今月のFertil Steril誌の特集は、男性の加齢とお子さんの健康状態についてです。
①Fertil Steril 2022; 118: 999(米国)座長 doi: 10.1016/j.fertnstert.2022.09.021
要約:ヨハネ23世「男性はワインのようなもの。酢っぱくなるものもありますが、最高のものは年月とともにどんどん良くなります」。アレック・ボールドウィン、リチャード・ギア、スティーヴ・マーティン、チャールズ・チャップリンは、それぞれ62、69、67、73歳で父親になりました。世界最高齢で父親になったのは、インドのラムジット・ラガブさん、96歳です。今回の特集は男性の加齢と妊孕性について、3名の方をご紹介します。
②Fertil Steril 2022; 118: 1001(英国)doi: 10.1016/j.fertnstert.2022.10.017
要約:男性の加齢に伴い、お子さんの遺伝子の突然変異による疾患が増加します。卵子の幹細胞は出生時に細胞分裂を停止しているのに対し、精子の幹細胞は出生後も16日に1回細胞分裂を行っているためエラーが生じるからです。遺伝子変異の頻度は、誕生時に卵子で22ヶ所でその後増えませんが、精子は誕生時に30ヶ所、25歳で45ヶ所、45歳で90ヶ所に達します。
③Fertil Steril 2022; 118: 1013(米国)doi: 10.1016/j.fertnstert.2022.10.029
要約:男性の加齢に伴い、お子さんの精神神経行動系の疾患が増加することが知られています。具体的な疾患としては、双極性障害、統合失調症、自閉症、注意欠陥多動障害、知的障害、認知症、うつ病、不安障害、摂食障害などです。
④Fertil Steril 2022; 118: 1022(米国)doi: 10.1016/j.fertnstert.2022.10.035
要約:男性の加齢に伴い、お子さんの精液所見の低下、妊孕性の低下(ART妊娠率低下)、疾患の増加が報告されています。ただし、賛否両論がありますので、確定的なことは言えません。
解説:女性の加齢に伴う妊孕性の低下はよく知られています。男性の加齢に伴う妊孕性の低下については余り知られていませんが、こちらも緩やかに低下します。今回の特集は男性の加齢とお子さんの健康状態についてであり、男性の加齢に伴い、お子さんの遺伝子変異増加、妊孕性の低下、各種疾患の増加が示唆されます。男性もなるべく早くお子さんを授かるような努力が必要と考えます。