夫婦の年齢、年齢差、妊娠歴と妊孕性の関係 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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本論文は、妊孕性(妊娠できる力)が、夫婦の年齢と年齢差のみならず、妊娠歴によって変化することを示しています。

 

Hum Reprod 2024; 39: 201(中国)doi: 10.1093/humrep/dead209

要約:2015〜2017年に不妊症ではない夫婦5,407,499名を対象に、無料のプレコンセプションプロジェクト(NFPCP)を実施しました。まず、医療スタッフが各夫婦に対面式の調査を実施し、年齢、民族、教育、職業、居住地、ライフスタイル、月経、妊娠歴、お子さんの数についてのデータを得、身長、体重、血圧を測定しました。また、女性は空腹時血糖検査、超音波検査も実施しました。妊娠するまで、あるいは最長1年間、3か月ごとに電話インタビューにより妊娠の有無を調査し、妊娠までの期間(TTP)と夫婦年齢や夫婦の年齢差との関連を後方視野的に検討しました。女性年齢は20〜49歳、男性年齢は22歳以上でした。年齢は〜24、25~29、30~34、35~39、40歳〜の5群に分け、夫婦の年齢差は0歳を基準として「男性年齢ー女性年齢」で計算し、〜−11、−10〜−6、−5〜−1、+1〜+5、+6~+10 、11年〜の6群に分けました。妊孕性は、男女とも妊娠歴のない夫婦よりも妊娠歴ありの夫婦で高くなっており、妊娠歴のない夫婦では年齢とともに直線的に低下しましたが、妊娠歴ありの夫婦では35歳まで低下せず、35歳以上で急激に低下しました。妊娠歴のない夫婦では、夫婦とも24歳以下の妊孕性が最も高く、夫婦の年齢差が大きくなるにつれて低下しました。妊娠歴ありの夫婦では、25~34歳の女性と+-5歳以内の年齢差の夫婦が最も高い妊孕性を有し、女性が約40歳になると妊孕性が急激に低下しました。また、妊娠歴の有無に関わらず、男性の年齢は妊孕性に寄与しませんでした。
 

解説:年齢は妊孕性を推測する上で重要な要因ですが、小規模な研究であったり、夫婦の年齢の組み合わせについての検討は実施されていませんでした。また、妊孕性における年齢の影響は夫婦の妊娠歴によって異なるとの報告もあります。本論文は、このような背景のもとに行われた過去最大規模の検討であり、500万組の夫婦における妊孕性が、夫婦の年齢と年齢差のみならず、妊娠歴によって変化することを示しています。たいへん貴重な研究です。