【ニッポン興国論】第8回 消費増税は本当にマニフェスト違反なのか。 | 松田学オフィシャルブログ Powered by Ameba

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日本を夢の持てる国へという思いで財務省を飛び出しました。国政にも挑戦、様々な政策論や地域再生の活動をしています。21世紀は日本の世紀。大震災を経ていよいよ世界の課題に答を出す新日本秩序の形成を。新しい国はじめに向けて発信をしたいと思います。

【第8回】消費増税は本当にマニフェスト違反なのか。


 前回は、日本は財政再建の道筋を示さなければ、デフレから脱却することもできない異常な状態にあり、消費増税を景気回復につなげる「第三の道」を模索しなければならないことが日本の置かれた制約条件であることを述べました。

前回第7回の記事は、こちら↓をご覧ください。

http://ameblo.jp/matsuda-manabu/entry-11273727183.html

 ただ、消費税増税には、2009年の総選挙で誕生した民主党政権の「マニフェスト違反」ではないかという問題が指摘されています。今回は、「第三の道」を論じる前提として、この問題に触れておきたいと思います。


 まず、考えなければならないのは、民主党政権が誕生した当時とは国債金融情勢が一変してしまっているということです。残念なことに、リーマンショックで膨らんだ過剰マネーのもとで起こった欧州債務危機は、一国の財政を投機の材料と化してしまいました。


かつて、日本が90年代以降にとってきた超金融緩和政策で膨らんだマネーは、実需の少ない日本国内ではなく、米国に向かい、米国を中心とする世界のマネーを膨らませ、リーマンショックに至るマネーバブルの原因の一つにもなりました。同じことが、リーマンショック以降の欧米の金融緩和政策で起こってしまったわけです。

それによって膨らんだマネーは、日本と同じく実需のフロンティアの少ない欧米国内ではなく、海外、つまり、新興国や途上国に回り、そうした国々でインフレ懸念を強めたり、あるいは資源や食料に向かってそれらの価格を高騰させたり、各国の国債の購入に向かって「国債バブル」を引き起こしました。その中でギリシャの国債が買われていたのですが、ギリシャの政権交代で財政の「粉飾」が明らかになったことを契機に、ギリシャ国債が逆に投げ売りされたことから、欧州債務問題の火がついたわけです。

この流れの中で、国際金融マーケットは各国財政に対するリスク許容度を低下させてしまいました。つまり、世界にあふれる過剰マネーが財政状況に対して過敏に反応して大きく動くという、極めて不安定な状況になっています。


ユーロへの信認の低下の中で、世界のマネーが日本の国債の購入に回っていることが円高をもたらしていますが、これも一種の「国債バブル」といえるでしょう。その前提として、日本が消費税率を引き上げることがマーケットにはすでに織り込まれてしまっています。

日本を取り巻く客観情勢が09年総選挙の頃とは明らかに変化しているのなら、情勢の変化に応じて政策変更を決断するのも、政権としての責務ではないでしょうか。


そもそも民主党が政権をとった際のマニフェストは、消費税に触れていません。消費税率を上げるとも上げないとも書いていませんでした。財政について書いてあったのは、子ども手当てなど民主党の掲げる新しい政策を実行する財源として、歳出削減や埋蔵金の活用などで16.8兆円を捻出できるということだけでした。

むしろ、財政再建の道筋を示していないという点で、政権を狙う政党としてはあまりに無責任なマニフェストだというのが、当時、私も携わっていた言論NPOでのマニフェスト評価活動で私たちが強く指摘していたことでした。

ですから、日本が財政規律についての担保を示さなければならない状況へと国際情勢が変化したのであれば、責任政党たるもの、マニフェストの欠陥を是正して、それをきちんと示す義務があるはずです。


これは、もし、マニフェストに消費税を上げないと明記していたとしても同じです。マニフェストがいくら有権者との契約だとしても、マニフェストどおりにしか政治をやらないのなら、そもそも政治家は要りません。国民がマニフェストに投票しているのなら、あとは行政府がそれを実行するだけだということになります。

そうではなく、国民が選んでいるのは、マニフェストを掲げた政治家や政党のほうです。彼らが政権を担うにふさわしいかどうかを、国民はマニフェストを材料として判断しているわけであり、その負託を受けた政党や政治家は、情勢の変化に応じて責任ある対応をする。それが間接民主主義というものです。重要なのは、マニフェストと異なる政策を打つ場合には、きちんとした説明責任を果たすことではないでしょうか。

他方で、民主党内で消費税に反対する方々は、ならば、それ以外の手段でどのようにして財政規律を担保するのかを示すことが、マニフェストの欠陥に立脚した説明責任として問われているはずです。


いずれにしても、もし日本がまたもや税率引上げを先延ばしすれば、国債の売りが誘発され、金利の上昇が消費増税よりも大きな打撃を景気に与える懸念があります。

次回は、このメカニズムについて述べてみたいと思います。


バックナンバー

【ニッポン興国論】第1回 消費税率引上げは国民にとって負担増なのか↓

 http://ameblo.jp/matsuda-manabu/entry-11237001318.html

【ニッポン興国論】第2回 消費税を上げたらデフレが加速するというのは本当か↓

 http://ameblo.jp/matsuda-manabu/entry-11242202033.html

【ニッポン興国論】第3回 消費増税では説明できないデフレとは、そもそも何なのか↓

http://ameblo.jp/matsuda-manabu/entry-11248255278.html

【ニッポン興国論】第4回 超高齢化社会では消費税にはプラスの経済効果がある。↓

http://ameblo.jp/matsuda-manabu/entry-11255522209.html

【ニッポン興国論】第5回 デフレのときには、政府には大きな役割がある。↓

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【第6回】日銀だけではマネーは増やせず、いまは政府投資の出番。↓

http://ameblo.jp/matsuda-manabu/entry-11267797852.html