本論文は、2022年反復着床不全ワークショップの声明を記したものです。
Fertil Steril 2023; 120: 45(反復着床不全ワークショップ)doi: 10.1016/j.fertnstert.2023.02.014
Fertil Steril 2023; 120: 60(米国)コメント doi: 10.1016/j.fertnstert.2023.04.037
要約:2022年7月1日、生殖医療の専門家27名がスイスのルガーノに集まり、反復着床不全ワークショップを開催し、2015年から2022年5月までに発表された論文の系統的レビューを実施しました。
着床率 34歳以下 35〜37歳 38〜40歳 41〜42歳 43歳以上
PGT正常胚 62.5% 60.8% 58.7% 53.7% 48.3%
PGT未実施胚 46.8% 41.1% 34.7% 25.5% 16.7%
今回の分析によると、真の反復着床不全(RIF)は極めてまれであり、不妊症夫婦の5%未満です。少なくとも3回の正常胚移植(あるいはPGT未実施胚の場合は、下記の表の胚盤胞移植数に達するまで)が不成功に至るまで、反復着床不全と呼ぶべきではありません。
34歳以下 35〜37歳 38〜40歳 41〜42歳 43歳以上
正常胚率 20% 30% 50% 70% 85%
PGT未実施胚盤胞移植数 4個 5個 7個 13個 27個
解説:これまで、反復着床不全には明確な定義がありませんでした。 今回の系統レビュー実施により、これまで反復着床不全と言われていた大部分で、過大評価、過剰診断、過剰治療されているものと考えます。
コメントでは、臨床医として「全ての患者が同じ治療の繰り返しを喜んで受け入れるだろうと考えるのは頂けない」という感情があり、さまざまな提案をしてしまいがちだとしながらも、それらの提案(アドオン)には明確な根拠がないとしています。アメフトで大逆転を狙うパスをHail Mary(聖母マリアが降ってくる)と言いますが、「サードダウンでヘイルメリーパスを投げないよう」にと結んでいます。
今回の声明文の大部分は、2021.1.19「☆真の着床障害は本当は少ない!?」で紹介した論文を元にしています。私は、一つの論文だけで結論を導くべきではないと常日頃考えていますので、一つの意見として心に留めておきたいと思います。
下記の記事を参照してください。
2021.1.19「☆真の着床障害は本当は少ない!?」