【ニッポン興国論】第10回 経済成長で財政はかえってパンクする、金融政策で救えるか? | 松田学オフィシャルブログ Powered by Ameba

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日本を夢の持てる国へという思いで財務省を飛び出しました。国政にも挑戦、様々な政策論や地域再生の活動をしています。21世紀は日本の世紀。大震災を経ていよいよ世界の課題に答を出す新日本秩序の形成を。新しい国はじめに向けて発信をしたいと思います。

【第10回】経済成長で財政はかえってパンクする、金融政策で救えるか?


 前回は、日本の国債のほとんどが国内で買われているからこそ、国債が売られて金利が上昇したときに日本経済に与えるマイナスの影響が大きいこと、消費税を上げられなかった場合には、それによってかえって景気が悪くなる可能性があることなどを述べました。

前回第9回の記事は、こちら↓をご覧ください。

http://ameblo.jp/matsuda-manabu/entry-11285765703.html

 今回は、政府が財政支出を増やす積極財政で景気を良くすることを考える前提として、金利の問題に触れてみたいと思います。


 多くの人々が、経済が成長すれば税収は増えるから財政も良くなる、成長なくして財政再建なし、政府は財政よりも、日本経済を良くすることにこそ責任を持つべきだ、財政のつじつま合わせが先だと経済はダメになる、と主張します。いかにも説得力があります。

安倍政権の頃、こうした「上げ潮」路線が当時の自民党政権の主流になりました。

しかし、それが当時のせっかくの好景気という、消費税率引上げのチャンスを逃してしまったという反省も聞かれます。その後、世界経済はリーマンショックで大不況になりました。いくら政府は経済にこそ責任を持つべきだといっても、社会主義経済ならともかく、政府が民間経済をコントロールできるものではありませんし、世界経済の動向にまで責任を持てといっても無理です。

自由な市場経済を主張する方までがこうした主張をするのは奇異なことです。政府の役割はむしろ、「雨の日には傘を貸せる」状況をきちんと整えることにあり、責任を持つべきものはどちらかといえば、政府のコントロールが及ぶ財政のほうにあるともいえます。


上げ潮派の主張には、実は、決定的な盲点があります。それは、経済成長をすれば、少なくとも当面は財政がかえって悪化するということです。日本の国債残高は、もう、こんな矛盾をもたらすところまで増えてしまいました。だから日本の財政は異常なのです。

700兆円という国債残高をベースに考えてみても、1%の金利上昇で7兆円、毎年度の利払い費が増えてしまいます。現在は1%そこそこの異常な低金利です。それは経済がデフレだからです。長期金利の水準は、長期的には、名目経済成長率と一致するのが通例です。もし、成長派が目指す4%成長が実現した場合、日本の長期金利も4%程度までには上昇するとみるべきでしょう。健全な成長をしている経済なら、4%程度が自然な金利水準です。

この理想的な経済成長が実現したとき、利払い費は何十兆円単位で増え、それを賄うために国債はさらに追加発行、その償還負担も加わりますから、国債発行額は大幅に増えることになります。経済成長が続けば、いずれ税収が増えて財政は改善しますが、それが金利上昇による財政悪化を打ち消すに至るまでは、数年、場合によっては10年ぐらいかかるかも知れません。その間の対策をきちんと考えておく必要があります。


日銀が金利を低く誘導すれば済むと主張する方もいます。しかし、経済成長率が高まったことによる金利の上昇に対しては、効果に限界があります。増発される国債を日銀が無理やり買い上げて、自然な金利水準とは大きく乖離した低金利を実現したとしても、長続きしません。もし長続きさせれば、バブルになるでしょう。バブルは必ず崩壊し、その後、10年にわたる経済停滞をもたらすことは、私たちも経験した歴史的教訓です。

また、為替は円安に、それも急激な円安になる恐れがあります。今は円高で苦しんでいるのだから、円安は良いことだといえるかもしれませんが、円安も行き過ぎると、日本経済に決してプラスとはいえません。

資源高などで、すでに日本の所得の海外流出は、2011年度で1819兆円と、過去最大に達したとされます。日本の金融緩和で世界の過剰マネーが増大すれば、資源価格のさらなる上昇にもつながりかねません。しかも円安となれば、脱原発でエネルギーの海外依存を強める日本は、より大きな所得の海外流出に見舞われます。

消費税の負担なら社会保障で国民に返ってきますが、エネルギーなどの海外依存の高い日本にとって円安は、私たちの生存に必要なコストを高くつくものにします。それによる海外への所得流出は純粋な国民負担です。それは超高齢化社会の運営や国債消化に必要な原資の喪失です。


 結局、金利上昇に対して、金融政策は答として不足です。むしろ、財政の側で、新しい知恵と工夫が求められていると考えます。

そこで、経済成長が税収増を通じて財政を好転させるまでの10年なら10年の間の対策として、無利子非課税国債(金利負担のない国債)や、私が新たに提案している「成長成果配分型無期限国債」(元本償還負担を先延ばしにする)が必要になります。

複式簿記の導入と、政府投資をバランスシートで管理することで、こうしたさまざまなファイナンス形態の工夫ができるようになります。

次回は、この点について論じてみたいと思います。


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