【ニッポン興国論】第12回 財政規律とは赤字国債の問題だと整理し、政策の自由度を向上させる。 | 松田学オフィシャルブログ Powered by Ameba

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日本を夢の持てる国へという思いで財務省を飛び出しました。国政にも挑戦、様々な政策論や地域再生の活動をしています。21世紀は日本の世紀。大震災を経ていよいよ世界の課題に答を出す新日本秩序の形成を。新しい国はじめに向けて発信をしたいと思います。

【第12回】財政規律とは赤字国債の問題だと整理し、政策の自由度を向上させる。

前回は、同じ政府の借金でも、資産と負債とがバランスシート上でつじつまの合う借金である建設国債と、社会保障などに費消され、資産を残さない借金である赤字国債とは、本質的に性格が異なるものであることを述べました。

前回第11回の記事は、こちら↓をご覧ください。

http://ameblo.jp/matsuda-manabu/entry-11297680347.html

この際、性格の異なる赤字国債と建設国債とを一緒くたにして同じ財政規律の下に置くことをやめてはどうでしょうか。


つまり、財政規律とはすなわち「赤字国債=経常的支出の世界に歯止めを講じることである」と整理し、建設国債=投資的支出の世界とは区別し、別々の論理を適用するのです。

後者の世界では、景気情勢によって必要であれば積極財政を講じられるようにすれば、「積極財政と財政規律の区別」が成り立ち、両者が両立します。

 こうした区別の論理が明確ではないことが、財政の自由度を制約し、日本の経済政策を縛ることになりました。その結果、つじつまの合わない財政運営になったのが、311の震災復興でした。


日本の政府投資の大きなメニューのひとつになるのが、被災地の復興です。ここでおかしいのは、「復興」という大義名分のもとに、国民が大きな疑問を抱くことなく、いつの間にか決まってしまった「復興増税」でした。

復興構想会議で最初に議論されたのが、被災地の復興は現世代の責任で行い、将来にツケを残さないとの考え方でした。千年に一度の大災害なのですから、カネに糸目をつけるべきではないのに、最初に議論されたのがおカネの話というのでは、時の政権は何をやっているのかということになります。それはさておき、「復興国債」を短い年限で償還するためには、増税が必要になります。それが「復興増税」です。


しかし、それを言うなら、社会保障の財源が足りないことを主因に膨らんできた、これまでの赤字国債のほうでしょう。

東北復興が今後100年にわたり、将来世代に価値ある資産を日本に残すものになると捉えれば(そうならなければならないものですが)、建設国債を60年償還どころか、100年償還で発行してもよいはずです。それによって償還負担は、復興で生まれる資産の便益を享受し続ける将来世代との間で分かち合うことになり、世代間で受益と負担の関係が公平なものになります。

何世代にわたる長い償還期間とすることで、毎年度の償還負担は小さなものとなり、国債償還のための増税をあえて考える必要はなくなったはずです。


結果として復興国債は25年償還に落ち着き、復興増税が決められましたが、財政当局がこうした論理のねじれにあえて踏み切ったのも、赤字国債への歯止めが消費税で担保されていない現状の下では、「財政の論理」を優先せざるを得なかったからでしょう。


いずれにしても、消費税増税は、赤字国債の世界で財政規律を担保することによって財政政策の自由度を高めるという意味で、景気を良くする環境を整えるものです。

逆にいえば、消費税増税は単に「社会保障と一体」のものとして考えるだけでなく、「経済政策とも一体」のものとして考えるべきです。

建設国債による積極財政で景気対策を行う中で、それを可能にするために、赤字国債には消費税で歯止めをかける。そのような大きな政策体系の全体を構築し、その中のパーツとして位置付けてこそ、消費税増税は妥当性のある政策になります。

問題は、歴代政権がそのような構想力を欠いてきたことにあったのではないでしょうか。

 

 建設国債を増やしても、国債が消化できなくなる心配はありません。次回は、この点についても述べてみたいと思います。

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