Q&A3969 悪阻とホルモン補充 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 海外在住、体外受精妊娠10w


通っているクリニックでは、ウトロゲスタン、クリノン、注射、アスピリン(注射は時々打つ、その他は毎日)を処方されています。松林先生のブログで、リプロにおけるホルモン補充は9w6頃までという記事を拝見しました。現在悪阻がかなり辛く10wにも入った為、薬の服用を終了したいのが本音ですが、クリニックからはもうしばらく続けた方が良いと言われています。

①悪阻とホルモン補充に関係はありますか。一人目妊娠出産(自然妊娠)時より今回の悪阻が重い為、悪阻がキツイのはホルモン補充のせいなのか、と思ったりしています。
②松林先生の記事に、リプロでは9w6頃までホルモン補助を行っているとありました。これは患者さんの状態や症状により、多少伸びたりしますか。
③ホルモン補充を突然全て終了すると流産の心配等胎児に影響しますか。徐々に減薬しながら終了していくのが一般的でしょうか。
④自然妊娠ではホルモン補充等せず出産まで至ります。体外受精では、ホルモン補充を手厚く行います。これは、体外受精の方がより流産しやすい等の理由でしょうか。
⑤悪阻がキツく、食べ物が食べられず水分のみ少量取れています。これはお腹の胎児に何かしら影響しますか。少量でも水分が取れていれば問題無いでしょうか。

 

A 

①妊娠中は女性ホルモンが増加するため、気持ち悪くなります。したがって、ホルモン補充により悪阻がキツくなる可能性はあります。
②まず、2024.1.29「Q&A3921 ホルモン補充の終了時期は?」の記事をご覧ください。従来リプロダクションクリニックでは9w6までホルモン補充を行っていました。しかし、保険診療が始まり、薬剤の添付文書が改定され、エストロゲン製剤は妊娠8週まで、黄体ホルモン製剤は妊娠9週までとなりました。つまり、ホルモン補充はそこまででやめて差し支えないことを示しています。
③ホルモン補充は減薬ではなく一度に終了します。
④ホルモン補充周期移植では、卵巣から女性ホルモンが全く出ませんので、その分を補充しています。しかし、妊娠8〜9週頃には、胎盤から女性ホルモンが出るようになるので、そこまで繋げれば大丈夫という意味です。体外受精が流産しやすいからという理由でホルモン補充を長くしているのではありません。
⑤水分摂取できていれば、胎児への影響はありません。

 

なお、このQ&Aは、約3週間前の質問にお答えしております。