Q&A4105 ヘパリンの開始時期は? | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q セカンドオピニオンでリプロダクションクリニック東京にお世話になっています。いつも先生のブログを参考にさせていただいております。私にとって、ニュートラルな気持ちになるのが一番難しいなと感じながら、色々な情報に振り回されず、先生が出してくださる正確な情報で心を安定させるよう、日々努めようと心掛けています。

 

今年の3月に初めてお伺いしてから、慢性子宮内膜炎の治療を3クール行い、完治したとの検査結果をやっと受け取ることができました。たくさんの抗生物質のご提案がいただけるリプロさんだから完治したと思います。本当にありがとうございました。その際にも少しご相談したのですが、移植に向けてヘパリンの開始タイミング等どちらがいいのか悩んでおります。

これまでの移植歴は以下のとおりです。
2022年8月 4AB移植(ホルモン補充周期)→陰性
2023年2月 4BB移植(ホルモン補充周期)→陰性
2023年4月 3BC+4AB(SEET法、二段階移植、ホルモン補充周期)➝化学流産
2023年5月 4BC+4BA(SEET法、二段階移植、ホルモン補充周期)➝胎嚢確認後、6週0日流産(前触れなく大量出血し自然排出)
2023年8月 3BC+3BB(SEET法、二段階移植、ホルモン補充周期)➝陰性

リプロダクションクリニックでの検査の結果は以下のとおりです。
数値が低かったビタミンD5000IUと亜鉛75㎎のサプリメントを継続中。
耐糖能異常は食事管理で改善しました。
子宮収縮検査でダクチル9T/日が必要であり、移植からダクチルを服薬開始予定です。


抗リン脂質抗体 aCL-IgG 29.9とaPS/PT-IgG 30.5 が高値でした。採血結果書では、バイアスピリン服薬(移植時から出産まで)とヘパリン自己注射(妊娠判定から出産まで)と方針が記載されています。最初の説明時には、一度着床しているからこの判断になったと思うと説明を受けました。昨日相談した際は、数値が高いため、移植時から使用できるといいかもしれないとの考えもあるとお話いただきました(自費なのでその方法も取れるだろうとのこと)。

①私の数値を考えると、ヘパリンは移植時から使用する方が可能性として着床や妊娠継続に有効でしょうか。
②この検査をした時から比べ、体重が減少し、耐糖能異常や肝臓の数値などが改善しているのですが、体質改善により抗リン脂質抗体の数値が変化する可能性はありますか。再検査してみる価値はありますか。
③現在通院中の病院では、移植周期にバファリンが処方されます。バイアスピリンとどちらがいいでしょうか。また、一度の流産歴ではありますが、出血性流産だったため服薬が心配でもあります。先生のブログによると出血性の場合はバイアスピリンの服薬を止める場合があるようですが、前回の流産が出血性であっても一度では判断が難しく、まずは服薬するメリットの方が大きいでしょうか。
④子宮内細菌叢の検査は受けていないのですが、慢性子宮内膜炎があったこと、3月の子宮鏡検査でポリープが見つかっていること(移植前に再検査し、残っていれば切除予定)、抗生物質治療を3か月行ったことを考え、乱れているだろうと考えております。慢性子宮内膜炎が治ったので、市販されている膣剤でラクトバチルス菌を補充しようと考えています。また、ラクトフェリンは1か月以上前から服薬中です。現在のラクトバチルス菌の数値はわかりませんが、膣剤開始後1か月程度は移植を待った方が確実でしょうか。

お忙しい中、ボランティアで回答を下さっている先生に敬意を表します。他の方へのご返答がとても参考になっています。本当にありがとうございます。

 

A 

①私は、ヘパリンの開始時期を過去の移植の結果や妊娠経過から判断しています。すなわち、妊娠したことが一度もないか化学流産のみの場合は移植時から、妊娠はするが流産ばかりの場合は妊娠判定からが良いと考えています。
②(様々な)体質改善により抗リン脂質抗体の数値が変化する可能性はありまません。
③低用量バファリン(81mg)とバイアスピリン(100mg)は同等の効果がありますので、どちらでも良いです。前触れなく大量出血し自然排出したような出血性流産の経験がある場合には、妊娠判定日でバイアスピリンをやめ、ヘパリンのみを継続するのが良いでしょう。
④ラクトバチルス菌の補充やラクトフェリン服用は、移植周期開始からで間に合うと思いますが、ずっと続けていても構いません。

 

なお、このQ&Aは、約3週間前の質問にお答えしております。