テロメアの長さは妊孕性とは無関係 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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本論文は、不妊症でない方ではテロメアの長さは妊孕性とは無関係であることを示しています。

 

Hum Reprod 2021; 36: 3122(米国)doi: 10.1093/humrep/deab201

要約:2006〜2012年に、1〜2回の流産既往(不育症)があり、不妊症ではない1228名18〜40歳、平均BMI 26.4、白人95%、月経周期整)を対象に、半年間妊娠を目指していただき、妊娠するまでの期間(TTP=time to pregnancy)を前方視的に検討したEAGeRスタディー(Effects of Aspirin in Gestation and Reproduction)の研究の一部として、白血球のテロメアの長さを測定しました。年齢、BMI、喫煙その他因子で補正したところ、テロメアの長さと妊娠率、出産率、流産率に有意な関連を認めませんでした。

 

解説:小規模の症例対象研究や横断研究では、不妊症の方の白血球テロメアの短縮により妊孕性の低下が示唆されていますが、不妊症でない方での研究や前方視的検討は行われていませんでした。本論文は、不妊症でない方ではテロメアの長さは妊孕性とは無関係であることを前方視的検討により示しています。ただし、白血球テロメアが卵子のテロメアを反映しているかどうかは不明ですし、40歳以上の女性での検討をしていませんので、今後の更なる検討が望まれます。

 

EAGeRスタディーについては、下記の記事を参照してください。

2021.8.14「ビタミンD欠乏と月経前緊張症(PMS)の関連

2021.1.4「☆低用量アスピリンは無排卵とは無関係

2021.1.3「低用量アスピリンによる生理周期の変化はない

2018.4.19「AMHとテストステロンと妊娠の関係

2017.5.28「コレステロールと妊娠

2016.4.4「不育症に妊娠前からの低用量アスピリン療法は有効か