本論文は、GnRHaアゴニストトリガーで未熟の場合の特徴を検討したものです。
Hum Reprod 2024; 39: 963(フランス)doi: 10.1093/humrep/deae041
要約:2015〜2021年に顕微授精あるいは卵子凍結のために卵巣刺激を行い、トリガーにGnRHa単独(トリプトレリン 0.2mg)を用いた1747名(18~43歳)を対象に、卵回収率(採卵数/12mm以上の卵胞数) と卵成熟率(成熟卵数/採卵数)を後方視的に検討しました。有意差のみられた項目は下記の通り(赤字表示)。
卵回収率 卵回収率不良(<10%)の
<10% 10%< オッズ比(95%信頼区間) P値
初期胞状卵胞数 14個 < 17個 0.61(0.42〜0.88) 0.008
トリガー12時間後のLH値 34.9 < 44.4 0.86(0.76〜0.97) 0.02
卵成熟率 卵成熟率不良(<75%)の
<75% 75%< オッズ比(95%信頼区間) P値
BMI 22.6 > 21.8 4.34(1.96〜9.6) <0.001
AMH 2.33 > 2.02 1.22(1.03〜1.12) 0.015
エストロゲンプライミング 20.2% <26.7% 0.72(0.57〜0.91) 0.02
解説:トリガーを使わなければ卵の成熟は起こりません。hCGは天然のLHの代替物ですが、半減期が長いため(LH 60分、hCG> 24時間)、OHSSのリスクが高くなります。1988年からGnRHアゴニストがトリガーとして提案されましたが、当時はロング法やショート法がほとんどの場合に用いられていたため、アゴニストをトリガーに用いることができませんでした。したがって、GnRHアンタゴニスト法が導入された1998年以降にアゴニストトリガーが用いられるようになりました。自然なLHサージは14時間の急速な上昇期、14時間のプラトー、20時間の下降期(合計48時間)になります。一方、アゴニストトリガーでは、LHは投与の4時間後、FSHは投与の12時間後から増加し、24~36時間持続します。自然周期と比較すると、サージの振幅は似ていますが、持続時間が短くなるため、不十分なトリガーになると考えられています。したがって、アゴニストトリガーは主にOHSS予防に用いられています。本論文は、このような背景の元に行われた研究であり、初期胞状卵胞数低下とトリガー12時間後のLH低下が卵回収率不良のリスク因子であること、BMIとAMH増加が卵成熟率不良のリスク因子であることを示しています。