Q&A3994 ヘパリン開始のタイミングは? | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 36歳、出産2回、流産4回

 

初回出産の後、11週で流産(流産胎児絨毛染色体:正常男児)、不育症検査でプロテインSのみ引っかかり、アスピリンを服用しながら2回目の出産。その後、アスピリンを服用しているにもかかわらず、3回連続で7週頃で初期流産(流産胎児絨毛染色体:染色体正常女児2回、1回未検査)。

再度、不育症専門医のクリニックで不育症検査を行った所、以下の項目で引っかかり、次回妊娠からはアスピリンとヘパリンが必要とのことでした。
 プロテインS活性 51%
 抗β2GP1抗体IgG 38.7
 

気になっているのは、ヘパリン開始のタイミングです。不育症専門医のクリニックでは、ヘパリンは胎嚢確認後に開始することになっています。ただ、3回連続流産の際には、5週1日目で胎嚢を確認できましたが、大きさが3mmととても小さいです(妊娠週数のズレはありません)。6週でやっと卵黄嚢が確認できて、3回のうち1回だけ7週で心拍確認(その翌週で心拍停止)という経過でした。3回とも、最初から胎嚢が小さく成長も1週間遅れ、という感じがします。最初から小さいので、胎嚢確認時から既に勝負は決まっている(流産が確定している)ように感じます。

①5週頭で胎嚢がとても小さくても、ヘパリンを注射したら、その後順調に成長することが期待できるのでしょうか。
②私の場合、ヘパリン開始のタイミングは妊娠確認時でなくて良いのでしょうか(リプロでもヘパリン開始のタイミングは胎嚢確認時ですか)。
③そもそも、抗リン脂質抗体陽性の妊娠初期の流産に対して、ヘパリン療法は有用なのでしょうか(有用だというエビデンスはあるのでしょうか)。

 

A 

①②抗β2GP1抗体IgG 38.7はかなり高い数値ですので、ヘパリンによる治療は必須です。また、どの段階で発育(成長)が停止するかによって、ヘパリン開始時期を変える必要があります。例えば、化学流産(胎嚢が見える前にHCG低下)の場合は、着床期(胚移植)から開始が必要です。妊娠7〜8週で心拍停止するような場合には、胎嚢確認からでも間に合うでしょう。したがって、質問者さんの場合には、妊娠判定陽性になる妊娠4週台からヘパリンを開始すれば、流産回避が十分期待できます。
③抗リン脂質抗体陽性の妊娠初期の流産にヘパリンが有効であるとのエビデンスがあります。

 

なお、このQ&Aは、約3週間前の質問にお答えしております。