Q&A3781 ラクトバチルス:95.4%→0% | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 2つの病院で通算2回流産、その他の移植5回陰性

 

EMMA・ALICE検査を受け、Lactobacillusが0.00%、Prevotella 38.06%、Finegoldia 10.04%、Enterococcus 9.50%、Corynebacterium 8.80%、その他33.60%、アブノーマル(子宮内にラクトバチルス属の生着を妨げる病原性細菌DNAを10%以上検出)でした。今回の結果から、フラジール内服錠を7日間、インバグ膣用カプセルを7日間使用して、再検査をします。
 

1年半前には、前院での子宮フローラ検査では、Lactobacillus 95.4%、Stenotrophomonas 4.6%、Others 0.0%でした。1年半でラクトバチルスが95.4%から0%になって驚きました。その間で変わったこととして思い当たるのは、転院したことと、ピル服薬期間に過食して体重が3㎏増えたことです。特に体調をくずすこともなく、不妊治療の他で服薬はしていません。


転院によって治療の方法が3点変わりました。
・採卵前も移植前もマーベロンを服用
・移植がホルモン補充周期(エストラーナ、プロギノーバ、デュファストン、ウトロゲスタン使用)、検査周期も同様(前院では自然排卵周期だった)
・タクロリムスを服用

2023.1.9「Q&A3536 ラクトバチルス菌が少ないです」など先生の過去の記事を拝読して、ラクトバチルスについては気に病まなくてもいいのかなと、おかげさまで少し楽になりました。ただ、もしラクトバチルスが高いことが治療成果にマイナスに影響するなどの報告がないのであれば、できるだけ高めたい(0%になった要因があれば避けたい)とも思います。
 

①ラクトバチルスが0%になった要因として考えられることと、ラクトバチルスを高めるためにできることは何かありますでしょうか。2022.1.13「Q&A3174 骨盤内感染、便秘、子宮内フローラ」や2023.3.22「Q&A3608 3469の続き」のご回答のように、ラクトフェリンがよいのでしょうか。先生のブログで同様の状態の方に比べて、私は処方薬が少ないように感じました。
②ALICEで「ネガティブ:慢性子宮内膜炎の病原性細菌DNAは未検出」だったのですが、先生の記事でCD138細胞での慢性子宮内膜炎検査こそ必要ではないかと思いました。リプロダクションクリニックで、その検査のみを受けることはできるのでしょうか。可能でしたら、初診から検査を受けて結果を受け取るまで、おおよそどれくらいの日数が必要か、ご教示いただければ幸いです。

 

A 

①子宮内フローラ検査で大きな違いが出た場合に最も可能性があるのは、クリニックが変わったことにより、検体の採取方法と検査方法が異なっている可能性です。具体的には、子宮内膜を採取しているのか子宮内腔液を採取しているのかで、ラクトバチルスの比率が大きく変わることがあります。また、検査会社が変われば検査方法も変わります。したがって、結果を比較するためには同じ採取方法で同じ検査会社での検査が必要です。ラクトバチルスを高めるためには、プロバイオティクス(ラクトバチルスそのもの、ここではインバグ)とプレバイオティクス(ラクトバチルスが育ちやすい環境を整えるもの、ここではラクトフェリン)の併用が良いでしょう。畑で言うと、前者が種、後者が土や肥料になります。

②ALICEは、慢性子宮内膜炎を起こすかもしれない細菌の検査ですので、確定診断にはなりません。CD138細胞を調べる検査(リプロではBCE検査と呼んでいます)が必要です。リプロダクションクリニックでは、月経終了後〜数日以内に初診のご予約をお取りいただければ、初診時にBCE検査の実施が可能です。なお、結果は2週間後にわかります。

 

なお、このQ&Aは、約3週間前の質問にお答えしております。