エクソソームとは? | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

エクソソーム研究の第一人者である、東京医科大学医学総合研究所分子細胞治療部門教授の落谷孝広先生のお話をご紹介します。

 

医師協MATE 2024; 340: 7(日本)

要約:エクソソームはほぼ全ての細胞から放出される、直径100nm前後細胞外小胞です。血液はじめ体液に含まれています。血液1mL中には50〜100億個のエクソソームがあり、膜タンパク質や内包するmiRNAは細胞間情報伝達の役割があります。miRNAは癌などの発症や増悪に関与しており、健常者と異なるmiRNAの変動を捉えることにより、癌の有無を早期に検出できます。miRNAを用いた検査により、血液1滴で13種類の癌(食道癌、肺癌、胃癌、大腸癌、膀胱癌、乳癌、肝臓癌、胆道癌、膵臓癌、卵巣癌、前立腺癌、神経膠腫、肉腫)を早期発見する方法が2018年に確立されました。膜蛋白質を用いた研究も進んでおり、大腸癌(CD147)、膵臓癌(CPRC5C)、卵巣癌などで新たなマーカーの発見が次々と報告されています。癌細胞は、必要な指示を含んだエクソソームを分泌することで、癌細胞自身が住みやすい環境を作っています。また、エクソソームが転移にも関与していることが明らかになってきました。現在、肝硬変など様々な疾患をエクソソーム医薬品で治療しようと、100件以上の臨床研究が進行しています。新しい取り組みとして、種を超えたエクソソームによる情報伝達があるのではないかと考え、食事や生体内細菌叢と疾患の関連を調べています(歯周病菌→心筋梗塞、脳梗塞など)。

 

解説:かつては老廃物を運び出す「ごみ袋」と思われていたエクソソームには、細胞間情報伝達の役割があることが明らかになり、現在その応用が進んでいます。細胞レベルの研究では明らかにできなかった疾患発症のメカニズムや治療法について、エクソソーム研究が新たな光を照らしています。とても興味深く読ませていただきました。