今月のFertil Sterilの特集は、テロメアと生殖についてです。
①Fertil Steril 2024; 121: 4（中国）doi: 10.1016/j.fertnstert.2023.11.012
要約：テロメアは、ギリシャ語で端（テロス）と部分（メロス）を意味し、ほとんどの生物の染色体の端に位置する構造です。テロメアは、シェルテリンと結合する反復DNA 配列（TTAGGG）で構成されています。後者は、不必要なDNA修復を抑制する6つのタンパク質（TRF1、TRF2、TRF1、TRF2、POT1、RAP1）で構成されています。活性酸素、タバコ、毒素、慢性的な精神的ストレスなどがテロメアの短縮につながる可能性があり、運動はテロメアを伸ばします。テロメアを短縮させない生活習慣が望まれます。
②Fertil Steril 2024; 121: 12（米国）doi: 10.1016/j.fertnstert.2023.11.001
要約：男性不妊の根本的な原因は不明なことが多いです。男性の30%が原因不明の精液所見異常で、不妊男性の15～40%は精液検査が正常です。テロメアは男性不妊の分野で注目されており、男性不妊や肥満男性では精子のテロメアが短いことが知られています。しかし、精子のテロメア短縮と妊孕性との関連は必ずしも一致していません。
③Fertil Steril 2024; 121: 26（米国）doi: 10.1016/j.fertnstert.2023.11.011
要約：顆粒膜細胞のテロメアは、加齢、不妊症、卵巣予備能低下の影響を受けないようです。一方で、加齢に伴う白血球のテロメアまたはメチロームの変化は生殖機能と相関しているようであり、生殖機能が低下した女性の特徴付けに役立つ可能性があります。しかし、現在あるデータは限られており、今後の大規模な研究が必要です。
Fertil Steril 2024; 121: 1（米国）コメント doi: 10.1016/j.fertnstert.2023.10.027
要約：卵子の数はAMHやAFCで予測できますが、卵子の質は年齢以外に評価できるものはありません。テロメアは、ほとんどの生物の染色体の末端に位置する反復DNA配列（TTAGGG）で、染色体末端で保護キャップを形成するシェルテリンと結合しています。細胞が分裂するたびにテロメアは少しずつ短くなり、最終的には細胞死に至ります。さらに、テロメアは、活性酸素、タバコの煙、毒素、慢性的な心理的ストレスなどの内因性および環境因子によって、非分裂細胞でも短縮します（特に卵子）。テロメラーゼ酵素が、有糸分裂または減数分裂の進行中にテロメアが短縮するのを防いでいます。また、ライフスタイル改善により、エピジェネティックなメカニズムを通じてテロメラーゼ活性に影響を与えることが示されており、早発卵巣不全（POI）に対処するテロメラーゼ増強療法が期待されます。
2023年5月ニューヨーク タイムズ誌（ノーベル賞エリザベス・ブラックバーンさん）
要約：テロメアの話は単純すぎて魅力的に聞こえたかもしれません。つまり、細胞には生物時計があり、テロメアに反映され、それが細胞の寿命を決定します。時計を止めることができれば細胞は無期限に生き続けることができるので、細胞からできている人間も同じはずです。細胞時計を止めれば、若さを保つことができます。しかし、短いテロメアは早期老化に関連していますが、長いテロメアは単に寿命を延ばすだけでなく、癌や心臓病などを引き起こす可能性があり、それ自体が健康上の問題を引き起こします。
解説：テロメアと生殖については、まだよくわからない部分が多いことがお分かりいただけたと思います。しかし、POIに対処するテロメラーゼ増強療法のストーリーは大変魅力的です。今後の研究の進展に期待したいと思います。
下記の記事を参照してください。
2021.12.13「テロメアの長さは妊孕性とは無関係」
2020.3.28「卵丘細胞よりリンパ球のテロメアは長い」
2014.2.12「父親が高齢になると子どもの精子のテロメアが長くなる」
2013.6.12「アルコールを飲めるヒトほどテロメアが短縮する？」
2013.4.19「卵丘細胞のテロメアが卵子の質に関連」