本論文は、ホルモン補充周期移植で子宮内膜が厚いと妊娠高血圧のリスク増加することを示しています。
Fertil Steril 2024; 121: 36(中国)doi: 10.1016/j.fertnstert.2023.10.028
要約:2017〜2022年に行われたホルモン補充周期移植2,275周期により誕生した単胎出産を対象に、黄体ホルモン開始日の子宮内膜厚と妊娠高血圧の関連を後方視的に検討しました。子宮内膜厚<7mmは除外し、子宮内膜厚を10、50、90パーセンタイルに基づき4群に分けました(7〜8mm 193名、8.1~10mm 1,261名、10.1~12mm 615名、>12mm 206名)。ロジスティック回帰分析により交絡因子を除外した子宮内膜厚別の妊娠高血圧のリスクは下記の通り(有意差のみられた項目を赤字表示)。
子宮内膜厚 修正オッズ比(95%信頼区間)
7.0 1.37(0.41〜4.52)
8.0 1.34(0.73〜2.47)
9.0 1.13(0.79〜1.62)
9.5 基準
10.0 1.04(0.87〜1.25)
11.0 1.46(0.81〜2.65)
12.0 1.86(1.03〜3.35)
13.0 2.33(1.32〜4.12)
14.0 2.92(1.52〜5.60)
15.0 3.62(1.63〜8.04)
解説:ホルモン補充周期移植は、最小限の通院日数で済み、移植設定が自由自在なため、世界中の多くの施設で自然排卵周期移植よりも広く実施されています。ホルモン補充周期移植では、一般的に子宮内膜が7mmに達した後に胚移植のスケジュールを立てます。薄い子宮内膜は妊娠率の低下と関連していることが知られており、薄い子宮内膜での移植では低体重児のリスクが高くなることや、逆に厚い子宮内膜での移植では前置胎盤のリスクが高くなるとの報告があります。子宮内膜の厚さが胎盤の発育に関連し、妊娠高血圧などの胎盤関連の合併症を引き起こす可能性があるのではないかとの仮説をもとに、本論文の検討が行われました。本論文は、黄体ホルモン開始日の12mm以上の子宮内膜は妊娠高血圧のリスク増加と有意に関連しており、そのリスクを軽減するための最適な子宮内膜は9~11mmであることを示しています。