Q&A3519 ☆私に合った刺激法は? | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 2022.4.26「Q&A3278 今後の治療について相談」、2022.11.22「Q&A3488 43歳、リプロ東京通院中」で回答いただきました。松林先生からいただいたご意見を受け、PGT-Aはやらないことに決め、10個程度の貯胚をめざし、リプロ東京にお世話になっております。

何度も何度も、申し訳ありませんが、採卵時の刺激方法について伺いたいことがあります。
現在、43歳10ヶ月、AMH0.79です。
現行の採卵周期の刺激方法は、D2orD3から5日間レトロゾール+クロミッド、その後クロミッド+フェリング(冨士)150+ゴナール75で育て、セトロタイドを打ち、hCG10000で仕上げております。
おかげさまで、4回の採卵で下記を凍結することができました。
【Day3】5G3, 5G3, 4G4, 8G2. 【Day5】3BC, 3BB, 3AC. 【Day6】3AC.
4BAの胚盤胞も取れて、新鮮胚移植にもチャレンジしました(判定日にhCG 6で、その後hCG値が低下しました)。

今、同様の刺激で5回目の採卵周期に入っています。この後、1〜2回は採卵を続けようと思っているところです。今までの採卵結果は、胚盤胞になるもののC評価であったり、初期胚では成長が遅めなので、今の刺激方法を変えてみるのはどうかなという気持ちがあります(素人の高望みですみません)。良好胚を目指しすぎて、藪蛇になる可能性が高いでしょうか。

前医院の時は、クロミッド+フェリング150あるいはレトロゾール+フェリング150の刺激で採卵し初期胚までは順調(6G3以上)なのですがD評価の胚盤胞になっておりました。それに比べると、リプロで良い結果が出ています。しかし、良好胚とまではいかず、良好胚盤胞になっても妊娠には至っていません。今と同じことを繰り返しては、同じ結果になるのではないかと思っているのですが、良好胚を目指しすぎても実態に即してないのではと迷いがあります。

リプロ東京で診察時に相談した際は、「胚盤胞になる率も良く、この方法を変えるというのは考えにくい」「グレードをそこまで気にする必要はない」「薬を変えたからといって良くなるとは限らない」「変えたいなら、刺激開始から薬を変えることになる」「変えてみて、どうなるか観察してもいいのでは」というご意見を皆様からいただきました。製造供給の関係でフェリングが富士に変わり、それで薬剤が少し変わるので様子を見ては?というご意見もいただき、現行の採卵方法で進めているのですが、富士の注射により発疹がひどく、消退しないため、富士からフェリングへと変更となりました。リプロ東京の医師の皆様は、とても丁寧にわかりやすく説明してくださるので、とても信頼しているのですが、どうしても松林先生のご意見も伺いたく、下記の質問をさせていただきます。

①刺激方法を変えて初期胚あるいは胚盤胞を貯卵することについて、松林先生のご意見をいただきたいです。
②刺激を変える場合、どんな薬剤の選択や方法がありますか。
③HMG製剤が富士からフェリングに途中で変更になってしまったのですが、卵の成熟に影響しますか。

 

A 皆さんの目標は、元気な赤ちゃんを授かることです。しかし、良好胚盤胞でなくとも授かる方、胚盤胞にならないため初期胚に方針を変更して授かる方、初期胚2〜3個移植では上手くいかず初期胚4〜5個移植で授かる方、さまざまです。また、PGTをされている方で、良好胚盤胞のみ検査をご希望の方も少なくありませんが、Gardner分類(胚盤胞分類)で良好胚とされてる胚が全て異常で、非良好とされている胚が正常だった方もおられます(もちろんCC胚も含みます)。正常胚になった胚盤胞が初期胚の段階でどうだったか振り返って調べたところ、初期胚の段階で3細胞グレード5(3G5)だった胚からも胚盤胞になり正常胚が見つかっている方もいました。私が何を言いたいかと言うと、途中経過は関係ないと言うことです。エンドポイントが元気な赤ちゃんなのか、正常胚なのか、良好胚盤胞なのか、良好初期胚なのか、によって判断が変わってくる訳ですが、胚の状態から元気な赤ちゃんが誕生するところまで予測することはできません。したがって、迷っているよりも、移植してみることが大切です。

 

①刺激方法を変えた場合に、良くなる場合と悪くなる場合があることを認識しておいてください。その上で、ご希望があれば、やってみることはやぶさかではありません。
②これまでやっていない方法(ショート法、黄体フィードバック法=PPOS)、使用していない薬剤(フォリルモン、アスカ)を選択します。
③刺激薬剤の変更は卵の成熟には影響しません。成熟は採卵2日前のトリガーによります。

 

なお、このQ&Aは、約4週間前の質問にお答えしております。