経腟的子宮頸管切開による粘膜下筋腫摘出術:ビデオ論文 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

本論文は、経腟的子宮頸管切開による粘膜下筋腫摘出術を紹介したビデオ論文です。

 

Fertil Steril 2022; 118: 990(オーストリア)doi: 10.1016/j.fertnstert.2022.08.007

要約:26歳の女性が、過多月経月経困難症貧血を主訴に来院されました。1年前にタイプ2粘膜下筋腫をTCRで摘出した既往があります。なお、妊娠歴はありません。sonohysterographyにより、直径5cmのタイプ0粘膜下筋腫と診断しました。患者さんが腹腔鏡手術を希望しなかったため、十分なインフォームドコンセント(経管無力症による流早産リスク、子宮破裂、帝王切開が必須など)の下に、経腟的子宮頸管切開による粘膜下筋腫摘出術を選択しました。まず、バソプレシンを局注して止血を計りつつ、膀胱子宮窩を切開し、膀胱を上方に剥離します。内子宮口まで剥離したところで、子宮頸管をハサミで縦切開します。必要に応じてさらに膀胱を上方に剥離し、子宮頸管をハサミで縦切開します。腹腔内に到達したことを確認し、さらに内子宮口まで子宮頸管をハサミで縦切開します。子宮筋腫が確認できたところで筋腫を単鉤鉗子で把持し、引っ張り出します。少しずつメスで筋腫を切除し、最後にメッツェンで筋層との間を切除します。この時、正常な子宮筋層を切除しないように気をつけます。粘膜は2-0で結節縫合し、筋層は連続縫合で閉創しました。さらに腹膜を閉鎖し、最後に膀胱子宮窩を閉じ、子宮鏡で子宮内腔を確認しオペを終了しました。なお、避妊期間として半年を指示しました。

 

 

解説:粘膜下筋腫摘出術には子宮鏡手術(TCR)が行われますが、TCRではオペが完遂できないタイプのものもあります(筋腫が大きい、筋腫多数存在、長時間かかり水中毒のリスクがある場合、TCR器具が準備できない場合など)。本論文は、このような場合に、低侵襲で短時間に実施できる新たな方法として、経腟的子宮頸管切開による粘膜下筋腫摘出術を提案しています。応用範囲の広い手術だと思います。