても、様々な問題点がある。
 将来、いずれ不可欠になる社会インフラを円滑に導入するために、問題点を明らかにし、懸念を払拭していくことが不可欠である。